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第55話 なんで?

「リズさん……?」

矢継ぎ早に喋ってから急に黙りこくってしまった彼女は、まるで僕の言葉が聞こえていないかのように反応をなくしてしまった。
顔の辺りまでを鱗のようなものが覆っていく。

――とぉわくん。

彼女の声がいつもとは違って聞こえた。
肌が粟立ち身体が強張る。

「ど、どうかしたんですか……?」

強烈な違和感、そもそも鱗が見えていて普通とは思えない。
思わず落ち着いてもらいたい意思を伝えるように両手を突き出していた。
しかし彼女はそんな僕を意に介さない。

「もう……我慢しなくてもいいんだよねぇ?」

ゆっくりと近付いてくるリズさんに突き出した僕の手と彼女の手をそっと合わせると除けられ、あっという間に僕と彼女の間には何もなくなってしまった。
それでも彼女は近づいてくる、体温すら感じるような距離、これ以上は何が……?
と思うと首筋を撫でる柔らかな粘液の感触。
それがリズさんの舌だと気付いたのは数瞬後の事だった。
突然の出来事に思考が追いつかない。
何が起こったのか理解できずにいるうちに、リズさんの顔が離れていく。
リズさんの頬を紅潮させたその表情はとても愛らしくて――だけど、どこか妖艶さを感じさせるものだった。
心臓が激しく脈打っている。

「――――ッ!?」

明確に考えていたわけではないが、何か言おうと口を開く。
そこから続けようとした言葉を止めたのは彼女だった。
リズさんが僕の耳元で囁いた。

「好き」

それは今まで聞いたことのないような甘い声音だ。
魔的な響きを持った言葉が鼓膜を刺激する。
そして、数歩下がると突然彼女は自身の服を首元から裾まで引き裂いた。
いきなりのことに僕は目を逸らすことも出来ずに残りを脱ぎ捨てた彼女の綺麗な裸体を見ていた。
すると、僕の視線に気付いたのかリズさんが嬉しそうに口元を歪めて顔を赤らめる。
その仕草は妙に艶やかで……しかし、僕には行動の意味が全く理解が出来なかった。

「あの……何で服を、ッ!?」

次の瞬間には視界がひっくり返っていた。
リズさんに押し倒されたのだと気付いたのは、夜空をバックにした彼女の姿が視界に広がっていたからだった。
だけど、それ以上に驚いたのは僕に跨った彼女の身体のあちこちを覆う斑な鱗だ。
太腿や腕を覆っていたり、お腹に鱗の塊が溶接したようにくっついていたりと、とにかく歪な変質だった。
しかもその姿を見ている間にも鱗は生き物みたいに蠢き生えたり消えたりを繰り返している。
すると、異質な容貌をした彼女が耳元へと顔を寄せてきて、ゆっくりと囁いてきた。

――愛してる。

脳が蕩けそうな言葉だ。
リズさんは体を引き、僕と目を合わせる。
このままじゃ、ダメだ、何かないかと必死に目を動かす。
すると彼女の首元からかけられた皆の仲間達の証であるエンブレムが目に映った。
そのことに気づいたのか、リズさんは不満げに再びずいと体を寄せてくる。
僕と関係を持ってくれている皆のことがよぎり、僕は咄嗟にリズさんの肩を掴んで引き離そうとした。
ただ、岩でも押してるのかってくらいビクともしない。

「リズさん! 待った待った! よくないですって!」

抵抗し抗議しても、リズさんはその言葉が聞こえてないかのように反応を示さない。
僕の服をリズさんは脱がそうとする。
しかし、手際が悪くなかなか上手くいかずにいると彼女は力任せに僕の衣服を破いた。
更に興奮した様子のリズさんが小さく笑みを零した。その口元は別人にも思えるほど歪んでいる。
顔がゆっくりと近付いてくると、そのまま唇を合わせ舌を絡めてきた。

「んんっ――――! リズさ、んぐっ!」

僕も男なので別に興味がないわけじゃないけど……今はそういう場合じゃなかった。
このままだと本当にマズい気がする。
付き合っている彼女たちに罪悪感が湧く。何よりリズさんが冷静じゃない。
このままでは皆、リズさんも傷つけてしまう。

「はむっ、じゅる、んっ」

唾液を吸うリズさんの頭を掴んでどうにか押し上げる。
しかし、力の差がありすぎてそれも叶わない。
というかキスがとにかく乱暴で歯が当たって痛みが先に来た。

(ああもう!)

