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第61話 会合

そうこうしているうちに昼過ぎになった。
やってきた会合所らしい場所。
少し前にリズさんに案内してもらったので来たのはこれで二度目だった。
一応シグルドさんに何が失礼か、どうするのか礼儀かは聞いたけど、あくまで大まかにだ。
自分がどこかでやらかさないか心配だ。
ちなみにシルヴィさん達は間に合わなかったようでまだここへは来ていない。
終わるまでに来てくれるといいんだけど……

「君たちは待っていてくれ。先に私が伺いを立てる」

そう言ってシグルドさんは一人で中に入っていった。
残された僕とリズさんの間には沈黙が流れる。
小さな声量で、まるで独り言のように呟いた。

「どうなるんですかね……」

「……分からない。でもてっきり保留にされて後から勝手に決められるかと思ってた」

「まあそこは良かったじゃないですか」

しばらく待っていると、奥からシグルドさんが出てくるのが見えたので僕らは慌てて駆け寄る。

「どうでしたか?」

「入室を許可するそうだ。失礼のないようにな」

今すぐなんだ……予定に組み込まれていたとはいえ急なことだったからそりゃそうか。
僕はリズさんに倣って身嗜みを整えた。

「シグルドです! 神聖なる会合所へ、リズ・ドラグニルと、その交際相手トーワの入室の御許可を!」

中から扉ごしにくぐもった声が聞こえてくる。
シグルドさんは扉に手をかけて開くと中に足を踏み入れた。
そしてそれに続いて僕らも中に入る。

「失礼致します」

室内は薄暗く、蠟燭の灯りと窓から入る光だけが頼りだ。
しかしそれも僅かなもので部屋の奥までは見通せない。
そんな中シグルドさんの声が響く。

「お連れしました」

「うむ、入りなさい」

今度ははっきりと聞き取れた。
長老会というくらいだからもっと威厳のある人が来ると思ったけど、意外にも優しげな口調だ。
薄暗さにも慣れてきた。視界がはっきりしてくる。
上座には一人の男性が座布団にゆったりと腰をかけていた。
彼がアグニラさんだろうか? 最長老とも呼ばれる里で最も偉い人だ。
下座には左右に分かれて何人かの老人たちがこちらを値踏みするように不躾な視線をぶつけてきている。

「君がリズの交際相手か」

「はい、トーワといいます」

「うむ……ふむ……ほう……」

僕とシグルドさん、交互に見て何やら思慮深げに呟く。
リズさんが緊張しているのが横から見ていても分かった。

「長老会の皆さま、彼はリズが選んだ男。私は賛成しております」

シグルドさんの言葉で騒めきが起こる。

「あの子がねぇ……」

「まぁ可愛い子じゃないか……?」

「顔立ちは普通だな、悪くはないが」

「だがあのような若造ではな……」

「シグルド殿、貴方は本当にそんな軟弱そうな若者でいいと考えているのか?」

長老たちの矛先がこちらに来た。
シグルドさんは動じることなく答える。

「正直に申し上げれば、反対する理由がありません」

そして、シグルドさんは続けた。

「リズはこれまで巫女様のお身体のことを考えて里にも尽くしてきました。そんな彼女がやっと人としての幸せを掴もうとしていることを私は喜ばしく思います」

シグルドさんの言葉に賛同するような言葉がちらほらと上がる。
いい流れだ。
思わず楽観しそうになったが、それでも納得していない様子の人もいるようだ。

「シグルドよ、貴公は随分とその男を買っているようだが……しかし、巫女の後継がいないとなればこの里はどうなる?」

「巫女殿からよく彼のことは聞かされていたので……そして元々龍眼を持たなかった巫女様の代でも我々は難を凌いできました。それならば――」

しかし、シグルドさんの言葉が遮られる。
遮ったのはアグニラさんだった。

「その前例があるからと、これからも問題なくやっていけるだろうと楽観視できるものではない。それにもし万が一、次代の龍眼持ちが生まれなかった場合はどうするつもりなのだ?」

