冒険者編②
深夜でも捕縛した魔物の引き取りはしてくれるようだ。
夜勤当番の受付嬢はカンナという冒険者ギルドで働きだして一年未満の新人だった。
茶色いオサゲ髪で地味な印象。サキュバスを前にオドオドとしている。
「こ、こちらに連れてきていただけますか」
案内されたのは会館の裏手にある倉庫のような建物で、ここに閉じ込めておく。
「ねえ、私に群がる男はどこ?」
「朝まで待て。あんまり五月蝿いと、ここで滅するぞ」
脅しておいて、倉庫にぶち込んだ。
「こんな建物で、まだ元気な魔物を捕えておけるのか?」
カンナは答えた。
「冒険者ギルド特製の魔物保管庫です。問題はないはずです。仮に逃げても責任はギルドにあって、貴方がたにはありません。その場合も報酬は支払われます」
受付前まで戻ると、クエスト完了の手続きがされた。
これで報酬は約束されたが、受け渡しは明朝まで待つ事になった。
なので、そのままギルド会館にいさせてもらう。
金のある無しに関係なく、この時間から入れる宿はない。
「では、私は奥で仮眠を……。急ぎの用があったら、ベルを鳴らしてください」
二階には簡易的なベッドがある部屋があるらしい。
三人きりになった途端、グレイニアがモジモジとしだした。
「ミキナガ、そ、その……、スッキリしていないのではなくて?」
「……したいのか?」
真っ赤になる悪役令嬢である。
「べ、べつにわたくしは、ミキナガがずっと股間を膨らませたままだから、言っただけで……」
「正直に言った方がいいよ、グレイニア。ミキナガは意地悪だから、悶々としていると分かったら、放置させられるよ」
とは、ルルベルだ。
「う……、うう……、今日はまだエッチしていませんわ。だから……」
「まあ、新しいスキルの効果を確かめてはおきたい。グレイニア、実験体になれ」
「え、ええ!」
スキル「愛の束縛」で、グレイニアの四肢を拘束する。
先程、サキュバスにしたように大の字を描くように手足を縛り、まずはそのままにした。
「あ……、身動きできないようにされて、ハァ、ハァ、いやらしい目で見られていますわ」
競泳水着に似たボディスーツ姿のグレイニアだが、乳輪と乳首が浮き出て、股座から濡れ染みが広がっていく。
「どうだ。いつもより、エッチな気分が強いか?」
「さ、さあ。だって、いっつもミキナガには、ハァ、ハァ、発情しちゃってますの。ハァ、で、でも、確かにいつもより、我慢できないですわ」
身体的な反応を見れば、全身が汗ばんで、ボディスーツ全体も濡れてきていた。
腋の下の顔を寄せれば、濃厚な牝香が鼻孔に満ちる。それだけで、肉棒が脈動しそうだ。
「感度はどうだ?」
いつも以上に突起を強める着衣から浮き上がった乳首に触れる。
「はひぃ! おっ……、おっ、おほっ、こ、これだけでぇ、イ……」
「堪えろ」
「うっ、ぐ……」
食い縛って絶頂を押さえ込んでいるグレイニアの表情に興奮を高めさせられた。
そして、自分の命令に従う彼女に見るマゾヒズムと献身。
「いい子だ。可愛いぞ、グレイニア」
「あっ、あっ、頭、撫でられて、イ――、ハァ、ハァ、言いつけ、守れませんわぁ、あっ、ああ――」
グレイニアの股座の濡れ染みが更に広がり、脇から生暖かい物が彼女の太股を伝い流れていった。
「しょうがないな、グレイニアは。じゃあ、イっていいから、キスをするぞ」
「キッスぅ! はあ、して、してぇ」
唇を尖らせる猥褻な顔を見せてきて、ふぅ、ふぅ、と興奮しきった呼吸を奏でてくる。
グレイニアの頬を両手で優しく挟むようにして、顔を寄せれば、彼女の舌が伸ばされてきた。
それを唇で挟み込んで、口内で舐る。
口を半開きに、こちらからも舌を伸ばし、唇同士が接触する前に、絡ませ合った。
