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クールだけど寂しがりな少年ヒーローが牛柄コスチュームの乳牛怪人お姉さんのおっぱいで素直で可愛い甘えん坊にされてしまうお話。

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「ねえ父さん。明日、どうなの?」

「あぁ…ごめんな、やっぱり父さん時間取れそうも無いんだ」

「…そ。」

そこは何の変哲もない一般的な食卓。たった二人で囲むには少し大きめなちゃぶ台には二人分の味噌汁に白米、焼き魚にお茶…それに合わせた調味料も一通り置かれており、少し横には折り畳んだ蝿帳も置かれている。そんな中で、調理後から少しだけ時間の立った焼き魚に醤油を垂らしながら、「最初から期待していない。けど、もしかしたら…。」そんな感情を込めて出された少年の言葉は、申し訳無さで一杯の一言で否定されてしまう。

「……」

「……」

一言二言。味噌汁を啜る音が響くのみ。二人の仲が決して悪いわけではない。むしろ普段なら顔色を窺ったりすることもなく止めどなく会話は溢れてくる。会社であったこと、学校であったこと。作りたての料理の味はもちろんのこと、漂う湯気や香りを楽しみながら、あっという間に食事を食べ終わり、デザートに冷凍庫から棒アイスを取り出してテレビを見ながら余韻を楽しむ。普段なら、そんな光景が広がるのがこの食卓だ。

「本当に大丈夫だよ。父さんだって忙しいのは俺だって最初からわかってるからさ。」

「本当にごめんな。埋め合わせは必ずするからな。」

「…まぁ、期待しないどく。」

埋め合わせはするという言葉に、少年は少し期待を込めたような反応をしながらも、やや反抗期な年頃のためか、それとも照れ隠しか、少し突き放したような言い方で会話を紡ぐ。

「…………ふぅ、ごちそうさま九郎
くろう
。今日の夕飯も美味かったよ」

「…食器、そのままでいいよ。……疲れてるだろうしさ。」

「…ああ、じゃあお言葉に甘えて休ませてもらうよ。」

食事後一息ついて…。息子がそう言ってくれているのだから。好意を理解した父親は、『九郎』と呼んだ少年に片付けを任せ、寝室へと入っていく。入浴は食事前に済ませており、疲れ目であったことも含め、父親は未だ時刻9時という個人差はあるものの寝るには些か早い時刻であるにも関わらず、寝室のドアを締める。ドアの隙間から漏れ出ていた電気がフッと消えたことが、廊下越しに九郎にも父親の睡眠を伝える。

「…ふぅ、仕方ないか…。」

一人となった食卓で、九郎はカバンから一枚のプリントを取り出し、名残惜しそうに眺めた後、ゴミ箱へと捨てる。感情のままにくしゃくしゃと丸めたりビリビリと引き裂いたりはせず、明日、朝食の栄養ゼリーやコンビニのおにぎりの包装を捨てる際に、父親にも『授業参観のお知らせ』という題目が見えるような位置に、かさっ…と置くように。そんなことをしても父親の予定は変わらない。でももしも万が一。何かが原因で会社そのものが臨時休業したりしたら…。その時は父親の目に止まれば…そんな淡い期待を込めての行動だった。

(わかってるけどさ…。わかってる…けど…)

「…俺も寝よ」

いつもは父親と一緒に一本ずつ取る冷凍庫のアイスにも手を付けず、九郎もまた寝支度を整えようとする。と、そんな時――

エマージェンシー!!エマージェンシー!!

「!!」

充電中だった九郎のスマートフォンが鳴り響く。部屋を隔てて鳴り響くほどの音ではなく、これで父親が目が覚めることは無いにしろ、突如鳴り響いた大きな音に九郎はまるで猫のようにビクッと体を条件反射させてしまう。

「また、『怪人』か…!?」

九郎のスマートフォンの着信画面には、大きな赤文字でEMERGENCYという文字が表示されていた。市販のスマートフォンには表示されないような仰々しく、注意を引く眩い赤文字は連絡先の相手が常人ではないこと、そしてその内容もまたただ事ではないことを示している。

「――はい」

「おお九郎君!!すまないなこんな夜中に!」

「…大丈夫ですよ。それで、怪人ですか?」

「ああ、ギャレイヴの手先だ。場所を表示する!すまないが大至急向かってくれ!」

「了解。」

時間にして5秒も通話時間はなかっただろう。だがそれだけで九郎の目つきは少し落ち込んでいた目つきから、使命を抱いたものへと変わる。同時にスマートフォンからは街の地図がソリッドビジョンで表示され、目的地と思わしき場所には赤いドクロマークが浮かび上がっていた。

翔田
しょうた
の52番地…よし急ごう…!」

住所を確認した後、九郎は父親の目を覚まさないように、忍び足で歩き、ゆっくりと玄関を開閉する。そして――――――

「な、なんだあの子…?」

「さぁ…コスプレか…?」

「新手のキャッチじゃないのか…?」

「で、でもなんだか…凄い格好ですね…」

九郎が目指した場所はオフィス街の一角、丁度会社疲れのサラリーマンが疲れを癒やすため立ち寄る、歓楽街と横並びなっている箇所だった。

「ふふ~ん御疲れのパパさん達がいっぱい♡」

そこで一際目につく姿の女性が一人。一見するとバニーガールのような見た目だが、その耳と尻尾はまるで本物のようにもこもこと毛が生え揃っており、それ以外にも腹部、太腿も、もこもことした見るからに暖かそうな毛で覆われている。

「コスプレか…?いや最近のコスプレはよく出来て…」

「あんっ♡駄目ですよパパさん♡お触りはお店の中で…♡…というわけで…は~い皆さん♡お店に来てくれる人はぁ…このバスに乗ってくださいねぇ…♡」

「うおっ…♡」

女性は物珍しさと下心で触ろうとしたサラリーマンの手をはねのけ、妖艶な目つきでそう囁く。それと同時に、周囲にはぽわわっ…♡とハートが飛び散り、それに触れた人間が数名、意識のないゾンビのようにバスへと近づいていく。

「ちょ…駄目ですよ先輩!この後取引先と懇親会が…!」

ふらふらと近付くサラリーマンが居れば、それを不審に思う知人も現れだす。しかしハートに触れたサラリーマンの顔は正気のものではなく、何やらぶつぶつと独り言を繰り返しながら、何かを待ちかねるような、不気味な薄ら笑いを浮かべている。――これは普通じゃない。明らかに異常事態だ。ギャラリーがそう思い始めた時――

「イレイス・メモリー・パルス!!」

「むむっ!?」

その場全体の人間を包むように、超音波が鳴り響く。とは言え、それは人間の耳には聞こえず、気付かぬまま鼓膜に取り入れた周囲の人間はまるで眠るようにばたりと倒れていく。が、バニーガールの女性だけはその音を聞いても眠らず…そして音波の主にも気付いていた。

「そこまでだギャレイヴ…お前らの好きにはさせないぞ…!」

「ふふっ、来たわね…『ブラックアビス』!!」

バニーガールは、その声を聞いただけで声の主を特定する。――そして、声の方向に従い振り向いた先にあったのは高層ビルの頂上にて闇に溶けるような漆黒のマントを靡かせる一人の少年の姿。そしてその影は、ビルから飛び降り、華麗な着地姿勢でバニーガールの前へと降り立った。

「ふふ…何か用かしら…?私は単に日々の仕事に疲れたお父さんを癒せるお店への招待バスを出しただけなんだけど…♡」

「とぼけるな…そうやって人間の生体エネルギーを吸収するのがお前らギャレイヴの手だろ…」

「あはは…♡今更言い訳は無いわよね。そうよ?あのバスの行き先は癒やしのお店なんかじゃなくて、ギャレイヴの吸精ラボ♡そこでぇ…んっ♡えろぉ…♡せーえきをじゅるじゅる~って吸い取って、エネルギーにするの♡人間の欲望のエネルギーは、ギャレイヴにとって理想の資源だからね…♡」

説明しよう――ギャレイヴ。それは人知れず地球へと降り立った女性のみで構成された宇宙を根城とする悪の組織だ。彼女たちは人間の欲望のエネルギーを集め、地球征服への足掛かりとしている。故に欲望の塊である精液や愛液…ふしだらな感情などを誘発し、それを収集することを第一の目的としている。その為の尖兵とも呼べる怪人たちは今までに何度も市街へと降り立っており、その度に彼――……
『史雁九郎』が変身する地球の守護者…『ブラックアビス』がその野望を防いできたのだ。
ギャレイヴの接近に気付いた超科学研究所は以前から実験していたブラックアビスの変身スーツを九郎に託し、九郎もまた彼らと共に戦うことを決めたのだ。――

そして今――、記憶を消され、眠った市民達は超科学研究所の精鋭部隊により保護され、今やこの街にはブラックアビスと、ギャレイヴの手先を名乗るバニーガールしか残っていなかった。

「お前らの目的なんか今更聞くまでもない。だからそれを止めに来たんだ」

「…な~によ、反応悪い…。君、身長的にまだ男の子でしょ?エッチなお姉さんのジェスチャーフェラとか見てもぉ…んぱっ♡なにも感じないのかな~?♡」

「…当然…」

「!!」

「だろ!!」

アビスの言葉の途中で、黒いマントが風に揺らめく。バニーガールがその光景に一瞬気を取られたと同時に、アビスは彼女の上空へと瞬間移動していた。同時に高威力の踵落としを繰り出すが、バニーガールも既の所でそれに気づき、ギリギリの所で回避する。

「ふ~ん、精神訓練でも受けてんの?それとも、単に気が強いだけ…?まぁどっちにしろ、この『もこもこバニー』様の力はそれだけじゃないよ♡」

「言ってろ…!」

息の休まる暇もなく、アビスは高速で移動し、もこもこバニーへと近付く。

「ふふふ…喰らいなさい♡もこもこ綿毛フェスティバル~♡」

「…!なんだ…?」

「さぁなんでしょうね…?ふふん…♡気になるならなぁ…ちょっと触ってみれば…?♡」

ぶわわっ…ともこもこバニーの身を包んでいたもこもこの毛が周囲に撒き散らされ、まるで海に揺らめくクラゲのように浮遊する。そのサイズはひとつひとつがもこもこっ…と人を包み込めるまでに肥大化する。そんな、突っ込んでくるアビスに対しカウンター気味に放った技『もこもこ綿毛フェスティバル』だったが――

(あれに突っ込んだらやばい…!)