「それは……」

「そもそも勝手はするなと言っていたのに、これはどういうことだ?」

リズさんとシグルドさんが口ごもる。
強い意思を持った瞳でアグニラさんが続けた。

「そうだな……やはり駄目だ。認められない」

「そ、そんな!」

リズさんが悲痛な声を上げる。
僕だって同じ気持ちだった。

「どうしてですか!? ボクとトーワ君は真剣に付き合っています! それをどうして認めていただけないのでしょうか!?」

必死な訴え。
しかしアグニラさんは冷徹な声で告げた。

「我らが掟を忘れたか? ここでの決定は絶対だ。異論は認められない」

「それは……でも……」

言い淀むリズさんを見て、アグニラさんは続ける。

「お前がいくら望んでも無駄なこと。諦めて帰るのだな」

「っ……」

リズさんは悔しそうに俯いた。

「待ってください!」

僕は思わず叫んでいた。

「なんだ?」

アグニラさんの視線が鋭くなる。

「どうか話を聞いてくれませんか?」

僕のことを値踏みするように見つめるアグニラさん。
しばらくしてから彼は口を開いた。

「これは終わった話だ。里の人間の未来とリズ一人の幸福、どちらを選ぶかなど分かり切ったことだ」

「……リズさんだってその大切な里の一人じゃないんですか?」

「無論だ。しかし、覆ることはない」

「なぜですか……?」

「百を生かすために一を切ることも時には必要なのだ」

この人が簡単に物事を決めつける人ではないということだけは分かった。
リズさんが以前言っていたこの里で災害があったという言葉を思い出す。
彼は両親をそこで亡くしたんだったか。だけどそれでも……

「お願いします!」

決死の思いで頭を下げた。

「認めてください! どうか、お願いします!」

「……なぜそこまでリズに入れ込む? 言っては何だが、リズの女としての器量は良くないだろう」

「僕にとっては違います」

「違う、とは?」

僕は顔を上げて言った。
もう迷いはない。
言うしかないと思った。
ここまできたら隠すことなんてできない。
正直に伝えよう。
それが誠実というものだ。
そう思った。
だから僕は真っ直ぐに彼を見た。
そして、伝える。ありのままの事実を――

「僕ちょっと特殊な性癖というか……美人な人の顔は見ても特に何とも思わないというか」

……だいぶ変態っぽいな。
案の定会合所の中は騒めいた。
まあ当然だろう。
突然、こんなこと言われたら誰だって驚く。
しかし、僕は本気だった。
リズさんを手放すつもりは毛頭ない。
だからこそ今更恥ずかしいとか言ってられないし、変なプライドで自分の気持ちを否定するような真似もしたくない。
あちこちから「可哀想に……」とか「まだ若いのにな」だの聞こえてくる。
中には同情するような目で見る者もいた。
どうやら僕は相当変わり者らしい。
それならそれでいいさ。
僕は気にしないぞ。
むしろもっと蔑めとばかりに開き直った。

「ふむ……つまりお前は醜女好きということで間違いないか?」

「はい!」

誰に恥じることもないと勢いよく返事をすると、アグニラさんが目頭を押さえた。

「なんと悲しい男よ……」

「えっと、すみません」

「謝ることではない。ただ……不細工が好ましく感じると告白した者は初めて見たものでな」

「そ、そうなんですね」

ちょっと引かれてる気がするけど、別に構わない。

「リズさんは確かにあなたたちにとって美人ではないかもしれません。それでも僕にとってはとても可愛らしい人なんです。一緒にいて楽しいです。それに冒険者として活躍してきた彼女のことは僕も尊敬しています」

「と、トーワ君……ちょっと言いすぎ……いや、嬉しいけど……」

「何より僕は彼女を愛しています」

「うぐ……ッ」

隣でリズさんが俯いている。
ちょっと語り過ぎただろうか、後になって恥ずかしくなりそうだ。

「……ほう」

「だからどうか認めてくれませんか?」

「…………」

アグニラさんはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

「……しかしだな、感情論ではどうにもならないことなのだ」

「ぅ……」

それは分かってる。
しかし、僕は食い下がった。
このまま引き下がれない。
必死の思いで訴える。
そんな時だった――

「お待ちください!」

会合所の扉がバンッと開かれ、そこから入ってきたのは……

「……リリーラ?」

アグニラさんが驚きの声を上げる。
そこに立っていたのはリリーラさんと銀翼の皆だった。

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