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第9話 仲間のためならおっぱい誘惑なんて無駄……? その1 ☆

「──も、もういないってどういう事ですか!?」

ギルドの扉を叩き、馴染みの受付嬢に話を聞いた直後。柄にもなく僕は大声を出していた。

「も、申し訳ありません……」

僕の声に驚いたのか、消えいるような声を漏らした受付嬢さん。それに気付いて頭が冷静になる。

「あ……こ、こちらこそごめんなさい。つい声を荒げてしまって……」

僕自身に自覚はないが、一応はSランクパーティーの冒険者なのだ。そんな男に詰め寄られてしまえば、冒険者でもない女性が怯えるのも当然だろう。
無作法な振る舞いを反省し、一息ついて穏やかさを取り繕い、再び受付嬢さんに声をかける。

「……それで、いないとはどういう事なんでしょうか?」

「は、はい。お三人は随分前にここに来たのですが、何か連絡の手違いがあったようで、特にギルド側からの用事は、その──無かったのです」

「そんな──す、すいません。それって一体どういう事なんでしょうか?」

用事が長引いていればいい。そんな楽観的な予想は目の前の女性の言葉で容易く砕かれた。

「申し訳ありません。私にも何がなんだか……。用事が無いとわかったお三人は少し不思議そうにはしていましたが、そのままお帰りになりました……」

受付嬢さんが言うには三者三様に『帰ってもう一眠りしよー』『せっかく起きたんだから早めにクエストに行こうよ』『そうですね、シンさんの準備ができたら出直しましょう』と楽しく話しながら出て行ったとの事だ。

「それじゃあ、三人は今どこに……?」

自問自答するように呟いた僕を不安気に見守る受付嬢。
とにもかくにもここにいても仕方ない。何処かで寄り道でもしてるかも知れないのだから、外を探そう。

「僕は三人を探してきます。お騒がせしました!」

「は、はい! お気をつけて──」

受付嬢さんの声に返事をする余裕もなく、僕はギルドを飛び出した。

午後の町中を見回し、向かうべき場所を考えて立ち止まる。

(とりあえず、動き回る……しかないか)

作戦とも言えぬ場当たりな考えだが、動いていないと不安に押しつぶされてしまいそうになる。
そして一歩踏み出した時──

どん!

敵意も気配もなく、後ろから誰かにぶつかられた。

むにゅん♡

背中に感じる人肌の温もりと、女性特有の弾力はこんな時でも僕の頭に興奮を送り込んでくる。

「と、突然失礼いたします! あなた様は【白き雷光】のシン様でお間違いないでしょうか!?」

やけに慌て、そして僕を名指しで呼ぶ女性の声。
胸の感触への名残惜しさを払い、僕は声の主へと振り向いた。

「僕に何か──」

用ですか。その言葉が空気を震わせることはなかった。

「──助けてください!」

僕の言葉を遮りながら、女性が正面から抱きついてきたのだ。

むにゅん♡ むぎゅ♡

僕と同じくらいの身長の女性が、縋るように腕を背中に回し、互いの胸がピタリと密着する。
微かな花の香りが鼻をつく。

「──ちょっ! 急に何を……」

口から抵抗の言葉を吐き出しながらも、恐らく一般市民であろう女性に手荒な真似も出来ず、僕は手を左右に上げて硬直してしまった。

(こ、この女性は一体……? それに──)

むにゅん♡ ふにゅふにゅ♡

押し付けられた乳房、その大きさはパーティーメンバーの三人にも引けを取らない巨大さだった。
「シン様、お願いします! どうかお助けくださいませ!」

必死さを隠そうともせず、抱きつく力を強めてくる女性。そのせいで股間に少しずつ血液が溜まっていき、ゾクリと性感が刺激される。

(す、すごい、気持ちいいおっぱい……こんな、レナ達みたいに柔らか──)

レナ。その名前が脳裏を過り、熱された鉄に水をかけられたように頭が冷めていく。

「──は、離してください!」

怪我をさせないように加減をしつつ、抱きついた女性の肩を掴みながら押し返す。
こちらに再び向かってこようとする動きを感じたが、補助魔法で筋力を強化した僕の腕の力にはビクともせず、すぐに女性は諦めたように力を抜いた。

「う、うぅ……お願いしますぅ……」

嗚咽混じりに懇願する女性。
ここでようやくその顔を見ることができた。

地味な顔立ちだが愛らしく、フサフサと揺れる短い茶髪が生活感を感じさせる女性。年は僕よりも上に思える。
酒場の従業員のような真っ白な制服だが、フリルの装飾が所々にあしらわれ、胸の露出やスカートのスリットの深さなどから夜の住人の雰囲気も感じられた。

