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第49話 初めての

「し、失礼します! 水汲みに行ってこないと!」

「あ、いってらっしゃい」

妙に慌てた様子で水汲みへと戻っていったシルヴィさん。
その後ろ姿に気を付けてくださいねと声を投げかけると、元気よく返事をしてくれたが、勢いは変わらなかった。
少し心配でその姿が見えなくなるまで見送ってしまう。

「トーワの方はもういいのか?」

「あ、はい」

作業の続きを手伝うとなると僕もテントの設営だろうか?

「すみません。任せっきりにしちゃってて」

「気にすんな。分担は大事だろ?」

茂っていた草がなくなっていた。
高い草が邪魔になるだろうからまとめて抜いておいてくれたのだろう。
少し離れたところにアイリさんがペグハンマーでテントの杭を打っている。

「やっぱり手慣れてますね」

「ああ、冒険者やってる時は野営なんてしょっちゅうだからな。これくらいなら慣れればトーワでもできるさ」

「へぇー……」

やっぱりベテランの冒険者は違うんだな。

「リズの母さんは大丈夫そうだったか?」

「経過を見ないことには……でも、大丈夫です」

アイリさんの手が少し止まって心配そうな声色で聞いてきたことを、少し自信なさげに言ってしまった。
それでも「そうか」とアイリさんは安心したような表情で作業を再開した。
大丈夫なはず……女神様がくれたとはいえ、自分で身に付けたものではないことを完全にあてにしたことが、正直心残りではある。
しかし、これ以上あれこれ考えても仕方がないだろうと、目の前のテントに集中した。
僕のいた世界で歴史の教科書にも載っていた形に近い円錐型。
一本の支柱を中心にしたワンポールテントとも呼ばれるものだ。
畳みやすく組み立てやすいのが特徴らしい。
アウトドアの経験は正直ない、多分現代ほど効率的に設置するのは難しいので慣れていないと時間が掛かってしまう。
アイリさんにやり方を教わりながら組み立てていき、それでも一つのテントを設置することはできたので多少は役立てたと思いたいところだ。
最後にテントの紐を結んで固定する。これで終わりだそうだ。
あれだけ大きなテントなのにあっという間に完成した。
本当に早い。
そして休む間も置かずアイリさんはもう一つのテントを張り始めた。

「そういえばアイリさん」

「ん?」

周囲を何度か見渡した。
ミーナがいないことを何度も念入りに確認してからアイリさんに悩みを告げる。

「ミーナが里についてから距離を取ってる気がするんですけど、気のせいですかね?」

正確には里につく少し前あたりから。
ミーナのお誘いを断っていながら、いざ向こうから避けられると寂しいと感じてしまうのは我儘なんだろうけど……

「……いや、もう言っちまうけどよ。ミーナのやつ結構気にしてるみたいだったぞ」

「気にしてる?」

「あいつ結構ぐいぐい来てるだろ? あいつなりの愛情表現なんだよ」

「ああ……やっぱりですか」

アイリさんに言われてこれまでのことを思い返す。
ミーナから積極的にアピールされてきた。里への道中なんて特に分かり易かったし。
確かに照れ臭いからとか色々理由をつけてミーナからの誘惑を跳ねのけっぱなしだった。
据え膳食わぬはなんとやらだ。勇気を出してくれたであろう彼女に失礼だった。

「もしかして怒らせちゃいましたかね……」

「そこまでは分からないけどな」

とはいえ僕も分からないものは分からない。うーん、どうしようか。
そもそも嫌われている訳じゃないなら謝れば許してくれるかな?

「……あの、情けないかもしれないんですけど、こういうの全然分からなくて……」

失望されるだろうか、と思っているとアイリさんが笑みを零す。
理由が分からずにいると「悪い悪い」と尚も笑いながら謝られた。

「似たようなことでアタシ達も話してたことがあったからよ。トーワも同じなんだなって思うとなんかな」

「まあ経験ないですからね……ファーストキスとか……は、終わらせましたけど」

「え」

アイリさんが手元を滑らせ、自分の手に打ち付けた。
痛そうな音が鳴った。

「痛っ!」

「ちょっ、大丈夫ですか!?」

アイリさんに駆け寄ってその手を取る。指先が少し赤くなっていた。
軽度の怪我だけど、ヒールをかける。

「わ、悪い」

彼女はいまだショックを受けたように固まっていた。
目に涙を溜めるアイリさんを見て僕は慌てる。回復魔法で怪我を治しながら誤解がないように伝えた。

「いやいや、シルヴィさんですよ?」

「はあ!? あいつ……そんなことしてたのか?」

あれ、これレイプ未遂の時の詳細は知られてない感じ?
シルヴィさんも恥ずかしかったんだろうか。確か出会い頭に唇を奪われたんだよね。

「な、なんかアタシだけ置いていかれてないか……?」

「そうですかね……? 僕からはなんとも言い辛いんですけど」

というより変な方向に話が向いてきたな。
杭を打ち終わり、馬車の荷台から荷物を下ろす。
子供たちが六脚馬を物珍しそうに見ていたけど、僕が傍に寄ると警戒されているのか逃げられてしまった。

「な、なあ、トーワ……」

「?」

不意に袖が何かに引っ掛かる。
後ろを振り向くとアイリさんは距離を詰めて僕の服の袖を指先で摘まんでいた。
するとアイリさんは顔を赤らめてこちらを見る。
少し潤んだ瞳が可愛らしく映った。
そのまましばらく沈黙が続いたが、意を決したアイリさんは口を開く。