「ふぅ、ふぅ、ペチャ、ハァ、れろれろ……」
ねっとりと擦らせてきたかと思えば、激しく舌を揺さぶってきて、二人分の混ざった唾液が垂れていく。
前が窮屈で堪らないから、肉棒を露出させ、グレイニアの腹部に擦り付けた。
「ぁふうぅ、イク……」
唇で唇を啄みながら、舌は接触させたまま、興奮した呼吸を注がせ合う。
「ふぅう――、ペチョペチョ、ぢゅる……っ、おっ、ほぉ……」
瞳が上向くアヘ顔でも、グレイニアは貪欲にベロチューを続けてきた。
「いふぅ……、んっ、チュ……、ぺちゃ、レロレロレロレロ……」
拘束された女体を痙攣させながら、失禁も続いた。
顔を離す。
理性の欠片も残っていないような卑猥な顔に下品な表情になっていた。
「この愛の束縛というスキルは、自由に高さや場所を変えられるようだ。どれ……」
魔法のロープで彼女の四肢を縛ったまま、仰向けにさせた。
「ハァ、ハァ、ハァ、身動きできない状態で、この格好は……、ああ、ミキナガ、お願いですわ」
更に両足だけ上げさせ、ボディスーツの股間部を横にずらす。
女陰から足の付け根にかけて、溜まっていた淫蜜が滝状に流れ落ちてきた。
ラビアが膨らみ、肉芽もいつも以上に突き伸びて、汗と小水、そして蒸れた牝粘膜の匂いが濃厚に放たれてくる。
「一瞬で気を失うなよ」
ペニスを当て、勢い良く前に押し込んだ。
ぬぷぷ――っ! 淫蜜が飛沫をあげ、亀頭が強く子宮口を叩くと、女体が跳ねながら、仰け反りを見せてくる。
「おひぃいいぃ――ぃ! あが……、イった……ぁ、オチンポ、挿れられただけで、イきましたわぁ」
構わずに、腰を振ってやった。
ぬぶっ、ズンっ、ぬっぷ……。 吸着され、吸い込んでくる肉壺に、衝動が、掻き立てられたが、スキルを操作して、グレイニアの体を前後に揺らした。
「おっ、おっ、一突きごとにイかされひゃいますぅ。おぉん、おん……」
黙って見ていたルルベルが、椅子に座ってオナニーを始めている。
「ハァ、ハァ、すご……」
ルルベルは好きにさせておいて、プレイを楽しむ。
「グレイニア、ここは誰でも入ってこられるギルド会館だ。俺たちが、こんな時間に戻ってきたみたいに……」
失念していた様子の令嬢に思い出させれば、膣が激しくうねる。
「ひぃ……、今、誰か来たらぁ……」
「処女を失う瞬間も大勢に見られたな」
グレイニアの腰が揺さぶられた。
「嫌ぁ……」
「とんでもなくドスケベなアヘ顔も見られてしまうな」
「イきまくってるの、見られたらぁ……、ハァ、おん、おおぉ、イク……」
プシャプシャっ、と潮吹きまくるグレイニア。ギルド会館の床を随分と汚してしまった。
――まっ、ここでセックスしてはいけないというルールもないしな。
ふと、ルルベル以外の視線を感じた。
階段から、手摺に隠れてはいるが、受付嬢が見ている。
真っ赤になっているが、興奮した表情で、覗いているのだ。
注意はしてこない。なら、構わずに続けるまで。
「ミキナガ、も、もう……、おほっ、イき過ぎて、天国見えちゃいますわぁ!」
サキュバス相手には悶々とするだけだった性欲をグレイニアにぶつけてしまっていた。
「望んだのは、そっちだろ?」
「ゆ、許ひてぇ――」
「俺を満足させられるのは、お前だけだ。頑張れ」
「頑張りゅう! わらくし、ミキナガに、必要な女れすもの」
健気に腰を振ってくれる悪役令嬢。
余裕ぶってはいたが、グレイニアの名器、気を抜いたら立場が逆転していても不思議ではない。
「ハァ、ハァ、もう少しだ」
彼女の太腿を掴んで、連続して子宮口を小突きあげていった。
淫蜜を掻き出すカリ首に、粘膜ビラが絡み付き、刺激が増せば、快楽の狂しさが限界を訴えてくる。
ドブッ! ドピュルルッッ、ドブドブドブ!
