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隣の席のクールな爆乳美少女

「なぁ、葉山」
「なに?」

授業の合間合間に挟まる休み時間。教室の喧騒に囲まれながら級友の
綾部
あやべ
と駄弁っている最中、突然小声で尋ねてくるので怪訝に思っていると、彼は教室の最後列の席で粛然と足を組んでスマホを弄っている“一人の女子生徒”に視線を向けながら言った。

「やっぱさ。氷川ってエロいよな」

――『
氷川麗奈
ひかわれいな
』。同じ2-Bのクラスメイトである。
クールな印象を与える切れ長の目元。サイドに編み込みの入った黒髪のショートカットヘア。彫刻芸術のごとく整った造形の顔立ち。まるで芸能人と見紛うその美貌は、傍を横切れば誰もが振り返り、見るものを恍惚とさせる“魔性”を孕んでいた。

「いいよな~。お前、アイツの隣の席だもんな」
「だからなんだよ」
「やっぱ盗み見とかしてんの?」
「盗み見? なにを?」
「胸だよ胸。おっぱい以外なにを見るってんだ」

彼女の最も危険な魅力。それは“たわわに育った巨乳”だ。街中でスカウトされ、現役グラビアアイドルとして活躍しているほどの豊満なバストの持ち主である彼女。クールでミステリアスな雰囲気とは裏腹に、歩くだけでふよふよと小さく揺れる爆乳とのギャップの破壊力は、男子はおろか女子たちにすら羨望の的となっている。

「で? どうなんだよ?」
「……そりゃ、当然見るに決まってんだろ」
「だよな~」
「でも相手は“あの”氷川だぜ? そうそう覗き見なんかできねぇよ」
「あぁ、たしかになぁ。アイツ、ちょっと怖いしなぁ」

そう言うと綾部は納得したように相槌を打った。氷川麗奈は容姿端麗ではあるものの、無口で無愛想で、常に仏頂面である。休み時間も一人、昼休みも一人、終業のチャイムが鳴ればそそくさと帰っていく。新学期は誰もが彼女のオーラにあてられて仲良くなろうと試みたが、いずれも冷たくあしらわれ、すっかり2-Bの中で浮いてしまっていた。以来、彼女が校内で誰かと会話している姿は一度も見ていない。

「でも俺さ。氷川のことはそんな嫌いじゃないよ。できればこの二年の間に、ちょっと仲良くなってみたい気はするぐらいには」
「マジか」
「マジ」

――嘘である。
この『
葉山堅治
はやまけんじ
』は、氷川麗奈が“嫌いじゃない”どころじゃない。異性として好きである。
ミステリアスな雰囲気とか、ドストライクな容姿とか、近くに居ると良い匂いが漂ってくるところとか。彼女を好きになった理由は枚挙に暇がない。それに上手く説明はできないが、“生理的に惹かれている”レベルで氷川麗奈という個人に惚れていた。恋は理屈ではないとよく聞くが、本当に理屈で説明できるものじゃなかった。あえて例えるのなら、彼女の内側からにじみ出てくる一種の“フェロモン”のようなものにあてられているのかもしれない。

「――あの子だけはやめといた方がいいかもよ?」
「うお、急になんだよ?」

すると、どこからともなく綾部と同じ級友である
相澤
あいざわ
が俺たちの会話に割り込んでくる。彼女は心なしか、氷川のことを侮蔑の眼差しで見ていた。それは同性に抱く嫉妬の感情とはまた別のものに思える。

「……先輩たちから聞いたんだけどさ」
「なになに?」
「氷川さん。ああ見えて相当アレっていうか……、色んな男を取っ替え引っ替えしてるらしいよ?」
「え? ガチで?」
「うん。他校の生徒とか、大学生とか、社会人とか、パパ活のおじさんとか。とにかく色んな男との関係を持ってるんだって」
「オエぇ……嘘だろオイ……。人は見かけに寄らないんだなぁ」

我が級友たちは揃いも揃って澄ました表情を浮かべる彼女を、苦虫を噛み潰すような顔で見るのだった。

「へぇ、そうなんだ」

だが、俺はそれを聞いて不思議となんとも思わなかった。そもそも、そんな不埒な噂話は随分前から知っていた。にも関わらず、俺の彼女への恋慕が腐り落ちることはなかった。こんなにも熱していて冷めてもいるのは、これが“報われない恋”だと理解しているからなのかもしれない。
氷川麗奈ほどの美少女ならば、引く手数多で選り取り見取りのはず。そんな彼女が、こんな凡庸な俺をわざわざ選ぶ理由がない。初めから自身に気持ちが向けられる期待を抱くことはなかった。達観しているからこそ、彼女が誰かのものになったところで何も感じないのかもしれない。今はただ、隣の席にいるというささやかな幸せがあれば、それで満足なのだ。

「なんかリアクション薄くね? 葉山」
「まぁ、そういう噂があるのは前々から知ってたからな」
「そうなの? なのに仲良くなりたいってなるんだ……。アンタどうかしてるんじゃない? 私だったら冷めちゃうけど」
「そうか? どんな裏があろうと氷川は氷川だろ」
「そういうもんかぁ?」
そんな風に彼らと他愛もない会話を繰り広げていると、噂をすればなんとやらとばかりに氷川が立ち上がり、何かを手に持って近づいてきた。

