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第4話 例の部屋が俺たちを待っている

エロトラップダンジョンの奥まで進んでいくと、パリピパーティーたちの悲鳴は届かなくなった。
あいつらは無事に脱出できただろうか。

だがパリピたちがどうなっていようとも、少なくとも今の俺には無関係な話だ。

「ううー……オタクくん……しっかり……すぐに、休めそうなとこ、見つけてあげるからね!」

女の子であるアイリーンは、男子としては小さい方である俺よりも、さらに小柄だ。
重たいだろうに、ぐったりとしている俺に肩を貸しつつ、奥へ奥へとダンジョンを進んでいく。

幸いにして、あのエロ触手ほどのトラップとは、未だ遭遇するに至ってはいない。
せいぜいが、踏むと痺れ胞子を撒き散らすキノコや(息を止めてやり過ごした)、モンローよろしく地下から吹き上げてスカートを捲りあげる風など(ふたりともスカートを穿いていなかった)、かわいいもんだった。

「あっ! 見て! あそこになんか、小部屋みたいなのない!?」

と、アイリーンが声をあげる。
ダンジョンの壁を区切るようにして鉄扉が開いた状態で設置されていて、その向こうは部屋になっているらしかった。

「待っててねオタクくん! 今、休ませてあげるからね!」
「う、うう……」

ようやく目的地が見つかった嬉しさからか、アイリーンは勇みながら俺をその小部屋へと連れ込む。
その時、小部屋の入り口の上部に、何やら部屋の名称や説明書きのようなものが掲示されていた気がするのだが……あいにくと俺は、こちらの世界の言葉は通じるのだが、文字が読めない。

「はあはあ……なあ、アイリーン。今、部屋の入り口に、なんか書いて……」
「がんばってオタクくん! もう少しだよ! あとちょっとで安全に横になれるからね!」
「聞けよ……うう……はあはあ……」

俺たちが足を踏み入れたのは、四畳半程度の小さな小さな部屋だった。

天井も床も石材が剥き出しになっていて、しかし壁には明らかに自然物とは異なる燭台が取り付けられている。
俺たちが侵入すると同時に、その燭台に一斉に火が灯された。

「わっ! 勝手に火ぃついた! サービス行き届いてんね!」
「はあはあ……サービスじゃない……これ絶対サービスじゃないぞ……アイリーン……」

更に驚愕すべきは、その部屋の中身である。
窓も何もなく、代わりにただひとつのある物体が、部屋の床面積の半分を占めていた。

ふっかふかの、ベッドである。
清潔そうな白いシーツに、枕がふたつ。

どうぞ! ここでご休憩ください! 何ならご宿泊頂いても構いません!
と、ばかりに、人がふたり並んで寝られそうなサイズのベッドが設えられているのだった。

「わー! ベッドだ! めちゃくちゃ今のオタクくんのためにある部屋じゃーん!」
「いや……違うだろ……これ……」

と、その時。
背後で重たい音を立てて、この部屋の鉄扉が閉まったことに気がついた。
目の前のふかふかのベッドに飛び込みたそうにウズウズしているけど、俺という怪我人がいるため、必死で我慢しているっぽいアイリーンは気付かなかったようだが。

アイリーンを不安にさせたくないから指摘しないけれど、恐らくあの扉はもう力尽くで開けようとしても開けられなくなっていることだろう。

ここはエロトラップダンジョン。
エロ触手を始めとした、エロいトラップが蔓延
はびこ
るクソダンジョンだ。
そういう前提で考えてみれば、あからさまなベッドが置いてある部屋に閉じ込められた時点で、その正体は分かろうものだ。

俺には読めなかったが、あの入り口の上部には、こんな言葉が書いてあったのだろう。

『セックスをしないと出られない部屋』と。

「……どーすんだよ、これ……」
「え? どーすんのって、寝るんだよ!」
「ね、寝るのか……っ!?」

いいの!?

