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第48話 診察

リズさんが大事な話があるとシグルドさんと共にこの場を後にしてからのこと。

「リズさん何の話でしょう?」

アイリさんが「なんだろうな」と曖昧に答える。この場で話してても分からないことかな。
って、そうだ。

「あの、はじめまして。トーワと申します、治療師です」

リズさんのお母さんのリリーラさん。女手一つでリズさんのことを育ててきたという話を事前に聞かせてもらっていた。
リズさんのことも気になるけど、僕は僕でできることをしておかないと。
元々リリーラさんの容態を心配してこの里に来たわけだからね。
リリーラさんはこちらに意識を向けると先ほどまでの難しそうな顔ではなく柔和そうな表情で微笑んだ。

「失礼しました。はじめまして、トーワさん。銀翼の皆さんも……とはいえリズからいつも聞いていたので初対面という気はしませんね」

「リズさんが?」

「ええ、皆さんのことはよく話題に出していましたよ」

僕以外のということかな。
皆との冒険はきっといい話のお土産になったのだろう。

「この里に何かご用件が?」

「はい。実はリズさんからリリーラさんの体調のことを相談してもらいまして……よければ容態を診せていただけたらなと」

「……お気を使わせてしまったようですね」

後ろに控えていたシルヴィさんが「先に宿をとってきますね」と言ってくる。
おそらくは邪魔にならないようにと気を回してくれたのだろう。ありがたくお願いしておいた。
だけどそれを呼び止めたのはリリーラさんだった。

「龍族の里に下宿する場所はありませんよ?」

「え、そうなんですか?」

「家も狭いので全員泊めるわけにも……おもてなしができなくて申し訳ないのですが……」

「いえ、突然押し掛けたのはこちらですしお気になさらず。近くに開けてる場所があったので使わせてもらってもいいでしょうか?」

「それは構いませんが……」

尚も申し訳なさそうなリリーラさんの許可をもらったところでシルヴィさんが外に出ていく。
それにアイリさん達がついていき、去り際に「トーワ、頑張って」とミーナの応援が聞こえてきた。
それを聞いて気を引き締めた。
皆を見送ってから、リリーラさんに向き直った。
袖口から少し覗く腕を見ても、肉がついていない。
元々細身だったのかもしれないけど、不健康なやせ方で骨が浮いるようだ。

「それじゃあさっそくなんですけど、いくつかお聞きしてもいいでしょうか」

まずは問診からだ。

「体力が落ちて寝込むことが多くなったと聞いていますが、今の状態について心当たりはありますか?」

「そうですね……その前にお願いしてもいいでしょうか?」

「なんでしょう」

緩慢な動作でリリーラさんが僕を見た。

「娘には伝えないでいただきたいのです」

「何をですか?」

「原因について心当たりがあるんです……私たちは龍族の祖である龍神様を信仰させて頂いております。長年にわたってその御力の一端である”龍眼”を酷使し過ぎたのだと思います」

そういえばリズさんは、目がどうとか言ってたな。それのことだろうか。

「龍眼とは……?」

危険な物なのか聞こうとしたけど、信仰上のものなら迂闊なことは言わないほうがいいだろうと思い止まった。
しかし、これが原因で不健康になっているならあまりいいものとも思えない。

「外の方はあまりご存じないですよね……順序立てて話します。少し横道に逸れてしまいますが、私の身の上話を聞いていただけないでしょうか?」

ボクが理解できないでいたから説明してくれるらしい。
「お待ちくださいね」と言ったのでしばらく待つとリリーラさんが息を深く吐いた。

「私は龍族の里で龍神様に仕える巫女として、今まで生きていました。その理由は、龍族に伝わる”龍眼”と呼ばれる眼を持って生まれたからです」

彼女がそう言って、瞼を開け僕と目を合わせる。
その眼は深く覗き込まれるような神秘的なものを感じさせる、だが瞳の中は白く濁り切っていた。
グッと喉の奥から絞り出すような声を出し、リリーラさんは目を抑え体中から汗をかいていた。
先程の比でないほど息は荒い。
僕も気づけば汗をかいていた。あれが”龍眼”とてつもない力の塊に覗き込まれた実感に体が硬くなっている。
しかし、そうこう言っていられない。リリーラさんの背中をさする。
それがようやく落ち着き、彼女と目が合う、その眼は優し気な紫色の瞳で、先程のような強烈な何かを感じることはなかった。

「……これが”龍眼”と呼ばれるもの……龍神様の持つ力の一端、未来予知の行使を可能にする瞳です」

途方もない話だが、先程の眼を見て納得がいった。リリーラさんは「しかし我々には身に余る力、不確定で遠い未来ほど外れてしまいます」と告げる。
思ったほど使い勝手はよくないらしい。消耗も尋常じゃなさそうだ。

