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第17話 そういえば?

私はその日、傷の治療に治療院を訪れていた。
目の前で私を癒してくれるのは黒髪の少年。

私の状態異常を治してくれた治療師トーワさんだ。

許されないことをしたと思う。
やってはいけない行為で私は彼を傷つけた。
だけど彼はあっさりと私を許してくれた。
街の治療院に行ってもいい顔をされたことがない。傷の治療行為はその際に必ず肌を晒さないといけないから。
向こうも仕事なので対応はしてくれる。だけど肌を晒した一瞬に垣間見える嫌悪の表情を見るのが辛かった。
自分では治せない大きな怪我をする度に、そのことを考えて憂鬱になる。仕方のないことだと割り切ることもできずに、私は陰鬱とした気持ちで怪我を治してもらっていた。
銀翼以外で私を受け入れてくれる人なんていないと思っていた。
だけど、疎まれていた私とも……トーワさんは友達になってくれた。

どんなに嬉しかっただろう。
どれだけ救われたことだろう。
どれ程の言葉を重ねてもこの感情は表しきれないのかもしれない。

今では彼の治療院でしか傷の治療はしてもらっていない。
トーワさんは優しくて、嫌な顔もしない。
それが今まで嫌々行われていた治療行為とは全然違う安らぎを感じさせてくれる。
怪我をして治療院の道中でうじうじと落ち込んでいた少し前とは違う。
よくないことかもしれないけど、怪我をする度に会いに行くことができる口実に喜びさえ感じてしまっていた。

「――――」

トーワさんが何かを口にする。
私は何も言わない。ただ立ち尽くしていた。
なんて言ってくれたんだろう。
私はもう一度聞き返して耳を傾け――

「その胸気持ち悪い」

「どうしたシルヴィ? 何か顔色悪くねーか?」

朝食の席でアイリさんが心配そうに声をかけてくれた。

「今朝はちょっと夢見が悪くて……」

あの時のことを鮮明に思い出してしまった。
また見てしまいました……今でもたまに見る悪夢。
ううぅ、小さい頃のトラウマが……

「……またあの夢か?」

「はい……」

銀翼の皆には話したことがある。
私はこの体を理由に同族の幼馴染にこっぴどく拒絶された過去があった。
段々と大きくなっていく自分の胸が嫌いだった。
周りからの目も次第にきつくなっていって、一緒に遊んでくれた同族の友達でさえ私を避けるようになっていた。
里を出てからもたまに夢に見ます。最近は見ないと思って油断してましたが……
アイリさんが気を遣ってくれています。

「顔洗ってさっぱりしてきたらどうだ?」

「もう洗いましたよ。そんなに酷い顔してますか……あれ? ミーナさんは?」

そういえばいないことに気付いた。
まさかまた勝手にどこかに行ってしまったんですかね?
でも置き手紙はないみたいですし……
まだ寝ているんだろうか?

「朝早くにドクロベリー採ってきて眠いって言ってたな。二度寝してるんじゃねーか?」

ドクロベリー?
あれ結構な高額で取引されてる木の実ですよね。
商人たちの間で殺し合いになるほど求められたと言われている高級食材、でしたっけ。あれこの辺りじゃあんまり実ってなかったような……
なんでまたそんなものを……なんて分かり切ってますよね。

「貢いでるんでしたっけ?」

「みたいだな」

アイリさんはため息をついて呆れている。
ミーナさん本人が貢いでるとしか言わないから他に言いようがないんですよね。
もっと他に贈り物とか、プレゼントみたいな言い方が……だけど、ミーナさんは貢ぐという行為を本気で気に入ってる節があったり。
私には体のいい搾取としか思えないですけど……

「見つけたら全部自分で食ってたのに不思議なもんだな」

「そうですね」

あれはミーナさんの大好物なんですよね。
好きな物を手当たり次第に渡してるんですかね。
対象によって家を出る時間はバラバラですけど、採取に必要な時間を考えたら帰りがやけに早いような……?
ミーナさんは好きだという人とちゃんと交流はできているのか。
都合よく使われてるだけなんじゃないかという不安が脳裏を過ります。
疑うのも失礼だとは思いますが如何せん私達には男女トラブルの前例が……
本当に相手はどんな男性なんでしょう。止めるべきなのかもしれないけど、ミーナさん本当に楽しそうなんですよね。

「アイリさんは今日はどうするんですか?」

「アタシはギルドに行くかな。さすがにたまには何かクエスト受けないと腕が鈍っちまいそうだ」

なるほど。確かにここ最近は冒険者としての活動がおざなりになってきていた。
現在は一人抜けているから今は個人で依頼を受けていること多くて、銀翼としての活動は縮小されている。
いざという時に動けないと命の危機すらありえる危険な職業ですからね。アイリさんもそれを心配しているんだろう。
私も他人事じゃないですね。
シルヴィは? と視線を向けられる。
私はどうしましょう……トーワさんに会いに行くつもりでしたが、昔胸を馬鹿にされた記憶を思い出してしまったせいでちょっと怖いです。
胸が締め付けられた気がする。息がほんの僅かに浅く早くなっていく。

「お、おい? 大丈夫か?」

席を立ち上がったアイリさんに笑い返した。また心配してくれています。
大丈夫。トーワさんはあんなこと言わない……と思います。
あの人は優しい。たとえ思っていても他の人とは……あれ?

「……トーワさんって体はどうなんでしょう?」

「体?」

アイリさんがパンを千切ってスープに浸した。
スープを吸ってふやけた黒パンを口に運びながら彼女は疑問符を浮かべている。

「いえ、胸が大きいのってどう思ってるんですかね?」

「はぁ? そりゃいくらトーワでもこんな気味悪いもん……え?」

アイリさんが手に持っていたパンを握り潰しました。
そうです。とんでもないことに気付いてしまったかもしれない。
トーワさんはブス専。それは何となく容姿のことで”顔だけ”に限った話だと思ってた。
でも私たちは体に関してトーワさんがどういう価値観を持っているのか聞いたことがない。
可能性は0じゃない。

「え、トーワって胸に脂肪あるほうが好き、なのか……? 手足長くてもいいとか……?」

「お腹に肉がなくてもいい……?」

静寂。時間が止まったみたいな間が流れてから――動き出した。
アイリさんが珍しく狼狽する。勿論私も。

「は!? え、うっ、嘘だろ!? トーワって体もアタシ達みたいなのが好きなのかっ!?」

「わ、分かりません! 確認したことないですし!」

「じゃあトーワってアタシ達みたいな顔が好きで、体も胸が大きくてお腹が引っ込んでて手足長くて肌もスベスベしてるほうが好きなのか!? ド変態じゃんっ!?」

「なんてこと言うんですか!」

「だっ、だってよ!」

いえ、気持ちは分かりますけどね。というより否定ができません。
このだらしなく膨らんだ胸部。折れそうなほど弱々しくくびれた細い腰。小枝のような長い手足。
美とは対極にあるこれらのパーツを私達とは違う価値観で見ることができる人がいるのなら……?
特殊過ぎる性癖だとは思いますけど、私達には神様に思えます。

「た、確かめたほうがいいんですかね……?」

「そりゃ……できることなら知りたいけどよ。どうやってだ……?」

「分かりませんけど、これ今後の人生に差し支えると言っても過言ではなさそうなので頑張ります」

「お、おう。アタシもクエスト終わらせたらすぐ行く」

私は急ぎ朝食を口に運んだのだった。

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