「オタクくん、あのエロ触手にやられて怪我したんでしょ!? まずは寝て! 横んなって!」
「あ、ああ……そっちね……」
「そっちって、そっちしかなくね!? オタクくんウケるわーー!」
「ウケてる場合じゃないんだなーこれが……」
「だよね! あのエロ触手、たぶんオタクくんの体内に毒っぽいの注入したっぽいもんね! 今から調べてあげるから、安心してくれていーよ!」
「うう……」
「どーしたのオタクくん!? 胸押さえてるけど、胸が痛むの!?」
「これは俺の良心の問題だから、アイリーンは気にしないでくれ……」
「パパとママがどーかしたの!?」
「両親の問題じゃねーよ……はあ、はあ……」
「そーだ喋ってる場合じゃないや! オタクくん早く休ませないと! そいっ!」
「うべっ」

その細腕のどこにそんな膂力が、という感じで、エイリーンにベッドの上に放り投げられた。
ふっかふっかのベッドはそんな俺を受け止めて、高反発スプリングによって、べいんっ、とまた飛び跳ねさせる。

それからエイリーンは俺の服のボタンを外したり、ベルトを緩めたりと、楽になれるように俺の服装を調整してくれた。
しかしそんな最中、ふとエイリーンは作業の手を止めてジッと俺の体のある一点を見つめる。

「……なんだよ」

むず痒くなってつい尋ねると、エイリーンは「んふっ」とニッコリ天使のスマイルを浮かべて見せた。

「いらないって言ってたくせにー! ちゃーんと貼ってくれてんじゃんね!」

は……?

………………はっ!

どうやらエイリーンは、俺の手の甲を見ていたらしかった。
そこには、先ほどエイリーンからもらった、ゴテゴテと騒がしいデザインをした絆創膏が貼られているのである。

どうせしばらく会うこともないだろうと思って、油断してついうっかり貼ってしまっていたんだった……。

こ、こいつは恥ずかしい!

「……ていうか、俺がいらないって言ったことも、ちゃんと覚えてたのかよ……。そのうえで無視して渡してくるとか、はあ……ほんと、良い性格してんな……」
「んふー! ありがとーー!」
「褒めてねえ……」

うるせえし絆創膏剥がしてやろうか……とも思ったが、あまりにも体がダルすぎて止めた。
これはあのエロ触手にやられた毒のせいだ。
元気だったら絆創膏剥がしてたからな。アイリーン。

俺をベッドに横たわらせると、アイリーンは腰のポーチから1冊の手帳のようなモノを取り出した。

「……それは?」
「喋っちゃ駄目! 安静にしてなさい!」

安静ガチ勢だった。

「これはねー、ウチの師匠が作ってくれた、この辺りのダンジョンやフィールドに出現するモンスターをまとめてくれたメモなんだ!」
「あ、答えてはくれるんだ。……師匠? あの、やたら騒がしいパーティーのメンバーの誰かのことか?」
「全然違うよ-! あの人達は、なんなら今日初めて会ったくらいだし!」
「そうだったのか……」
「そ! 師匠っていうのはねー、ウチが前に所属してたパーティーのリーダーだった人なんだ! ウチよりもかーなり年上で、髪も真っ白なんだけど、めっちゃ強くってさー!」

なるほど。
聞いた感じ、老師みたいな感じの人なのだろうか?

「要は、『飢狼
きろう
伝説』のダン・ブー・ルー先生みたいなことだな。長くて白い髭が特徴的な師匠キャラだ」
「誰それ? 分かんないけど、ウチの師匠は女の人だから、髭は生えてないよ。髪は真っ白いけど」

女性なのか……。
となると、影の国の女王スカサハみたいな? でもあれは女性の師匠ではあるけれど、老師キャラではないか。

「でさ、ウチ、バカだけど、冒険に出るなら生き残るために大事なことだからってゆーんで、師匠に戦闘のことを体に叩き込まれたんだよねー! あれキツかったなー!」
「……それで、ひとりだけ戦闘中の立ち振る舞いがちゃんとしてたんだな」

今までアイリーンに対して抱いていた疑問が、少しずつ氷解していく。
確かにエロ触手をレイピアで切り裂く様子は、冒険者としての経験を少なからず感じさせるものだったからだ。

