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第63話 異常

「リリーラさん、ありがとうございます……本当になんて言っていいか」

リリーラさんへのお礼を口にすると、再び僕に深く頭を下げた。

「お気になさらず、当然のことをしただけですので」

それから皆と一緒に会合所を出た。
里の中を皆と歩きながらリズさんの実家へ向かった。

「よ、よかった……本当に」

とても嬉しそうな声が聞こえてくる。
リズさんに目を向けると、目の端に薄っすらと涙を浮かべていた。
安堵から僕も深く息を吐く。

「これでなんの気兼ねもなく付き合えますね」

「そうだね!」

シルヴィさんが「よかったですね」と笑った。
アイリさんとミーナも嬉しそうだ。

「というか凄い敬われたんですけど……」

参加してた人達の態度が180度変わっちゃったから驚いた。
何だこの若造は? からあの豹変はそりゃあ驚く。
僕としては「どうも……」と言って頭を下げるか、軽く手を上げたりするくらいしか対応できずにいた。
退場する時も今晩は歓待とか言われたけど、必死に断らさせてもらった。
小市民の僕にとっては普段通りにしてもらわないと困惑してしまう。

「し、仕方ないよ……トーワ君は使徒様なんだから」

リズさんは少し心配するような様子で「ボクも敬った方がいいですか?」と聞いてきた。

「いや……勘弁してください。寂しいんで普通に話してください……」

そう言うとアイリさんが「そっか」と少し安堵した様子。
シルヴィさんからは「いや、それはそれで美味しいような……?」とかなんとか聞こえたけどそこはスルーしておいた。
ミーナも頷かなくていいから。

「そ、そう?」

うん、それが一番いいと思うんだ。
それに僕は何かしてきたわけじゃない。
別にそこまで気にしなくても大丈夫だよ。
むしろ僕の方が緊張するよ。

「逆に僕が敬い始めたら違和感あるでしょ?」

「……いや、最初はトーワ君もそんな感じだったよ」

あ、そうだった。
サイン貰うあたりとか似たような感じだったかもしれない。
リズさんは「でも、そうだね」と言って笑った。

「ごめん……実はちょっと寂しかったんだ」

ですよね、と僕も同意する。
今まで普通に接してきた人が急に畏まった態度を取るというのは、なんだか落ち着かないものだ。

「リズのことはいいんだが、トーワはこれからどうするんだ?」

「? どうとは?」

「女神様の使徒なんだろ? これからこの里で過ごすのか?」

ミーナが「だったら活動拠点は変更する」と口にする。
すると不意にリリーラさんが神妙な感じで口を開く。

「トーワ様」

リリーラさんから聞こえてきたその言葉に一瞬固まる。
だけどすぐに苦笑いした。

「リリーラさん……初日にも言いましたけど僕としては落ち着かないので最初みたいな感じでいいんですけど」

というか自立したいから突然使徒だと言われてもこの立場は邪魔かもしれない。
リリーラさんがショックを受けそうだから言わないけど……

「申し訳ありません。しかし、女神様の遣わされた方に龍神様の巫女である私が失礼な真似はできません」

「リズもできれば、正してもらいたいのですが……」とそこを譲歩してるから許してほしいということなのだろう。
まあいいか。本人が納得してるならいい。
それより気になった事が一つあった。
それはリズさんの様子だった。
なんかこう……ソワソワしているというか落ち着きがないように見える。
何故だろうか?

「まあいいですけど……それでなんでしょう?」

彼女が頷く。

「そうですね、トーワ様と銀翼の皆さん、それとリズにも聞いておいてほしいことです」

「? 分かりました」

家の中にお邪魔すると、リリーラさんが「今お飲み物を出しますね」と、用意をし始める。
飲み物が配られると、早速ミーナが伸ばす。その手をアイリさんが「いきなりは行儀悪いぞ」と叩き落としていた。

「皆様にお伝えしなければならないことがございます」

そんな前置きからリリーラさんは話し出した。

「トーワ様に関してです」

僕の事?
一体なんだろう……

「トーワ様は過去の使徒様と同じく特異な能力を所有されています。その事についでですが……」

そこで言葉を切ったリリーラさんは僕を見つめて続けた。

「トーワ様にこの身に再び命を吹き込んで頂けました」

リリーラさんは「まずは深く感謝をさせてください」と頭を下げた。
しかし、と――

「”龍眼”での未来では私は近いうちに死んでいました。本来なら今頃は動けない程衰弱していたはずなんです」

「でもトーワ君のおかげでお母さんは良くなったじゃないか。元気そうに見えるけど?」

そういえばそんなこと言ってたな。
血色は以前より良い。
一見して問題はないように思えるけど、何か不都合があったのかと、不安になってくる。

「もしかして何か身体に不調が?」

「いえ、不調はありません」

その言葉に安堵する。それを聞いてリズさんが首を傾げた。

「つまりどういうこと? 治ったならいいんじゃ?」

「違うの。回復するとか、治るとか、そういう話じゃないの」

リリーラさんはそう言って僕を見た。
そして彼女は言う。
自分の体に起きた変化について。
それを僕達は黙って聞いていた。

「未来は枝分かれしています。ですがもう分岐を選べない程進み確定した死は避けられません。そういうものなんです。寿命が増えますか? 老いた肉体が若返りますか? 死人が生き返りますか?」

リリーラさんはコップに入った水を口にする。
そして一息つくと話を続けた。

「今のは例えですが、トーワ様がしたことはつまりそういうことです。理屈に合わない……あり得ないんです。私のこともですが、リズの龍化にさえも作用するのは、回復という領分を些か超えたところにあると感じました」

真剣な表情で聞く皆にリリーラさんは取り繕うことなく告げた。

「ハッキリ言います。その能力は異常です」

しかし、すぐに頭を振った。
そして、深々と頭を下げる。

「失礼しました。こんな言い方をしてしまって。ただ、これは皆さんに知っておいてほしかったのです」

皆も戸惑っているようだ。
彼女は、トーワ様、と続けた。

「あなたのそれは”回復魔法ではありません”。その力をあまり人前で使うことのないよう気を付けてください」

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