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第39話 王都ハルモニアにて

人間の国の統治者、女王ラミィール。
この国に住む人々――いや、他の国々に住んでいようと知らぬ者はいないその名前。
年齢は20代半ば。王位に着くには年齢も経験も少ない彼女が今の地位に辿り着くには紆余曲折があった。
先代国王は王妃との間に長男と次男をもうけ、それからかなりの年月をおいて長女のラミィールを授かり、合計三人の子を成した。
ラミィールがまだ10才の頃だ。国王は老衰により弱り、後継者を考える時期を迎える。
焦点はすでに成人を迎えていた長男と次男のどちらが継ぐかだったが、それは国王や民すらも予想しない方向に転がっていく。
軍に所属して数々の武勲をあげていた最有力候補の長男だったが、異種族との戦に出兵した際、敵兵の剣に貫かれ死んだ。
後を追うように政治の場で頭角を表していた次男が突然の病に倒れ、治癒魔法使いや医者の尽力虚しくそのまま帰らぬ人となってしまう。
そして、最後に残ったラミィール。まだ少女の彼女がその地位――王の座を掴んだ。
その継承は当初、民から懐疑的な目で見られていた。長男の戦死と次男の病死。ラミィールにとってあまりに都合のよすぎる展開に、王位のために裏で謀略を巡らし兄たちの命を奪ったのではないか? もしくは子供の彼女を祭り上げ傀儡とし、国を操ろうとする者がいるのでは?
噂が噂を呼び、民は脅え、時にはラミィールを不吉を呼ぶ魔女だと流布する者もいたという。
代替わりをし、国王就任の挨拶で現れた幼くも美しき女王の姿を見ても人々は意見を変えずに、不安と不満を募らせるばかり。高らかな演説などは子供の戯言として空虚に空に消えていったという。
しかし、そこからこの国は飛躍を遂げた。
若いラミィールは貴族や役人の不正を許さず、国に害をもたらすものを早々に切り捨て、反発も気にせず改革に邁進し、政の健全化を計る。
当然自分たちが政治の主導権を握れると考えていた何人かの貴族が反発し、武力蜂起を決行したが、その全てを撃退。しかもその戦いは異様な物だった。
大義名分を無理矢理拵えた反乱軍が決起して動く時になれば大雨が降って進軍を邪魔し、彼等の弓兵が矢を放てば急な向かい風でその威力を殺される。時には敵兵が原因不明の病に倒れることもあったという。そんな風に天がラミィールに味方をしているような戦が何度も続いたのだ。それはまるで幸運の女神の後ろ盾があるかのように。
幸運は戦だけには留まらない。彼女が王位についてから作物の収穫量は増え、新たな産業への投資を惜しまずに実行したおかげなどもあり税収は増加。国も民も好景気に潤う事となる。
それらを引っ提げて他国との交渉を行い、どんどんと発展していく国の様子を見ていた民は、不吉や怪しいという当初の印象を忘れ、彼女を名君、幸運を運ぶ女王と口々に褒めそやす。
王位継承から十年。年齢を重ねて増す美しさと知性で国を導き続ける女帝。それが女王ラミィールという存在だった。

「――というのが、世間で流れてるお話なんだよね。ニーナは知ってた?」
「いんや、知らん。名前くらいは知ってたけど、どんな経緯で女王になったのかなんて初耳だぜ」

【レクイルの町】を発ち、王都【ハルモニア】に向かう馬車の中でレナが子供に勉強を教えるようにニーナへと女王について語り聞かせている。
田舎育ちの僕もあまり詳しくなかったので、彼女が語る女王のどこか現実離れしたような話はなかなかに興味を惹かれるものがあった。

「多少誇張した話もあるけれど、ラミィール女王が人気なのは確かね」

元貴族のアリスは僕らより事情を分かっているのか、腕を組んで女王について話す。その姿は子供が知識を自慢するみたいに見えて微笑ましい。

「……実際の所、何を考えてるのかしらね」

ファナさんが誰に言うでもなく独り言のようにボヤく。以前から貴族や地位の高い者にいい顔を見せなかった彼女だが、何か過去にあったのだろうか?
そういえば、僕はファナさんの昔の話を殆ど聞いたことがない。どんなパーティーに今までいたのか。なぜ踊り子から賢者になったのか。聞いてみたい事や気になることは山ほどあるが、過去を殊更に詮索するのは何か疑いでも向けるみたいで気が引ける。
いつか聞ける時が来ればいい。そんな思いを秘め、僕は静かにみんなの会話に耳を傾けて過ごした。

