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第10話 求愛

彼と別れてしばらく。
仲間たちとの共同生活場所で私は胸を抑えた。
不思議だ。一人の時間がこんなにも苦しく感じてしまう。
その理由は明白だった。

不思議な人だった。
トーワと名乗る黒髪の男性。
顔立ちは平凡なのだが、艶のある黒髪がとても印象的だった。

声をかけた理由は、曖昧なものだった。
街でよく見かける野良猫に話しかける男の人の物珍しさに近づいた。
羨ましくなって野良猫たちに混ざった。
私も優しくしてもらえるかもって……
そんなわけないのに、という諦観は私の予想とは違った形で裏切られることになる。

治療を引き受けてくれたことも。
人に怯える私の手を取ってくれたことも。
彼にとっては当たり前のことだったのだろうか。

余裕なんて全くなかった。
太々しいと評された初対面の時だって、正直不安だったし怖かった。

彼の態度は社交辞令でもなかったように思う。
最初は違和感を感じた。その男の人は何かが違ったから。
人の悪意に敏感で、怯える私の手を取ってくれた。
驚いたのに、振り払う気さえ起きなかった。それほどあの人の手は優しくて温かかったから。

顔をしかめない。触れてくれる。笑いかけてくれる。
しかも、私みたいな醜い獣人の住居に何の警戒もなく足を踏み入れるなんて警戒心が無さすぎる。
でも注意する気にも、怒る気にもならなかった。
あの人の行動の一つ一つに私は確かに救われる想いだったから。

ブス専という言葉は初耳だった。
正直最初は優しさ故の嘘なんじゃないかとさえ思った。
私を気遣ってくれたのではないかと……
それでもいいと思った。たとえ偽りの言葉でも、彼の優しさは本物だということなのだから。

だけど、初めて男の人に優しくしてもらえた私は思いあがった。
分不相応な身分を思い浮かべた。

にまりと口角が上がるのを必死に堪えた。普段は不愛想だと自他共に認める私だけど、今だけは表情が緩みそうになってしまう。
こんなみっともない顔は見せられない。特にトーワには。
だからこそ必死にポーカーフェイスで耐えていたのに、自分の口から聞いたこともないような甘ったるい声が出てしまった。
それは猫人族の雌が”求愛”の際に出す鳴き声だった。

それが自分の出した声で、雄に媚びるものだというのは本能的に理解した。
咄嗟に口元を抑えた。
我慢できずに発情して「みぃ、みぃ」と雄に甘える蕩けた媚び声。

しまった、と思った。

その顔が嫌悪に歪む幻影を見て恐ろしくなった。背筋に氷塊を押し当てられたかのような感覚。
いつか同じような鳴き声を出したお母さんが父に殴られていた光景が浮かんだ。
気持ち悪い、と。嫌悪に顔を歪めてお母さんに暴力を振るっていた。
だから彼に気付かれていないことを切実に願った。
しかし、恐る恐る顔を上げても彼の顔はただ優しそうに微笑んでいただけ。
気付かれなかった?
いや、気づいていたはずだ。だけど彼はそれにさえ嫌な顔をしなかった。
悪感情に表情を動かすことなく私を見つめる。私は理解したのだ。
親愛なのか、友愛なのか、それとも別の何かなのか。
それは分からないが、これがきっと異性からの”愛”と呼ばれるものなのだろうと。

それは天啓のような衝撃だった。

私のような醜い獣人を美しいと感じる雄。
まるで創造神様が夜を貸してくれたような――黒髪の男性。

彼の全てに私の心は平伏した。
気付けばその場に跪きたくなっていた。腹を見せて服従しろと獣の本能がずっと訴えてきていた。

「ふふ……ふふふ……トーワ、トーワ」

手を引いてくれる彼を見ていて思ったのだ。
もし父や兄がいたらあんな感じだったのだろうかと。
幼い自分に暴力を振るう父親という”だけの”雄とは違う。自分の少ないご飯を奪う兄という”だけの”薄情者でもない。
血が繋がっていなくても、彼は私の理想だった。
彼に、トーワに、私は確かに無償の愛を感じた。
理想の父で、理想の兄で、理想の雄。
いつからか何もかも諦めてきた。
もしかしたら、叶うのだろうか。
全部、全てが叶うのだろうか。