全力で抵抗する。身を捩ったり、押したり、ちょっと乱暴に手足をバタつかせるが、まるで意味がなかった。
本当にビクともしない。こちらに反応もしてくれないので説得も無理そうだ。
口内を蹂躙する舌先を慌てて吐き出そうとすると、舌を噛んでしまう。
その瞬間、リズさんの動きが止まった。
ようやく諦めてくれたのかと思ったが、違った。
無言のまま見つめ合うこと数秒、リズさんは口を開けたままで固まっていた。
口元についた血を舐めとると彼女は顔を歪めて苛立ったように声を荒げた。

「……どうしたの? なんで? なんで抵抗したの!?」

どうすればいいんだと必死になって考える。
このまま色々とやられてしまうんだろうか。立場が逆な気もするけど……
とにかく何とかしないと……

「なんで!? 抵抗しないでよ!」

そんなことを考えている間にもリズさんの行為はエスカレートしていく。
いつの間にか彼女は自分の胸を形が変わるほど強く僕の身体に当てていた。
柔らかくて弾力のある感触に意識が割かれるけど、この状況から脱出する方法を考える。
思考を回しながらリズさんの肩を押し返すように力を込めるが、力の差は歴然で簡単に捻じ伏せられてしまう。

「大丈夫、大丈夫だから! ボクに任せてよ! ねぇ!」

それでも、とにかく暴れるように抵抗を続ける。
密着した彼女の表情は伺えないが、ぽつりと声が聞こえた。
何かされると怯えた僕の耳に聞こえてきたのは予想外の感情が込められた言葉だった。

「なんで……?」

はたと、リズさんは暴れる手を止めた。
その時ようやく視認できた彼女の顔は情欲からの興奮ではなく悲しみの様相に変化している。
今までと全く変わった様子に戸惑いを覚えた。
彼女は体を離した、ようやく見えた彼女の顔は、諦観、悲哀、苦痛、切情、が入り混じっている。

「――なんでそんなに抵抗するの?」

先程までとはまるで違う感情が込められた言葉だった。
ずきりと心が痛む。
彼女の黄金色の瞳から一筋の涙が流れて頬を伝っていた。
なんで? と一言疑問を口にすると、彼女は感情を吐露する。

「こんなに好きなのに……どうして分かってくれないの?」

彼女の口から次々と出てくる言葉はただひたすらに愛を告げるものだった。

「ずっと一緒に居たいだけなのに……い、いいじゃないか……不細工が、いいんでしょ……? こういう身体が好きなんじゃなかったの?」

泣く縋るように彼女は言った。
なんで、なんで、とリズさんは疑問を唱える。

「だ、大好きなんだ……気持ち悪いこと言゛って、ごめ゛んなさい……! トーワ君の好みだって聞いて、嬉しくて、ずっと、一緒にいれるって、勝手なこと考えてて……!」

嗚咽交じりに訴える彼女に僕は何も言えない。
何を言えば正解なのか分からなかった。
ただ、目の前で泣き崩れる彼女を見てると、自分がとても酷いことをしているような気がしてくる。

「こんな、醜い゛ボクを疎まなかった優しい君が、だ、大好きなんだよ……ッ!!」

そこには、ただ純粋な思いがあった。
だけど、次の瞬間には彼女は肩を落とした。

「や、やっぱり゛、ボク゛じゃ、だ、駄目……?」

咄嗟に言葉が出なかった。
その目が、その表情が、あまりにも悲しそうだったから。
すすり泣く声が聞こえてきた。
その姿からリズさんの気持ちが痛いほど伝わってくる。

「い゛、痛いよ……痛くて堪らないんだ」

胸を抑えて俯く彼女に既視感を感じた。
ガラガラの声帯が絞り出すように聞き覚えのある助けを求める。

「助けてよ……トーワ君゛……っ」

ピキ――と、音が連なる。
もうリズさんの姿に元の面影はほとんど残っていない。
言われなければこれがリズさんだとは分からないだろう。
気付けば僕はリズさんの身体に腕を伸ばしていた。
さっきまでまるで動かなかったとは思えないほど弱々しい彼女の身体を胸に抱いていた。
その鱗の感触を僕は知っていた。

「……リズさんと僕って結構前に会ってましたか」

僕の腕の中でリズさんが静かに頷く。
ああ……あの時の彼女か。

「大丈夫ですよ……また”全部”治せますから」

腕の中で泣くリズさんの背中を撫でた。
きっとリズさんは傷付いている、あの時みたいに。
だったらやることはやっぱりあの時と同じだ。
暫くすると、少しだけ落ち着いた様子のリズさんへ僕はそのまま彼女に自身の力を行使する。

「後でゆっくり話しましょうね……」

手のひらから光の渦が僕たちを包み込む。
目も開けていられないほどの魔力の奔流は、一瞬でリズさんの歪な身体を元の状態へと戻していった。

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