監獄島編⑤
やらせてあげるから殺さないで――と戦闘開始して直ぐに元冒険者の女は言った。
ルルベルは「スレイ・オア・ファック」という凌辱物のエロゲに登場するエルフである。
バッドエンドで彼女は、オークの肉便器から逃れたものの、奴隷商人に捕まり、結局のところ凌辱の連鎖に捕えられたままとなる。
したたかな女だと思った。
濃緑の肩までの髪で、小柄。胸の膨らみはささやかで、乳輪の周辺だけが僅かに膨らみ、しやなかでスレンダー。縦スジを描くぷっくりとした土手肉と無毛の秘部。
要するにツルペタだが、お尻は形良く肉付いている。
正面から悪戯な笑みで抱き付き、そのまま駅弁ファックになっている。
「んっ、ああ――、もっとおっきいオークのチンポも知ってるけど、アンタのカリがえぐくて、入れただけでゾクゾクきちゃう」
全体を締め付け、ぴっちりと吸着する肉壺は、内ヒダがそれぞれ独立したように蠢いてくる。観客の男らにサービスするように、積極的にいやらしく腰を振ってきた。
「どうして、ここにいる?」
「あん……、野暮な事を聞かないで。あたしを買った貴族を殺しただけよ」
彼女のレベルは69。この強さなら、最初から降参する必要はないのに。
ただの淫乱か、それとも――。
「ねえ、あたしからも聞いていい?」
「なんだ?」
「そんなに女ばかりと対戦して、犯してばっかり。何が目的なの?」
「ただの女好きだ」
これ以上、勘ぐられるのは嫌だ。
こちらからも下から強く突き上げる。
「おっ、おおん……。ハァ、ハァ、ハァ、イっ、イイ……。正直、オークのは、あたしにはデカ過ぎて、おっ、おっ、アンタの丁度いい」
「ふん。悪かったな、小さくて」
「小さくないよぉ。エグイって、これぇ……。おほっ、やらしいチンポ……」
熱くなってきたルルベルの体から甘い素肌の香りが昇ってきた。
ぬぷっ、ぬっぷ、ぬっぷ! 溢れてくる淫蜜で、大きく突き上げていく。強烈に子宮を叩き、衝撃でエルフのお尻が跳ね上がった。
「ほおっ、おん! 忍者も女騎士もアンタの事を考えて、オナニーしてるよ」
「へえ……」
「一度、やった女には興味ない?」
素直に質問に答えるべきではない。
――探ってきているのか?
仮に彼女が看守と繋がっていて、密告される可能性も考えた。
「いい女を得ているからな。他はつまみ食いだ」
ぎゅっと強く抱き付かれる。
「じゃあ、アタシもアンタの物にしてよ。ちっさいのもいいでしょ」
「男が欲しけりゃ、他に幾らでもいるだろ。それ!」
これ以上、余計な質問がされないように、腰の動きを加速させた。
ヌズブズブ――ッ! 耳元で、その可憐な見た目とは正反対の極めて猥褻なよがりが叫ばれる。
「くひぃ! すんごいぃイイ――、いっ、いっ、イク……っ、おっ、おっ、おん、おん、イクっ、イクイク――」
条件は整った。
ルルベルから欲しいスキルは「パーフェクトサーチ」という、確認されている探索系の能力の中では、最も広範囲が探れ、詳細まで暴く事ができる。
RPGならチート級の能力だ。歩く攻略本のような女である。
「俺もイク……」
ドピュルルルッッ! ドブドブッ! どびゅんっ、どくどくっ!
小さなルルベルの子宮にザーメンを雪崩れ込ませると、
「ほひぃ――、種付けぇ、きたぁっ! お……ほ……」
涙も涎も流して、美少女のアヘ顔を二万の観衆に披露するルルベル。
身勝手な凌辱者らしく、その場に事後のエルフを放置して、ミキナガは去った。
――――
必要なスキルは揃った。
クノイチから隠密・極み。魔術師からアンロック。女騎士から罠解除。エルフの冒険者からパーフェクトサーチ。
脱獄は日の高いうちに行う。
というのも看守らの多くはコロシアムの運営に人を取られる。地下の収容施設から唯一外と繋がっているのがコロシアムの空。空を飛んだり、客席に飛び込んで、そこから脱獄を試みる者は多い。
また、夜は定期的に見回りがやってくるので、独房にいない事が早くばれてしまう。
先の勝利報酬で、ミキナガも下半身を隠す半ズボンのような物を得た。
「警報結界の解除はできましたわ」
ミキナガが戦っている間に、グレイニアも少しずつ警報結界の術式の解析を行っていた。
「アンロック……」
鍵は開き、異常を知らせるアラーム音は聞かれない。
刹那の安堵。直ぐにまた緊張感が高まってきた。
パーフェクトサーチで、周囲を探り、脱獄ルートは頭に入れた。
グレイニアの手を握り「隠密・極み」で二人分の姿と気配を完全に消す。
「行くぞ」
「え、ええ……」
生唾を飲み込んだ。
