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第10.5話 ギャルの独り言

ボロくて隅の方が白く曇ってる鏡の前で、ウチはメイクを落とした。
ベタついた顔をパシャパシャと洗ってから、はあ、と溜息をひとつ。

ウチは両手でほっぺたを押さえると、鏡の中の自分に向かって問いかける。

「あー、恥っずい。ウチ、ちゃんとお話しできてたよね? 全然フツーに振る舞えてたよね?」

今日、ウチは処女を喪失した。
いや、厳密に言うと、昨日。

でも昨日の夜にお酒を飲んでから、ウチらはほとんど一晩中、ず~っとセックスしまくってた。
だから、少し眠ったとはいえ、体感的にはまだちょっと今日の延長線上っていう印象がある。

初めてのセックスは、エロトラップダンジョンっていう南の森の外れにあるダンジョン内でのことだった。

そこでエロ触手っていうチンチンに激似な触手に襲われそうになったウチは、今日初めて会ったばかりの彼……ハルるんに助けてもらった。

そう。
ハルるんとウチは今日が初対面。
当然同じパーティーってわけでもなくて、どうして彼があの時エロトラップダンジョンの中にいたのかも、よく分かんない。

南の森は初心者向けのあんまり強くないモンスターが多いとこだから、彼も冒険者としての歴は浅いんだと思う。
実際、クエストもモンスター退治とかじゃなくって、薬草採集だったみたいだし。

けれど。
そんな冒険者としての経験の浅い彼は、身を挺してウチのことを助けてくれた。

あの時、ウチは……。

「正直、萌えたわ」

鏡の中に映る、メイクを落としてあんまり盛れてない顔を見て、ウチは呟く。

えっ、うっそ。
あんな明らかに地味メンで気弱そうで、冒険にも慣れてる感じのしない男の子が、だよ?
ほとんど初めて会ったばっかのウチのことを、庇って助けてくれたんだよ?

直前までいっしょに行動してたパリピメンバーのみんなが、ウチのこと放って逃げちゃったのを見てたから、ハルるんのガッツ溢れる行動には一層萌えた。

ヤバ。
この男の子……めっちゃいーじゃん! って、なった。

だからハルるんがあのエロ触手の毒でやられてて、チンチン触って射精させてあげないとヤバいってなったとき。
ウチ、この子だったらいーかなって思って、チンチン触ってあげたんだよ。
だからウチが何の躊躇いもなくハルるんを助けることができたのは、ハルるんがウチのことを助けてくれたから。
ハルるんが、ハルるんらしく行動してくれたから。
だから、ウチらふたりは、ふたりで助かることができたんだよ。

ま!
恥ずかしくてそんなこと言えないけどっさああああああああああああ!?

それにその後かんっぜんに盛り上がっちゃって、セックスまでさせちゃったのは、もうその場のノリに身を任せちゃったせいだけどね!
でもハルるんだからってのは、絶対にあったから! これはマジ!

あーあ!
ハルるんに、ウチのこと「男なら誰でもいいからチンチン触ってあげたりセックスさせてあげたりするビッチ」だと思われてたどうしよーーーーー!

違うんだよーーーーーー!
ハルるんがウチのこと助けてくれたから、キュンキュンしちゃって、「しゅき♡ 抱いて♡」ってなっちゃっただけなんだよーーーーーーー!

しかもウチもセックスさせておきながら、なんか変に意識しちゃってんのかな!?
セックスの時以外は、恥ずかしくって「ハルるん」って呼べなくって、ついつい「オタクくん」って呼んじゃってるし!

「あーあ。なんていうか、ハルるんとセックスしちゃった! っていうこの感動を、誰かと共有できたらいいんだけど」

さすがにハルるんに直接そんなこと言えるほど、ウチも図々しくないし?

うーん。
昔だったら、同じパーティーにギャル仲間がいたから、その子達にたくさんお話ししたりできたんだけどなあ~。

懐かしいな。
みんな、今頃、なにしてんだろ?

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