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第24話 ネックレスの正体

翌日。
夕食に続き豪華な朝食を頂き、早速僕ら三人は町を回ることにした。

「とりあえずギルドは昨日行ったし、町の人にそれとなく話を聞こうと思うんだけどいいかな?」
「うん、いいよ!」
「それがよろしいかと存じます」

賛同されて一安心。それじゃあ向かおうと歩き出した所で、むぎゅり♡

「じゃあ行こっか♪」
「はい、参りましょう」

左右の腕に当たる柔らかな感触。レナとカグヤが恋人が甘えるように僕の両腕を抱きしめる。

「ふ、二人とも歩きにく──」
「ふふん、ファナからこうするようにって言われてたんだ♡」
「どこにレイアがいるとも知れません。男性のシン様の護衛も任務の一つです。不自由かと思いますが我慢下さいませ♡」

僕の抗議の言葉を遮る二人の理屈はまぁ理解できる。理解できるがしかし……恥ずかしい。

「へーきへーき。シンはドンと構えてればいいから♪」
「その通りでございます。私達の胸などお気になさらず……♡ もしも、我慢が効かなくなればいつでもお情けを頂く準備は出来ておりますゆえ♡」
「あ、うぅぅ……わかったよ……」

どこかからかうような二人に押され、僕らは活気溢れる町を歩き出す。
うぅ……周囲の視線が痛い……。

「──あぁ、最近税が上がって困ってんだよ。領主様は何を考えているのかね?」

飲食店の店主の不満を聞いたり。

「本当困っちゃうわよ。糸の仕入れも覚束なくて商品も作れないわ。ところで貴方達、素敵なスタイルね? あぁーん。ピッタリな服を作ってあげたいわ」

服飾店の女性にレナとカグヤが大層気に入られたり。

「おや、休憩かい? 良い部屋あるよ? ──なんだちがうのかい。領主の噂? あぁ、何か女に入れ込んでるって話は聞くが、一体どこのどいつかねぇ……。ところでうちの宿なら壁から音が漏れることもなく、快適に交わえるよ? にいちゃん、どうだい?」

宿屋の老婆にしきりに休憩を勧められたり。

「──うーん。どこの人も不満はあるみたいだけど、あくまで噂レベルのことばっかだね」
「そうですね。やはり尻尾はそう簡単に表さないようで……」

地道な情報収集とはこうも大変なのか。日頃のニーナやカグヤの努力が窺い知れる。

「あ! 次はあそこに入ってみようか?」
「あそこは──」
「──鑑定屋でございますね」

僕が指差すこじんまりとした店はカグヤの言う通り鑑定──アイテムの性能や宝石の質の確認などを行ってくれる専門家だ。

「うん。情報収集とあと調べたい物があるんだ」

二人からの異論もなく、僕はそこへと足を進めた。
少し寂れた扉を開くと狭い店内には様々な宝石や魔道具の類が乱雑に並べられている。

「いらっしゃい──冷やかしならお断りだよ」

年季の入った帽子を被る老人が僕──両手に女性を侍らせている姿を見て顔を顰めた。

「す、すいません。ちょっと鑑定したい物がありまして……」

「鑑定か……見せてみろ」

頑固な昔気質な職人。そんな印象がピッタリな彼は長く伸びた顎髭を撫でながらこちらに手を伸ばす。

「はい。これなんですが……」

首から下げ、服の下に隠していたネックレスを取り出し、シワクチャの手に乗せる。

「こいつは……珍しいな」
僕も見たことがないような珍しく思える物だったが、歴の長そうな職人の老人にとっても同じだったらしく、彼は瞼を大きく開いて穴が開きそうな程に凝視した。

「銀色の糸……いや魔石を編んだ物か。この透明な宝石は魔石のようだが──《鑑定》」

スキルを用いて石を観察する彼の表情は変わらない。だが、その雰囲気はどこか楽しそうにも見える。
僕らは皆、その様子を邪魔してはならないとばかりに息を潜めて待つ。
数秒。数分。どれだけ経った頃だろうか。

「──っ、はぁー……わからん!」

老人は実にハッキリと言い切った。

「分からないですか?」
「おう。わからん。魔石だということはわかる。そして、光属性のなにかが秘められていることもわかる。しかし、それがなんなのかわしの鑑定スキルでもわからんのよ。おめえさんこれをどこで?」
「ええと、ダンジョンの地下で……偶然見つけました」

妖精に会っただとか、彼女らの前でここにいる魔法使いとエッチな事をして貰ったなどと口が裂けても言えず、ボカした回答。

「なるほどな。正確なことは言えねえが……悪いもんじゃないはずだ。お守りだと思って大事にしな」

そんな助言とともにしわくちゃの指先から返されたネックレスを再び首にかける。

「ありがとうございます。大切にしようと思います。あ、これお代です」

礼を述べて、数枚の硬貨を代わりとばかりに老人の手に握らせた。
正体は判明しなかったが、まぁ悪い物じゃなさそうという確信が持てただけでも良いだろう。

「うむ。ところでおめえさん方はどっかから旅をしてきたのか?」
「その通りでございます。遠くの町より参りました」

丁寧に答えたカグヤを老人がジロリと眺める。男なら鼻の下を伸ばしそうなクールな美貌とメイド服に包まれた麗しき体だが、彼は大して気にした素振りも見せずに一瞥して目を離す。