脱獄を試みて、失敗すれば即処刑される。尚、これまで脱獄に成功した者がいたとは聞いた事がない。
地下通路を進んでいく。硬い土の洞窟状で、四角く掘られている。独房の中では、魔法の灯りがあったが、ここは松明もなく真っ暗だ。
故にパーフェクトサーチが頼りになる。
直ぐに男子房との分かれ道に至り、そこには松明があって、看守が一人、椅子に座っていた。
ミキナガからすれば、自分とグレイニアの姿は見えている。スキルの効果は続いているはずだが、流石に緊張は高まった。
大きな欠伸をするだけで、看守はまるで気付かなかった。
喜びが漏れそうになり、グレイニアが慌てて自分の口を手で覆う。
アンロックで、区画毎の鉄格子を開錠し、そこからコロシアムの方向に進み、この辺りは擦れ違う者が増えた。
体を接触させないように気を付けながら進み、急ぐ。
というのも区画毎の扉を開けたのだから、それを怪しまれるのは時間の問題だ。
走りながらも慎重に。
コロシアム付近から、反対側の女子房に入る。
濃厚な牝の匂いが詰まったここに、例えば男の囚人が脱獄を試みて、辿り着いても女を無視はできなくなる。そういう計算に基づく配置だった。
しかし、ミキナガはここまで充分に性欲を満たしている。
ただ、少し時間をかけても、ここの警報結界を解除して、女子の檻の幾つかの扉を開いておいた。
これで区画毎の扉を開いた者の疑いが分散される。自分達のいた独房が確認されるまでは。
「こっちか……」
ルート選択は二つ。
観光客や看守らが、他の陸地に向かう船のある港に向かうルート。
洞窟を抜けて、島の森林地帯に入るルート。
普通なら港に向かいたいところだが、そこに至る間にあるゲートは厄介な魔道具だ。
簡単に言えば、サーモグラフィのような魔法の装置があって、これだけは隠密スキルでも隠せない。
幸いに、小国の国家予算並みの超高額の魔導装置の為、そこにしかない。
――しかし、パーフェクトサーチで、そこまで分かるとはな。
ここまで便利なチート能力なのに、ルルベルでさえも脱獄が不可能だったのは、開錠と罠の問題か。
森林地帯に向かう洞窟には多くの罠があった。
その為、看守らもここにはやってこない。
念の為、隠密・極みは解かずに、先に進んだ。
罠の位置はパーフェクトサーチで確認できるし、罠解除は確実に成功する。
「っつ……」
「どうしましたの?」
「スキルの使い過ぎで、頭が痛い」
かなり先まで進んできた。もう隠密スキルは解除した方が、余計な力を使わずに済むだろう。
もう少しだ。
逸る気持ちを抑えつつ、最後の罠を解除して、外の光が見えてくる。
――――
白い仮面の彼女は、報告を受けた。
「脱獄ですか……。囚人番号G309号と囚人番号W102号」
どうやって独房から出る事ができたのか。
コロシアムの客席の一番上から殺し合いを眺めながら彼女は考える。
あの二人は、戦闘能力はあっても脱獄に必要な能力は持っていなかったはずだ。
仮に扉を魔法で破壊しても、音で直ぐにばれる。
開錠された区画を隔てる扉の数が多いのに、目撃情報がないのは、何らかの姿を消す能力を使っていると想定できた。
「他に、女達の檻も開錠されていると……。まずは、女達を捕まえ、それから港のゲート付近に兵を集めなさい」
「島の西側に向かう洞窟の方は?」
「全ての罠を突破できるとは思えないけど、仮にできても問題はない。洞窟を抜け、外に出た途端に絶望する事でしょうね」
捕まえる手間も省ける。何故なら、そこで二人は確実に死ぬのだから。
――――
洞窟から外に出た。
コロシアム以外での外の空気を吸い込み、解放感が溢れてくる。
「ああ、やりましたのね、わたくし達」
「まだ喜ぶのは早い。この島から脱出しなきゃな」
熱帯地方のような木々で構成された森が広がっていた。
ここから海に向かって、そこから島を出る方法も考えてある。
再びパーフェクトサーチを使い、海岸までのルートを擦ろうとしたが、途端に青ざめた。
「な……、このエネミー反応は……。近い!」
薙ぎ倒される木々の音がして、ドスンと地を揺らす響きがあった。
咆哮が聞こえる。
「そんな……」
巨体を目撃する。
――恐竜!? いや、このデカさは……。
「地竜が、どうして、こんな場所に……」
見た目はアンキロサウルスに似ていたが、その大きさは博物館でみた骨格の何倍もあった。むしろ、アン×ラスである。
「俺の知ってる奴と同じなら、草食なんだが……」
「とんでもありませんわ。凶暴な地竜で、雑食。涎を垂らして見てますわ!」
どうやら獲物と認識されたようだ。
――どうする? 一度洞窟に逃げるか?