「ぼ、僕も急いでいるのですが、どうかしたのですか?」

仲間も心配だが、泣きながら、今にも崩れ落ちそうな女性をそのまま放っておくことも出来ず、気づいたら僕はそう問いかけていた。

「は、はい。その……娘が誘拐されたのです……」

「なっ──」

涙で頬を濡らしながら語る女性に対して、咄嗟に言葉が出ない。
慰めも、事情を問うことも気後れする僕だったが、彼女の方はむしろ気丈に、言葉を続けていく。

「突然のことでした、――」

彼女は痛みを堪えるように経緯を説明してくれた。
曰く。親子で町を歩いていた時、フードを被った人物に娘が突然連れ去られてしまったとのこと。

「そして、偶然その場に居合わせた女性たち……シン様のパーティーメンバーのお三方が娘を助けるために追いかけてくれたのです」

「えぇっ! それじゃあ三人は今も誘拐犯を追っているんですか!?」

「いえ、それが――しばらくしてからフードを被った誘拐犯が私の元に戻ってきたのです。そして、これを……」

恐る恐る、女性は握りしめていた指先を解き、小さな四つ折りされた紙切れを僕に差し出す。

「これは――」

それを開くと、その紙に見合った分量の短い文章が綴られていた。

白き雷光の魔法剣士シン
貴様の仲間と、その女の娘は預かった。
返してほしくば、己の力を示せ。
貴様が戦いの場に現れなければ、女たちは汚れ、再び会うことも出来ぬだろう。
「――挑戦状か……?」

この手紙の送り主は明確に、僕を指名して戦いを挑んできている。
もし本当に、目的が僕との闘いならばやるべきことは一つ。
――正面から挑み、人質を奪い返すのみ。

しかし――

「──戦いの場って……どこ……?」

肝心の場所が書いていない。
まさか、探すところから始めろとでも言うのだろうか?
困惑しながらも、手がかりはないかと紙を裏返してみたり、魔力を流して反応するかなどを確認してみたが、まるで変化はない。ただの紙切れだ。

「どうすれば──」

「──あの」

困り果てている僕へ、女性が静々と語りかけてくる。

「私、誘拐犯の方から場所を聞いているんです。シン様を一緒に連れて来いと……」
「ほ、本当ですか!?」

「はい。……ご案内しますので娘を――そしてお仲間さんを助けて下さいませ!」

娘を攫われて心細い筈なのに。
そして、危険が待ち受けている場所への恐怖も勿論あるだろうに。
女性は気丈にそう言い放った。

「──わかりました。娘さんも、僕の仲間も──そして貴女も、必ず守るとお約束いたします!」

女性の強い意志を無駄にしないため、日頃使わないような──冒険小説の英雄のような台詞を僕は口にした。

「よろしく……お願いします。あっ、名乗り遅れましたね。私は──カグヤと申します」

僅かな希望に縋るような笑みを浮かべ、名乗る女性──カグヤさん。

「僕はシン。【白き雷光】のシンです! それでは──行きましょう!」

「はい! こちらです!」

カグヤさんの先導のもと、僕らは進み出した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「──こちらが、誘拐犯が指定した場所です」

「ここは……」

無言で歩き続けた僕らは中心部から離れ、町の外まで出ていた。
そして、人が近づかないような、鬱蒼とした森の近くの寂れた屋敷の前に辿り着いた。

「……不気味ですね」

大きさは立派な家だったが、いかんせん人の手を感じない。
入り口の門は跡形もなく消えており、外壁は崩れ、屋敷の壁は草や蔦が生い茂っている。
広い庭も荒れ放題で、今にも風化してしまいそうだった。

「──行きましょう。僕から離れないでください」

入口で待っていてもらおうかとも思ったが、誘拐犯が一人と決まった訳でもないし、町の外では魔物の突然の襲来もありえる。
カグヤさんの安全を考え、僕は一緒に連れて行く選択肢を取った。

「は、はい! 失礼します!」

ふにゅん♡

「えぇ! ──ふぇっ!?」

言葉と同時に、カグヤさんは突然僕の空いている左腕に抱きついてきた。
柔らかい膨らみで腕をすり潰すみたいにしっかり包み、密着してくる。

「ちょ、ちょっと! あの、離れ──」

「──怖いんです。シン様、どうかお側に……お願いします」

振り解こうとした言葉も、意思も彼女に遮られた。
小刻みに震え、瞳を不安に染めているか弱い女性を突き放すなど、僕には出来なかった。

「わ、わかりました。でも、危なくなったら離れて下さいね?」

僕はされるがまま彼女に抱きつかれながら、こんな時でも高鳴る胸の鼓動を隠すように、努めて冷静に振る舞う。

「ありがとうございます! ふふっ、シン様のお腕は頼もしくて、暖かいです。──強いだけじゃなくって、お優しいんですね……素敵」

当てられた乳房は振動を続けて、その弾力を余すところなく腕に伝えてきた。
恐怖を感じているのは分かるが、さすがにこんな事をされては僕の平静もいつまで保てるかわからなくなりそうだ。