「えっと……」

その顔は瞳の色と同じく真っ赤に染まり、口からは何かを言おうとしているのが分かる。
だけど、結局言葉は喉元までで、そこから先が出ることはなかった。

「悪い、何でもねぇ……」

ぶっきらぼうにそう言うと、ガシガシと頭の後ろを掻いて僕に背を向ける。
最近になって知ったんだけどこれをやる時は照れ隠しか、何かを誤魔化そうとしている場合が大抵だ。
心なしか肩を落としたアイリさんの手を僕は咄嗟に掴んだ。

「っ!? えっ?」

振り向いたアイリさん。
けど、僕は僕で頭が真っ白になっていた。
思考が止まって、何をしているのかも不明瞭な状態。
さっきのはたぶん自信がなかったんだと思う。
勝手な想像だけど、僕の心からの言葉を告げた。

「アイリさんは魅力的ですよ!」

「そう……なのか? けどよ……ミーナみたいに積極的でもないしよ、シルヴィみたいに愛嬌もないだろ……?」

自信なさげに瞳が揺れている。
こんな時には何を言っても伝わらない気がした。
行動で示すべきだと、アイリさんを真っ直ぐに見据える。

「…………」

「…………」

沈黙が下りる。
お互いに黙って見つめ合っていた。

「こんな顔だけど……いいのか?」

「凄い好みですよ。あー、キスとか……どうでしょう?」

わ、我ながらムードないなぁ……
そんなことを考えていると彼女は顔から耳を染め、首筋までもが赤らんでいた。
潤んだ瞳のままで静かに彼女は頷いてくれる。
それが嬉しくて僕は彼女の手を取った。

「こういうの初めてなんだが……」

「僕も自分からはやったことないですね……」

「そ、そうか! じゃあ……その、よ、よろしく……」

なんか、こうなるとドキドキしてきた。
荷台に隠れてからアイリさんの肩に手を触れさせそっと寄せた。
唇を軽く触れ合わせるだけの拙いキスをすると、彼女は僕の腕の中で弱々しく身体を痙攣させる。
喉が震えていた。
けど――

「――――」

ふと物音が聞こえた気がした。
なんだろうと周囲を見るけど、何かあった様子はない。気のせいか?

「っ! わ、悪い、なんか駄目だったか?」

「ああいや」

アイリさんが泣きそうな顔を浮かべたのを見て僕は慌てた。
なんでもないです、と僕は再び顔を寄せる。
彼女が悶えるような喘ぎ声を上げようとするも僕が口を抑えているのでそれは言葉にはなっていない。
柔らかい感触と温かさを感じているうちに僕の理性は溶けていった。

シルヴィさんとミーナが戻ってきた。
二人とも両手いっぱいにに水瓶を持って背中には薪を背負っていた。
冒険者をしているだけあって凄い力だな、と感心する。
そして、アイリさんはというと顔色を変えずにテントの設営に精を出していた。
気恥ずかしくて先程のキスのことは内緒にしようということになったんだけど……
僕はずっと意識しっぱなしだ。アイリさんの艶やかな唇の感触を思い返し、いやいやと煩悩を払うように頭を振った。

「ふぅ」

額の汗を拭う彼女に動揺の色は見られない。
これが年上の余裕ってやつか。
少しだけどアイリさんの方が年上なんだよね。大人っぽいし、内心で動揺をようやく隠せてる僕とは大違いだな。

「アイリさん、水分とらないと危ないですよ」

「おう、わりぃな」

熱中症対策に水筒を渡した。
喉を鳴らして水を流し込むアイリさんがなんだか艶っぽく見えてドギマギする。
……なんか僕だけ意識してるみたいで恥ずかしいんだけど。
煩悩を振り払うと不意にミーナが「ん?」と鼻を鳴らした。

「トーワ? なにかあった?」

「うん?」

「いや……なんというか、アイリから物凄い発情臭が」

アイリさんが勢いよく水を吹き出した。

「ごほっ、ごほっ! な、おまっ、ななななっ、ふざっ、ふっ、はあっ!?」

……アイリさん、動揺し過ぎです。
さっきまでの冷静さはどこに?
もう顔なんてトマトかってくらい真っ赤だし、呂律もまともに回っていない。
というかよく見たら口の端が凄く吊り上がっていた。
ニヤニヤしてるのが丸わかりだ。それを無理やり戻そうとしてるから顔が強張りまくっている。
というかアイリさんから臭うなら僕からも臭うんだろうか……腕を鼻の所に寄せて嗅いでみるけど全く分からない。

「……何をしたの?」

スッとミーナの目が細められた。
隠すべきか悩んだけど、こちらに向かってアイリさんが赤くなったままぶんぶんと勢いよく顔を振るものだから恥ずかしがっているのだと分かった。
今すぐには恥ずかしくて隠したいらしいので僕からはノーコメントを貫いた。

「な、なんでもねーよ」

「それだけ興奮しておいて何もないは嘘。なにがあったの?」

動揺するあまり目を回したアイリさんが「ち、ちょっと興奮しただけだっ!」と、なんの弁明にもなってない言葉を口走る。
それむしろ駄目なのでは。

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