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第53話 ずるい

周囲に人の気配はない。
皆との夕食が終わった後でボクはテントを抜け出して、気付けば昔から独りで隠れて泣くのに使っていた場所にやってきていた。
足がもつれて転んだ。
あんまりにも惨めで立つ気力も沸かない。
しばらくそうしていると、胸の奥からムカムカと気持ちの悪い嫉妬の感情が沸き上がってきた。
足を何度かばたつかせて気を落ち着けようとした……あんまり効果はなかった。
それどころか次から次へと苛立つことが脳裏をよぎる。拠点や道中では逆鱗の上で踊られているようなものだったのを思い出す。

「うぅうー……!」

くぐもった様な呻き声が出た。
煮え滾るような嫉妬が奥からせり上がる。胸を搔き毟って抉り出せたらどれほど楽だったか。
その感情が、喉を焼き焦がしながら口の端から漏れてしまう。

「……るぃ……っ」

これまで溜まっていた鬱憤が爆発した。

「ずるい! ああああああ!! もう! もうもうもうもう!! ふざけるな!」

後悔やら嫉妬やらをごちゃ混ぜにした薄暗い負の感情に頭を抱えた。
ズルい! 不公平だ横暴だ!
なんなの? 君はトーワ君のなんなんだ? いや、彼女だというのは知ってるけどさ……!
シルヴィの性根がそんなに淫らだったなんて知らなかったっ!
い、いや……落ち着こう。仲間の悪口は良くない。
身体を起こして大きく深呼吸をする、だけど――
脳裏に浮かんだシルヴィの姿はトーワ君に見せていただらしのない表情だった。

「くぅぅ……っ!」

想像のシルヴィに拳を振り下ろす。
勿論当たることはなく地面に拳は突き刺さった。
悔しすぎて目が回る。心が千々に乱れていた。

「なんで!」

仲間達の幻影へと拳を振り下ろす。

「なんでッ!!」

振り下ろす。

「なんでだ、よッッ!!!!」

何度も拳を叩きつける。
振り下ろした手は想像の彼女たちに当たることはなく地面に拳は突き刺さった。
しばらく叫んでいた気がする。自分の荒い息が耳を打った。

「皆でいいなら……ボクだっていいはずじゃないか……」

不意に数日前の光景が脳裏をよぎる。ミーナがトーワ君の腕に胸を擦りつけている姿。
その浅ましさを軽蔑した。不快にさえ感じたけど、本当は羨ましかった。ボクも彼に甘えたかった。この気持ちの悪い乳房を彼に慰撫して欲しかった。
同年代の人たちよりも大きく膨らんだ胸の脂肪。淫らな膨らみは白く重力に逆らい垂れるでもなく不気味な形を保っていた。
こんな胸でも……彼は好んでくれるんだろうか。
服の上から先端を軽く擦ると電気みたいな衝撃が駆け抜ける。
最近は碌に発散できていなかったせいでとても敏感になっていた。

「…………」

そういえば色々あったからな。 一度火が付くとあとは転がり落ちるようにすぐだった。
熱い。全身が熱を持ってお腹のところがムズムズする。
トーワ君とずっと一緒だったのに、慰める暇がなかったせいで、身体がこれまでにないくらい過敏になっているのが分かった。
軽く乳首を擦る。連続で触れると、まるで快楽神経に直接触ったかのような快感が走る。
声を抑えようと唇を噛むけど、隙間からくぐもったみたいな喘ぎ声が零れ出た。
服をはだけさせると、先端は既に痛々しく尖り勃っていた。

「ぅ……いいな」

次に感じたのは羨ましいという気持ち。
皆のように彼の体に抱き着けたらいいのに。
この気持ちの悪い胸を彼ならどう慰めてくれるんだろうか。
幾度も夢に見たトーワ君との行為。下卑た妄想にボクの興奮が高まっていく。
だけど、時折心の中の自分が核心を突く。彼の相手は、ボクじゃない、と。

「ぁ……っ」

ヒク、と身体が反応を返した。
大好きな彼の妄想で自慰行為に耽る淫らな自分に激しい自己嫌悪を覚えた。
ぐるぐるする。もう訳が分からない。自分の中で負の感情が現実逃避の為のそれへと切り替わっていく。
まだ皆とはしていないはずだ。だけどそれは今の話で、いつかは皆と身体を重ねるんだ。

「ずるい……ボクだって……」

ボクだってトーワ君に甘えたい。隣で手を繋いでほしい。
会いたい、顔が見たい、話したい。
悔しくて堪らない。快感でそれを無理やり誤魔化す。
いつか必ず訪れるトーワ君たちの未来の光景に酷く劣等感を刺激された。
思考があっちこっちを行き来する。考えがまとまらなかった。