「あ、うぅ、あんまり、押しつけ――」

「シン様……早く行きましょう? お仲間を助けなくては……ね?」

「は、はい……」

そうだ、おっぱいに気を取られている場合じゃない。
レナ、ニーナ、ファナさん。そしてカグヤさんの娘を救いに行かなくては。

ぽよんと腕に跳ね返る気持ちよさ。それにむず痒さを感じる股間を無視し、僕はカグヤさんを引き連れて屋敷へと入っていった。

「ふふ……」

艶めかしくも聞こえる彼女の声を、耳に入れないように。

「――意外と綺麗なんだな」

室内に踏み入ると、外見から想像していたよりも綺麗な内装に驚き、僅かな違和感を覚える。
家具や調度品などはほとんどないが、目立った汚れや荒らされた形跡が無く、引き払った家というよりかは、これから誰かが引っ越してくる直前のように見えた。

「娘は……皆さんはどこに囚われているのでしょうか……」

「と、とにかく部屋を探しましょう」

緊張した声音で、さらにきつく抱き着くカグヤさんの問いかけ。僕は吃りながらもなんとか返答する。

(うぅ……不安なのはわかるけど……やりにくい……)

そのまま玄関を素通りし、ホールを通りそれぞれの部屋を覗く。
食材も皿も、なにもないキッチン。
沢山の書物が詰め込まれていたであろう本棚が空虚に映る、書斎。
数十人は入れそうな大浴場。
人の気配がしない部屋をいくつも見て、次なる場所を目指して廊下を進んでいた時だった。

ガタン……

先の扉から小さく、微かに物音が響いてきた。

「きゃっ!」

ふにゅん♡

音を聞いたカグヤさんが、正面から目を背けるように体ごと僕に抱き着く。
ドギマギとしたものの、それ以上の緊張感に意識が研ぎ澄まされ、空いている右手で剣を引き抜き、強く握る。
「カグヤさん。気をつけてください……あの部屋に、きっといます」