真っ白な綿毛には、うっすらとピンク色の色彩も見え、ふわりと甘い匂いを漂わせていた。それを感じ取り危険と判断したアビスは華麗なステップやターンですべての綿毛を躱し、尚も変わらずもこもこバニー本体へと近付く。

「こんなもので俺が止められるわけないだろ…!」

「くっ、流石ブラックアビス…!私の体から放たれたもこもこ綿毛に突っ込めば、蒸れたフェロモンと、もこもこの感触で体中を包み込まれて即戦闘不能になるはずだったのに…!」

綿毛に引っかかる気配すら見せないブラックアビスに、もこもこバニーは演技ではない本当の焦りを見せつつ、立ち往生する。高速で向かってくる相手へのカウンター手段が、置物系のトラップだと言うことは、自分の目では相手の速さをおいきれず、かつ一度近づかれれば何も出来ないことの証明でもあったのだ。

「くっ…けど、まだよ…!」

「いや、終わりだ…!」

もこもこバニーがその目で追いきれない間に、既に両者の距離は踏み込み1足分まで縮まっていた。誰の目から見てもアビスの勝利は確実だ。だが、最後のあがきとばかりに――…

もこもこバニーはそのバニースーツの中から、豊満な胸を露出させる。

「ふふっ…もこもこ毛の中でたっぷり熟成された濃厚フェロモン…ゼロ距離で浴びちゃいなさい!」

もわわん…♡ふわっ…♡

「……っ…!」

「ふふん…♡」

ぽろん…♡と溢れた巨乳と、むわん…♡と漂うフェロモン。至近距離でそれらを見、浴びたアビスは、一瞬意識が眩みそうになるが――

「なめ…るなぁっ…!!『黒波動
ブラックウェーブ
』!!」

「きゃうっ!?や、やっぱり駄目だった~~~~~!!」

邪念を振り払い、アビスは掌から衝撃波のようなものをもこもこバニーへと浴びせる。バニーはゴッ…と吹っ飛び、そのまま壁へと激突してしまった。

「…きゅ~~~…」

もしも漫画やアニメであれば…×△×と、簡易な記号を組み合わせて再現できるような顔で、バニーは完全にノックアウトしてしまう。そしてそのままバニーの姿は、何かに回収されるかのように光の粒子となって消えていった…。

「……ふぅ…任務完了…」

バニーが消え去ったのを確認したアビスは、一息呼吸を置く。それと同時にまたもスマートフォンが鳴り響き――

『やぁアビスご苦労だった!今日も街の平和を守れたな…!』

「はい…ただ、やっぱり中々慣れません…。その、女の人を攻撃するのは…」

『心配いらないよ。ギャレイヴは常人の数倍は身体能力が高いんだ。通常の打撃では満足なダメージも与えられない。そうなると、今のような気絶させるくらいでないと、有効な攻撃にはならない。だがそれですら一時凌ぎだ。あの怪人も、基地に戻れば直ぐに目を覚ますだろう…。』

(…我々としては、本当なら命を奪ってようやく安心できるのだが…そんなことまで彼に求めるのは流石に酷だからな…)

『さて!アビス君。後のことは我々に任せて今日は休み給え。あの怪人と君に関する記憶を消してもらった一般市民、崩落した壁や過ぎた時間は我々がちゃんと元の様に戻しておくからね。』

「…わかりました、ありがとうございます。」

『ああそれと…今日の最後のあの場面だが…我々の開発したマスクとフィルターを持ってしても、あの至近距離でフェロモンを浴びせられれば全てを防ぎきれる保証はない。今後は、ああいった戦いは避けた方が良いだろうな…。』

「うっ…わ、わかりました…。」

その言葉を聞き、アビスは先程の事を思い出す。目の前で胸を露出させられ、フェロモンを浴びせられたことを。

――説明しなければならない。ギャレイヴの怪人は、いずれもが人間の価値観では相当の美女とされる容姿をしている。その体つきや年齢、身長などはまちまちとなるが、全ての怪人が女の魅力を武器とする。体から漂うフェロモンには濃度や効力の大小はあるが、いずれの怪人にも男や雄を虜にする効果があり、それを応用した独自の技や能力も持ち合わせる。これは欲望のエネルギーをより効率よく吸収する他、敵が男であった場合は強大な効果を発揮する。例えば先のもこもこバニーの必殺技。もしもあの浮遊する綿毛に回避せず勢いのままに突っ込み、体中を包み込まれていれば、綿毛の中に濃縮されたフェロモンが一気に襲いかかり、そのまま虜にされていただろう。ブラックアビスのマスクとフィルターはそのフェロモンをある程度防げる機能があるが、必殺技や能力、または至近距離で浴びせられる程のフェロモンを耐えきる保証は無いのだ。――

『君は心の強い子だ。今回のように色仕掛けへの耐性も持っているが…フェロモンだけには気をつけないといけないよ』

「わかりました。それでは…」

そうして電話を切り、ブラックアビス――いや、九郎は帰路につく。

(……くそ…ま、毎回毎回…目に毒だ…)

フェラジェスチャーや眼の前で見せられた胸の記憶を、必死で振り払いながら……そして――

「あ…そう言えば翔田って…父さんの職場があるとこ…。…駄目だ、今日は変なこと考える癖がついてる…」

バニーの現れた場所に、父親の会社もあったこと。そして…『もしも自分が一帯を守っていなければ、父親の会社は…明日の父親の仕事は無くなっていたのではないか…』などと、少しでも考えてしまった自分を諌めながら…

――翌日。ベッドで眠りについている九郎の耳に、チチチチ…というシジュウカラの鳴き声が響く。同時にそれをきっかけとするように、カーテンの隙間からは木漏れ日が差し込み、夢うつつであった所に、目覚まし時計の音がなり、九郎は目を覚ます。木漏れ日が目に染み、出来るだけ暗闇で目をならそうと布団を被り直し、ゆっくりと目を開ける。

「んん…こんな時間…」

九郎は本来目覚まし時計をセットした時間よりも30分は早く起きるタイプだ。そんな彼が今日に限って目覚まし時計に無理やり起こされる形で目を覚ましたのは、昨日の疲れが原因だろう。怪人との戦い、そして――

「…メール…?」

『九郎、おはよう。父さん、昨日も行った通り今日は会議なので早く出る。目覚まし時計、7時にセットしてるんだったな。ちゃんと起きてるならメールでも、電話でも起きてるって伝えてくれ。寝たままならモーニングコールしようと思ってる。それと…今日は本当にごめんな。』

「……」

「…『おはよう父さん。ちゃんと起きてるよ、仕事がんばって』と…。」

心に残ったままの、父親不在という事実による、気疲れ。それらの影響で、九郎はいつもより遅い時間に目を覚まし、父の頼みどおりにメールを返す。『本当にごめんな』という部分には触れないよう、差し障りのない定型文のような返事を返した後、九郎は顔を洗い、歯を磨いた後に、キッチンへと歩いていく。いつもはちゃちゃっと終わらせるこの流れも、今日は少し時間がかかった。顔を洗った後の雫など、直ぐにタオルで拭き取るのに、なぜか今日はぽたぽたと何滴か洗面台に落ちてから、ようやくタオルを手に取る。

「…パンでいいか」

九郎の家では疲れ目な父親の為に、九郎が食事を作っている。一流シェフ顔負け…とまでは行かないが、焼き魚や味噌汁、卵焼きに目玉焼き、市販のルーを使ったカレーなど、通常の食卓に並べる程度ならお手の物だ。まだまだ親に甘えていても良い齢の彼がここまで料理上手になった理由も、偏に父親を喜ばせるためでもあった。しかし今日はその父親も居ない。父親が居ないのなら、わざわざ料理を作る必要もない…。そう思って、九郎はトーストにカップのコーンスープという簡素な朝食を用意し、一人ちゃぶ台へと座る。

『今日のハッピー占い!一位は…』

『今日は人間国宝の○○さんにお越しいただき…』

『世界株価…』

トーストを齧りながら、九郎は特に意味もなくピッピッ…とチャンネルを変える。父親も何かと忙しい身。朝食を一人で済ませるのは珍しいことではないし、日によっては夕食を一人で済ませたことも一度や二度ではない。しかし、今日は…なぜだかいつもよりも『一人』という事実が重く感じていた。

「…行ってきます」

そのまま着替えを済ませ、九郎は誰も居ない家に朝礼をし鍵を締める。ゴミ箱の中のプリントは見なかった。気付かれずそのまま放置されていても、気付いた痕跡のようなものがあっても、より心が重くなるだろうと思ったからだ。

「う…まぶし…」

昨夜の疲れが回復しきっていないのか、太陽光がいつもよりも目に染みる。登校時間にはまだ余裕があり、このまま目を慣らしながらゆっくりと登校しようと思っていた時、聞き慣れた声が耳を覆う。

「クロ君、おはよう!」

「あ……おはよう、ございます…。」

透き通ったような優しい声。そしてカラン…♪と鳴る心地の良い音色。重く沈んでいた九郎の心を表すように少し俯いていた九郎も、その声と音色を聞くと同時にぴくっと姿勢をもたげ、声の主の方を向く。

「今から学校?毎朝遅刻せずに登校出来て偉いね♪」

「…べ、別に偉いとかそういうのじゃ…あ、あと俺のことクロ君って呼ぶのやめてって言ったじゃないですか白奈
はくな
さん…なんかそれ…猫みたいだし…」

「あら…ごめんね、実はちょっと私も『クロくん』ってあだ名、猫っぽくて可愛いから呼んでみたい所あって…。」

「俺男ですから…可愛いとか言われても、別に…。」

クリーム色のセミロングヘアを靡かせつつ、クロ…九郎を呼び止めた声の主は宗元白奈
むなもとはくな
という女性だった。彼女は九郎の通学路の途中にある保育園に最近新任された保育士であり、園児を迎え入れる時間と九郎の登校時間とが一致することで、毎朝保育園の園門で九郎と顔を会わせるようになり、彼女とこうして他愛ない会話をする事は、九郎の毎朝の日課ともなっていた。

「ふふ、ごめんなさいね…。園児の皆は、名前を可愛く呼ばれたら喜んでくれるから、つい…♪けどクロ…九郎君、今日はどうしたの?いつもより遅いし…なんだか目元にも隈ができてるわ…」

「…なんでもないです。昨日、ちょっと夜ふかししただけで…」

「…ふーん、夜ふかし、か…。駄目よ?夜はちゃんと寝ないと…。そうだクロくん!寝不足の時にはね?こうやって体を曲げた後に…ぐぐ~って伸ばすと効果があるんだって。ほらこうやって…ぐぐ~っ…♪」

