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プロローグ「出会いは朝焼けの中で」

夜明け前。激しい雨の降りしきる薄暗い森を疾駆する、一つの影があった。

(くそっ……この私が無様に敗走せねばならぬとは……)

心の中でそう呟いた女性は、市井の者とは一線を画す外見をしていた。身につけているのは露出度の高い軽装の鎧で、腰には長剣の鞘を帯びている。真紅のマントを翻した上から艶やかな紫の長髪を風に靡かせており、露出する尖った耳から、彼女がエルフと呼ばれる種族の戦士である事が察せられる。切れ長の怜悧な瞳は翡翠のように美しく、高く上品な鼻筋をしていて、凜々しくも美しい顔立ちだ。

際どい衣装の下から顔を覗かせているのは筋肉質に引き締まりながらも肉付き豊かな褐色の肉体で、厳しい鍛錬に勤しんできた事が伺えながらも、女として極上の性的魅力に溢れた肉感的肢体に仕上がっている。

彼女の名は、イネルヴァ・ヴェレグスト。

とあるダークエルフの国において、魔導将軍の地位を授かっていた者だ。

――つい先日までは。

「見つけたぞ! 将軍イネルヴァ!」

叫びが聞こえてきた同時、足を止めたイネルヴァの前に、一つの影が躍り出た。人型の犬の頭部を持ち、両手には身の丈ほどもある大斧を握りしめている。コボルトと呼ばれる獣人の戦士だ。

「人間の国に向かって落ち延びようとするとは、王国きっての魔剣士も落ちたものだな!」

「何とでも言うがいい」

(どうやら、連れはいないらしいな……)

周囲の気配に探りを入れつつ、抜刀して構える。探索に出した兵を単独で運用しているとも思えないが、もしかすると懸賞金にでも目の眩んだ賞金稼ぎの類かもしれない。

兎に角。眼前の敵がどんな輩であろうとも。

「王国の再建の為、私はここで倒れるわけにはいかないのだ」

「ならば、その矮小な志を後生大事に抱えながら死ね!」

叫ぶが早いか、コボルトの戦士は斧を振り上げながら突進してきた。

「ここで貴様を斬って、俺の手柄としてくれる!」

「散るのは貴様の方だ!!」

視界を染める激しい風雨の中、激しい斬撃の応酬が繰り広げられる。

イネルヴァの獲物である長剣では、巨大な大斧とまともに打ち合えない。

かといって距離を詰められ足場の不安定なこの状況、視界がすこぶる悪いのも相まって、魔術で状況を打開しようとするのはあまりにもリスキーだ。

自然、イネルヴァはヒットアンドアウェイ気味に戦うしかなかったが、相手もそれなりに場数を踏んだ相手なのか、攻撃が大振りの割りには攻める隙を中々見せない。

有効打を欠く、互いに弧を描くような立ち回りの戦闘。

だが、勝負に決着をつける転機は意外に早く訪れた。

イネルヴァが、周囲よりぬかるみの深い地面に足を取られてしまったのだ。

(しまった!)

「貰ったぞ!」

マズいと思ったのとほぼ同時、身の丈ほどもある大斧が繰り出される。

「ぐっ!」

渾身の突撃と共に振るわれる横薙ぎ。とっさに後ろに飛び退いて直撃を避けるも、脇腹に鈍い痛みが走る。

イネルヴァの纏っている軽装鎧には多大な魔力が込められており、露出している部位も術的防壁で保護されている。

だが、多大な質量を持った斬撃の威力を全て防ぎきる事は叶わず、彼女の脇腹からは紅き鮮血が迸った。

(私も焼きが回ったものだな……こんな猪突猛進の輩に一撃を貰ってしまうとは)

王都での大敗から殿を務めて部下を先に逃がし、ろくに食事もせず逃げ落ち、イネルヴァは消耗しきっていた。長期に渡る逃亡生活の疲弊は、予想以上に彼女の反応を鈍らせていたのだった。

(だが……私はここで命尽きるわけにはいかない……いつの日か王都を奪還し、再び我らが女王を玉座につけるその日までは……!)