音をたてぬよう息を殺し、忍び足で踏み出す。

ガタン……ガタン……

扉の前に辿り着くと、よりはっきりと物音が聞こえる。
何かに抵抗するような。暴れているようなそんな気配を感じた。

「……行きます」

カグヤさんに伝えるように。そして、自分に言い聞かすように囁き、一つ息を吐いた。

ドアノブに手を掛け、捻り――蹴り飛ばす。

「――僕は魔法剣士、シン! 人質は返してもらう!」

部屋に入ると同時に剣をまっすぐに構え、室内を見渡しながら大声を上げた。
そして、一番最初に目に入ったのはベッドの上で縛られた、よく見知った人物。

「――レナ!」

「んー! んー!」

普段着ているローブを脱がされ、口に猿轡をかまされ、露わな真っ白な肌を紐で縛り付けられている。

「なんて……ひどいことを!」

その肌に傷などなく、乱暴をされた形跡もなかったが、だとしても、こんな屈辱的な恰好をさせられたレナの心情を慮ると、僕の頭は怒りでどうにかなってしまいそうだった。

「んー!」

レナが僕に涙目で助けを求めてくる。
その様に意識を引き戻され、僕は剣を下げ、ベッドへと一歩近づいた。

「あっ。い、今助けるから――」

その瞬間、寒気を感じた。

それも――真横から。

下した剣を振り上げ、捻り、自分の左側に構え、首を守る。
一拍遅れて、そこに金属――小振りなナイフが振り下ろされて、硬質な音が響く。

「あら、残念♡」

甘く、からかうような女性の声が耳に届き、反射的に左足で蹴り上げたが、その足先はむなしく空を切った。

誰もいなくなった左腕。その少し向こうに飛び跳ねるようにして距離をとった女性。
小振りなナイフを二本。両手に逆手で構えた女に向き直り、僕は剣を構える。

「――どういうことですか、カグヤさん」

「抱き着かれてデレデレしていた男の子とは思えない勇ましさですね? シン様」

余裕の表情で僕の殺気を受ける女性は、嘲笑うように吐き捨てた。

「――ッ! ふざけるな!」

「まぁ、怖い♡ ちょっとした余興のつもりでしたが……改めて自己紹介いたしましょう。私はカグヤ。此度の誘拐を企てた犯人です♡ ――お覚悟を」

悪びれることなく告白したカグヤは、ナイフを構えたまま、敵意をむき出しに僕へと迫る。
「――ッ!」

一般市民では到底ありえない、残像すら見えそうなスピードで僕に迫る二つの刃を辛うじて躱し、振り上げ切った相手のがら空きの胴へ、横薙ぎに剣を振るう。

僅かな手ごたえ。しかし、体には届かなかった。
僕の反撃を避け、再び後方へと飛び跳ねたカグヤは、ニヤニヤとした笑みのまま口を開いた。

「……流石Sランクパーティーの魔法剣士様です。まさか私の服を切り裂くとは。――もしやストリップでもお望みですか? クスクス♡」

切れた服をナイフの切っ先で弄び、お腹を見せつけながらこちらを挑発してくる。

「……大人しく引き下がって、残りの二人の居場所を教えるなら見逃します。もし抵抗すらなら――命の保証はできません」

この数度のやり取りで分かった。
確かに実力のある相手だが、補助魔法を使っていない段階で対処できる程度ならば、僕の方が圧倒的に強い。

「――噂通り……お優しいのですね」

僕の勧告に素直に従ったのか、ナイフを持った両手がだらりと垂れ下がり、カツンと床に落ちる。
そのナイフの行方を目で追いかけた時、

「――そして、甘い♡」

互いの中間地点に丸い球が投げ込まれ、それが破裂した。
爆発するかと思い、咄嗟に腕で顔をかばったが、そこから炎などは上がらず、代わりにピンクの煙が立ち上る。

「……忍法、桃幻想♡」
聞きなれない術の名前をカグヤが呟いた時には、既に数歩先も見通せない煙幕に視界が覆われていた。

「目くらまし……? ん――ぅッ!」

息を吸い込んだ直後、酩酊するかのように頭がふらついた。
平衡感覚がなくなり、自分が真っすぐに立てているのかが分からなくなり、足がたたらを踏む。

「な、なにをした……!」

目が回り、どこを向いているのかが分からなくなる。
思考が途切れ途切れになり、次の行動を選べない。

「さて、なんでしょうかね♡」

すぐ近く、右側から声が聞こえ、あてもなく剣を振るう。

「外れです。さぁさぁ、こちらですよ♡」

瞬間移動したかのように左側から聞こえてきたカグヤの囁き。音の出どころに剣を突き刺す。

「どこを狙っているんですか♡」

文字通り煙を斬るような感覚だけが手元に残り、カグヤの声は正面に移動した。

「……クソッ!」

足が覚束なくなる。
指先の感覚が薄れていく。
視界がピンクに狭まっていくような錯覚に支配される。

「こちらですよ♡」
「いいえ、こちらです♡」
「どこを見ているのですか♡」
「ほらほら、どうしましたか♡」

耳に届く声は一方向だけでなく、前後左右様々な場所から隙間を埋めるように響いてくる。
それはフラつく頭にこびりつき、夢の中にいるような幻聴にも思えた。

(ど、どこに……)

見えぬ視界。翻弄するような呼びかけ。
混乱の中、首を、体を動かして目線を変えてもピンクの煙以外なにも見えず、

「ふふっ、他愛ない♡」

嘲笑の声に反発するように足に力を入れるが、地震の中で立っているようにグラつきを抑えきれない。

「さぁ、しっかり立って? こちらを──見て下さい♡」

声に引っ張られる。
顔が持ち上がり、瞳が音を追いかけるようにその出所へと向く。
「そう、よぉく見るのです♡」

陽炎のように揺らめくカグヤが見える。
遥か彼方にいるような、手を伸ばせば触れられる位置にいるような、不思議な距離を感じた。

「私を見て♡」

消えそうなカグヤが服の裾を掴み、マントを翻すように振るい、煙と捲れた服で姿が一瞬消える。

直後──

「な、な、にを……え……?」

まず目に入ったのは別人と入れ替わったようなカグヤの顔だ。
「ふふっ♡」

地味ながら愛らしい顔立ちだった女は、そこには居なかった。
凛とした冷たい切長の瞳が目を引き、泣きぼくろが色気を引き立て、鼻筋は筆で描いたように美しい孤を描いている。
頬は薄いピンクに染まり、笑みを崩さない唇には鮮やかな鮮血のような口紅が引かれている。
短かった茶髪は夜空で塗り潰したような艶やかな黒髪に変化し、長さも腰辺りまでに伸び、体に纏わりつきながら揺れている。