「う……///」

呼び名がまた『クロくん』に戻っている事など気付かず…九郎は背伸ばしをする白奈に思わず見惚れてしまう。白奈はおっとりとした優しい性格の女性なのだが、そのスタイルは相当にグラマラスである。保育園の支給品のエプロンに、動きやすさと園児に安心感を与えることを第一とした、見るからに暖か気な紺色の縦セーターにベージュのボトムス姿と、一見して色香とは無縁のような姿をしているが、動きやすい…ということは、体のラインも強調させる作りになっていることが殆どだ。
厚い材質の縦セーターにすら、形をくっきり残す程に大きな胸に、ボトムスを圧迫するむっちりとした腰回りに、太もも…。園児に目線を合わせようと今のように体をしゃがませれば、出来上がる体の凹凸によってそのスタイルの良さは更に目立つようになる。九郎も何度かそんな姿を目にし、その度に、年相応の少年ならば仕方ないとは言え、その際にむぎゅっ…♡むちっ…♡と肉付きの良さをアピールする体の凹凸を横目でちらちらと見てしまっていた。
既に彼女の体がグラマラスであることは九郎にとっても周知の事実であり、そんな体が惜しげもなく、体を曲げ、ぐぐ~っと伸ばす姿はこの上なく大胆かつ、妖艶なものにすら見えてしまう。加えて、先程鳴っていた音…。白奈の首元には、カウベルを模したようなチョーカーが着けられており、そのチョーカーから鳴るカラン…カラン…♡という音も、白奈の首元…ひいては体へと気を向かせる要素となってしまっている。

(うっ…あ…は、白奈さんの…)

しゃがんだと同時に、エプロンの隙間から覗く、スライムのようにむにゅりとひしゃげた胸に、ぱつっ…♡とボトムスを圧迫する太もも。そしてその体が伸びるのと同時に、縦セーターどころか、エプロンにまでぽいん…♡と型を残す瞬間…。胸に押されたことで、エプロンについたシワが伸び切る光景を目撃し、その胸の大きさで頭がいっぱいになりかけたところで、たまらず九郎は顔をそらす。しかし、目はしっかりと横目でちらちらと白奈の体操を見ており…だんだんと頭がもやもやとした邪念で包まれ始めてしまう。

「ほら、クロ君も一緒にやりましょう?お姉さんのお手本、ちゃんと見えるように…お互い正面で向き合って…」

「い、いや…その、お、俺は……」

バニーのストレートすぎる色仕掛けにすら耐えきった九郎の顔が真っ赤に染まっていく。普段の彼ならば「そんな暇はありません」とスルーする所だが、白奈の言葉を振り切る事が出来ずに居た。
…なぜなら、九郎は白奈に惹かれていたからだ。その理由として、整った顔立ちや、今のような自分の体型を気にしない、天然の仕草によるグラマラスな体を見てきた事が原因であることも否定出来ないが…何より彼女は優しかった。自分の事も園児と同じ様に見ているのか、頭に手を置かれ、優しく頭を撫でられたことも一度や二度ではない。声はとても優しく透き通っていて、聞いているだけでも心が落ち着く。そして何より彼女は距離が近かった。何を話すにしても、シャンプーやボディソープの香りが漂ってくる距離感で接してくる上に、保育士としての癖なのか、目線を合わせて会話してくる。近い距離で、合わせた目線で…少し顔を近づければ、唇同士すら合うような距離で…優しく自分を肯定しながら、甘く微笑んでくれる…。そんな彼女に、心が重くなりやすい九郎が惹かれるのにそう時間はかからなかった。

「むう…クロ君ってばノリが悪いぞ?少し恥ずかしいのかな…?♪」

(あっう…そ、その子供を甘やかすみたいな声……ま、また変な気分になる…)

蕩けるような優しい言葉遣いを聞くだけで、ドキッ…と体が震えてしまう。恥ずかしがり屋な面の大きい九郎は、自分が白奈を好きだと気付かれる前にささっと運動の素振りだけを見せて走り去ってしまおうと、心を落ち着かせて彼女の方を向き直ろうとする。――そんな時―

「あっ、クロ君危ない!!」

「え……」

…むにゅっ…♡

(…?……??)

何が起こったのか、九郎は気付かなかった。感じるのは、何か、とても柔らかい物に顔をうずめていること。そしてその柔らかい物がとても暖かくて、なんだかショートケーキのスポンジ部分みたいな、いい匂いがするということだけだった。

「もう、危ないわね…。車からタバコを投げ捨てるなんて……!今も一歩間違えれば大事だったわ…。大丈夫?怪我してない?クロ君…」

(え…あ…?白奈さんの、声…?近くで聞こえて…これ…柔らかくて…暖かくて…甘い匂いして…声…柔らかい…え…え…こ、これぇ……!?)

会話の途中。道路を通った車が、タバコを歩道に投げ捨てたのだ。それはマナーから外れたドライバーの行為。そこに居合わせたのが九郎だっただけであり、別に彼を狙って捨てたわけではない。そんなタバコから、白奈は咄嗟に九郎を『自分の方に抱き寄せることで』タバコを避けさせた。そしてその際…

ぎゅう…♡むにゅ…♡

九郎は、白奈の胸に抱かれる形となったのだ。その顔はすっぽりと白奈の豊満な胸の谷間に埋もれており、後頭部にはすべすべとした掌があてがわれ、ぎゅっと抱きしめられている形になる。柔らかな感触も、暖かさも、甘い匂いも…全ては白奈の胸。いつも横目で見ていた…邪な目で見ていた、あの大きな胸に、九郎は今、包み込まれていた。

「あ…う…あ…」

むくっ…むく…

「クロ君?どうしたの?ひょっとしてどこか…」

「い、いやっ…だいじょ…大丈夫です…!!あ、あの…その…お、おれ!いそっ…いそ…いそぐからこれで!!!」

胸だと気付いた瞬間、九郎の体は男として反応し始める。それを察知し、同時に恥ずかしさで頭がいっぱいになった九郎は、呂律の回らない、舌足らずな言葉でまるで謝罪するかのように必死で話し、そのまま逃げるように白奈の元から走り去っていった。

(あ…あう…う…む、胸に…顔…白奈さんのあの、大きな胸に…俺の、俺の顔……)

びくっ…びくっ…

白奈から逃げるように走り去って、体力が尽きた事でようやく九郎は立ち止まる。走っている間は無我夢中だったが、立ち止まればまた記憶が鮮明になる。感触も、暖かさも、匂いも…全てが明確にフラッシュバックする。興奮した心を落ち着かせるため…そして、完全に勃起したペニスが収まるのを待つための時間を要した九郎は…この日珍しく、学校に遅刻してしまったのだった…。

「あら、クロ君…行っちゃった…。まぁ、あれだけ元気なら、怪我は無さそうだし、一安心ね。…それにしても…全くもう、あの車さえなければ…」

「――もっと気持ちいい抱っこ…出来たかもしれないのに…♡」

そう…走り去る自分…。その背後で、穏やかで甘くて…優しい表情のまま…エプロンにぷっくりと膨らんだ乳首の跡を残しながら…妖艶に微笑む白奈の姿など、気付くこともなく…。

キーン…コーン…カーン…コーン… キーン…コーン…カーン…コーン…

校舎から運動場へかけて鳴り響く終業のチャイム。いつもなら親しい友人と下校後何を行うか、誰の家で遊ぶか、どこに買い物に行くか等を打ち合わせながら帰路につく所だ。しかし、今日は授業参観の日。親しい友人たちもそれぞれの家族と一緒に帰路につくため、九郎は一人、帰宅ラッシュが落ち着くのを教室の自席で待っていた。

「……」

頬杖越しに、窓から見える運動場を覗く。普段ならそこから見えるのは端々の備えられたいくつかの遊具と運動場を挟み込むように設置されたサッカーゴールネット、そしてそこに集う運動部の面々だ。しかし、今日の運動場は参観者の駐車場として解放されているため、全面にぎっしりと車が並んでいる。普段は整備された土もタイヤ跡がくっきりと残り、今日が授業参観であったこと、そして改めて今日という日が終わったことを感じ取る。

「そろそろいいか…」

別に、他の家族に混じって帰路についても誰に文句を言われるわけでもない。親しい友人らは九郎の家庭事情を知っているし、そんなことを誂うような性格でもない。ただ、団らんにまじり一人帰るというのが、なんとなく嫌だっただけのことだ。

「……なんか、渋滞の横通るの嫌だな…。こっちから帰るか…」

あら方車が姿を消したのを見計らい、九郎は帰路につく。ただ、これだけの車が同じ出口から出ようとすれば当然その先の信号や曲がり角で渋滞になる。そう思った九郎は普段は使わない裏道を使って帰ることにした。歩道と車道の区別もないようなあまり整備されていない道。どちらかと言えば道というよりは立ち並ぶ家々と畑や田んぼの間に出来た大きな隙間に近い。
当然雰囲気はあまり良いものとも言えず、4時44分にここを通れば神隠しに合うだとか、出口がなくなるだとか、そのような都市伝説すら学校で囁かれる程に不気味なものだ。

「…ん?」

そんな不気味な道で九郎はとある物を発見する。野菜や果物の路上販売だ。店員は姿が見えず、100円と書かれた集金箱が置かれているのみ。近所の畑で採れたての不格好なものを安価で販売しているようで、通常の市場には出せないような裂傷のような物が目立つものの、見るからにみずみずしく新鮮な物が揃っている。

「……父さん、いつも大変だもんな」

トマトにじゃがいも、人参に玉葱…。それらを一通り見た九郎は仕事疲れの父親に、精の付くカレーかシチューでも作ろうといくつか見繕い、値段分の100円玉を集金箱に入れようとする。――その時だった。

「きゃあああああーっ!!」

「!!…この、声…」

聞き慣れた声が耳にこだまする。それは助けを求める悲鳴であり、声の主は他でもない、保育士の白奈の物だった。

(白奈さん―!!)