「──皆様。そろそろ到着です」

それから暫く経ち、行者席で馬を手繰るカグヤの声が届き、外を見る。
【レクイルの町】に向かった時は一月ほどかかったが今回の馬車旅は一週間程度で終わり。僕らを出迎えたのは今まで見たことのないほど大きく、こちらを威圧するような外壁に囲まれた【王都ハルモニア】の姿だった。
門にゆっくり近づくと、数人の男──いずれもしっかりと鎧を着込み槍を携えた門番が待ち構えており、その前で馬車は減速して停止する。

「乗員は表に出るように!」

馬車の中までも響き渡るような大声での指示。それに素直に従い、僕らは順番に降りていく。
まず僕が顔を出すと、門番達の表情が少し舐めるように歪んだ。多分頼りなさげな冒険者とでも思われたのだろう。心外だが、体格の良い彼らと比べればそれも仕方ない。
続いて女性陣が降りるのだが、これが中々に問題だった。
しっかりと階段状の出口を一歩ずつ下がるレナとアリスとファナさんだが、その僅かな振動で……ふるん♡ ぷるん♡ ふよん♡

「「「お、おぉぉ……」」」

先程までの見下した表情はどこへやら。彼等は目を点にして、視線を一箇所に向ける。
そして行者席から飛び降りたカグヤと、階段など無視して跳ねるように地上へと着地したニーナは大きな衝撃を吸収するように……どたぷぅん♡ ばるるん♡

「「「ふぉぉ……」」」

暴れまわるスライムのように、胸元が上下左右と膨らみ、男達の視線を奪う。
王都の門番とは言え、やはり男。目の前へ順々に現れる美しく豊かな美女達に目が釘付けだ。そして、僕もついついその部分に視線が向いてしまう。
普通に立っているだけで絵になる五人と僕。彼女らを眺めて呆然としていた門番達。

「えっと、早くしてくれないかしら?」
「──はぁ……? は、はい! 直ちに!」

身分確認や荷物検査など何もしようとしない門番をせついたファナさん。それでようやく彼らは意識を取り戻したように動き出した。
しかし、その時――。

「──必要ありません。この方達はお客人、私が対応いたしましょう」

唐突に男達の後ろから現れた女性が彼等を引き止める。門番という風には見えないが一体誰だろう?

「リ、リン様? いや、しかし──」
「……私が対応すると言いました。聞こえませんでしたか?」
「し、失礼いたしました!」

無機質で小さな呟き。たったそれだけで体格の良い男達は怯み、そそくさと後ろに下がる。
そんな彼女に興味を引かれて、僕の視線はそちらに向き、まじまじと観察してしまう。
気品と礼節を体現したみたいな真面目そうで美しい顔。
翠の瞳とそれを彩る長い睫毛。作り物のように美しくシミ一つない鼻と肌。首程度まで伸ばした黒髪。それは撫でつけるように右側に流され、右瞳を覆い隠しており、どこか陰のある色気を感じさせる。
服装は真っ黒でピッタリと体に張り付いたようなロングドレスで、手首や足元まで肌を一切晒していない清楚なもの。だが密着しているせいで体の線をハッキリと浮かび上がらせており、肉付きのいい脚、お腹のくびれ、そして飛び出すような豊満な胸をむしろ強調しているようだ。

「……シン? ねぇ? どこ見てるのかな……? ねぇ? 教えて?」
「ふぇっ!? い、いやどこも見てないよ!?」
「へぇー……ふぅーん。……そう? ならいいけど」

思わず凝視してしまったことをレナに咎めら、慌てて誤魔化して目線を逸らす。まるで深い暗闇を見ているような重く奇妙な圧迫感を感じ、僕の背筋がゾクりと震えた。

「【白き雷光】の皆様。お待ちしておりました」
「──なぜ……私達の名を?」

丁寧に頭を下げながら言葉を続けたリンさんとやら。それに反応したファナさんの声は訝しむようなものだったがそれも致し方ないだろう。突然現れ、面識もないこちらを言い当てる様に疑問を抱くなという方が無理がある。

