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第35話 抵抗、魅了、そして隷属

揃って部屋に戻った僕達を出迎えたのは代わり映えしない顔ぶれ。
パーティーの皆は未だに目を赤くしたアリスを見てもそれに触れようとせず、柔らかな笑みで応えるのみ。ニーナですらからかわないのだからなにかを察したのだろう。
一方領主とクリスとララは困ったような表情を浮かべ、僕とレイアへと交互に視線を向ける。
レイアと言えば最初の高貴さはどこへやら。頬を膨らませてそっぽを向き、まるで女児のよう。そして僕の入室を見やるや否やハートマークが浮かんだ瞳を輝かせて、こちらへ縋るように言葉を放つ。

「シン様ぁぁぁ♡ 聞いてくださいよ! この領主と痴女が酷いんですよぉぉ……」

流れる銀髪と漆黒のドレス。その間の真っ白な肌とこの場の誰よりも大きな豊満な乳房。その首には似つかわしくない無骨な首輪が嵌められていた。

「えっと……どういう……状況ですか?」

困った顔の領主ら三人と甘えるような目のサキュバス。そのどちらにも問いかけるような僕の呟きに最初に答えたのは女騎士クリス。

「いや、ちょっと困った事態になってね。彼女を従わせる為に隷属の首輪を着けたのだが、この通り。まったく従属しなくてね……お手上げさ」
「当たり前ですぅぅ! 私は上級サキュバスよ? この程度の隷属魔法で従わせられるわけないんですぅぅ! シン様の物となったこの体を貴方達みたいな人間に渡す物ですか! ふん!」

叫び、彼女はただの装飾を外すように首輪を呆気なく取り、ベッドに投げ捨てた。
なるほど話はなんとなく分かった。レイアが隷属を拒んでいたのか。
というかこの人──いや、このサキュバスは話すたびに品位を落とすというか、どんどん幼児に退行しているようで、他人事ながら少し不憫に思える。

「ほらシン様ぁ♡ この身の程を弁えない人間どもに言ってやってください! レイアは僕のものだ。僕のメスは渡さないって♡ さぁさぁ♡」
「……え、いや──」

どうしようこんなに美人で妖しい体の持ち主に求められているのに全然うれしくない。
まぁ、とりあえず。

「レイア。領主様達に隷属してくれないかな?」
「あぁぁん♡ そんな酷いこと言っちゃらめぇぇ♡ 私気持ちよくなっちゃうぅ♡ ……くぅっ! で、でも、いくらシン様の願いとは言えそれは受け入れられません! 私は貴方様に使えるメス! 貴方様だけの性奴隷でございますぅぅ! 他の者となど断固拒否いたします!」

だめか。魅了状態でもここまで抵抗するとは、余程レイアが強力なサキュバスという証拠か、もしくは僕への思いが強すぎるのか。
この場にいる全員が僕を見つめて、少し引いたような視線を向けているのが心外だし、心にくる。僕は何も変なこと言ってないのに……。
そんな中、一歩踏み出してきたのは頼れるリーダーのファナさん。彼女は吐息がかかるほどに僕に近づき、耳を舐めるくらいの距離で小さく囁く。

「シンさん。ならこういうのはどう? ええと──」
「……は、はい。――うん──な、なるほど」

くすぐったい耳元での囁きに背筋がゾクリとして震えるも、ファナさんはそれをわかってかわからずか吐息混じりの言葉を流し続けてくる。
ファナさんからの助言を頭で繰り返してからレイアに向き直ると、密着した僕ら二人を眺める視線が刺さった。

「い、いくらシン様と言えど、私これだけは譲れません! どんな手段を使おうと──」
「──レイア。その銀の髪、まるで夜空の星のように素敵だね」
「ひゃいっ!? に、にゃにを……んんぅ♡」

自分からはとても女性に言えない歯の浮くような気障ったらしい台詞。しかま若干棒読み。たったそれだけの言葉で百戦錬磨で男を誑かしていたであろうサキュバスが、喜びを堪えきれずに顔を緩ます。

「その芸術品のような顔。そしてどんな美の女神すら太刀打ちできないような艶かしく、僕を魅了する体。あぁ……君はなんて素敵なんだろうか」
「しょ、んなこといわへてもぉぉ……♡ くぅぅん♡ わ、私は屈しな──」