「改めまして──私はカグヤ。忍者の血族の──っと、聞こえておりませんか♡」

髪の行方を追うようにして胴体に視線が向き、そこで見えた光景に頭が真っ白になり、声が頭に入ってこない。

黒髪と対照的な白。雪のように血の気を感じさせない程色を失った純白の肌が、一糸纏わぬまま曝け出されていた。

「あくまで風の噂ですが、シン様は──これがお好きなんでしょう♡」

妖しい色気に溢れたその肌で、殊更大きく目を惹きつけてやまないのは重そうな乳房。
先程の姿の時も大きかったが、今はそれ以上。パーティーメンバーの三人に引けを取らない爆乳だった。

「あらあら、あれだけ豊かなお胸のお仲間がいるのに、敵のおっぱいに見惚れてしまうとは──可愛いですね♡」

見慣れた筈のおっぱい。それも、三人の仲間の最上級の胸を日頃から見せつけられ、味合わされているのにも関わらず、眼前のそれは意識を惹きつけてやまない。

「私も大きさには自信がありますので、嬉しいです♡ ほら、いかがですか?」

ふにゅん♡

カグヤの指先が、重そうな乳をふんわりと持ち上げた。
目を凝らし──いや、血走らせながら見つめたそこでは真っ白な乳肌が卑猥にひしゃげ、先端の桜色の円を歪ませ、その蕾が誘うように揺れている。
ぽよん、ふにゅん、たぷんと、頭の中で柔らかな音が鳴り響き、反響した。
脳の皺、神経、細胞までもを柔らかなイメージで包み込まれるような至福の錯覚。
ふるん♡ むぎゅ♡

その想像を後押しするように視界の乳は踊り、いやらしい気持ちをどうしようもなく加速させていく。

「どうやら気に入っていただけたようですね♡ どうですか? お仲間の乳房と比べて、私の方がずっと魅力的に映るでしょう♡ こうやって──」

脇を締め、前腕でおっぱいを中心へと寄せるカグヤ。
力を緩めたり強めたりする度、乳が正面に盛り上がっては引っ込み、官能的な前後運動を繰り返す。
「――潰れていますよね? 潰れているのはおっぱい♡ ……けど、もしかしたらシン様のおちんちんが潰されているのかもしれませんよ♡ むぎゅって♡ むにゅにゅって♡ ――感じるでしょう?」

意味の分からない言葉。
突拍子もない妄言。

なのに――

「あ……あっ! あぁぁっ……」

カグヤの言葉を証明するように、ペニスに柔らかな感触が触れる。
防具や下着をすり抜け、確かに感じるそれは、日頃味わうパイズリと同等――いや、それ以上の快楽を体に流し込んできた。

「たっぱん♡ むにゅ♡ おちんちんが喜んでいるのを感じますね♡ おっきくて柔らかい大好きなおっぱい♡ 仲間のおっぱいよりもとっても気持ちよくしてくれる爆乳♡ もっと感じていいんですよ?」

「ち、ちがぁ……あぁ、みんなのぉ……うぅぅ……」

頭の正常な部分が、仲間を蔑ろにして敵の女に媚びることを否定している。
こんなの三人に比べれば大したことない。
大好きなみんなのおっぱいのほうがずっと気持ちいい。
強く念じるように自分に言い聞かせ、繰り返す度に体が熱くなる。

「――気持ちいいことに逆らってはダメですよ♡ 私のおっぱいを感じて、仲間を裏切る背徳感を覚えて、もっと♡ ずっと♡ たっぷり♡ ――快感に流されていきましょう♡」

レナの優しいおっぱいが好き――カグヤの大人の色気に溢れた柔らかなおっぱいが気持ちいい。
元気なニーナに胸を押し付けられるのが好き――カグヤのおっぱいに操られるように感度を高められるの気持ちいい。
ファナさんの母性的で、官能的なおっぱい奉仕が好き――カグヤのこちらを見透かしたような誘惑の言葉と、弱点を全て暴き、そこをおっぱいで狙い撃ちしてくるような技術が気持ちいい。

みんなの事を思うたび、今与えられる快感が、目の前のカグヤの魅力が増し、体と思考を塗り替えようと襲い掛かる。

「大きさも申し分ない♡ 技術だってある♡ 容姿も美しい♡ そして――おっぱいが大好きなシン様の望む奉仕をいくらでもしてあげられる私が……好きですよね? ……ほら、ぎゅぅ~♡」

「は、はぁぅ……ふぁぁ……そ、そんな……のぉ……」

大事な仲間。
目の前の美しいカグヤ。

「抵抗してはダメ♡ もっとおっぱいを感じて♡ ――ふにゅにゅ~♡」

カグヤの腕がより強く締まり、おっぱいが細長く形を変える。
それと同時にペニスがより強く、隙間を無くすほどに包まれて、痺れに似た快楽が奥へと注ぎ込まれていく。

「おちんちんはそんなに喜んでるのに……シン様は強情ですね♡ そんなに仲間が大事かしら?」

頭をかすめる大好きな三人の姿。
今、この場で快楽を与えてくれるカグヤ。
この瞬間も強まる乳圧。視線の先で揺れるおっぱい。それに惑わされていく。
でも、それが何故だか心地いい。