好意を抱いてた女性の悲鳴。思考よりも先に足が動いていた。苦手な動物を見ただとか、害虫を目にしただとか、そんな理由じゃない、ブラックアビスとして、今までギャレイヴと戦う中で聞いてきた、命の危機すらも感じさせるような悲鳴。今まで自分が何をしていたのか、何をしようとしていたのかすらも忘れ、闇雲に悲鳴の方向へと走り抜く。

「……っ!!」

曲がり角を曲がった先、そこには黒々と渦巻く不気味な穴が開いていた。蜃気楼やオーロラのような、天気や気候の異常などでは決して起こり得ない現象。しかし九郎にとってそれは、初めて見たものではなかった。

「ギャレイヴのワープゲート……!」

そう、それはブラックアビスとして戦い続けてきた九郎だからこそわかる現象。ギャレイヴは欲望のエネルギーを集めるべく人間の市街へと進行する他、自分の力を最も発揮しやすい超空間へと転送させるワープゲートを開くことが出来る。この中は何処へ繋がっているかは入らなければわからず…つまりは明確な罠以外の何でも無い。通常であれば、無策で飛び込むなどこの上ない愚かなことだ。――しかし…

「……悩んでる場合か…!」

今の九郎に悩んでいる時間など無かった。間違いなく白奈の悲鳴はこのワープゲートの先から聞こえており、ひいては捕縛されている可能性が高い。――そして、ブラックアビスである自分と関わりのある白奈が狙われたという事実と、自分の帰路でその悲鳴を聞かされたという事実…。疑う余地もない。これは明確な「人質」であり、このワープゲートは「直ぐに来い」という指示のようなものだ。もはや、一分一秒すらも惜しい。

「…ブラックアビス、トランス!!」

スマートフォンに内蔵されたアプリケーションを起動させ、天へと掲げる九郎。黒い雷のようなエネルギーが降り注ぐと同時に、九郎の姿は漆黒の戦士ブラックアビスへと変化する。

「今助けに行きます…白奈さん!」

本部に緊急の信号だけを送り、九郎…いや、ブラックアビスはそのままワープゲートへと入っていく。その先に待ち構えるものとは――……

「なんだ…ここ…保育園…?」

ブラックアビスが降り立ったのは、保育園の一室らしき場所だった。積み木やブロック、絵本などが収納された室内の遊び場に、部屋の中央に敷かれたフカフカとしたマット、子供を安心させる目的なのか、壁紙は白とピンクで統一されている。そして何より目についたのは――

「ベッド…?」

部屋の隅に置かれた、園児が眠るにはやや大きすぎるベビーベッドだった。他のものは椅子にしても、照明のスイッチの位置にしても、年相応の子供用に作られているのに、ベッドだけが不相応に大きいのだ。そして――

「う、うう…」

「!!」

きぃ…とクローゼットのドアが一人出に開く。そこには両手両足を縛られ、口にはガムテープを貼られた状態で監禁された白奈の姿があった。

「…!!白奈さん!大丈夫ですか、白奈さん!」

「ん…んん……」

一見して白奈には目立った外傷は見られない。アビスは目を覚ませようと肩を揺すり、声をかける。自分の名を呼ばれ、外部からの刺激を与えられた白奈はゆっくりと目を覚ますが……

「――!?ん、んん――!!」

白奈は何か、恐ろしいものを見るような目で、クローゼットの隅へと逃げるように体をずらしていく。

(――そうか…!俺、今ブラックアビスのマスク…仕方がない、白奈さんを落ち着かせるためだ…!)

「俺です、白奈さん…!」

「んっ…!?」

白奈を安心させるために、仕方なくマスクを解除するブラックアビス。目の前に見知った顔が現れたことで、白奈は少し落ち着いた素振りを見せる。

「剥がします。少し痛いかもしれないけど、我慢してください…!」

ぺり…

「んっ…」

ぺり…ぺりりっ…!

「ぷはっ…!はぁ…は…クロ…君…?」

「…!良かった、白奈さん…!」

直接白奈の声を聞けたことで、ブラックアビスも安堵のため息を漏らす。引き続き腕と足を縛っていたガムテープも剥がし終え、なんとか白奈を万全の状態に戻すことに成功する。

「これで大丈夫です、白奈さん…!」

「あ、ありがとうクロ君…。園児の皆が帰った後、突然、変な格好した女の人が目の前に現れて…そのまま気付いたらクローゼットの中に閉じ込められてて…」

(ギャレイヴの奴ら…関係ない白奈さんまで狙うなんて……!)

憤るブラックアビス。その彼の肩が、ぎゅっと優しく包まれる。

「は、白奈さ…!?」

「ありがとう、クロ君…。きっと助けに来てくれるって、信じてた…」

「い、いや白奈さ…あ、あの……っ!?」

白奈はブラックアビスの肩に手を回したまま、頬を染め上げ、甘い表情を浮かべ、肩まで伸びた手を腰にまで伸ばし始める。今朝のような、アクシデントによる抱きしめではない。明確な意思を持っての甘い抱擁。そのまま流されかけるブラックアビスだが、とある違和感に気付く。

(い、いやまて…信じてた…!?俺のブラックアビスとしての姿を見た時、白奈さんは怖がってたのに…俺が来るのを信じてたって……)

「……っごめんなさい…っ!!」

言葉に生じる矛盾。そして、普段の白奈ではありえない、甘い抱擁。違和感に気付いたブラックアビスは、その手を払い除け、後ろに飛び距離を保った。

「…あらあら、どうしたの…?クロ君…。お姉さんのこと…慰めてくれないの…?」

「……白奈さん、あなたは一体……!」

「……あん、最後の最後でミスしちゃった…。でも流石クロくん♡ちょっとの矛盾から気付かれるなんて凄い凄い♡」

白奈は自分の正体を探られる問に対し、その態度や反応そのものが答えであるかのように振る舞う。なぜ自分が予めブラックアビス…九郎がここに来るのを知っていたのかという問いに対する、甘い言葉での挑発。それは最初からブラックアビスの正体が九郎であることを知っていたという違和感への回答。そう、彼女が…白奈がギャレイヴの一人であるという回答だった。

「最初から…俺に近付くために…?」

「ふふ、その通り♡でも保育士の仕事も楽しかったわ♡子供たちは皆無邪気で可愛いし、先輩の人たちも全員良い人だったし…」

「そんな事を聞いてるんじゃない…!」

ギャレイヴの一人であることを自白した白奈の要領を得ない会話に憤り、ブラックアビスは激昂する。彼が言いたいことは明白だ。――それは、「今まで自分に優しくしてくれたのも、全ては演技だったのか」ということだ。

「ふふっ♡そんなことないよ♡」

「う……」

白奈は心の何処かで不安を抱いていたように問いかけたブラックアビスを、甘やかすような口調で優しく囁き続ける。

「確かにブラックアビス君をやっつけるためにお姉さんは派遣されたんだけど…、ブラックアビス君の正体がクロ君だってこと気付く前からクロ君とはお話してたし…、気付いてからも、クロ君可愛いから…ついつい先延ばしにしてたの。けどね…」

「……?」

「昨日、上級怪人のもこもこバニーちゃんがやられちゃったから、遂に上の人達も重い腰を上げちゃったの。『これ以上ブラックアビスを自由にしてはいけない、幹部級の力を持ってこれを無力化せよ』…って♡」

「幹部級…!?」

「その通り♡実はお姉さんは、ギャレイヴの幹部の一人だったのです♡」

「な……っ」

唇に指を置き、くすっ♡といつもと変わらない雰囲気のままに微笑む白奈。だがその言葉は見過ごせるものではなかった。ギャレイヴの幹部。地球に害を成す組織の、中枢を担う1人――。必ず倒さなければならない存在が、今、ブラックアビスの目の前に居るのだ。

「くっ…」

心の整理もつかないまま、ブラックアビスは武器に手を掛ける。だが、本人は気付いてないのか、単に様子を見ているだけなのか…それを白奈へと向けることはなく、敵意とはとても言えない、警戒心のみを発し、白奈を睨みつける。

「ふふ、ヒーロースーツに変身したクロ君、凛々しくってとってもかっこいいね…♡それじゃあお姉さんも…へ~んし~ん…♡」

「うっ…!?」

カララン…♪と首元のカウベルチョーカーを鳴らす白奈。それと同時に、白奈の体はぼわわわん…♡と乳白色の煙に覆われていく。

(目を離すな…ギャレイヴは何を仕掛けてくるかわからない…!)
ギャレイヴの怪人の戦闘方法は大きく分けて2つにわかれる。1つは怪人化による肉体能力の向上に物を言わせた接近戦を仕掛けてくる怪人。そしてもう1つは予測の困難な特殊能力を用いての、いわゆる初見殺しを仕掛けてくる怪人だ。先のもこもこバニーは後者に近く、もし彼女の戦闘方法も同じく後者だとすれば、この煙に乗じて何かをしてくる可能性は非常に高い。決してそれを見過ごしてはいけないと、一挙手一投足を見逃すまいと睨みつけるブラックアビス。だが――

「ふふっ♡ホルスタイン・チェ~ンジ…♡」

「――!?」

煙の中の白奈の姿。全容を把握することは出来ないが、そのシルエットだけは捉えることが出来ていた。そしてそのシルエットは次第にその全容を明かしていく。

(な…な…!?)

困惑するアビス。それもそのはずだ。何故ならシルエットの白奈は、『裸』へと変わっていったのだから。白奈が直前に身に纏っていたのは縦セーターにボトムスにはフリルやフードのようなひらひらと目立つ箇所は無く、暖かさと動き易さを優先したコーデだ。しかし、それでもシルエットにすれば衣服を身に纏っているか否かは明確にわかる。加えて、特に生地の厚い縦セーターにボトムスともなれば、その胸やお尻を相当に圧迫する。だが、その胸は衣服による圧迫から解放されたようにたぷんっ…♡と肥大化し、腰回りも衣服に邪魔されない、滑らかなラインを形成し始める。ブラックアビスの目に飛び込んできたのは、既に彼女の姿は丸裸…もしくはそれ同然のシルエットだった。

(だ、駄目だ…目を、離したら……)

踊り、舞うように動き始める妖艶なシルエット。ブラックアビスは尚もその姿から目を離さず…いや、目を離せずに居た。

(う…あ…)

ごくっ…と唾を飲み、目はうっとりとしてしまう。あの白奈の…優しいお姉さんの裸シルエット…。ブラックアビス…いや、九郎は完全に目の前の光景に心を奪われ、見惚れてしまっていた。

ぽんっ♡

「…!」

しゅるん…♡

やがて、裸のシルエットに人ならざる特徴が加わっていく。頭部からはへたりと垂れた耳のようなシルエットと、やや巻き目の角のようなシルエットが、腰…お尻からはしゅるるっと長く伸びた尻尾のようなシルエットが現れる。

(あ、あれは…う、牛の…!?)