「その力を使い過ぎたということですか?」

「そうですね。リズも心配してくれているようなのですが、里の重要な祭事などは出席しないわけにもいかず……」

それはどうなんだろう。
体調が悪いなら欠席を勧めたいけど、この里特有の法みたいなものがあるんだろうか。

「トーワさん、私の命はもう長くありません」

「……そうなんですか? でも」

僕の言葉はリリーラさんの咳払いで中断された。
大きく咳をつく。謝るリリーラさんの背中を慌ててさすった。

「……失礼しました。私の命が長くないという話ですが……」

彼女は佇まいを直し「巫女は短命の者が多いんです」と続ける。

「病気ではないんです。この力は生命力を糧として使用するんです。治る治らないじゃないんです。欠けた命は戻りません」

……代償が大きいのか。消耗が激しいのは体力を使うだけじゃなかったんだ。
リリーラさんは深く頭を下げて額を床につけた。

「お願いします……どうかあの子の傍にいてあげてほしいんです。それが叶うなら龍眼を使い、身命を賭して吉兆を予見させてもらいます」

どうか……どうか……と、蒼白な顔で必死に頭を下げるリリーラさん。
慌てて頭を上げてもらった。

「傍にと言っても……僕にもリズさんにもそれぞれ決まった相手がいるんですけど」

「え」

彼女はぴたりと動きを止めた。
そして、心の底から不思議そうに「え?」と、再び疑問を発する。
不可解な反応に僕は首を傾げた。

「そ、それは……ッ、ッ!」

再び咳き込むリリーラさん。
慌てて背中を撫でるが、今度はなかなか落ち着かない。
しばらくして、ようやく落ち着いたリリーラさんは、涙を拭いながら「……お、おかしいですね。そんなはずはないのですが」と、呟くように言う。

「なにがですか?」

「あ、いえ……こちらの話です。すみませんでした……それでその、リズの相手というのは?」

「いや、僕も詳しくは聞いてなくて……」

リリーラさんは固まってしまった。
混乱しているのがよく分かる。理由は分からないけど……
とはいえまずはこっちが優先だろう。
龍眼の使い過ぎで体力が落ちてる状態。
いや、この場合は寿命みたいなものと思った方が分かり易いかな。

「リリーラさん、話を戻してもいいですか?」

「え? はい」

とりあえず終わってから考えよう。
心当たりがあった。無責任なことはまだ口にできないから断言はできない、けど――僕なら”治せる”はずだ。
それを説明すると、リリーラさんは疑問を口にする。

「いえ、申し出はありがたいのですが……」

「やってみないことには分かりません。ただ可能性はあるかと、僕の回復魔法は少し変わってるので」

「龍眼による消耗を回復できると……?」

「はい、多分ですけど」

リリーラさんが固まる。
目を丸くした状態で口を開け閉めしていた。

「……信じられない、ことですね。そのような魔法は聞いたことも見たこともありません」

あの、とリリーラさんが続ける。

「トーワさんは……その、創造神様と何か縁のある御方なのですか?」

「へ? いや全然ですよ」

突然の問いに驚いてしまった。
あ、でも創造神様の方は知らないけど、女神様とは出会ったことあるな。

「そう……なのですか」

「えぇ、違いますよ」

「では、なぜ……いえ、今はいいです」

「……? あ、でも女神様とは少しだけ関りがあります」

「!? そ、その話は本当ですか?」

「え、えぇまぁ」

リリーラさんが身を乗り出して迫ってきた。
なんだか怖い。

「あ、貴方は、いえっ、御身は使徒様なのですか!?」

……? なんのことだろう? 使徒? ってなんだ?
僕が困惑してると、リリーラさんは慌てた様子で立ち上がった。
そして、僕の前で膝をついて頭を垂れる。
まるで神への祈りのような姿だ。
僕はその姿に驚き、慌てて頭を上げるように促す。
リリーラさんがゆっくりと顔を上げた。その瞳は何かを決心するように強い光を放っている。
彼女は口を開いた。

「トーワ様」

……様?
恭しく彼女は頭を下げた。
こちらの言葉を待っているように頭を上げる様子がない。

「非才なる身ではありますが、里の巫女としてこの命尽きるまで仕えさせて頂きたく思います」

え、何事?