「――難しく考えなくていいんですよ? 仲間の事は忘れて、一度素直な気持ちで言ってみましょう♡ 私の事、嫌い? そ・れ・と・も♡ ――好き?」

騙されてはいけない。この女性は疑いようもなく敵なのだ。

敵。――でも気持ちよくしてくれる。
敵。――だけど美人でおっぱいも大きい。

(て……き……。――敵? カグヤ……さんは敵? でも、こんなに気持ちいいのに敵? みんなの事を忘れるなんて……僕には……)

「ほら、おっぱいです♡ おっきいぷるんぷるんのおっぱい♡ ……これが――嫌い?」

おっぱい。
おっきいおっぱい。
気持ちよくしてくれるおっぱい。
そんなの――

「――す、すきぃ……♡」

意図せず漏れ出すような呟き。
しかし、その声量に反比例するように大きな刺激が走り、体が震えた。
頭が快楽を伴う背徳感に浸されて、真っ白に染められていく。

「……あははっ♡ 素直になってくれて嬉しい♡ では、お礼にもっと近づいてあげましょう♡」

一歩。カグヤさんが僕に近づき、乳が揺れる。

「――もっと好きって言ってくだされば、もっと近づいてあげますよ? ……おっぱいだけじゃなくて、私の事――好き?」

一度漏れてしまった本心は、その問いかけに防波堤を破られてしまったかのように溢れ出す。

「――す、好きぃ♡」

また一歩近づいてくる。
僕の体に再び快楽が流れる。

「どこが好き? もっと――言って♡」

「きれいな黒髪がすきぃ……♡」

たぷん♡

好きが漏れて気持ちいい。
カグヤさんが歩いて、おっぱいが揺れて気持ちいい。

「……他には?」

「美しい顔がすきぃ……♡」

たぷん♡ ふにゅん♡

好きが溢れる。
「――もっと沢山言って♡」

「綺麗な声がすきぃ……♡ 艶めかしい肌がすきぃ……♡ 細長い指先がすきぃ……♡ それから――」

言葉が止まらない。
息を吸い込むことすら忘れて、ただただ好きと、うわ言のように繰り返してしまう。

「そうですよね♡ 好きですよね♡ ――あら、こんなに近くまで来てしまいました。その剣を振るわれたら斬られてしまいますね……♡」

好きと繰り返し、揺れながら大きくなっていくおっぱいに夢中で気づかない間に、カグヤさんの姿は幻などでははくはっきりと目の前に来ていた。

甘い香りが漂い、吐息すらも届きそうに思えるほどの距離にいる、美しい笑みを浮かべた大好きな女性。自然とペニスが熱を帯び、固く、敏感になっていく。

「――ねぇ? その剣、怖いです♡ 捨ててくれますか? ――お・ね・が・い♡」

至近距離で浴びせられるおねだり、そして顔を傾かせ、片目を閉じてのウインク。
僕の力を奪うには十分すぎるほどの攻撃だった。

「――は、はひぃ……」

カラン……

声を発したのが先か、剣を落としたのが先か。それすらも認識できないほど自然に、僕はカグヤさんの言葉に従ってしまっていた。

「ありがとうございます♡ ……お願いを聞いてくれたご褒美を差し上げましょう♡ お顔を――」

ぱふん♡

「──ぎゅぅぅ♡」

声と同時に顔中が幸せな柔らかさで包まれた。
撫でるように優しく、そしてどこまでも沈み込みように深く乳に埋もれる。

「力は抜いて下さい♡ 大好きな私の、大好きなおっぱい♡ ……それに身を任せて下さい♡」

カグヤさんに言われるまでもなく僕の身体は即座に脱力し、抱きついてくる彼女に支えられる形で胸に甘えてしまっていた。

「良い子です♡ さぁ、深く深呼吸してください? おっぱいのフェロモン──感度を高めて男を虜にする私の匂いを体に溜め込みましょう♡ ……はい、すぅぅ〜」

塞がれた鼻から空気が──フェロモンがなだれ込む。
それだけで頭が痺れ、体がビクビクと痙攣する。
苦しくなりそうなほど吸い込み、開放感とともに吐き出す。たったそれだけで、へその辺りが熱を帯びたような心地よさを覚えた。