そう、その耳と角…尻尾は牛のそれに酷似していた。だがそれは野生に生きる凶暴なバッファローやバイソンのものではない、豊かな自然の恵みの元、延び延びと成長し、人間にその『乳』を提供する…乳牛、ホルスタインのものだった。

「ふふっ♡」

(うあ…白奈さんの、あの…声…♡)

そしてホルスタインの特徴が現れると同時に、白奈の悪戯な微笑み声がこだまする。乳白色の煙もまた、徐々に薄れていき…

「は~い…♡保育士白奈お姉さん改め…ギャレイヴ幹部が一人――

「『乳牛怪人チャミル』お姉さん…見参っ♡」

「あっ…う…♡」

白奈…いや、乳牛怪人チャミルが遂に九郎の前へと姿を表す。角、耳、尻尾はやはり想定通りに乳牛のものであり、その角は一見すると武器として驚異には見えない。加えて、それ以上に九郎の目を引くものが『2つ』あった。それは――

たっぷ~~~~ん…っ♡ぽよぽよんっ…♡ぽいんっ…♡

(うああ…牛、ビキニ…♡)

チャミルの胸部にたっぷんと実った大きな乳房。人間の頃から縦セタ越しの白奈…いやチャミルの胸は相当に大きいことがわかっていた。九郎も今朝のように、それに目を引かれそうになったことは既に両指だけでは数え切れないほどだ。そして…横目でちらちらと見たこともまた、両指だけでは数え切れない。「変なことを考えるな」「これじゃ変態みたいじゃないか」と自分を諌めようとする九郎の理性など、どろどろに蕩かし、溶かしてしまう程にいやらしいものだった。

チャミルの姿は全体が同じ模様のコスチュームでに覆われていた。牛柄のロング手袋に太ももから下を覆うロングソックス…そして牛柄のビキニ…と俗に言う牛コスと呼ばれる姿。しかしそのビキニは大きすぎるチャミルの胸を隠すには心許なく、乳輪付近しか隠せておらず、下半身もむちむちとした太ももを覆うには心許ない紐ビキニであり、一見すると男を欲情させることしか目的のないような痴女にしか見えない出で立ちをしている。だが、美しく白い肌、クリーム色のセミロングヘア…そしてそれらを覆う殺傷能力など無さそうな角と耳、白と黒のマーブル模様の牛柄コス姿は、チャミルの『優しいお姉さん』という印象をより強くし、ひいては『ミルク』や『おっぱい』などの印象を持たせ、相手に欲情と同時に『包容力や安心感』も与えているのである。

(あ…あの白奈さんが…こんな…こんなかっこ…♡)

「…ふふっ♡」

「――っ……♡」

九郎が既に自分に見惚れきっている事を判断したチャミルは、唇に指を置き、パチッとウインクする。白奈の時から既に好意を持っていた九郎は、その見た目と行為だけで、魅了されかけていた。仮に目の前にいきなりチャミルが現れていたとしても、多少動揺はしても九郎がここまで魅了されることはなかっただろう。だが、その正体が白奈であること…白奈の姿から、一度裸となり…今のような大胆なコスチュームへと変身したというプロセス自体があの優しいお姉さんの白奈からの色仕掛けとして作用し、九郎の心を甘く溶かすように絡め取ってしまったのだ。――そして、白奈…チャミルの誘惑はこれだけでは終わらなかった。

…ぽわあぁん…♡

「――うっ…?」

ふわぁん…♡ぽわぁん…♡

「ふあ……なに、この…甘い、匂い…体に力、入らない……」

今朝、白奈に抱かれた際にも感じた、ショートケーキのスポンジ部分のような、優しくて甘い匂い。その濃度を更に上げたような…身も心も蕩けるような甘い匂いが、優しく…ふんわりと…まるで露店のベビーカステラの屋台から漂うかのように、九郎の嗅覚へと侵入する。

『ギャレイヴのフェロモンには気を付けなくてはならない』

そんな、博士のアドバイスを思い出す。そう、先程マスクを解除したままだった九郎の嗅覚はあまりにもチャミルのフェロモンに対して無防備だったのだ。しかし、優しく心地良いその匂いを、九郎は直ぐに「嗅いではいけない」とは判断できず、うっとりと、蕩けた目つきのまま体に取り入れてしまう…。

(あっ…ふあ…♡この、匂い……なんだか、変だ…。嗅いでるだけで、体の力、抜けて…)

身も心も包み込まれる甘い匂い。その匂いは、まるで放尿の後のような脱力感を九郎に与え、そのまま足腰の力を奪い、ふにゃふにゃと壁にもたれさせるようにへたり込ませてしまう。そして、九郎の体の変化はそれだけではなかった。

むずっ…♡むずむず…♡

「うっあ…!?♡」

じわぁ…♡じわじわ…♡むずっ…♡

「あっ…あ…♡なに、これ…?あそこが…あそこがムズムズ…して…♡」

「ふふっ…♡」

(…だ、だめだ…♡も、もう…座ってられない…!)

へたり込んだだけでなく…九郎はペニスへと走る、じわじわ…♡むずむず…♡としたむず痒い快楽。ただでさえ、体中の力が抜けており、筋肉に力を入れて体を強張らせることも出来ない九郎は、勃起したペニスを優しく撫でられるようなその甘い痺れに耐えきれず、その場に倒れ込み、ミノムシのように股間を隠すような体勢でくるまってしまう。

ふわぁん…♡ぽわぁん…♡

(うああ…♡また、甘い匂いがぁ…♡)

嗅覚へと注がれる甘い匂いも止んでいない。その匂いは次第に乳白色にピンクを混ぜたような…いちごミルクのような色の霧となり、九郎をまるで繭のように優しく包み込む。目に見えるほどに濃厚な甘い匂い、そしてペニスに走る甘い痺れ…。これがチャミルの手によって引き起こされた症状であることは明白であり、ここに来てようやく、九郎も快楽で蕩け堕ちそうな顔で、『何をした』と問い掛けるように、チャミルを見る。

「ふふっ♡良いよ、教えてあげる…♡クロ君が今くんくんしちゃったのはね…お姉さんの…ん…あん…♡」

「あ…う…♡」

チャミルは言葉の途中でむにゅむにゅとした弾力、柔らかさ共にたっぷりの胸の谷間に手を入れ、その谷間から腕を突き出すような体勢で、悪戯っぽく微笑みながら、再度唇に指を当てる。その光景は非常に妖艶であり、九郎も完全に目を奪われてしまう。

「ふふっ♡お っ ぱ いの…匂い…♡」

(あ…お、おっぱい…の…♡)

包み隠すことなど無く、チャミルは今、九郎の体に変化を与えている匂いの正体が自分の胸から出た匂いだと告白する。ショートケーキのスポンジ部分のような甘い匂い。今朝抱かれた際に感じた匂いをより濃厚にしたそれの正体に、九郎も気付いてはいたが、いざ直接言われると、その興奮は更にエスカレートしていってしまう…。

「ほら見て…?♡お姉さんの牛ビキニね…とっても際どくて、布1枚の下に、お姉さんの生のおっぱいが隠れてるように見えるんだけど…実はこのビキニ…ギャレイヴの科学班が作った、とっても高性能なビキニなの…♡」

「このビキニはね…目には1枚の布にしか見えないけど…実は3つの層に分かれてるんだって♡1の層…、ふふっ♡お姉さんの生おっぱいを包んでくれてる部分だね♡この層はね…お姉さんのおっぱいの表面や乳首周りの汗をちゅ~っ…♡って吸汗してくれるの。汗の中にはお姉さんのおっぱいフェロモンがたっぷりだけど…、やっぱり汗の独特な匂いはしちゃうんだよね…♡そこからは2の層の出番♡2の層はね、フィルターになってて、吸汗した汗からあま~いおっぱいフェロモンの匂いだけを抽出してくれるの。そして、そうやって抽出されたおっぱいフェロモンは…3の層…、この一番表面の…クロ君が見惚れてくれた白と黒のマーブル模様のところだね♡3の層にはね…目に見えないほど小さなマイクロ空気穴が空いてて…――そこから…ぷしゅ~っ♡ぽわぽわ~っ♡って…おっぱいフェロモンを霧に変えてお外に噴出してくれるんだよ♡」

(汗を…吸汗して…霧にかえて…あ…ああ…♡じゃ、じゃあ…♡この、この匂いはぁ…♡)

「そうだよ…♡今クロ君を包み込んでる霧は…お姉さんのおっぱいから垂れた汗やフェロモンだったの♡ふふ…♡おっぱいフェロモンの霧って…とってもエッチだよね…♡ビキニに染み込んだじわ~…♡ってした水分が、今そのままクロ君をもわんもわ~ん…♡ぽわぽわ~ん…♡って包み込んじゃってるんだよ…♡」

「あっ…あ…♡」

「ふふっ♡お姉さんのおっぱいフェロモンはとっても強力なんだよ…♡くんくんってしちゃっただけで、頭や脳が、『はうぅ…♡なんて甘い匂いなんだろう♡ぼく、こんないい匂いくんくんさせてくれるお姉さんに、精液ぴゅっぴゅさせてもらいたいよぉ…♡』って、射精のための準備を整えちゃうの♡」

(そ…それで…こんな…立ってられない…座ってられないくらいのむず痒さが…)

「ふふ、察しの通り…♡そうなっちゃうと、おちんちんさんは『触ってぇ…♡早くぼくのこと触ってぇ…♡』って、おねだりするみたいに精液さんを作り始めちゃうの。そうしてたぷたぷに溜まった精液さんは、今か今かと、お姉さんに触ってもらえるのを心待ちにして…あま~いじわじわむずむず痺れに変わっちゃうってこと…♡」

「――さて、と…クロ君♡ここからが本番…♡あそこに、大きなベビーベッドが見えるわよね…♡」

(あ…♡)

「…ふふ♡わかっちゃった…?そうよ…あのベッドはね…クロ君とお姉さん用のベッド…♡寂しんぼのクロ君を…もう二度と寂しくないようにたっぷり甘やかして…たっぷり可愛がって…♡お姉さんの可愛い可愛いペット君にしちゃうための、二人だけの空間…♡」

「二人…だけの…♡」

「そうだよ♡ほら…こっちおいで…クロ君♡」

「は、はく…白奈さ……♡」

(い、いやだめだ…これは罠だ…罠…なのに…)

「ク~ロ君♡」

(あ、うう…♡)

甘い手招き。罠にかけようなんて雰囲気なんて微塵もない、優しい保育士のお姉さんの、思いやりと、自分よりも小さくてか弱い存在を愛でようとする包容力に満ち溢れた手招き…。この人の所に行けば、この人と一緒にベッドに入れば…この人にペットになれば…この上ない幸せが待っている…。そう確信できる、安心感に溢れた誘い声…。

むずむずん…♡

(ふあああああ……♡)

どくん…♡と甘い囁きに心を許しかけたのに少し遅れて、ペニスの甘いむず痒さも追いついていくる。そしてベッドに向かうという意味…、ペットになるという意味を理解してしまう。そしてチャミルの表情に、優しさと思いやり以外に「九郎を男として蕩かし、性ペットにしてしまおう」という、いやらしく、妖艶さに満ちた捕食者としての表情が混じっていることに気付く。
――やはりこれは罠だ。このまま捕まったら、確かに彼女はこの上ない幸せを与えてくれる。寂しさも感じることもない、虚しさも感じることもない…ずっと、ずっと彼女が側にいてくれる。抱き締めてくれる……。でもそうなったら…身も心も、もう此処には戻ってこれない…。けど、その代わりに…

むずむず…♡じわじわ~ん…♡

「はっ…♡はあぁ…♡」

――あのおっぱいで、あの太ももで、あの微笑みで…

「ほら…クロ君♡二人だけの授業参観…しちゃお…♡」

――甘やかしてくれる。駄目にしてくれる。気持ちよく…してくれる――♡

「…さん…♡」

「な…さん…♡白奈さん――♡」

甘い誘いに対し、白奈という名前を口に出す。その瞬間、九郎は自分の中の何かが、切れた気がした――

「あ…あううう……♡」

もじもじと、快楽の影響で内股となった震える足を動かし、牛柄のマーブル模様を目印にし、優しく微笑むチャミルの元へと一歩、また一歩と進む九郎。まるで明かりにつられ、不安定に羽根を羽ばたかせる虫のように…

