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第41話 女王と賢者

「──さて、それでは女王様? ご説明頂いてもよろしいでしょうか?」

リンさんだけは女王の後ろで控えるように立ち、他の者は全員座った。それを確認してファナさんが口を開き、一国の女王に向けるには相応しくない、詰めるような眼差しで彼女に問いかける。

「くすっ、怖い顔ねぇ。ちょっとした戯れですよ。彼の実力を知りたかっただけ。……もっとも貰えるのならば貰っておきたかったですがね♪」
「ラミィール様。そういった振る舞いはお控え頂くように常日頃進言しておりますが……」
「ふふっ、そうだったかしら?」

涼しい顔でファナさんの追及の目を受け流し、そして従者のリンさんの言葉すらも躱す彼女は中々いい性格をしているようだ。そして最初に謁見の間で見せた冷たさはなんだったのか。いや、国の長としての他人を欺く見事な振る舞いを褒め称えるべきか。
「──と、冗談はこのくらいにして。……この国の王として、力ある者を囲っておきたいと願うのは当然じゃないかしら?」
「それにしてはやり口が随分と庶民派ですね♪ まるで街の裏路地の娼婦のような――あら、これは口が過ぎましたわ♪」

女王の弁明を受けたファナさんが挑発するような皮肉を投げる。ラミィール女王自身は笑みを崩さないが、背後に控えるリンさんはその物言いに少し顔を強張らせているし、アリスやカグヤ、そしてニーナは恐れを知らぬファナさんの言葉に冷や汗をかいている。
そんな重いやり取りが交わされる中、僕はと言えば、

「もぉ~心配したんだよぉ♡ シンってば♡ ――罰としてぎゅーってし続けなくちゃダメなんだからね♡」
「う、うん……ごめんね。レナをこんなに心配させてごめんね? ダメでごめんね」
「そんなことないよ♡ シンはいっつも頑張ってくれてるんだから、ダメなんてことあるわけないよ♡ ふふ、シン♡ ぎゅー♡」

ソファでレナの豊満な身体に抱き着かれながら、その頭をあやすように撫でて、まるで人目を憚らない恋人が自分たちのいちゃつきを見せつけるように会話を続けている。
正直なところ甘い香りや柔らかな身体にドキドキするし恥ずかしい。そして、どう考えても場違いな行為を行っている自覚もあり、嫌な汗が額から流れるのを止められない。

「……女王陛下? 恩賞とやらのお話をお聞かせ願えますか?」

僕とレナを一瞥して微妙な表情を見せたファナさん。しかし、すぐに何も無かったように――何も見なかったと言い聞かせるように女王へと目を向け話を進める。

「実はそれについてですが……まだ決めてないのです。てへ♪」

片目を閉じて首を傾け、一国の長がしているとは信じられない悪びれを感じさせない子供じみた笑みがファナさんに向けられた。
その態度にイラついたのか、それとも恩賞が無いことへの不服を示したのか、ファナさんは目を細めて静かな怒りを滲ませ、他の三人も女王へと胡乱げな目つきを向ける。

「まぁまぁ、そんな目をしないで。恩賞……恩賞……そうですね──」

今晩の食事の献立でも決めるかのような口ぶりでうんうんと唸るラミィール女王。軽薄な口ぶりに真剣さは微塵も窺えない。けれど、

「──何が望みかしら?」

僅かに溜めて開いた口から流れ出て来たのは雰囲気を一変させるような冷たい声音。
レナと抱き合っているにも関わらず、思わずゾクりと背筋を悪寒が走るような感覚を覚えて僕は震えた。ふざけていてもやはり女王。その威厳や言葉の圧は常人のそれとは比べ物にならない。
他の皆も気圧されるように女王から一瞬目を逸らしたが、そんな中たった一人堪えるように視線を向け続けた人がいる。――ファナさんだ。

「……そうですね」

平坦。それも白々しい程に温度感のない応対。怒りを浮かべている時、揶揄っている時、困惑している時、それら今ままで見て来たどの彼女とも違う口ぶり。
ファナさんは立ち向かっている。理由も確信もないが、なぜか僕にはそんな風に見えた。

「……では、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ――言ってみてください」

短い言葉の応酬。そこは刃が弾きあうような、魔法がぶつかり合うような緊迫の空気が流れている。固唾を飲んで見守る僕らメンバーとリンさん。
そして、ファナさんが小さく吐息を溢し、深呼吸するように胸を張ってその言葉を告げた。