私を傍に置いてくれるのだろうか。

お腹の奥がキュンッと強く疼いた。

「……ッ!」

慌てて脇に置いてあった飲み水を一気飲みして熱を落ち着けた。

「ふぅ、ふぅ」

吐息に艶が混じり出した。
力が抜けてよろめきテーブルに手を着くと、そこで1枚の置き紙に気付いた。

完治した旨と、クエストで一部例外を除いたC級以上の冒険者が強制招集されたことが記されていた。

治っていた……?
となると彼には無駄足を踏ませてしまったことになる。
申し訳なさに胸の奥が重くなった。
それにもうトーワを家に招くこともできない。

「あ……」

そうだ、貢物を送ろう。
会いに行く口実もできるし、きっとトーワも喜んでくれるはずだ。
懸念していた彼女の容態もよくなったのなら、憂いはなくなる。
しばらくは黙っていよう。
なに、少しだけだ。
これは家族同然の仲間達にさえも秘するべき最愛の彼との逢瀬だ。
少しだけなら、仲間達も許してくれるだろう。

私はパーティーメンバーの証である”銀色の翼”のエンブレムを握りしめた。

さっそく準備をしなくては。
何がいいだろうか。何を喜んでくれるだろうか。
何だっていい。何だろうと差し出せる。
あの人になら私は全てを捧げてもいい。
そして、彼に一つだけ望めるのなら。

私を――トーワの番にしてもらおう。

「ふふっ、ふふふっ」

生まれてから今まで全て零れ落ちてきた。
掬っても掬っても、この醜く細い指の隙間から、何もかもが取り零されてきた。

プツン――何かが切れる音が聞こえた気がした。

「トーワ、トーワ」

嗚呼、もう辛抱堪らない。
甘い匂いを感じた。
これは確か――病床に臥せっていた彼女と同じ香りだ。
私は仲間たちが自分にだけ詳しく話してくれなかった理由を察した。
もう私は子供じゃないというのに……もう交尾だって出来るというのに。
体が茹るように熱い。
あまりの熱に私は身に纏っていた服装を脱ぎ捨てショーツ1枚になる。

(もう、私子供じゃない。子供じゃないから、こういうことしても、いいの……ッ!)

気付けば枕に腰を振っていた。

「み、みぃ、みぃっ、みぅ、みぃ……っ!」

目の前にトーワの姿を幻視した瞬間。もう耐える必要のなくなった雌の媚び声が喘ぎ声のように溢れ出てきた。
もはや堪えることなどできない本能からの求愛声に私は驚く。
淫らに鳴き、雄に媚び、悦ばせ、相手の性器を苛つかせることを目的とした甘くはしたない求愛の音。

(こ、こんな、はしたない声……が、私……っ、から……!)

妄想する。いつもより鮮明に描くことの出来たそれはトーワとの交尾だ。
全身を弄られ、突起という突起を責められ、ヒダというヒダが、彼のペニスで掻き回される。
私自身ですら認識していなかった自分の欲望を自覚すると、穴から熱い体液が零れ出た。

可愛がってほしい。番にしてほしい。優しくしてほしい。触れてほしい。撫でてほしい。遊んでほしい。苛めてほしい。嬲ってほしい。弄んでほしい。傍にいてほしい。飼ってほしい。

もっと、もっと、なんでもしてほしい。

「みぃ! みぃ!」

この感覚は覚えがある。周期的にやってくる発情期に近い。
だけど今回は違うというのに、その快感はその時のそれを遥かに超えていた。
ショーツの中に手を入れて膣の上にある小突起を嬲った。
淫らにしこった陰核の皮を剝き、あの人を想い更に気分を高める。先端に触れただけで獣のような激しい喘ぎ声が響いた。
可愛いと、言ってくれた。
私を見て、ただ――可愛いと。

「みッ――ん゛みぃぃぃぃぃいっ!!」

目の前が真っ白になった。魂が溶けてなくなるような法悦。
薄い白に濁った雌潮が噴き出た。
その絶頂はこれまでの拙い自慰で得た快感が全て合わさっても足元に及ばないほどの悦びだった。
荒く息を吐いて四肢を脱力させる。

「ハァーッ、ハァーッ」

駄目だ。もう戻れない。
私のような醜い獣にも沢山の優しさをくれた人。
どんな雌にも譲りたくないと感じた。

私の顔を見て”可愛い”という評価を口にできるのなら他の3人に対してもきっと同じだろう。
それなら、いずれ露見する。
きっと彼を求めて取り合いになる。薄っすらとそんな予感があった。

強い雄は複数の雌を侍らせる。
彼が望むなら全員が平伏すだろう。
私たちの群れに上下はない。
だけど、これだけは譲れない。
譲るなと理性以上の強い感情が私を支配していた。
たとえ奪い合いになろうとも――

あの御方の寵愛を一番に受けるのは……私だ。

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