もう脱獄に気付かれた頃だろう。戻っても待ち構えられている可能性は高かった。
「倒すぞ」
「どうやって、ですの!」
レベル98の大物で、見た目通りならかなりタフだろう。
地竜の口が裂けるように開かれ、火球が渦巻く。
「く……」
咄嗟にグレイニアが風のシールドを張った。
撃ち出された火球を阻み、火の粉が周囲に飛び散る。至る場所でボヤが発生した。直ぐに大きな火事にならなかったのは、湿気が多く、昨晩スコールがあって、濡れていたお陰か。
「少しの間、持ち堪えてくれ! それと、最大級の防御ができるようにしておけ」
「もう、やってますわ!」
まず土魔法と火魔法で、溶岩を作る。この過程が大事であり、最も時間がかかった。
地竜が前足を振るい、咄嗟に二人で逃げるが、洞窟の出入り口が崩され、塞がれた。
もう戻るつもりはなかったから、それはどうでもいい。
代わりに向かうべき場所がある。
「グレイニア、付いて来い!」
走り逃げれば、当然のように地竜が追いかけてきた。
巨体だが、走る速さは案外と速い地竜だ。ただし、木々が邪魔をする。
もう少しだ。
大きな池が見えてくる。
作り上げている溶岩の塊はちゃんと自分に付いてきていた。
「グレイニア、氷結魔法! 奴の進む前に、だ!」
坂になっているそこを池の縁へと駆け下り、距離を稼げたところで、反転。
グレイニアが氷結魔法を放った。
獲物にしか目が向いていなかった地竜は、凍り付いた地面で見事に滑り、そのまま池に落ちる。
「やりましたわ!」
「まだだ! グレイニア、防御!」
あの巨体だ。直ぐに這い出てくる。
――上手くいってくれ。
最大限に熱した溶岩の塊を池に落とした。
ドガガッガ――ッ! 巨大な爆発で、池の水が全て噴き上がり、衝撃は島全体を大きく揺らした。
グレイニアの施した防御は、どうにか自分達の周囲の爆風を制御できた。巻き込まれていたら、生きてはいまい。
唖然としている悪役令嬢に、
「念の為、暫く防御は続けておいてくれ」
と言っておく。
驚くべき事に、地竜は池から吹き飛ばされ、背中を地に落ちたが、完全に死には至っていないようだ。ただ、もう自分では起き上がれない。
「い、今のはいったい……」
「水蒸気爆発だ。条件が揃えば、もっと大規模な爆発を起こす事ができるはずなんだが、まあ、上手くいった方だろう」
この地竜が最後のトラップだと信じたい。
同じクラスの魔物が出たら、戦えるだけの充分な魔力は残っていないのだ。
――――
再び報告を受けた白仮面の彼女は「馬鹿な」と漏らした。
地竜が瀕死に近い状態で発見された。
ただの地竜ではない。確認された地竜の中でも最も強固で戦闘能力の高い個体であり、あれを眠らせてここまで運ぶのに、数百人の魔導士を費やしたのだ。
「それで、囚人番号G309号と囚人番号W102号の行方は?」
「何処にも。西の海岸に、足跡が見付かりました」
「そう……。既に島を出たのだね」
「ここから、他の陸地まで辿り着けるとは思えませんが」
「地竜を退けたのだぞ。甘く見るな。けど……」
仮面の下で彼女は笑っていた。
面白い。
正直な事を言えば、闘技場で女を絶頂させていった彼に興味を覚えていた。
もっと言えば、自分も彼の逸物を味わってみたくなっていた。
その男が、監獄島の歴史上、初めての脱獄を成功させたのだ。
「欲しいね」
「はい?」
「ここから辿り着くなら、エギス国の何処か、か。追手を差し向ける準備をしよう。捕まえて、たっぷりとお仕置きしてあげないと」
股座がこんなにも潤ったのは久しぶりだった。
――――
残った魔力で、作ったのは氷の塊。
海上を流氷に乗って移動している。
魔法で作った氷は溶け難かったが、それでも途中で作り直す必要はあり、風の魔法で推進していた。
つまり、非常に疲れる。漕いだり、泳いだりするよりはマシだが。
凍傷防止に、削った木の皮を敷いているが、やはり冷たい。
「ああん、温めてぇ」
と女に抱き付かれた。
「ちょっと、離れなさい、このチンチクリン!」
と、女が嫉妬を露わにしている。
二人で脱出する計画だったが、もう一人が加わっていた。
エルフのルルベルである。因みに彼女は素っ裸だ。
「いいじゃない。あたしのお陰で、木の皮も用意できたし、風魔法の交代要員も増えたでしょ」
女子の檻の鍵を開けたのは確かだが、ルルベルはそこから森林に向かう洞窟の方へと移動した。
すると、厄介だった罠は解除されていて、ミキナガが隠密を解けば、もう全てを察したのだ。
「地竜との戦いを見ていただけでしょ、貴女は」
「まあ、自分が同じ立場だったら、参戦する? ごめんでしょ。洞窟が崩された時には焦ったけど」
「そのまま潰されていれば良かったのですわ」
この二人、本音で話している。
少なくとも陸地に到着するまで、退屈はしないで済みそうだ。
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