「ふふっ…もじもじクロ君、可愛い…♡ほらほら…もうちょっとだよ♡あんよがじょーず…あんよがじょーず…♡」

赤ん坊に用いるような言葉遣いが、更にクロの蕩けた心を後押しする。一歩近付く度に、マーブル模様が視界を占領していく。白と黒の模様というシンプルな光景が脳を占領することで、九郎は他の難しいこと…地球の平和、自分の使命などの脳を働かせる必要のある記憶を思い出すことすら億劫となっていく。その足は、ただただ、目の前の優しいお姉さんへと、大きな胸へと向かっていく…。

「ほら…あと少し♡3歩、2歩…1歩……♡」

ふわぁん…♡ぽわぁん…♡

たゆっ…ぽよよん…♡

「あ…う…♡」

濃さを増していくおっぱいフェロモンの匂いが、どんどん視界を埋めていく大きな胸が…まるで『こっちだよ』と道標をするように心を蝕み続ける。脳裏に焼き付いた、優しい微笑み…。ついに九郎とチャミルの胸は、鼻先程度にまで近づき、そして――

ぱふうぅぅん……っ♡

「~~~~~~~~~っ……♡♡♡」

「ん…♡はぁい…良く頑張ったねクロ君♡えらいえらい…♡」

なで…♡

「あ…はぁあぁうぅ…♡」

その胸の谷間へと、顔を埋める。突き立てのお餅のような、小さな頃に遊んだスライムのような…そんな、顔をうずめただけでも溶け落ちるような途方も無い柔らかさが、九郎の顔を包み込む。いや、それは包み込むとういうよりは、まるで沈み込ませているような柔らかさだった。ただでさえ大きなチャミルの胸は、少年一人の顔など容易く谷間の中へと飲み込んでしまうほどの大きさに加え、まるで登山頂上でのお菓子の袋のような、ぎちぎち、みちぃ…♡とした肉厚さも持ち合わせており、九郎の顔通りに型を作るかのように、むにゅり…にゅるりとひしゃげ、どこまでも、どこまでも九郎の顔を受け入れていく。

(ふああ…♡柔ら…かい…♡暖かい…♡)

むにゅん…むにぃん…♡

勢いのままに埋めた顔が、ようやく停止する。九郎の顔には、埋めた顔の正面の部分を中心にするように、元の形を取り戻そうとする乳肉が、まるで引き潮のように九郎の頬や頭部、顎や首筋にむにぃ…♡むにゅううぅん…♡と纏わりつき、たぷたぷとした、高級クッションのような優しい弾力で九郎の顔を完全に迎え入れてしまった。

「はぁっ…はぁ…はあぁぁ…♡」

「ふふ…♡よしよし…♡」

そして、そんな一連の動作を終えた九郎の頭を、チャミルのすべすべで瑞々しい掌が、優しく撫で降ろしていく。あまりにも心地良いその感触は、胸に興奮しきっていた九郎の心と体を優しく抱き包み、破裂寸前にまで高鳴っていた鼓動や、過呼吸にすら近かった息遣いを、穏やかなものへと治していく。

(ふあぁ…気持ちいい…)

どこまでも柔らかい胸に包まれたまま、優しく頭を撫でられる。それだけで九郎は、まだまだ時間に余裕がある時間帯に目覚め、そのまま二度寝へと堕ちる直前のような…体が必要としている、求めている癒やしに包まれた気分になり、そのまま眠ってしまいそうになる。

「んあ…はぁう…♡」

しかし、そのまま眠りに堕ちることは出来ない。眠るということは、呼吸も安定するということ。寝息に近い呼吸を立て始めた九郎の嗅覚には――

ふわぁん…♡ぽわわぁん…♡

「あっ…!あ…あああ…♡」

そう、自分を完全にとろとろに蕩けさせた、チャミルのおっぱいフェロモンの匂い。その匂いを感じたと同時に、さっきまで自分を襲っていた、甘いむず痒さがにも気付き直し、九郎は少しだけ恐怖に晒される。――あんな、離れた距離でもあそこまで濃くて甘くて、身も心も蕩けさせる匂いを、こんな至近距離…いや、ゼロ距離で嗅いでしまったら……と。しかし――

「大丈夫だよ…♡お姉さんはおっぱいの匂い、自由に調整できるから…♡こうやってクロ君を抱っこして…すりすりっ♡って甘えてくれてる時用のおっぱいの匂い…♡ちゃ~んと考えてるから…♡」

なで…なで…♡

「あっ…あ…♡」

「ほら…お姉さんの事、信じて…?怖くない、怖くない…♡おっぱいの匂い、怖くないよ~♡」

そのまま後頭部を撫でながら、呼吸を続けるように囁かれる。あまりにも無防備に蕩けた心に、その暗示にも近い囁きは…スポンジが水を吸収するように、流れ込んでいく…

「…すぅ…」

ぽわわわわわ~~~~ん…♡♡♡

「んあああ…♡あ…はふぅ…♡」

(ふああ…いい匂い…メイプルシロップみたいに甘くって…頭がどろどろになりそうなのに…全然、怖くない…何かが壊されるとか…おかしくなるとか…そんなのが…全然無い…♡)

濃度としては、九郎を包み込んでいた霧の繭よりもずっと濃いものだろう。しかし、九郎が嗅覚で、脳で感じるその匂いは、より心地の良い眠りを誘うショートケーキの匂いのアロマキャンドルのような…チャミルの胸の心地よさを、一嗅ぎしただけで思い起こさせるような、優しい匂いとなっていた。

むずむず…♡じわじわ…♡

「あっ…あ…♡」

しかし、濃度がずっと濃いのなら、強制的な甘いむず痒さを伴う勃起は収まるはずもなく、どんどん快楽は強くなっていく。加えて、興奮をより促進させる要素は匂いだけではなかった。

じとぉ…♡じわわん…♡

(ふあ…おっぱいの表面…なんだか、濡れてる…?)

ぷしゅ~っ…♡と濃縮させたフェロモンガスを撒き散らす発射口とも言える牛柄ビキニ…つまりはチャミルの胸の表面には、蒸留水を作る際に鍋の蓋などにじわりと染み付く水滴のように、『フェロモンガスの原液』がしっとりと漏れ出ていた。これこそが今九郎が嗅いでいるおっぱいフェロモンの正体であり、これが頬や顎…おでこに鼻先…ましてや唇などに付着するということは、気体となったおっぱいフェロモンを吸い込む事の何倍もの快楽作用をもたらすことに繋がるということはわかりきったことだ。しかし――

(濡れタオルみたいで…気持ちいい…)

ベッドの上で二度寝に身を委ねるかのように、チャミルの胸に身も心も委ねる今の九郎に、そんな事は理解できていなかった。どこまでも柔らかいチャミルの胸に、しっとりとした水気が加わる…。こんなに心地よくて、気持ちいい事の前では、もう既に「これ以上術中に陥ってはいけない」等の、どうでもいい感情など…入り込む余地などあるわけもなかった。

むずむずむず…っ♡

(ひうぅ…♡)

胸の柔らかさ。弾力。後頭部を撫で擦る掌…そして匂いに、原液の水気…。心地よさと、陶酔感の中で…やがて甘い痺れは遂に限界を迎えはじめる。それはもう、力の抜けきった九郎に止められるものではない。――このままでは、抱かれたまま、胸に顔を埋めただけで、射精してしまう…。男としてこの上ない恥を、チャミルに…白奈に見せてしまう…。ヒーローとしての使命など、もうどうでも良かったが、好意を持った…『好きな女性』への羞恥は未だ消えておらず…焦燥感が心を満たしはじめる。情けない姿を見せてしまう。嫌われる。幻滅される…。嫌われて…また、一人になってしまう…

――そんな恐怖を…

「大丈夫…♡大丈夫だよ…♡お姉さん、クロ君のこと大好きだから…♡このまま、おっぱいの感触と…匂いだけで…ぴゅっぴゅ~♡ってしても、ちっとも嫌いになんかならないよ♡」

「――あ…ああ…」

「白奈…さん…♡♡♡」

「逆に、おっぱいだけで射精しちゃうクロ君…お姉さん、見てみたいな♡おっぱいに弱いクロ君…おっぱいに負けちゃうクロ君…きっと、とっても可愛いから…♡」

「~~~~~~~~~…っ♡」

焦燥感が、溶かされていく。恐怖心が、甘く包み込まれていく。射精すれば嫌われるかもしれない。そう思っていた心も、情けない、恥ずかしい射精すらも肯定する甘い言葉でとろりとコーティングされていく…。

ぎゅう…♡

「ふふっ…♡」

その言葉を聞いて、九郎はチャミルの体により深く抱き着く。今まで心の何処かで枷がついていた部分が壊れ……全てを委ねていく。それと同時に、チャミル…白奈も、より深く、優しく…甘く抱き寄せる。

むずむずむず…♡じわじわじわ~ん…♡

「あっ…あ…♡」

股間を包み込む甘い痺れ、むず痒さにも、もう抵抗はしない。チャミルによって与えられる心地よさ、恍惚感、そして…幸福感に完全に身と心を委ねきり、そして――

「さぁ…クロ君…♡お姉さんのおっぱいに……負けちゃおっか…♡」

「――――――……♡♡♡」

その言葉をトリガーにするように…

ぴゅっ…♡

まずは、上澄みのような先走り混じりの精液が、ヒーロースーツ…そしてパンツの中で迸り…

「あ……♡」

どくんっ…♡びゅううううううううう~~~~~~~~~っ♡♡♡

「ふああああああああああ……♡♡♡」

「ん…♡沢山出てるね…♡パンツの中でぴゅっぴゅおもらし…♡びくびくって震えて、ふにゃふにゃ~って力抜けてくクロ君…、とっても可愛いよ…♡」

「あ…あぁ~~~~…♡♡♡」

失禁…おもらし…おねしょのような、全てを解放するような射精。精液はどぷどぷとパンツの中で漏れ、溢れ…べっとりとしたシミを作り出していく。もしかすると、本当に尿も出ていたのかもしれないと錯覚するほどの量。ずっと一人ぼっちの哀しさに耐え、戦い続けてきた少年が、甘く心を蕩かされて、そして心の底から快楽に身を委ね出し切った、欲望の塊――。それはギャレイヴが必要とする欲望のエネルギーをたった一人で賄えるほどの量だった。

「あ…あぁ…はふぅ…♡」

「ん……♡全部出た…?」
びくびくとした震えと脱力が一旦止み、チャミルは頭と、背中を撫で擦りながら、優しく囁きかける。

(初…めてだ…こんなに…気持ちよくて…いっぱい、出したの……)