「んで冒険者をやるなら知識も必要だろってことで、師匠がモンスターに関する特徴とかをまとめたメモを作ってくれたってわけ!」
「……ゲームでいうところの、攻略本みたいなもんか……」
「こーりゃくぼん?」
「攻略本知らないのか……?」
「知らない!」
「攻略本っていうのはその名の通り、ゲームの攻略情報が書かれた本のことだな。たとえば敵モンスターのステータス情報だとか攻撃してくる技の情報だとか、ショップで売ってる武器やアイテムの情報だったり、ロープレだったら世界地図とかダンジョンのマップ情報とか、攻略ルートだとか、まあゲームをクリアするための主要情報を手当たり次第ってところだ。昨今ではネット上でいくらでも攻略サイトから情報を拾えるので、わざわざ攻略本を買うという層も少なくなっているようだが。しかしまあ俺みたいなコアなゲームオタクにもなると、むしろ攻略データに加えてCG集だったり設定集だったり開発者インタビューなんかが豊富に載っている攻略本を、コレクションの一環として手元に置いておくのがまた乙なものでな。データ集としての使用のみならず、単にゲームファン向けの読み物としてもおもしろいものも多く、中にはその誤植の多さから伝説となった攻略本まで存在していて、いやそれに関しては多くを語るよりも、その先は自分の目で確かめてみてく、ゲホッゲホッ……オェッ……」
「わーっ! オタクくん! だから喋ったら駄目って言ったじゃーん! 大丈夫!?」
「大丈夫。ファミ信の攻略本だよ。(キリッ……)」
「分かんないけど、どーせそれも攻略本絡みのフレーズなんでしょ!? オタクくんのオタク話は後でゆっくり聞いてあげるから、今は休んでってば!」
「う……すまない……」

ついつい喋りすぎてしまったせいで、また少し呼吸が荒くなってきてしまった。
俺は素直に黙って、アイリーンが該当のモンスターに関する情報を見つけるのを待つ。

「えーと……ダンジョンの欄で-、えーと……あ、び、ち、で、……え、だから、ここか」

こっちの世界の五十音順、どうなってんだ?

「エロトラップダンジョンのぉー……えーとぉ……エロ触手……だからぁー……あ! あったこれだ!」

かつてこんな無様な索引を引くヤツが、この世に存在しただろうか。
とにもかくにもエロ触手に関するデータを見つけたらしいアイリーンは、メモ帳に顔を寄せてそこにある文言を読み上げる。

「えーと、なになに。エロ触手はとにかく力が強く、狙い定めたターゲットに絡みつき、締め上げることで攻撃、あるいは陵辱を行う!」
「ひどい文章を元気に読むなあお前……」
「喋っちゃ駄目! で、えーと、場合によってはターゲットの体表を突き破り、神経毒を打ち込む場合がある! この神経毒は……全身の筋肉を弛緩させ、やがて心臓まで止めてしまう……人を死に至らしめる猛毒である! ……えっ?」

……えっ?

俺とアイリーンは、同時に顔を見合わせる。
いや、確かに、ベッドの上に横たわってから、ずっとダルくて体が動かせなくなっていたのだが……これって、思ったよりけっこうヤバいってこと?

解毒する方法はないのか? と、尋ねようとしたところで、口が自由に動かなくなりつつあることに気がつく。

「げ、ど、……ぅ……ほう、ほう……?」
「! お、オタクくん、喋れなくなってんの!? 毒の影響!?」

どうやらアイリーン、頭は悪いらしいが、しかし察しは良いようだ。
彼女は大慌てでメモ帳に目線を戻し、解毒方法を探し出す。

「解毒解毒……えっとえっと……あった! ええっと、男性の場合、エロ触手の猛毒は精子に溜まりその毒性を増幅していく!」

……は?
精子って言った? 今?

「つまりはこの猛毒を解毒するためには、毒が溜まっている精液を排出……つまりは射精を行えば良い! だって!」

射精を行えばいい! だって!
じゃねえよ!

「よかったねオタクくん! 射精すれば解毒できるってさ! じゃあさっそく射精しちゃおうよ! ね、オタクくん! ん? 射精って……あれ?」

そこまでニコニコ笑顔を浮かべてまくし立てていたアイリーンが、ふと真顔になって尋ねてくる。

「ね。オタクくんさー。……射精って、毒で体が動かせない状態でも、自分でできるもん?」

できねーよ。

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