涎でも溢れそうなほどにだらしなく開いた口元。どう誤魔化そうと歓喜に震えるその体で効果抜群なのはバレバレだ。

「──君の愛らしくも高貴な姿。どんなサキュバスに囲まれても僕は君を見つけ出すだろうさ。君こそは僕を照らす太陽。そして優しく包み込む月。君の美しさに比べたら国宝級の絵画ですら赤子のお絵描きだ。あとあれだ、そのえっと、カワイイカワイイ」
「あぅぅぅん♡ シ、シンしゃまぁぁ♡ そんにゃこと囁かれたら、わたひぃぃ♡ わたひぃぃ♡」

ファナさんが僕に授けた作戦。それは僕に魅了されているサキュバスを言葉でさらに籠絡せよというもの。
日頃女性に弄ばれている側の僕が、こんなことをする日が来るなんて思いもしなかったし、魅了されたレイアがここまでチョロいとも思わなかった。
彼女は演技丸出しの僕の言葉に喜び、体を痙攣させ、胸はミルク、下は淫蜜でジワリと濡らしている。逆にそこまで反応されると騙しているみたいで後ろめたさが湧き上がるほど。まぁ実際騙しているのだが。
そんなこちらの気苦労も罪悪感も知らずに彼女は感じている。そして最後の一押し。

「レイア。領主さん達に隷属してくれる?」
「しょ、しょれはやぁぁぁ♡」

まだ粘るか。ならばファナさんの指示通りに決めるまで!

「そっか──じゃあ、僕となら隷属契約してくれるかな? 愛しいレイア」

似合わない甘すぎる言葉を吐き出した自分に寒気を覚えながら、抵抗を忘れたようなサキュバスの耳に息をフッと吹き付ける。

「ひゃぅぅん♡ なりゅぅ……シン様になら隷属すりゅぅぅ♡ 隷属させてくだひゃいぃぃ♡」

ファナさんの指示とは言え、一体僕は何をやっているのだろうと頭に過ぎるモヤモヤとした疑問。
レナはちょっと不満気だし、ニーナは笑っている。
アリスとカグヤは仕方なさそうに溜息をつく。
しかし、ここまで来たのだ。やり遂げるしかない。

「嬉しいよレイア。でもさ、隷属したいんなら──僕の言う事なんでも聞けるよね?」
「聞きましゅぅぅ♡ シンしゃまの命令なんでも聞くのぉぉ♡ あぁ……んんぅ……♡」

……もう、終わりにしてあげよう。これ以上見せしめみたいにこんな姿を晒させるのは敵ながら不憫で仕方ない。なぜか僕の頭にはそんな憐憫が浮かんでいた。

「アリス……お願い」
「え……えぇ。わかったわ」

僕は仇相手に向けるとは思えない顔で後ずさり、締め付けられているかのように胸をかばって抑えていたアリスへ向けて呼びかける。少し嫌そうな顔をした彼女と目線が合う。
彼女も辛いのだろう。……色々な意味で。

「それじゃあ……行くわよ」

隷属させる方法は色々とある。
隷属の首輪を付けたり、特殊な魔法陣で従わせたり、僕が一度アリス達にされたような洗脳もその手段の一つだ。

「上級
エルダー
サキュバスのレイア。汝はこの者に永遠の忠誠を誓い、その呼びかけに必ず応じ、ただ身体を差し出す事を誓うか?」

そして、中でも特に強制力が高いのが専門の魔法使いによる隷属契約の呪文。これは従者と主人が互いにそれに同意して上下関係を定める契約方法となり、あまり強引に行えない少しだけ手間のかかるものである。
この契約魔法は専門の魔法使いが行うことが殆どだが、召喚魔法師であるアリスはこれらに関する知識もしっかりと学んでおり、何より自身とカグヤを僕に隷属させる契約を結ばせたという実績もあった。