「死ねえええっ!」

手傷を負った相手に必ず直撃させられると踏んだのか、今度は大斧を上段に振り上げて一気呵成に叩き切らんとしてくる。

「死ぬのは……」

食らえば一刀両断は避けられない、しかしイネルヴァは敢えて敵の方に強く踏み込んだ。そのまま刃に向けて背を向けるように一回転し、縦に繰り出された強撃を紙一重でかわす。そして、

「貴様の方だ!」

「ぐあああっ!」

横薙ぎに一閃。振るわれた斬撃は、屈強な戦士の胸元を鎧ごと切り裂いた。イネルヴァの長剣は特殊な魔術的加工が施されており、持ち主の魔力を切れ味に転化する事が出来る。流石に勢いのついた巨大戦斧と真正面からやり合うには心許ないが、分厚い鉄板を貫通するには十分な威力を得られるのだった。

断末魔の悲鳴を上げたコボルトの戦士は、大斧を振り下ろした体勢のまま、地に崩れ落ちる。降りしきる雨が、膝をついて動かない彼の身体を止めどなく濡らし続けていた。

(何とか退けられたが、これは……)

相手の絶命を確認した後、自分の負った傷の具合を見る。致命傷は避けたとはいえ、大質量を伴う斬撃が身を掠めたのだ。脇腹は深く抉られ、傷口からは雨と混じった血が滴っていた。ただでさえ疲労が蓄積している現状、新たな追っ手に見つかれば、更なる苦戦を強いられる事は必至。傷を癒す治癒魔術の一つでも扱えれば良かったのだが、残念ながらイネルヴァにそういった類の心得は無かった。

(とにかく、休める場所を探さなければ……)

マントで傷口を縛って応急処置を施し、イネルヴァは雨の降りしきる森を進み続ける。

やがて、小高い丘を降りたところに、岩の裂け目を見つけた。

洞窟に入ってみると、中は案外広く、複数人が生活出来る程度のスペースがある。身を隠すには絶好の場所とはいえないが、休息を取るには打って付けだ。

(追っ手にすぐ見つかる事もそうそう無いだろう……)

本来であればもっと慎重になるべきだとはイネルヴァ自身も理解していた。だが、長期に渡る逃亡生活の疲労で、精神も肉体も限界に達していた。

少し、眠りたかった。

(皆は、無事に逃げ果せただろうか……)

横になって目を瞑ると、王都を巡る戦いの光景が脳裏に甦る。城壁を乗り越えて押し寄せる敵兵と、応戦する仲間達。戦火に逃げ惑う民衆も、隠し通路から脱出させた女王陛下も、先に撤退させた部下達も皆、無事に生き延びれただろうか。今のイネルヴァには祈る事しか出来ないが、それすらままならぬほど、心身の消耗は限界を迎えていた。超えてすら、いたかもしれない。

程なくして。ダークエルフの女将軍の意識は、深い睡魔の底へと落ちていった。

腹部の違和感に、イネルヴァは目を覚ました。

「ん……」

太陽の光が差し込んでいるのか、洞窟内は明るく照らされている。視線を向けると、斬撃を食らった脇腹に包帯が巻かれてあった。

「おねえさん、おきたの?」

幼い声に顔を上げると、一人の少年の姿が視界に入る。どうやら、人間の子供らしい。外見から察するに、幼少期のようだ。質素な衣装を身に纏っていて、即席の焚き火で何かを煎じている様子だった。

「……これは、お前がやってくれたのか?」

「うん。おねえさん、すっごくひどいケガしてたから。だから、やくそうでてあてしたの」

「そうか……礼を言う」

少年の側には薬草の沢山入った籠が置かれていた。焚き火で煎じているのも、恐らくはそれらを用いた止血用の薬なのだろう。

(しかし、こんなに小さな人間の子が……?)

瞬時に疑問が脳裏に浮かぶ。幼い時分から薬草術の心得があるというのは、ダークエルフの目から見ても不思議だった。人間種はエルフ種に比べて成長が早いという話ではあるが、それにしてはやけに意思疎通もハッキリとしていて――

「だいじょうぶ? まだいたむ?」

「いや……平気だ」

「よかったぁ。ココ、ボクのきゅうけいばしょなんだけど。おねえさんがたおれてたから、ビックリしちゃった」

「お前は……」

「ボクはリュンっていうの」

イネルヴァの問い掛けに、少年は屈託のない笑みを浮かべて答えた。

「おねえさんのなまえは?」

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