ザーメンを噴き上げるごとに激しく脈動する肉棒。その度に脳天まで快感が突き上げていて、ブルッと体を震わせた。
「熱い……、イグぅううっ! イグイグッ! おっ、ほぉおお――」
魔法のロープに吊られた女体が、仰け反りから波打つように跳ねていく。
牝汗が飛び散って、ロビー全体に卑猥な匂いが満ちていた。
「ハァ、あ、あぁあ……、こんなの知ったら……、また、求めてしまいますわ」
艶めいた唇の端から涎を垂らしながらうっとりしているグレイニアは、猥褻感も濃厚であったが、間違いなく美しかった。
――――
朝になり、ギルドマスターの確認があって、報酬が支払われた。
一サークルがおよそ一円位の価値と認識。八百万サークルを得た。
金貨や銀貨ではなく、掌よりも小さい金属板に偽造防止の刻印が入った物である。一つ十万の版で八十枚が渡された。
真っ先に防具屋に向かう。
ギルドマスターからお勧めの店を聞いて、向かったそこは、駆け出しからベテランまでが満足する品揃えで、店構えも大きかった。三階建てで、防具のデパートといった感じである。
「私が担当させていただきます」
と、出てきたのは、店長の口髭にぽっちゃりした中年男性だった。
この店に来るにあたって、ギルドマスターからの紹介状を持参している。
いきなり銅クラスになった期待の冒険者パーティと書いてあったらしく、今後、上客になると考えたのだろう。
「これだけ品揃えがいいと、何を選んだらいいか、分からない。お勧めは?」
変に詳しい振りをするより、ギルドマスターの紹介の店なら任せた方がいい。
「そうですね。では、ますはそちらのエルフのお嬢さんから。とっておきがございます」
ルルベルに用意されたのは、牝ガキシリーズ。
牝ガキの靴。牝ガキのローライズホットパンツ。牝ガキのスポーツブラ。
セットで二百万サークル。
「どうなんだ?」
相場が分からないので、ルルベルに聞いていた。
「靴は速度上昇。ホットパンツには状態異常耐性。スポブラには防御力アップ。この性能でその値段なら、かなりお買い得」
試着した本人も気に入った様子だ。購入決定。
「そちらのエッチな、いえ、上品なお顔立ちのお嬢さんには……」
「わたくは、このままでいいですわ」
一番いい防具を要求しそうなグレイニアが意外な事を言った。
「どうしてさ?」
ルルベルが聞くと、恥ずかしそうにグレイニアが答えた。
「だって、このボディスーツは、初めてミキナガからプレゼントされたものですもの」
時々、とても可愛いグレイニアである。
「けどさ、ずっとそれ着てるじゃない。臭うよ」
「ええ!? で、でも……」
店長の目が光った。
「下取りなら、高額で買い取りますよ! ふう、ふう」
えらく興奮している店長だ。
「グレイニア、着替えは必要だ。それは下着と変わらんしな」
「ミキナガがそう言うのなら」
店長が幾つかお勧めを持ってくる。
「こちらは、変質者のトレンチコート。全ての魔法、物理攻撃に耐性を持つ、優れ物ですが、実は売れ残っていまして」
「あら、どうしてですの?」
「コートの下には、他の防具、衣服は身に着けられない呪いのようなものが付与されていまして……」
グレイニアも流石に引いた。
「値段は?」
ミキナガは聞いた。
「一万ゴールドで、如何でしょう?」
「買った」
グレイニアは更に引いた。
「それをわたくし着させて、な、何をする気ですの?」
「まあ、そのボディスーツを着ていたいなら、時々は洗わないとな。乾くまでの間だけ、着ていればいい」
「うう、絶対、変な事を考えてますわ」
お嬢様のブーツも購入。
ボディスーツの上に身に着ける革の胸当てを頼む。
「在庫にある物では、乳袋のサイズが合いませんね。特注で作りますので、サイズを測らせていただきたいのですが」
店長が自らグレイニアに寄ってきそうになって、女性店員が押し退けてきた。
素材を選び、使う量も多くて、百五十万もかかった。
武器や暫くの間の宿代も残しておきたいので、ミキナガの分は安く済ます。