「そうか。悪いことは言わねえがあんまりここに長居しねえほうがいいぞ」
「そ、それって……どういうことですか?」

思わせぶりな言葉に訝し気にレナが応じると、彼は一つ息を吐き出す。

「もしや税が上がってるらしいこととの関係が?」

催促するようにカグヤが問うと、再び息を大きく吐く老人。

「俺もこの町の人間だ。あんまり言いたかねえが……今の領主の様子じゃ近いうちにもっと酷い圧政が起こるって噂だ。逃げ出した連中も多少いる」

圧政。のどかな村から町に出て、冒険者になった世間知らずの僕にとってまるでピンと来ない言葉だ。

「税だけならまだましだ。けどよ、それが行き過ぎれば暴動だ鎮圧だ……血が流れるようになっちまうのさ」
「……そんな」

まるで見てきたかのような口ぶり。いや、長く生きてきた彼はそういった体験もしてきたのだろう。そんな重みが感じられる言葉に信じられないと小さく漏らすレナ。

「あ~……なんだ。その、老人の戯言だ。忠告程度に覚えておけ」

孫ほど年の離れた少女が悲し気に目を伏せているのにバツの悪さを覚えたのか、彼はそんな風に締めくくった。

「……ありがとうございます。気を付けたいと思います」

短く、しかし確かに礼を述べて僕らは店を後にする。

アリスの仇だけではない。この問題には多くの町の人々の生活もかかっているのだ。
「がんばろうね……シン」
「うん。アリスのためにもこの町のためにも……がんばらなくちゃだね」

店先でレナと見つめあい、小さく交わした言葉。それは自分の奥底で燃え広がるように感じる。

「……ふむ。シン様、レナ様。かなり回りましたし、一度足を休めてはいかがでしょうか?」
「そう……だね。色々話を聞いたし、少し休もうか。レナもそれでいい?」
「うん。大丈夫だよ♪」
「かしこまりました。ではあちらにちょうど良さそうな店がありましたのでご案内致します」

気の利くメイドらしくカグヤがそう提案し、僕らはそれについて行く。
後でファナさん達に報告するためにも、少し頭の中で話を纏めておこう。

……この時はそんな風に考えていた。

「いらっしゃいませ」
「えっと、ここは……喫茶店なんだよね?」

落ち着いた声の給仕の女性が出迎えたそこは喫茶店……とカグヤが言うが、見たところ机も椅子もない。入店してすぐ宿のような長い廊下が続いている。

「はい。当店は紛れもなく喫茶店でございます。全席個室でございますのでごゆるりとお寛ぎください」
「な、なるほど? そういうもの……なんですね?」
カグヤに問いかけたつもりだったのだが、女性が答えてくれた。
まぁお店の人が言うのならそうなのだろう。

「それでは三名様。ご案内致します」
「あ、は、はい」

絨毯の敷かれた廊下を踏みながら奥へ奥へと進み、案内に従い最奥の扉に辿り着く。

「こちらの部屋でございます」

給仕がドアノブを捻り、扉を開いたまま僕らを中へと促す。
そこは普通の宿の一室程度の広さの部屋。というか――

「――これって宿?」

レナの呟きに案内の女性はビクリと反応をし、声を上ずらせた。

「な、な、なにをおっしゃいますか⁉︎ れっきとした喫茶店でございます! ただ個室なだけでございます! ……お、お茶はそちらにございますのでごゆるりと!」

慌てたように捲し立てて彼女は扉を閉めて去っていった。
お茶の用意まで自分で行うとは変わったお店だな……? それに、

「──ソファは分かるけど……なんでベッドもあるんだろう?」

そう、僕の目の前には存外しっかりとしたベッドまであるのだ。
「まぁまぁシン様。細かいことは良いではないですか。壁も厚いようでございますし、話をするにはピッタリでしょう」

メイドのそんな言葉に若干の疑問を残しつつそんなものかと思い直す。
一方レナと言えば室内を歩きながらあちらこちらと見まわす。

「へぇ〜、なんかまんま宿って感じだね。こっちの部屋は……あ、お風呂もある!」

一際大きく声を上げた彼女が発見したのは扉の奥にあるお風呂。入浴まで出来るとはますます喫茶店というのが怪しく思える。

「レナ様。沢山歩かれましたし、良ければご入浴されてはいかがですか?」
「え! いいの? うーん、でも一人だけっていうのは気が引けるなぁ……」

カグヤの提案に興味を惹かれつつも尻込みするレナ。そんな彼女に近づいたメイドは僕に聞こえない程度の声量でその耳に囁く。

「ふふっ、レナ様──匂いを気にするのも淑女の嗜みでございます。遠慮せず、それに──」
「えっ! ──うん、うん。そっか、そうだよね! それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな? シン? 覗いたりしたら……ダメだからね♡」

最後の言葉はどういう意味だろうか?
カグヤに何を言われたのかは分からないが、どうやら納得したレナは鼻歌混じりで浴室へと向かった。

残されたカグヤは澄ました美貌をほんの少し緩めている。
まるで何かを予感させるような笑みだった。

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