「……あん♡ 息が胸に当たって気持ちいい♡ そのまま頭空っぽにしてすーはーしててくださいね♡ 私も気持ちよくなれるように、ちゃんとお手伝いしますからね♡」

むにゅん♡ ふにゅん♡ むぎゅう♡

谷間に挟まれているだけでも幸せなのに、ふにふにと追撃するように乳を規則的に押し付けられて、快感が高まる。
視界は完全に塞がっているが、脳裏に先程のように乳を腕で押しつぶすカグヤさんの映像が繰り返し流れ出す。
美しい、エッチ、綺麗、気持ちいい。次から次へと幸福な感情が浮かび、体が心地良さに飲み込まれていく。

「──脱力してるのにおちんちんだけはこんなに固くなって……仕方ないお方ですね♡ では、こちらも──おっぱいしますか?」

「っ! むぐぅ……」

下着を突き破らんばかりに怒張したペニスに、柔らかなものが触れる。
まるで二人の女性に体の上下をパイズリされているような感覚に、股間が一際大きく跳ねる。

「シン様のお顔をおっぱいでぱふぱふ♡ そしておちんちんもおっぱいでズリズリ♡ ……不思議ですね。でも、気にしてはダメです♡ ただ受け入れて下さい♡ 幸せ……好き……おっぱい……♡ そう頭で念じれば念じるほど、もっと気持ちいいですよ♡」

たぷん♡ にちゅ♡ ふにゅん♡ ずりゅりゅ♡

「んーっ! ん、んぅぅ……」

頭が言葉に従い、おっぱいの柔らかさに蕩ける。
喉がなにかに抵抗するように、声にならない声を吐き出す。
ペニスからは皮を上下に擦り、先走りを絡めた水音が悦楽とともに耳に届く。

「──Sランクといえど、所詮は男。私の乳房の前ではなんと呆気ない。……うふふ♡」

嘲り、見下す声すら愛おしく聞こえ、耳を優しくくすぐる。
抵抗もせずなすがまま。快感がどんどんと高まり、焦りにも似たようなはやる気持ちが膨らむ。

「──剣や魔法、そんなものは女体の前では役に立ちません♡ ほら、おっぱいの動き──早くしますよ♡」

「が、あっ──あぅぅっ!」

万力で締め付けるように顔が乳肉に潰され、股間にも同様の刺激が走る。
匂いと感触に意識が朦朧としているのに、触れている箇所やペニスの奥にズクズクとした快楽のうねりが湧き上がり、それを鋭敏に感じ取れてしまう。

「さて──カタをつけましょう♡」

ぱふん♡

強い締め付けで呼吸が堰き止められる。

「おっぱいに堕ちて♡ おっぱいに負けて♡ 私に屈服して♡」

ぷるぷる♡

そのまま脳を、ペニスを、揺さぶり甘やかすような細かな振動が始まる。
負ける。──その予感が神経に甘く絡みつきながら昇ってくる。

「あなたは優秀な剣士。……でも、男がおっぱいに勝てるわけがない♡ ふるんと揺れれば体がビクビク♡ 少しでも触れれば全身ゾクゾク♡ 快楽に身を委ねていいの♡」

勝てない。おっぱいには勝てない。鋭利な刃物で刻み付けられたように、その言葉が体に、頭に、深く残る。

「ほら、おっぱいたぷたぷ♡ おちんちんもむぎゅむぎゅ♡ 敗北と屈服が昇ってきちゃう♡ 気持ち良すぎて我慢できない♡」

慣れ親しんだ射精の前兆を感じる。
脱力してる体の所々が力み、強張っていく。

「イく♡ おっぱい好き♡ イっちゃう♡ おっぱいに甘やかされて堕ちていく♡ ──ふふっ♡ イけ♡ イけ♡ イ〜け♡」

耳から侵入した命令。それが脳を素通りして股間に直接語りかける。
とぷ♡

意思もなく、身構えることもなく漏れ出すように尿道を快感が流れ出した。

「ほら、もっとおっぱい感じて♡ 倒れるくらい射精しなさい♡ ──イけ♡」

とぷ、とぷ♡ とろ……どぴゅっ! どぴゅどぴゅ! ぴゅびゅっ!