「うぅ……っ! ズルいズルいズルい! なんで! ボクだって不細工なのに……ずっと苦しかったのに……ッ!」

トーワ君の手に見立てて身体を愛撫した。
ベルトを緩めて下着の中に手を入れた。少しでもオシャレをしたくて買った薄いピンク色のショーツの股の部分は自分の愛液でぐっしょりと濡れぼそっていた。
トーワ君とするセックスを想像してお腹の奥が熱くなる。
だけど脳裏にちらつくのはトーワ君の隣にいる皆の姿だった。その中にボクの姿はない。
気持ちいい。気持ちいいのに……苦しい。
切なくて、痛くて、もう何も分からない。
劣等感と興奮が感情を炙る。
ボクだけを見てほしい。
なんで皆とイチャイチャするの? ボクにだけ構ってよ!
独占したい。他の人なんて見ないでほしい!
嫉妬の感情が次から次へと溢れ出てくる。
あんな醜い奴らなんて放ってボクだけを好きになってほしいのに……
だけど、なによりも――
こんな醜悪なことを考えてる自分が一番大嫌いだ。
その思考に至った瞬間、それを誤魔化すように思いっきりクリトリスを捩じり潰した。

「ッッ、ぅ、ッ゛ぅう!!?」

鋭い激痛に腰が跳ね上がった。10の絶望を100の快感で無理やり誤魔化すような、被虐的なオナニー。
もしも、という最悪の想像を思い浮かべる。
悪い方へ悪い方へと思考が巡る。
気持ちの悪い身体だった。淫らな乳房も、弱々しいくびれも、張りのある大きいだけのお尻も、何もかもが見るに堪えない。
触りたくないのは嫌という程理解できる。
だけど、じゃあ何で皆だけいいんだ。ボクと皆とで何が違うんだ。
これまでのコンプレックスやトラウマが走馬灯のように脳裏を駆け巡った。
悪循環だ。それが分かっていても止められない。
慌てて慰める手の力を強める。
乳首をごりごりと扱き上げ、濁った愛液で濡れた掌で股座を擦る。
逃避だった。
恐怖を誤魔化すように快楽へと走る。
皆が四人で混じり合う中でボクはそれを見ているだけ。
思わず伸ばした手は空を切った。

「ボクにも……触ってよ……っ」

いつも彼を想って自分を慰めていた。
冒険で火照った気持ちの悪い身体に触れてもらうんだ。
トーワ君に発散してもらいたい。ボクの身体を使ってほしい。
強烈な熱量は手で触れた個所から子宮を経て全身へと広がっていった。

「ひ、ぅ゛ぅう、お願いします、お願いします……っ」

懇願する。慈悲を乞う。彼の幻にお情けを貰えるように全力で媚びを売った。
こんなことしても無意味なのに、醜い嫉妬と劣等感に心を焼かれたボクは気付かない。
全身が沸騰する。

「ずっと、好きだったのに……なんで……」

少しでも快感を得たくて、トーワ君を思い浮かべる。
思い浮かべた幻影に、愛してる、と告げられる。
仄暗い闇の中で彼が触れてくれているのは今度こそボクだった。
彼の手がボクの体に優しく触れる。
この体は人に触られたことなんて碌にない。だから、とても敏感だ。
へこへことだらしなく淫らな空腰を振ってしまう。
そんな体を彼は少しずつ解してくれる。舌を突き出して悶えるボクを見て彼は薄く笑った。

「ぅ゛ぅぅっ……!」

服を強く噛んで声を必死に抑えた。
鼻息が荒く家畜のような鳴き声が出る。
意地悪く焦らされる体。
畳みかけるような快感。大好きな人からの責めに限界が近い。
息を吹きかけられれば到達してしまう。そんな確信にも近い予感だった。身体が、弾け飛んでしまう。そして、ボクの性感が高まり切ったところで、彼はボクの耳元に顔を近づけて囁いた。

愛してるよ、”シルヴィ”。

達した。
罪悪感、情けなさ、申し訳なさ、悔しさ、妬み、それらがブレンドされた負の感情が快楽神経を駆け巡る。
絶頂に至ったというのに胸は針金で締め付けたように痛い。
羨望と嫉妬で煮え滾った体が燃えるように熱く、その熱が膣穴からちょろちょろと情けなく溢れ出て地面を濡らしていった。

「ひ、っぐ、ぅ、ぅぅう……」

トーワ君が望むなら何をしてもいいのに。
シルヴィなんてエルフだ……それなのに。
ミーナなんていつもくっ付いてきて鬱陶しいはずだ。トーワ君にあんなことを……ああ、駄目だ腹立たしい。
アイリとは読書の話をよくしていて……あざとい。トーワ君に媚びを売ってるようにしか思えない。
悪口なんて駄目なのに、止まらなかった。
顔だけじゃない。
ボクは……最低だ。

妬ましい。
憎い。ズルい。
あいつらの代わりならボクがするのに。
お金がほしいなら稼いでくる。欲しいものはボクが何をしてでも手に入れる。それこそ世界中を敵に回してもいい。ボクが全部叶える。
こんな顔じゃダメなのかな……君が望むなら削ぎ落してきてもいい。焼いてきてもいい。好きなように切り刻んでくれてもいい。
あの三人の何がいいんだよ。あいつらがすること全部ボクがしてあげるのに。あいつらの想いなんてボクの足元にも及ばないのに。
想い人を脳裏に浮かべた。
トーワ君、ねぇ……

「ボクは……?」

もう駄目だ。
伝えよう。全部、この想いの丈を全て。
彼は受け入れてくれるんだろうか……
背筋が震える。
怖い、本当に怖かった。
けど、どうしても欲しい。
彼を手に入れるためにボクは何を捨てることができるだろうか?

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