「……私たちSランクパーティー【白き雷光】のランクをあげていただきたく存じます」

僕らの誰もが予想しえなかったその願い。

「ほぉ……なるほど」

それを聞いた女王は愉快げに口元を吊り上げた。

「――上級サキュバスの無力化。そしてそれに伴った情報の入手や反乱分子の炙り出し。それだけの成果をあげたのであれば確かにランクアップもあり得ますね」

ファナさんの唐突の提案に女王は考える素振りを僅かに見せ、僕らの働きぶりを反芻するように呟く。

「つまり貴方は――貴方たちパーティーはSランクの上……SSランクになりたいということで良いのかしら?」
「はい。その通りです」

女王が問いかけた言葉に短く、しかし怯むことなく応じるファナさん。
Sランク。冒険者として一握りの者達しか到達できないその更に上のランクであるSSランク。自分が今Sランクにいることすらどこか現実味が薄いのに、その上にともなれば想像もできない。
Sランクのパーティーは珍しくもあるが、各ギルドに一つか二つは存在する。それというのも高難易度クエストをしっかりこなせる実力さえあればギルドがその地位を与える事が出来るからだ。
決して誰でもなれる訳ではないが、不可能という程でもない。それがSランクだ。

対して、SSランクパーティーというのは世界でも数えるほどしか存在しない。それはその任命方法の特殊さが関わっている。
ギルドの判断でなれるSランクと違い、SSランクは王やそれに準じた貴族などの推薦が不可欠で、いわば国からその力を担保された存在なのだ。
その地位に着いた者達はSランククエスト以上の働きを要求されると共に様々な優遇がなされ、また国家機密に近いような情報を仕入れる事ができるという。
そして、SSランクの更に上の最高ランクであるSSSランクに至っては、どのような方法でなれるのか。また現在その地位にいるパーティーが存在しているのかすらも定かではなく、ほぼおとぎ話のようなものとみなされている。

「そうですね……確かに今回の成果は認めます。けれど――貴方たちの実力に些か疑問を持っている事も確かです」
「それは……どういう意味ですか?」

灰色の返答。どちらとも取れそうな女王の話し方にファナさんが窺うような、威圧するような鋭い声音で返す。

「単純な話です。貴方たちのパーティーには規格外の魔法――補助魔法を扱える者がいます。それもパーティーの力と言えますが、個人の力量を考えるとSSランクに推薦するにはもう一押しが必要ですね♪」

子供に言い聞かせるように明るく告げるラミィール女王だが、その内容は中々に辛辣だった。僕の補助魔法で助けられている他の者は実力を満たしていない。そう断定している。多少思う所はあれど仲間を侮辱されたような気がして、僕は内心苛立ちのようなものを覚え身体に力が入る。

「――やぁん♡ シンそんなにぎゅってしちゃだめぇ♡ もぉ……♡」

そして、その悔しさを感じているのは僕だけでなく、他のメンバーも同じだろう。
噛み締めるように口を閉じるニーナとアリス。一見無表情だが、心外だとでも言わんばかりに冷たい空気を纏うカグヤ。

「――強引なシンもしゅきぃ……♡」

そしてそれらを全く気にもせず、

「――えへへ~♡ シン♡ もっとぎゅー♡」

僕に抱き着いて頬ずりするレナ。きっと彼女は女王の言葉を何一つ聞いていないのだろう。ま、まぁ、幸せそうでなによりだと思う。うん。
蕩けきった声をあげるレナの存在に誰も触れぬまま、話しは続く。

「……もう一押しとは?」
「ふふ、難しいことではありませんのでそんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?」

口を開いたファナさんに向けたあしらうような台詞。一緒のパーティーの僕らですら彼女のほんの僅かな普段との違い――強張りのようなものを感じる程度なのに、初対面の女王がそれを見抜き、指摘したことに驚きを覚える。

「――それは……今は止めておきましょう。【レクイルの町】から馬車旅でお疲れでしょう? 今日の所は王城で休んで下さい。詳しくは明日お伝え致しましょう。……リン。案内を」
「かしこまりました」

唐突に話を止めた女王。そして、こちらからの追及を遮るように前に出たリンさん。問いただそうとしたのか一瞬腰をあげたファナさんだったが、冷たい眼差しでこちらを見つめる女王とその従者の視線を受けて諦めるように腰を下す。

「……では皆さまこちらに」

僕達はリンさんに連れられ女王の私室を出て、再び廊下を進む事になった。棘が刺さったままのようなもどかしさのまま案内人についていき、王城内を歩いたのだった。

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