溢れるようだった絶頂が勢いを増す。
通常の射精の時のような、勢いが徐々に衰えるものと違い、少しずつ、量も快感も増えていく不思議な絶頂感だった。

「がぁ、ぁっ、あっ、あぅぅぅぅ……」

襲いかかる快感に我慢し切れず、喉が震えた。しかし、乳に邪魔をされたそれは言葉にならず、絶命直前の獣のか細い鳴き声のように響く。

「苦しいですか? それとも──気持ちいいんでしょうか♡ ……どちらでもいいことですね。そのまま私のおっぱいを感じながら射精し続けてください♡」

ペニスが、股間が、全身が、小刻みに痙攣し、止めどなく精液を吐き出す。
次第に頭の中から苦痛も快楽も消え、思考がおっぱい一色に染まる。

「ふぅー。赤ん坊のようにぐったりしてお漏らし♡ とても勇敢な冒険者の姿とは思えませんね? あなたを見初めたお嬢様の目を疑ってしまいそうです。──おっと、失礼。──はぁい♡ おっぱい気持ちいい♡ ぴゅっぴゅっぴゅ〜♡ ふふふ……♡」

理解の出来ない言葉を気にすることも出来ず、僕は膨らみにあやされるがまま、暫く放精をしていた。

どれ程の時間が経ったのだろうか。

「──びゅるびゅ〜♡ おっぱいに完全敗北♡ 体中が気持ち──と、お漏らしは終わりましたか。情けない姿ですね♡」

気づいた時、僕の下着の中は水をぶちまけたように暖かく濡れ、顔は自分の涎や涙、もしくはカグヤさんの汗で湿っていた。

「男の洗脳など容易いもの♡ さぁ、シン様──」

柔らかく包まれた顔がおっぱいから引き剥がされた。
寂しさを感じる間もなく、頭を両手で持ち上げられ、クッションに沈むように上乳に顎を乗せられ、視線を固定される。

夜空のように美しい漆黒の瞳の中に僕が映る。

「──私のおっぱいは好きですか?」

問いかけを受け、ふわふわとした心地で口が勝手に動いた。

「おっぱいしゅきぃ……」

「そうです。それで良いのです♡ ……では、魔法剣士としての力、私達のために使ってくれますね?」

声に合わせて、たぷたぷと、揺かごのようにおっぱいが震えて、頭がグラつく。

(魔法剣士……? 僕の力……そんなの……♡)

「使うぅ……なんでもすりゅ……♡」

カグヤさんのために自分を使う。
それを想像するだけで、体に心地よい熱が湧いてくる。

「ふふっ、これで完璧ですね。もはやあなたは私の傀儡。──仲間の事など忘れ、快楽で餌付けされ、その身を捧げるのです♡ はは……あははっ!」

──仲間?
隠そうともせずに笑い続けるカグヤさんの言葉。その一つが胸に突き刺さりズキリと痛む。

「まぁ、あのような女どもには過ぎた力でしたからね。体だけしか取り柄のない連中は忘れて、これからはしっかりと頑張ってくださいね♡」

僕の返答も待たずに、カグヤさんは愉快気に言葉を紡ぐ。

仲間……僕の仲間……?
呆けた頭が、繰り返しその言葉を繰り返す。
カグヤさんの顔の向こう、ピンクの煙は無くなり、天井や内装がはっきりと目に映る。

「男にとって仲間など、胸で快楽を与えられた程度で消えてしまう――ちっぽけなものですからね♡」

頭はふわふわと心地いい。
けれど、体が熱い。それも――不快なものだ。

ベッドが見えた。
そこに横たわり、目を閉じている女性の姿が見える。

仲間……レナ。
レナだけじゃない。大事な仲間であるニーナとファナさん。
彼女らを見下すカグヤさん――いや、カグヤ。

頭を掴まれ、おっぱいに預けながら僕は何をしているのだろうか。
快楽。恍惚。幸福。好意。
今、僕の体に満ちているのは、そのどれでもない。

「……私としたことが、喋りすぎましたね。そろそろ――」

「――黙ってください」

――怒りだ。

「――なっ!」

驚愕に目を見開いたカグヤを無視し、体が勝手に動く。

脱力していた右腕に補助魔法をかけ、常人を遥かに超えた素早さで伸ばす。
狙いは一つ。

「――が、はっ!」

首だ。

カグヤの細い首を逆手で掴み、力を込めると、嗚咽のような声が一瞬聞こえた。

「仲間を侮辱することは許せません」

「洗脳は……かん、ぺ……」

カグヤの言葉に耳を貸さず、指の力を強め、呼吸を止める。
絞められた彼女の目は潤み、口からは涎が垂れ、先ほどの僕のように痙攣していた。

「は、はぁ……あ――」

そして、突然ガクンと首を傾け、体から力が抜ける。
ゆっくり指を離し、呼吸が出来ていること、脈が正常なことを確認して、両肩を支えたまま床に寝かす。
「……拘束……しなくちゃ……」

縄を取り出し、口や腕、体のいたるところを固定し、身動きを封じる。人間相手にこういった作業は

「……ふぅ」

そこまでしてようやく一息つき、やっと思考に冷静さが戻ってきた。

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