射精の名残の、心地いい脱力感はそのまま九郎を眠りにつかせようとする。しかし――

むにゅうん…♡

「あ…」

ぽわわわわわ~~~~ん♡

「あ…あう…♡」

むくっ…♡むくむく…♡

「~~~~~~~~~っ……」

「ふふ…♡まだ甘えていたいみたいね…♡」

全てを出し切ったように見えても、チャミルの胸の柔らかさと、甘いおっぱいフェロモンが、再び九郎のペニスにむず痒い痺れを与え、再度勃起させていく……

「うふふっ♡おっぱい抱っこだけじゃ、満足できなかった…?もっと、してほしい…?」

「……」

甘い甘い、チャミルの誘い。それに対し九郎は、胸の中でゆっくりと頷くように、頭を下へと動かした。

「……♡♡♡…じゃあ、ベッドに行こっか…♡」

そんないじらしい姿を見て、チャミルもきゅんと母性を興奮させる。体格差を活かしたまま、チャミルは胸で九郎を抱きしめたまま……備えていた大きなベビーベッドへと、自分と九郎を、横たわらせた――……。

むにゅうううん……♡

「んむうぅ…♡」

「ふふっ♡良い子良い子…♡」

二人揃い、ベビーベッドの上へで添い寝する九郎とチャミル。チャミルの体に加え、ベビーベッドのふんわりとした寝心地も合わさり、九郎はより深い幸福へと堕ちていく。

「さぁ、クロ君…♡ベビーベッドに寝かされちゃった子は、どうされちゃうのかな…?」

「ふあ…べびー…べっどに…?」

「そうだよ…♡エッチな乳牛おねえさんと一緒に、ベッドの上でころりんしちゃったクロ君はどうなっちゃうでしょ~か…♡ふふっ…わかるかな~♡ヒントはね…乳牛さんも得意なある事、だよ…♡」

(べびーべっど…にゅうぎゅう…ぎゅうにゅう…みるく……ミル……ク……?)

「あっ…うぅ……」

キーワードから答えに行き着いた九郎は、とろとろに蕩けた精神でなお、再度顔を紅潮させる。たっぷり嗅がされたおっぱいフェロモンの匂い、チャミルの牛柄ビキニ、そしてベビーベッド…。そこから行き着く答えは……

「正解…♡やっぱりかしこいね、クロ君は…♡」

九郎の反応を心から愛でるように、チャミルはブラのホックをぷつり…と外す。しゅるしゅる…という衣擦れの音が九郎の聴覚を支配し、同時に鼻先を布が掠める。そして――…

ぽわわわわわわわ~~~ん……♡

「ふにゃああああ…♡」

『それ』の匂いを嗅いだ瞬間、九郎は体中の力がふにゃふにゃに抜けていくのを感じ、同時に聞いたこともないような情けない脱力声を漏らしてしまう。いや、それはもう脱力という言葉ですら表しきれない感覚だった。まるで体中がチャミルに甘えることを望んでいるような…元々自分には、チャミルに甘えること以外に、『出来ることなど無い』と錯覚するような、自分で何かを頑張ろうとするための力など邪魔だと言わんばかりに、体が力を込める事を否定し、体中が溶け落ちていくような感覚に陥る――…。

ぷくぅ…っ♡

甘く、蕩ける匂いが一層濃くなり…掠めた布の先から、何か、柔らかくも硬いような、突起物が鼻の先を突くようになる。

「ほら…クロ君…♡おねえさんのおっぱいに…甘えきっちゃいましょうね…♡」

はむん…♡

「んんん~~~~っ♡♡♡♡♡」

突起物が、九郎の口へと入り込む。ふにゃふにゃと力ない口元は、その突起物の侵入を一切拒むこと無く、むしろ歓迎するように、突起物が唇をむにむにと通過した後、それを力なく咥え直す。そして――

とぷんっ…♡とぷとぷ……♡

「んふうぅぅ…♡」

突起物の先から、とろとろとした、僅かに粘性を帯びた液体が九郎の口内へと蕩け落ちていく。

(あ…あ…ああああ…ああああああああ…♡♡♡)

――そう、それはミルク。チャミルの、母乳…。どこまでも甘くて、優しい味がする、もう、これ以外の物なんて、飲みたくない、食べたくない…口にすら入れたくない…そんな幸福を感じるほどに、甘く心を溶かす、チャミルの愛の証。そして、突起物の正体は、乳腺に母乳が送り込まれたことで、ぷっくりと膨れ上がった乳首。大きな大きなチャミルの胸に備わった乳首もまた、普通の女性の乳首とは一線を画する大きさであり、まるでおしゃぶりのように九郎の口へぴったりとくっつき、既に九郎には自分の唇と乳首の境界線すら曖昧になるほどに、それらは暖かく、そして柔らかかった。

とくん…♡とくん…♡

「んっ…んっ…♡」

「あんっ…♡ふふっ…♡クロ君ってば、吸い方とっても優しい…♡」

蕩け落ちてくるミルクを、九郎は何の疑いもなく、ピンク色に染まった目と、小さな口で喉の奥へと送り続ける。ブラにより抽出されたおっぱいフェロモンなど比べ物にならないほどに濃厚で甘い、とろとろのミルク。コンデンスミルクを更に濃厚にしたような、甘さに酔いかねないほど強烈な甘味なのに、喉に貼り付くような嫌な感じは全く無く、飲めば飲むほど、心が満たされていくように感じる優しい味…。既に九郎はその味の虜に…いや、『大好きなお姉さんに抱かれ、ミルクを飲ませてもらえる』という状況の虜になっていた。

「ん…やぁん…♡ちゅぱちゅぱって甘えるみたいに吸い付いて…可愛いなぁ…もう…♡もっともっと夢中になっても良いからね…♡大丈夫…毒だとか、依存効果だとか…そんな怖い成分は全然入ってないから…♡ただただ、う~んと甘くて、美味しいだけ…♡フェロモンたっぷりで、男の子を甘々に蕩かしちゃうだけだから…♡」

後頭部を、背中を、優しく擦りながら、チャミルはクロがミルクに噎せたり喉に溜め込まないように量を調整する。

「ただ…ふふ♡ちょっとだけ、お姉さんの怪人エナジーが含まれてるから、飲み過ぎちゃうと…。って、今はそんなこと、どうでもよかったよね…♡」

ヴゥゥゥン……

(ふあ…なん…だろう…からだ、あったかい…)

それは九郎にとっては、僅かな変化にしか感じなかった。暖房をつい高くしすぎて、むわっとした風に当てられた時のような暑さを、ほんの少しだけ感じただけだった。

ヴゥゥゥン……

ブラックアビスとしてのヒーロースーツが、徐々に変貌していく。まるで牧場主が着用しているような、白いシャツに青いオーバーオール…その下半身部分を、好きな時に精を搾れるように、半ズボンに変えたような服装へと変化していき…頭からは、子牛のような小さな角が、ぴょこんと飛び出す。

「ふふっ♡お揃いだね、クロ君…♡」

「ふえ……?」

「ん…大丈夫…なんでもないよ♡」

そう、それは怪人化。チャミルの怪人エナジーが含まれたミルクをたっぷりと体内に取り入れたことで、九郎の体にも変化が現れた。そして、正義のヒーローの象徴とも言える、ブラックアビスの変身スーツもまた、チャミルのミルクに犯され……その姿は、チャミルの眷属となった事を意味するように、『雄子牛怪人』の衣服へと変貌していったのだ。

「ふふ…♡」

ジジッ…♡ジイィ…♡

「あっ……♡」

半ズボンにはチャックがついており、チャミルはそれを優しい手付きでジジ…と降ろしていく。完全防備であったブラックアビスのスーツは、当然そういった性交渉への防御も考慮された設計だったが、チャミルが九郎をたっぷりと可愛がるために変貌させたその衣服にはもう、そんな機能など一切付いてはいなかった。

「あうぅ…」

チャックが降ろされ、パンツが顕になる。パンツは勃起したペニスにそって型を作っており、おそらくはパンツを脱がせるために触れられただけでも蕩けるような快楽が走るに違いない。九郎にとってそれは、心から待ちわびた瞬間。しかし、やはり直接ペニスを触られることへの羞恥心が、乳首を吸う口の動きを止めてしまう。――しかしチャミルは、むにゅん…♡と九郎の顔を乳房へと抱き包む。

「おちんちん触られるの恥ずかしい…?良いよ…♡ミルクはこうやって、お口に乳首入れたままお姉さんが飲ませててあげるから…。クロ君は、おちんちん触ってもらえる感覚の方に、意識を集中してね…♡」

チャミルは九郎の羞恥心を知ってなお、ペニスに伸ばす手を止めようとはしない。本当はクロが、心からそれを望んでいることを知っているし、そして…そうやって恥ずかしがるクロが何よりも可愛らしかったからだ。

「ふふっ♡じゃあ…パンツのおしっこ穴に、指を引っ掛けてぇ…♡」

ふわぁっ…♡

「ひあああああ……♡♡♡」

ペニスが蕩けるような快楽が走る。ぶるぶるっ…と体を震わせ、むっちりとした肉布団にしがみつく。

「頑張れクロ君♡今お漏らししちゃうと、もったいないぞ~♡頑張れ、頑張れ♡」

目の前の可愛らしい存在が快楽に震える姿を見て、チャミルは悪意など一切ない微笑みを浮かべ、少しだけ意地悪に九郎を焦らす。そして、広げられた放尿用の穴からは、九郎のペニスがむくりと姿を表していた…

「は~い、おちんちんさん、こんにちは…♡ん…あはぁ…♡ちょっと皮被りだけど、とっても逞しいおちんちんさんだね♡」

「あう…うぅ…」

まだ未熟な歳のせいか、九郎のペニスは皮が剥けきってはいなかった。九郎にとってそれは隠れたコンプレックスであり、それをチャミルに見られることで、九郎の顔は更に赤く染まっていき、恥ずかしさのあまり涙すら浮かべてしまう。

「大丈夫…恥ずかしがらなくてもいいよ…♡お姉さんはクロ君の事が大好きだから…、この皮被りのおちんちんさんだって大好きなの…♡本当は素直に甘えん坊になりたいのに、意地を張ってツンツンしちゃう可愛いクロ君にぴったりの恥ずかしがり屋のおちんちんさん…お姉さん、大好き…♡ううん、おちんちんさんだけじゃない…クロ君の事は、頭の上から足の指の先まで、な~んでも大好き…♡」

「ふあぁ…♡」

ここに来ての、更なる肯定の言葉。脳みその奥までチャミルの…白奈のことで埋め尽くす甘い甘い、肯定の言葉…。気付けば九郎の涙は止まり、ただただ、その時を心待ちにするようになっていた。

「ふふっ…♡じゃあ、行くよ…クロ君…♡おちんちんさんを……お姉さんの掌で……ふわふわふわ~~~~♡」

「はうううううううぅうぅううぅ……♡♡♡♡♡」

親指以外の4本の指で睾丸を包み…亀頭の先端を親指のお腹で包み込むチャミル。痛みなど一切感じない力加減で、優しさと、心地良さと、快楽がじわじわと交差するように甘く握り込む。