登山家の靴。探検家のズボン。探検家のシャツ。これで十万サークルだ。
ルルベルは早速、牝ガキシリーズを身に着け、グレイニアはブーツだけ。コートは持ち帰り、胸当てができるのは二日後だ。
ミキナガも着替える。
防具屋から出ると、次は普通の服飾店。ミキナガはそこで下着と着替えになる旅人の服を購入する。二万サークル。
武器屋もギルドマスターのお勧めの店だ。
こちらは個人経営の店で、こじんまりしていたが、珍しい武器も置いてある。
「で、どんな武器を探しているんだ?」
ドワーフの店主が対応してくれた。
「あたしは弓が欲しい」
やはりエルフは弓か。ルルベルが選んだのは、シルフィードボウという風の精霊の加護が付与された弓。
「わたくしは、魔法使いですが、特に杖も必要としませんわ」
「とはいえ、敵に接近された事も考えておいた方がいい」
「ミキナガがそう言うのなら」
二人の会話の間に、ルルベルが何か見付けたようだ。
「これなんか、いいんじゃない?」
「包丁?」
「修羅場の出刃包丁だって。グレイニアにはぴったしだよ」
ドワーフが説明してくれた。
「そいつは、女性限定の武器だな。人間でも魔物でも女、あるいは牝がパーティの男に近付いた時、そいつらへの攻撃力は三倍になる。あと、パーティの男への攻撃力は十倍だな」
パーティの男への攻撃が理解できない。
「買いますわ」
刺す気満々じゃないよね。
「ミキナガはどうするの?」
ルルベルに聞かれて迷った。
今は魔法を中心に戦っているが、パーティ夜明けには前衛メンバーがいない。
とはいえ、脱獄囚である自分達が新たなメンバーを募集する訳にはいかない。
――前衛向けのスキルを手に入れる必要があるか。
購入の決まった出刃包丁を見詰めながら、怪しく微笑んでいるグレイニアを見た。
「……俺は、刀があれば……」
剣道はやっていたから、スキルなしでもそれなりに戦えるのではないだろうか。
ルルベルが首を傾げる。
「刀か……。使いこなせる冒険者も少ないから、ここにあるか……」
「あるぞ」
店主が持ってきたのは、真っ直ぐな杖。
「杖だが……、あっ」
「気付いたか。そいつは仕込み杖だ。刀らしい刀じゃないが、魔力をちょいと流せば、血糊と刃毀れの防止ができる。切れ味なら、うちにある斬撃武器の中でもトップクラスだ。名を座頭の杖という」
抜いてみると、通常の日本刀よりも細身で、脇差よりは長いが、短めの刃であった。
素早く、扱いやすく、居合向きの武器である。
「短いのはダンジョンでも有利か。まあ、突きを中心にした方がいいだろうが」
実際、斬るより、突き、または叩く戦い方が基本であったらしい。
シルフィードボウ八十万。修羅場の出刃包丁二十万。座頭の杖百十万。
まだ二百万以上が残った。
宿を探す前に、混雑している町の食堂に入る。混雑しているのなら、それなりに味もいいのだろう。
三十分程待ってから、席に案内された。
色々なゲームや物語が混ざったような世界だけあって、期待以上のメニューである。
「から揚げ定食を」
「よく分かりませんわ。ミキナガと同じ物を」
「あたし、カレーライス」
注文が届くまでの間に、相談だ。
「宿の条件だが、長期滞在ができないとな」
大陸に渡る船台や、当面の路銀は稼ぎたい。二百万以上あっても、こちらの世界では移動に何か月もかかる。直ぐに出発するより、ここで冒険者としての経験を積んでおく方がいいとも判断した。
「田舎から来て、冒険者になったばかりの駆け出し向けの安宿もあるけど……」
「わたくし、清潔な宿でないと嫌ですわ」
「牢獄経験者なのに、贅沢だね」
「ミキナガとの同棲の方が長かったのですわ」
独房だが。
「ああ。じゃあ、壁が厚い宿じゃないと駄目か。あの時の猥褻な声、デカいもんね、グレイニアは」
「そ、そんなに大きいかしら」
「そりゃ、ねえ。けど、駆け出し冒険者の性事情って、大変だよ。ほら、冒険者を始めるのって、思春期が多いじゃない。男女のパーティだってあるし、安い宿は、大部屋に複数のパーティが一緒の場合もあってさ、男だけのパーティだって、女の子のパーティが気になって仕方なかったり」