「げっ」
「な、なに?」

普段自分からクラスメイトに絡もうとしない氷川が迫ってくる異常事態に、一同恐れ慄く。異常を察知した周囲の生徒たちも、にわかにこちらの様子を伺っている。

「――これ」
「え? 俺の……スマホ?」

氷川はそれだけ言うとスマホを手渡してくる。間違いなく自分のだ。たしか机の上に置きっぱなしだったはずである。

「落ちてた」
「……落ちてた?」
「床に」
「あ、ああ! 床に落ちてたんだ。ありがとう?」
「どういたしまして」

そうして彼女は再び貝のように口を閉ざすと、踵を返して席に戻り、再び自分のスマホを触りはじめる。
冬の朝の空気の如く澄んだ声色が響き渡ったあとの静寂の余韻は、休み時間の終了を報せるチャイムが鳴るまで延々と流れるのだった。

現代国語の先生の話に耳を傾けるも、休み時間の出来事のせいで授業内容がまるで入ってこなかった。氷川がわざわざ床に落ちたスマホを拾って持ってきた。たったそれだけのことなのだが、俺にはある一抹の不安があった。
氷川に渡されたあの瞬間。最後に画面に表示されていたのは、自作の“エロ小説”の文面だったのだ。前の授業中の終わり際、なんとなく暇になったので、クラウドアプリに保管した自分の作品の出来を確認がてら読み返していたからだ。
俺はいちいちパスコードを打つのが面倒だという理由で画面ロックをしておらず、もしもスリープを解除して覗いたのなら、俺の“秘密の趣味”は十中八九彼女に知られたことになる。
俺はエロい小説を書くことを密かな楽しみにしている男だった。もともと本を読むのが好きで、転じて自分からなにかを書くようになっていった。で、盛んな年頃であるがゆえ、“そういう”ものも積極的に書いて“持て余した性欲の捌け口”にするのを楽しむようになったわけだが。最近は専ら、氷川麗奈を好きになった影響で、彼女をモデルにしたキャラをヒロインに据えた作品を執筆しているのである。
さらに言えば、最後に読んでいた=彼女に見られたと思しきシーンは例のごとく、件のヒロインに『パイズリ』をしてもらっている最中のものだった。

(え? あれ? わりとピンチじゃね? やべ……)

誰にも知られたくない“黒歴史”が他人にバレた時点でショックは相当に大きいが、なにより“氷川麗奈にだけは嫌われたくない”のが心情。『好きの反対は嫌いでなく無関心』などとよく言うが、俺は彼女に嫌悪感を抱かれるぐらいなら名前を覚えられていない方が幾分かマシだと考える。
俺はひたすら後悔した。横着してスマホにロックを掛けなかった迂闊な自分を呪った。

「……」

そんな風に煩悶としていると、机の右側がトントンと指で小突かれる。反射的に隣を見ると、渦中の人物が無言でこちらを見ていた。

「な、なんですか?」

間近で見る氷川のあまりにも美しい顔面。普段ならば顔が熱くなるところだが、今は背中から冷や汗が吹き出すばかりだ。
じっと意味深に見つめてくる彼女。そのとき俺は確信した。彼女は間違いなく見た……いや“読んだ”のだ。

(万事休す――)

俺は死刑宣告を受ける囚人のごとき心持ちで、彼女が次に紡ぐ言葉を待った。

「教科書」
「……え?」

しかし、彼女の口から出てきたのは想定外の単語。たしかに彼女の机の上には、授業でやっている現国の教科書が無かった。氷川は俺に「教科書忘れたから見せてくれ」と頼みこんでいるのだろう。

「……あ、ああ」

内心ほっと胸を撫で下ろす。机を寄せ合い、先生が進めている当該箇所までページをめくった。よくよく考えれば当然の帰結である。特別仲良くもない隣の席のクラスメイトが授業中に尋ねてくることなど、たかが知れていたのだ。どうやら俺の不安は杞憂のまま終わりそうだ。

「――パイズリ。好きなの?」
「ッ!?」

あまりの不意打ちに危うく声を出しそうになった。
再び背筋が凍りつく。心臓が跳ね上がり、全身から血の気が引いていく。氷川は間違いなく「パイズリ」と言った。この至近距離で聞き違えようもない。
俺は震える手で板書ノートのページを一枚破ってメモを書き記し、さり気なく彼女の机に手渡した。メモの内容はこうだ。

『読みました?』

氷川はメモに文字を書き足すと、こちらに返す。

『読んだよ』

――勘違いの余地はない。
彼女に、氷川麗奈に、俺の黒歴史を知られてしまった……。
背中に氷の塊を入れられたかのようにゾッとなり、額から嫌な汗が伝う。

(お、終わったぁ……!)

最も恐れていた事態に直面し、絶望の淵に立たされる。もし今すぐタイムリープできるのなら十数分前に遡り、離席する前にスマホを手元に回収したかった。これから待ち受けであろう仄暗い未来に打ちひしがれていると、彼女の方から新しいメモが渡される。

『あのパイズリしてる子、私に雰囲気似てる気がするんだけど。もしかして私がモデル?』
「――ヴッ!?」

絶大な威力を誇る言葉の弾丸に射抜かれ、今度こそ声が出てしまった。
幸いなことにそれほど大きな声量ではなく、周囲の誰にも気付かれていない。強いて言うなら、こちらをずっと注視している氷川には聴こえたぐらいだろうか。
俺は這々の体でペンを取り、ひたすら謝罪を綴った。

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

情けないほどヨレた字は、あたかも俺の自責の念が乗り移っているかのようだ。これで許してもらえるとは思ってはいないが、今はただ全力で平身低頭する他ない。
ところが、俺の決死の謝罪に対して返ってきたのは、思いもよらないものだった。

『今日の放課後駅前に来て。reirei55。これラインのIDね』

それから彼女とは一言も言葉を交わすことなく放課後まで過ごした。

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