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第45話 野営

「リズ、相談にのってほしい」

「うん?」

火の番をしていた時のことだ
夜も更けてきて辺りには虫の鳴く音だけが聞こえてきて、時折ぱちっと焚火の中の薪が弾けていた。
今はボクとミーナが起きている。トーワ君とシルヴィとアイリはテントで眠っていた。
もうすぐ交代を控えたそんな時に、ミーナが俯き気味に口を開く。

「私は……トーワにとって魅力がないのだろうか」

……何を言っているんだろう。
馬車の中であれだけイチャついていたじゃないか。

「そんなことはないと思うけど……」

実際トーワ君も嬉しそうだったように思う。
ミーナのアプローチが過激な時は躱されていたけど、それでも彼の照れた顔に嫌悪は見られなかった。
シルヴィみたいにハッキリと見分けることはできないけど、他でもないトーワ君の表情だったからボクには分かった。

「なんでそう思ったの?」

「……耳掃除をしてもらった」

ああ、ギール村のことだよね。
それが原因で一悶着あったけど……それがどうしたんだろう。

「だけどトーワの態度が変わっていない気がする。それにこっちから誘っても……なんとなく避けられているような」

「…………」

「もしかしたら耳掃除をしてもらった時に私に何か不手際が……だから進展がないのかもしれない」

ミーナの口からトーワ君の名前が出てくる。「トーワ……」と呟きながらしゅんとしていた。
普段は表情が変わらない彼女がここまで分かり易く落ち込むのは珍しいことなのかもしれない。
けど、どこから説明したらいいんだろう。
これはきっとミーナの中で誤解がある。

「ミーナ、獣人族には耳掃除は神聖なものだけど、人族にそういう習慣はないんだ」

「……?」

顔をあげたミーナ。
その表情はいまいち理解できていないように見えた。

「えーと、なんて言えばいいのかな。耳掃除は確かに信頼関係がないとしないかもしれないけど、それ以上だとはトーワ君は思ってないんだと思う」

「なる、ほど……?」

ミーナにとっては常識なのかもしれないけど、人族にとってはただの耳掃除だ。それ以上でもそれ以下でもない。
実際グリルの街を出る時にもトーワ君は本で調べて知らなかったと言っている。
あまり広まっていない知識だからお互いの勘違いしたんだろう。
ミーナはゆっくりとその事実を自分の中で噛み砕いて理解していく。

「……待ってほしい。それならあの夜は、トーワにとっては何でもないことだったということ?」

「そうなるね」

付け加えるならトーワ君の中で誰か一番とかは決めてないんだと思う。
彼の態度から見ても分かった。彼が皆に序列をつけている様子はなかったし。

「け、けどっ、私が一番トーワに貢いでるし、一番頭を撫でられてる」

”一番”という部分を強調してくる。
この前可愛いと褒めてくれたし、作ったご飯を全部食べてくれた。と、どんどん主張が可愛いらしくなっていく。
微笑ましいけど、同時に妬ましくも思った。そんな自分の心に蓋をする。

「……ミーナが一番可愛がられてるよ」

「子ども扱いしないでほしい……」

むすっとするミーナだった。
事実ミーナが一番距離が近いと思う。それはもう物理的にもだ。見てるこっちが胸焼けしそうになるくらいラブラブだった。
トーワ君も嫌がってるわけじゃなくてどうしたらいいのか分かってないんだろう。
彼も誰かと付き合うのは初めてだと言っていたのを思い出す。
トーワ君のこともだけど、焦るミーナの気持ちだって理解できる。
ボクだっていつも考えていた。
トーワ君の裸、あの優しい男の人の腕に抱かれるところを想像した全身が身震いを起こす。
流石にこんなところではやらないけど、実はトーワ君を想って自慰行為をしたことは何度もある。
冒険で疲れ切り火照った身体を、彼が優しく撫でまわす。
身体に溜まったムラムラしたものを解消してほしかった。彼の欲望をボクが潰れるまでぶつけてほしかった。
愛してほしい、好きなように使い潰してほしい。
脳裏には服を纏わないボクとトーワ君がベッドの上で絡み合う姿が映し出されていた。
舌まで突き出して悶えるボクをトーワ君が意地悪く愛撫する。
鼓膜を刺激し脳を揺さぶる彼の言葉にボクは翻弄されっぱなしだ。
ボクの尊厳を貶めるような言葉責め。それすらも快感。トーワ君が望むなら蜥蜴だと見下されることにすら喜悦を覚える。
何度も妄想した。絶頂が近くなって思い浮かべるのは決まってトドメの言葉だった。
先程までボクを追い詰めていたトーワ君だけど、最後には優しく耳元で囁いてくれるんだ。

――愛してるよ、リズ。

悦びのあまりぞわりと肌が粟立つ。頭の頂から足の爪先までを悦びが駆け巡る。全身が鳥肌を立てて背筋が僅かに仰け反った。
思い返すだけで幻影の一言が劣情を掻き立て心を炙る。自慰の時は想像だけでも乱れに乱れたというのに、実際にされたらボクはどうなってしまうんだろう。
渇望し続けたその言葉を聞くだけで果てるんじゃないか、というのは些か大袈裟すぎるだろうか。
そんな下卑た想像をする自分に軽く嫌悪を覚える。こんなことを考えてるなんて知られたら失望されるだろうなと自嘲した。
ボクにとっては夢みたいな出来事だけど、ミーナにとってはそうじゃない。
アイリもシルヴィも手に入れている。
ボクの手にはない……違う。ボクだけが持っていない。
彼の一番だと自惚れていたボクにとってそれは耐え難いことだった。
もっと早く接触して告白するべきだったけど、後悔は今更だ。
でも、大丈夫。
……まだ大丈夫。まだ巻き返せる。
この苛立ちは身勝手な我儘だ。
だけど、自分をそう誤魔化しながらもボクは羨ましいという嫉妬心を抑えきれなかった。

「リズ?」

意識が鮮明になり、ボクは我に返った。

「……ごめんごめん。でもミーナ、そんなに心配なら」

――もう少し踏み出して聞いてみたらどうかな?
そう言おうと思ったけど、そこから先がどうしても出なかった。
二人は上手くいくのかな。
握りしめた手がぴきりと異音を立てた。
それはミーナ次第だろうけど、トーワ君が拒否しなければ二人の関係はさらに進むだろう。
そうなったら、トーワ君とミーナは身体を重ねるのか。
そう思ってしまった時、思わず口から出たのは全く違う言葉だった。

「少し距離を置いたらどうかな」

ミーナが一瞬黙った。
「それは……」と、続けて再び間を空ける。

「トーワ君も一人になりたい時だってあるかもしれないよ?」

しばらく迷っていたように思う。
だけど彼女の中で何かしらの結論が出たのだろう。
ミーナは急にその場から立ち上がった。

「……分かった」

交代の時間だ。
後ろ暗い感情が心を支配する。
……最低だ。

「ごめん」

喉から絞り出された虫の鳴くような弱々しい謝罪。
あまりにも小さい声だったからこの場を離れるミーナには聞こえなかったらしい。
気付いた様子のない彼女にボクは心の中で何度も謝った。
ごめん、ミーナ。
シルヴィも、アイリにもだ。
謝らないといけない。
本当にごめん、ボクは……

――君たちが憎くて仕方ない。

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