「興味ありますわ。詳しく」
「あたしも駆け出しの頃、こっそりオナニーしている男子を何人も見たよ。我慢できずに女の子に手を出して、袋叩きになってた奴もいたっけ。恋人同士になったって、セックスできる場所もなくて、クエストの途中で、こっそり二人が抜けだして、青姦」
そういえば、ルルベルはエロゲ出身だった。
「若い連中の性事情はいい。宿の相場はどうなんだ?」
「この規模の町で最高級の宿なら、一人一泊、食事も付いて、二万サークルくらいかな」
向こうの世界の感覚なら高級ホテルで二万なら安い。
「それだと三人で一泊六万か。無理だな」
暫くは滞在するが、そう長居もできない。追われる身である事を忘れてはいけない。早く金を溜めるなら、グレードを下げるべきだ。
食事が運ばれてきた。
「はい、お待たせしました」
黄土色の髪を背中まで伸ばして、頭部にスカーフを撒いている女性である。三十代くらいに見えるが、全体にむっちりとして、目元に泣きぼくろ。濃厚な色香をもった美女だった。
とりあえずアナライズしてみる。
ネリア。レベル8。
普通の町民であるが、気になるのは三ツ星シェフという調理スキルだ。
「もしかして、この料理は貴女が?」
「あら、どうして分ったのかしら?」
「なんとなく、ね」
「そうなんです。私がこの料理を作り、今はオーダーが一旦止まったので、給仕の手伝いを。この店は、私が切り盛りをしていて。泣き(亡き)夫と始めて、十年になるかしら」
未亡人か。
ムッとするグレイニア。
「ミキナガ、わたくしだって、包丁を持ってますわよ」
ちょっと喋っていただけだろ。
「宿の情報を聞くんだ」
「おや、宿を探しているのね。この町は初めて?」
ここで十年店をやっているなら、そういった情報も持っているだろう。
「昨日来たばかりだ。清潔感があって、月単位で泊まれて、できれば音が遮断される部屋があるのが理想だが」
「冒険者ですかね?」
「ああ。銅級を頂いている」
「まあ、凄い。それなら、ここから西側に行って、二つ先の角を曲がった所に、風来亭という宿があります。一泊五千サークルで、食事はないけど、いつでも体を洗える入浴場もあって、壁も厚い。聞かれたくない話をするにもいいらしいですよ」
「ありがとう。行ってみるよ」
食事に関しては、益々、三ツ星シェフのスキルが欲しくなった、と言っておく。
――――
アデレルは大人しく清楚な顔立ちの美少女で、そんな彼女が一人旅をしていれば、邪な思惑で近付く男も多い。
濃紺のストレートの長い髪をして、如何にも田舎の町の娘といった雰囲気だが、掌には余る豊乳に官能的な腰付きが男の欲望を駆り立てた。
そんな連中は恰好の獲物である。
街道から外れ、人気のない場所に追い立てられたように見せれば、自分の殺しの現場を見られる事もない。
自ら護衛を買って出ておいて、体を狙ってくる連中は、全員殺した。
酷く冷めた目で死骸を見詰め、それから漁る。
「五人で、十五万サークルとか、しょぼ……」
せめて、期待感のある逸物でも持っていれば、生かしておいても良かったが、どいつも粗末であった。
彼女は暗殺を生業にしている。
ただ、特別に困難なターゲットの場合でないと依頼が来ないので、こうやって日銭を稼いでいた。
バサッと翼の音がして、飛来してきたのは梟だった。
誰かの使い魔か。足に手紙が結んである。
こういう時は大抵至急の依頼だ。
受け取った手紙を読む。
「ターゲットは三人。女二人は殺して、男は捕縛して連れ帰るのね。へえ、あの監獄島から脱獄を成功するなんて、やるじゃない」
楽しくなってきた。
地竜まで退けた者ら。まともに戦えば、自分でも苦戦は必至。
そんな相手をターゲットにするのは久しぶりだ。
報酬も悪くなく、早速移動を開始する。
目指すは監獄島から一番近い、エギス国。その南部だ。
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