「ふふっ、それはもう一目でわかりました。事前に聞いていた通り──黒髪の魔法使い、赤毛の盗賊、空色の髪の少女と黒髪のメイド、金色の髪の賢者。そしてただ一人の男性剣士。ご自覚なされておりませんか? ……貴方様方はかなり目立たれます」

なるほど。僕らを見たことはなくとも話に聞いていたのか。確かに……僕はともかくみんなは、その……かなり特徴的だ。

「そう。……ところであなたは?」

彼女の言葉で一旦は納得したのか、ファナさんは新たな質問を投げかける。

「これは失礼いたしました。私は女王陛下より遣わされました案内人、リンと申します。城までお連れするようにと申しつかっております。──どうぞこちらへ」

女王の使い。そう名乗った彼女が半身となり後ろに手を伸ばす。そこには堂々たる国章が掲げられた馬車があった。

「なるほどね……出迎えとあらば、断る訳にはいかないわね。……みんな行きましょう」

悩むような素振りを見せたリーダーであるファナさんだったが、静かに了承し、その言葉で僕らの行動は決まった。
ここまで乗ってきた馬車を預け、乗り換えるように入ったそこはまるで別世界。
僕たちの簡素な四角い馬車に比べて優美さがあり、丸みを帯びた作りと細かな装飾、中は壁紙までしっかりと貼られており高級宿のように美しい。備え付けられた椅子はフカフカで座り心地も抜群。女王様が迎えに用意したものだけあってかなり高そうだ。
左右に並ぶ三人がけの椅子。右にレナ、僕、アリス。反対側をニーナ、カグヤ、ファナさんで座り、案内人のリンさんは隅に置かれた一人がけ用の小さな椅子にかけた。
「それでは、向かってください」

行者席で馬を操る男性にリンさんが指示してゆっくりと動き出す馬車。今まで乗ったどんな馬車よりも乗り心地が良く、振動もほとんど感じられない。これなら乗り物酔いの心配もなさそう。

「これいいね。すごい静かだし快適そうだよ」
「なー。こんなので、旅が出来れば楽そうだよな」

初めての高級馬車の感想を楽しそうに語らうレナとニーナ。
庶民らしいその姿を嘲笑することもなく、案内人は微笑んでいた。
僕は僕で窓から見える活気あふれる王都の街並みを見て、お祭りに来たような高揚感に心を弾ませる。
アリスとカグヤは慣れているのか静かに行儀正しく座り、ファナさんはなにやら思案を浮かべるように難しい顔をしていた。
そして、しばらく軽快に走り続けた頃、案内人が口を開く。

「そろそろ王城に到着いたします」

気遣うような声音でリンさんが告げた言葉に僕は思わず首を外に出して、進行方向を見つめる。

「あれが……王城……」

それは街の中心部。坂を昇った先の小高い場所に荘厳とそびえたつ純白の城。
人間の背丈の何倍もの高い外壁に囲まれ、流線形の文様が刻まれた門はまさしく芸術。建物本体もいくつもの尖塔が連なり、空へと伸びていくように大きい。
王の――人間達の長の住まう場所であることを主張するそこは畏怖の念すら抱かせる建築物だった。
「わ、私も見たい!」
「ズルいぞ! 私にも見せろよ!」

僕の後ろからのしかかるように窓から顔を出すレナとニーナ。いつもなら感触が気になって悶々としてしまう所だが、目の前の初めてみる光景に気を取られて、それどころではない。

「わぁ……」「ひゃぁ……」

二人も僕と同じく圧倒されているようで、言葉にならぬ感嘆を溢す。
少しずつ近づくたび、逆に迫られているように錯覚してしまう王城。そして、この先に女王――ラミィールがいるのだ。
僕の緊張など気にせずに馬車は小気味の良い音を鳴らしながら進んでいく。