「ち、誓いましゅぅぅ♡ シン様の命令に絶対服従しましゅぅぅぅ♡」

一時は娘でもあったアリスの問いかけに媚びた喘ぎ混じりの叫びで応えるレイア。

「……魔法剣士シン。汝はこの者を支配下に置くことを望むか?」
「……望みます」

その姿から目を逸らして、どうすんのよこいつと言わんばかりに僕を見つめながらも呪文をちゃんと口から響かせるアリス。僕は端的な言葉を返す以外何も出来なかった。

「……では、双方の合意を確認した――」

呟くと同時にアリスが瞼を閉じ、魔力を行使すべく集中する。身体に流れだした魔力が光となって彼女の肌をうっすらと光らせて、水色の髪の毛は快晴の空のような輝きを放つ。
淡く、少し眩しいその灯のようなものが広がり、僕とレイアを包むように複雑な文様を刻んだ円状を形作っていく。

「――《隷属魔法
スレイブ
!》」

声と共に一際輝きが増し、一瞬視界が真っ白に染まる。僕にはさしたる変化も感じられないその暖かな光が消え失せると、目の前に直前までと変わらないレイアの姿が見えた。
いや、少し違う。彼女の首元。首輪も無くなった真っ白なそこに浮かび上がって来たのはぼんやりと光る赤い模様。自らの瞳に映っているハートマークを少し複雑にしたようなそれは隷属の証である、隷属紋。

「わ、わたくひぃ……シンしゃまのものににゃれましたぁぁ……♡」

嬉しそうに紋の場所を指先でなぞり、陸にあげられた魚のようにビクビクと跳ねるレイア。それは愛おしく傷跡をなぞるみたいで少し狂気的。
アリスとカグヤの身体にも刻まれているそれは、一人一人、形も現れる場所も違うものだが、首筋という見えやすい所に浮かんで良かった。これで、一目で隷属――支配下に置かれた魔物だという事がわかるのだ。

「ふぅ……これでおしまいよ」
「ありがとうアリス。本当にその、何と言うか……お疲れ様」
「まったくよ。何が悲しくて仇に隷属魔法をかけて、だらしなくヨガっている姿を見なくちゃいけないのよ……」

疲れた顔のアリスの肩を優しく叩き、僕は最後となる仕事に取りかかるべく口を開く。

「じゃあレイア。早速命令……聞いてくれるね?」
「は、ひぃぃ♡ なんなりと、シン様ぁぁ♡」
「これからは人間を襲わず、男から精を貰うときも決して殺さず魅了したりしないように手加減し、そこの領主様──ルフラス・クレインの言葉に従うんだ。いいね?」
「しょ、んなぁ……♡」

サキュバスの本能である搾精を手加減しろと言い、さらに契約直後に別の人物に命令権を預けるという、なかなかに非道な言葉。しかし、これまでの罪を考えればまだ優しい方だろう。それに手加減しろとは付け加えたが、男から精をもらう事を禁じなかったのだ。これで飢え死にするという事もあるまい。

「も、もしやシン様は……愛しい女が他の男に抱かれる事を望み、その光景で興奮する性癖をお持ちなのですか! た、確かにそう考えれば未だに童貞な事も、女の誘惑に弱いのも納得できるかも知れません……被虐を極めんとするシン様♡ そしてそんなご主人様に虐げられる私♡ あぁん♡ 想像しただけで体の震えが抑えきれません……♡」
「いや、違うから! そんな趣味はないから!」

虚ろな笑みで訳のわからない事をぶつぶつ呟くレイアに強く否定を返すと、それに喜んだのか彼女はその身の震えを止めるように強く腕で抱く。おっぱいが潰れてはみ出すように前に溢れる。

「なるほどね。君……中々良い趣味をしてるじゃないか」
「ねー。寝取られ好きとは業が深いねー」

ニコニコと頬を崩し、分かってる分かってると言わんばかりの口ぶりの痴女二人。だめだ、なんか疲れてきた。
というかニーナやファナさんがちょっと色仕掛けで情報収集をしただけでモヤモヤと不安に苛まれたのに、それ以上のことなんて……考えただけで気が滅入る。

「だ、大丈夫だよ、シン! 私頑張るから!」
「にしし……そっかそっか。まぁーあんだけ色々したら性癖も歪むよな」

レナとニーナまで……。
からかい混じりに笑うみんなの中、僕は疲れに身を任せるようにベッドに座り、溜息をつく。
一旦問題は解決したが、新たな──僕にとってとても重大な誤解が生まれそうな気配に肩が重くなる。
その後、必死に全員の考えを正すのにさらに労力を費やしたのは言うまでもない。

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