リズの実家から少し離れたところにテントを設営中。
高い草を刈り取って馬車から支柱とロープを下ろした。
とりあえずはひと段落だな。

「んー……」

腕組をしてアタシが考え込んでいると後ろから「どうしました?」と、聞こえてきた。
シルヴィだった。慌てた様子で走ってきたけど、やけに戻ってくるのが早いな。

「水汲みは終わったのか?」

「入れ物を忘れてたんですよ。それより考え事してたみたいですけど、どうかしましたか?」

水汲みで入れ物忘れたって……何か最近ぼーっとしてるしこいつも考え事とかしてたのか?
まあ、シルヴィにも悩みくらいあるだろう。アタシは前々から考えていたことを口にする。
いざ言葉にするのも恥ずかしいけど……

「なんかトーワと進展がほしいなって思ってよ……」

シルヴィが「分かります」と深く頷いた。
眉間にしわを寄せて唸っている。

「……私なんてこのままだと勢いで第三夫人にされそうですし」

「そうなのか?」

そういえばミーナが何か言ってたな。
となるとアタシは2番目か……嫌だな。
だけどもしもミーナにそれを言ったら絶対むくれるよなぁ……どうしたもんか。

「まあ悲観はしてませんけどね、何番目でも好きって言ってもらえるだけで嬉しいですし」

いや……それは嘘だろ。
だってトーワと付き合ってから酔うと毎回どうすれば一番にとか、どうにかしてセックスを、だの言ってるしな。
いつかトーワにバレるんじゃないかと気が気じゃない。
水瓶を持ち上げるシルヴィに向かって思っていたことを口にした。

「お前って言葉面はいいよな」

「アイリさんはたまに失礼ですよね……」

軽口を叩くとシルヴィが拗ねたように唇を尖らせてしまう。
悪かったよ、とこれまた軽く笑って謝った。

「実際はどうなんだ?」

「実際?」

「そうは言ったってお前も願望くらいあるだろ? こうなりたいとかねーのか?」

シルヴィは「そうですね……」と顎に手を当てて考え込む様子を見せてから、スラスラと話し始めた。

「子供は三人くらいほしいですね。ペットに可愛い魔物とか……部屋は同じ一室を使って、一人の時間も大事にするんですけど寝る時は一緒に……みたいな」

「……思ってたより普通だな」

アタシ達みたいな醜女には最高の幸せだけど、シルヴィはムッツリなところもあるし、もっとえぐいこと考えてるかと思ってた。

「そうですかね? これ以上は贅沢では」

ってことはまだ上があるってことか。

「まあ……そうですね。もし願いが全部叶うならですけど」

アタシは耳を傾けながらテントの支柱を立てた。
ロープで固定しながら言葉を待つ。
少しの静寂。
髪の毛が風になびく中、シルヴィが恥ずかしそうに頬を染めた。

「たまになら私がペットに、とか?」

「…………」

不細工な小顔が気色悪く歪む。なんつー顔してんだこいつは……いや、待て待て本当に怖いぞ。

「お前……それは流石に引くんだが」

アタシは一歩後ろに下がったが心理的にはだいぶ遠くに行った。
それに気づいたシルヴィが猛烈な勢いで追走してくる。

「いやいや、アイリさんだって分かるでしょう? 愛しの殿方に束縛してもらえるんですよ?」

前々から思ってたけどこいつMだよな。
こっちの薄い反応にシルヴィは不服そうだ。
だけど、ちょっとだけ考え込む。
そうだな……トーワとそういうことするのか……
首輪つけられたりとか、ご主人様って呼んだりとかか……?
官能小説でそういうのを何度か見たことがあった。

「ご主人様か……」

思い浮かべたその光景に何故か胸がどきどきしてしまう。な、なんでだ。アタシはノーマルだと思ってたけど。
シルヴィが「ご主人様?」ってアタシの呟きに反応した。

「そ、そうだな。ちょっといいかもな」

言った後で恥ずかしくなった。
思わず口を出た本音。アタシは何を言ってるんだ。
シルヴィが我が意を得たりと踏ん反り返った。

「そうですよ! 今度トーワさんに」

「僕がどうかしました?」

シルヴィは心底驚いたようで「わああああ!?」と飛び上がった。
アタシもびっくりした。話題を出した張本人のシルヴィの動揺は計り知れないだろう。

「す、すみません、そんなに驚かれるとは」

あ、あぶねぇ。
トーワに聞かれてなかったのは幸いだった。
アタシも胸を撫でおろす。
というか今になって思ったけど、アタシ達は人の家の近くで何を話してたんだ。
話に夢中で気配に気付かないとか平和ボケし過ぎだったな。

「何の話してたんですか?」

トーワの疑問にシルヴィはワタワタと乱れた髪を整えて挙動不審に答え出した。

「ぺ、ペットが可愛いなって話ですよ。ほら! 飼えたら癒されそうだなって思いましてね! いや、勿論やましいことなんてありませんよ? 私としましては純粋に家族が多い方が賑やかだな~って思って……ストレスの軽減とか、トーワさんの運営する治療院でも患者さんを落ち着かせるみたいな効果が期待できるんじゃないかなって。確か野良猫がいっぱいいましたよね。将来的にちゃんと飼ってみるとかどうかなーっていう、トーワさんもそう思いませんか?」

……お前は動揺しすぎだろ。

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