城に入ってからも驚きの連続だった。
優雅な噴水と色とりどりの花草に飾られた庭園。
巨人でも迎えるのかと思える程の高さの入口。
金や赤が眩しい、豪奢を極めたような内装。そして、輝く宝石で作られているシャンデリアは昼にも関わらずいくつもの灯で室内を照らしている。
沈み込むような絨毯。壁の絵画や柱におかれた調度品。どこを見ても僕にとって縁のない世界で、驚きを通り越してため息すらでてきそうなほど。

先導するリンさんに恐る恐るついて行き、やがて一際煌びやかな扉の前で僕らは止められた。

「これより先は謁見の間となります。どうぞ粗相なさらぬようお願い申し上げます」

彼女の言葉。その注意に、まるでダンジョンの最奥の扉、魔物が待ち構えている部屋に侵入する時のような緊張感が走る。呼び出された身とは言え、今から会うのはこの国の最高権力者。下手なことをすればその場で打ち首なんてことだってあり得るのだ。

「それでは、準備はよろしいでしょうか? ――では、参ります」

金属が擦れる重い音と共に両開きの扉がゆっくり開き、視界に飛び込んできたのはここまでに見てきた豪華な内装と地続きだが、どこか静謐さを漂わせる広い部屋。
道端に落ちているようなものとはまるで違う、宝石のように光る灰色の石床。中心には真っ赤な絨毯が敷かれており、入室した者の進むべき道を示すように直線で伸びている。
左右にはいくつもの椅子が置かれており、そこには身なりの良い男女が何人も座り、僕たちを値踏みするような視線を向けていた。
そして、正面。階段状に高くなっているそこには一際美しく、装飾も煌びやかな椅子──玉座が鎮座している。

どこまでも続きそうに錯覚する絨毯の道を進みむリンさん。彼女に置いていかれないように歩き出した僕たち。
中央辺りまで歩いてリンさんがピタリと足を止めて跪く。それに倣うようにファナさん、アリス、カグヤが片膝を床につけ、顔を下げる。礼儀作法もよくわかっていない僕と二人は慌ててそれを真似した。
誰一人声を発することのない無音。息することすら恐れ多いその空間。これから何が始まるのか分からなくて頭が混乱してくる。

そこにコツリと小さな足音が響く。焦らすようなそれは絨毯の柔らかさで減衰した音を小さく鳴らしながらゆっくりと動いている。
そして僕らの前方でその音が消えた。

「――顔をあげなさい」

響く声音。柔らかくも有無を言わせないようなそれに頭が上から引っ張られるように持ち上がる。周りの──僕たちパーティー以外も含めて全員が全く同じ動作で音の出所へと首が向いた。

──雪のように儚く麗しい女性。それがそこにいた女王ラミィールに抱いた第一印象だった。
玉座に腰掛け、床に届きそうな程の長さの真っ直ぐな白髪は雲のように汚れひとつない。
威厳を感じさせる蒼い瞳は太陽の輝きを受けた湖面のよう。
唇は花弁にも似た柔らかな桃色。肌と髪の白さも相まり幻想的な雰囲気を感じさせる。
その表情からは、およそ温度や感情というものが窺えず、よく出来た人形を見ているような不思議な感覚を覚えた。
瞳と同色のドレスは肩が大きく開いており、見方によっては扇情的にも思えそうだが、着る者の気品がそう感じさせるのか、ただだた畏怖するような美しさで、直視することにこちらが耐えられなくなる。
そうして顔を再び美しい女王に向けると、彼女と視線があった気がした。僕を視界に入れ、その捉え所のない唇がほんの僅かに緩んだように見えたのは気のせいだろうか。

「──私は女王ラミィール。今回の貴方達の活躍に感謝の意を示します。民を蝕む魔族の手より、よくぞ人々を解放してくれました」
「……ありがたきお言葉でございます」

澄ました表情のまま女王が礼を述べ、僕らの代表であるファナさんがそれに応えた。

「国に貢献した印として、恩賞を与えます。詳しくはそこのリンに預けましょう。……リン」
「はっ!」

ラミィール女王が名前を呼ぶと、僕らの目の前で膝をついていたリンさんが立ち上がり、玉座へと進んでいく。
そして、誰にも聞こえないように何やら耳打ちをするが、そこで話を聞くリンさんの表情が強張ったように見えた。

「──よいですね?」
「お……仰せのままに」

僅かな動揺を感じさせるリンさんの声音。
それを気にすることなく、女王が立ち上がった。
もう終わりなのだろうか。そう疑問符を浮かべながらも女王の美しい立ち姿を見つめた僕だが、再びラミィール様と視線が交差する。……その口元がまた緩んだように見える。

「ち、ちょっと! シン。あんた無礼でしょ。早く頭を下げなさい」

気づけば僕以外の人は全員俯いており、唯一残った僕に対してアリスが押し殺すような声で指示して、女王から視線を外す。直前に見た雪のような白髪が瞳にこびりついたような感覚を覚えながら、深紅の絨毯を眺めた。

女王が来た時と同じく、コツリコツリと足音を立てながら消えていき、短い謁見は終了。そして、周囲にいた者達もリンさんを残して去って行き、広い謁見の間に残されたのは僕たち六人と案内人のみ。

「それでは皆様。恩賞についてですが──」

立ち上がった彼女が伝える僕たちへの褒美の内容。期待して耳を傾けていたそれは、想定外の言葉だった。

「──詳しくは私の部屋で話す。と、女王陛下は仰りました。お手数ですが、こちらへ」
「ちょ……ちょっと待ってもらえるかしら? 女王の自室に? 正気かしら?」

珍しくもファナさんが狼狽し、問い返す。正直な所、僕らもその言葉に動揺を隠せなかった。女王との謁見だけに留まらず、その自室に招かれるなんてありえない。リンさんの悪い冗談かもと思ったがその表情は至って真面目でふざけている様子など微塵もない。

「はい。ラミィール女王は――まず、あなたとお話がしたいと仰せになりました」

そして、彼女はゆっくりと視線を向ける。ファナさんやみんなを避けるように向かった先、翠の瞳は僕を捉えた。

「……え? ぼ、僕ですか?」
「はい、シン様と二人きりでお話がしたいとのことです」

理由が分からない。何かを話すならばどう考えても先頭に立っていたリーダーのファナさんだろう。
僕と同じく意図が読めないのか、みんなの表情には強い困惑が窺える。

「なぜシンさんだけなのか、理由をお聞かせ願えるかしら?」

全員の総意を代弁するように告げたファナさんの言葉。しかし、

「申し訳ありません。私の方からはなんとも……」

リンさんからの返事はひどく曖昧なもので、彼女の表情も疑問を隠しきれていない。そして、どこか困ったような感じに肩を竦めている。

「はぁ……まぁ、女王陛下の気まぐれに付き合わされるのはいつもの事ですが……こちらの苦労も考えて欲しいものです……はぁ……」

ぼそぼそとぼやく声が微かに聞こえた。冷静なデキる女性といった風に見えていたリンさんだが、その実結構大変な思いをしているのかもしれない。

「拒否権は……なさそうね」

そんな女王の付き人の言葉を聞いてか聞かずか、半ば諦めたようにファナさんが呟いた。むしろ絶対的権力者である女王の言葉を拒否するなどしたら反逆を疑われかねない。
男一人で女王と対面するなど不安でしかないが、指名された以上行かないという選択肢など選べないのだから。

「シンさん? お願いできる?」
「は、はい! 頑張ります……!」

皆にいらぬ心配をかけぬよう声を出したつもりだが、それは頼りなく震えていた。

「女王様は美人だけど、気をつけてね?」
「へ、変な事したらマジでヤバいからな! 理性を保つんだぞ!」
「冷静に話しなさいよ。いやらしい目を向けたら命に関わるわよ」
「シン様……ご武運を。我慢できなさそうなら、《忍法・筒封じ》をしておきますか?」

戦場に送り出される兵士のような気分。──やるしかない。
というか、みんなの不安がなぜか僕が女王に襲いかかる危険があるみたいに聞こえるが、一体こちらをなんだと思っているのだろうか?
それと、カグヤの忍法は本当に止めて欲しい。

「──では、こちらに。ラミィール女王様がお待ちです」

そして、再び僕らはリンさんに着いて行き王城を歩く。今度は僕がメンバーの先陣となって。

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