「ふわ…♡ふわ…♡ふわふわふわ~♡」

1回、2回、3回……子猫を抱くような手付きで、睾丸と亀頭をくにくに、むにむにとマッサージする。ペニスの下部と上部から快楽が押し寄せ、それがペニスの中央――…、快楽の核となる部分で溶け合った頃を見計らい、チャミルは手付きを変えていく。

「な~でなで…♡な~でなで……♡ふふ…♡」

「はふぅぅぅぅ…♡」

猫のお尻からしっぽにかけての部分を甘撫でするように、指の付け根から先端までのお腹部分を使い、さすさす…♡とソフトタッチで撫で上げていく。くすぐったいような、むず痒いような甘い感覚。それだけなのに、ペニスはビクビクと震え、止まらなくなる。

「あっ…♡あ……♡あああ…♡♡♡」

「ふふ…♡とっても気持ちよさそう…♡でも、こっちも忘れちゃ駄目だよ♡」

とぷとぷっ…♡

「んむ…♡こく、こく……♡」

とろんとろんと蕩け落ちてくるミルクを再び飲み直す。ペニスを優しく触られながらミルクを飲むと、相乗効果で快楽がどんどん高まっていくように感じる。この人にすべてを投げ出して、何もかも捨てて、このまま甘え続けていたいという欲が、どんどん高まっていく……

「ね…クロ君…♡もし今、お漏らし出来たら……とっても気持ちいいだろうね…♡」

(~~~~~~~~~っ……♡)

「お姉さん…クロ君に可愛くおねだりされたいな…♡『僕の事、お漏らしさせて…♡ずっとずっと、僕と一緒に居て…♡』って…おねだり、されたいなぁ……♡」

射精の誘惑と、『永遠の眷属化』へと誘う魔性の言葉。昨日までの九郎なら突っぱねただろう。おっぱいフェロモンの霧を浴びせられた時の九郎なら、なんとか耐えただろう。一番最初に、射精した時の九郎なら、少しは躊躇しただろう。しかし、今の九郎にとって、その誘いは――

「もしクロ君がおねだりしてくれるなら…お姉さんのこと、ぎゅ~~~って抱きしめ返して欲しいな……。そうすれば、クロ君とお姉さんは相思相愛……♡今までで一番濃いミルクぴゅ~~~ってしながら…クロ君のおちんちんからも、ミルクをぴゅぴゅぴゅ~♡ってお漏らしさせてあげる…♡どうかな、クロく――」

「……………っ♡♡♡」

「…ふふ♡嬉しい…♡」

チャミルの言葉が終わるのを待たずして、九郎はふにゃふにゃと力のない体で、出来る限りの力を入れて、チャミルにしがみついていた。顔も、体も、全てをより一層チャミルの肉布団に埋め、そして全てを委ねきる。それは、九郎にとっての、精一杯のおねだりだった。
そしてチャミルも、そんな九郎を見て、心から安らぐような優しい声で、返事を返す。それと同時に――

とろぉん……♡どろり…っ♡

「んむ…んむぅ…♡」

より濃厚になったミルクが九郎の口内を潤していく。それはもうミルクと言うよりはシロップに近い粘度をしているが、優しい味わいは更に増していく。

ぴくっ…ぴくっ…♡

そして、ペニスも何もしなくても射精するだろうと確信できるまでにブルブルと痙攣していく。そんなペニスを、チャミルは優しく包み込み――

「じゃあ…クロ君…2回目のお漏らし…しちゃおっか……♡」

中指、小指、薬指で竿部分を優しく固定し、人差し指と親指でリングを作り、カリ部分へとあてがう。先走りで既に濡れきっている包茎皮は、驚くほどにスムーズに剥かれていき、ピンク色の亀頭が顕になる。

「おちんちんさんにも、飲ませてあげる…♡」

とろり…ぽとっ……♡

「あ……っ!?あ……んああああああ……♡♡♡」

チャミルはペニスの真上に来るようにもう片方の乳房を位置調整し、その先端からとろり…とミルクを一滴、垂れ落とす。その一滴は、亀頭の先端に命中し、とろとろ…じわじわとペニスの表面を覆っていく。粘度の高いミルクが、とろとろと表面を流れ落ちていく快楽はまさに桃源郷のような快楽であり、またも九郎はどこからそんな声が出るのか、と言った脱力声を漏らしてしまう。
「ミルクローションでの、輪っか手コキ……♡我慢なんてしなくて良いから…♡本当のおしっこだって漏らしちゃってもいいから…♡クロ君の気分のままに、お漏らし…しちゃおうね…♡」

にっちゅ♡にっちゅ♡にっちゅ…♡

「あ…あああ…♡んむ…ふあ…白奈さぁん…♡」

「うんうん♡ここにいるよ♡クロ君♡」

くちゅっ♡とろぉ…♡にちゅにちゅ…♡

「はぁ…可愛い…可愛いよ、クロ君…♡ずっと一緒にいようね…♡もう、離さないからね…♡」

「はい…はいぃ…♡」

ぐちゅっ♡ぐっちゅぐっちゅ…♡ぷちゅんっ…♡

「もうクロ君は何も難しいこと考えなくていいの♡ご飯も、お着替えも、お風呂も、おトイレも…ぜ~んぶ、お姉さんがしてあげるから…♡クロ君は、可愛くお姉さんに甘えてるだけで良いからね…♡」

「ふあ…♡ふああああ…♡」

一生添い遂げる…そんな事を伝える、チャミルの言葉。甘い快楽に、甘い言葉に、そして甘い未来に包み込まれ…九郎のペニスは遂に限界を迎えはじめる……

「ん…イッちゃいそう?クロ君……。良いよ♡好きなだけお漏らししようね…♡心配ないよ、どんな恥ずかしいお漏らししても、お姉さんはず~っとクロ君の味方だから…♡したいままに、欲望のままに…♡クロ君の恥ずかしいお漏らし……お姉さんに…見せて……♡」

「あ…白奈さ……ああ……♡」

「大好きだよ…クロ君♡」

その言葉が、トドメとなり――

「ふあ…出る…我慢…できな……ふあ…ああああああああ――――――♡♡♡♡♡♡♡♡」

どっっっっぷうううぅぅぅぅぅっっっっっっ………♡♡♡

「あ…」

ちょろっ…ちょろろろろろ……

「ふふ…大丈夫、大丈夫……♡よしよし…♡」

おびただしい量の射精を終えた後に――、チャミルの言葉をなぞるように、九郎は本当の尿まで漏らしてしまう。途中で止めようとすら思わない。夢の中でトイレに駆け込んだように、尿意に任せ、そのまま全て出し切ってしまう……。

「あ…ふあ……白奈…さん…♡」

そうして全てを出し切り…九郎は、脱力感と眠気により、うつろな目でこくりこくりと胸の中で徐々に意識を失いはじめる…

「……♡」

チャミルも、無言で、それでいて優しく頭を撫でることで安眠を促進させる。おっぱいフェロモンとミルクの匂いは、眠りに落ちやすいようなベビーパウダーのような匂いへと変化していき……

カラン…カラン…♡

(ふあ……)

首元のカウベルからは、穏やかな音色が鳴り響き……、九郎の瞼は、ゆっくりと、堕ちて……

(しあ…わせ……)

ふかふかのベビーベッドの上で、幸せの肉布団に抱かれながら…九郎はそのまま、眠りへと落ちていった。

後日――、ブラックアビスという要を失った人間界は、呆気なくギャレイヴによって侵略された。仲間も、クラスメイトも、そして父親も…今はどこで、どうしているのか、命はあるのか、はたまたいずれかの怪人のお気に入りになっているのか…そんなことはもう、九郎にとってはどうでもいいことだ。何故なら――

「ふふっ…♡クロ君のおちんちんさん…お姉さんのおっぱいに亀さんの先っぽからむにゅにゅ~っ♡って飲み込まれちゃったね…♡」

「あっ…あ…♡♡♡」

「こうやって、おっぱいがズレないように両手で固定して…後はたぷたぷって揺らすだけ…♡たぱんったぱんっ♡っておっぱいの肉波が中央に押し寄せて…甘々の振動を与えて、おちんちんさんとろとろに溶かしちゃうんだよ…♡」

「ふあああ…♡おっぱいが…おっぱいがむにむにってすいついてくるぅ…♡」

「それに加えてぇ…♡えいっ♡とぷとぷとぷ~~~~♡」

「ふあああああ…♡」

「ふふっ♡ミルクをぴゅぴゅって出して、ローション代わり…♡にゅるにゅるミルクが絡みついて、おっぱいの滑りをどんどん良くして…ぷちゅんっ♡って吸い付いて、離れてを繰り返しちゃうんだよ♡」

「あああ…も、もう…♡」

「ふふっ♡すっかりお漏らし癖ついちゃったね、クロ君…♡明日あたり、ちょっとだけ早漏さんのトレーニングしないと駄目かな~~~~♡」

「ああ…ああうう…んあああああ……♡♡♡」

びゅううううううううう……♡

「ん…熱い……♡お姉さんのおっぱい、真っ白になっちゃった…♡」

――世界が侵略され、崩壊する。そんなどうでもいいことより、九郎にとっては、大好きなチャミル…白奈へと甘える事こそがこの世の全てだったからだ。彼が1度射精する度に…彼が1度漏らす度に…本来救えたはずの命が、またギャレイヴの手に堕ちていく。しかし、そんなことはもう……

「クロ君、大好きだよ…♡」

「ふあああ……ぼ、ぼくも…♡」

そう…どうでも、良いこと―――――――

……HERO・LOSE…HAPPYEND……

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【乳牛怪人チャミル】

名の由来:チャーム+ミルク
おっぱいの大きさ:超特盛
好きなもの:素直な子 意地っ張りな子 寂しがりな子 恥ずかしがり屋な子 etc…
嫌いなもの:暴力的な男性
能力:甘々ミルク おっぱいフェロモン

人間界を征服せんとする悪の組織ギャレイヴが秘密裏に人間界へと送り込んだスパイ。
普段は『宗元白奈』という名を装い、保育士として生活している。怪人ではあるものの、自分よりか弱い、誰かが護らなければならない存在への愛情は本物で、ギャレイヴが人間界を侵略した暁には、自分が率いる甘々お姉さん軍団にて子供たちを世話しようと考えていた。そのため、保育士として活動していた際にも演技ではなく本心から宗元白奈としての生活を満喫していた。
九郎と出会ったのは彼の正体がブラックアビスだと気付くよりも前であり、その頃から何処と無く哀しげな雰囲気を醸し出していた彼を放っておけずに、登校中の彼によく話しかけていた。不審がられたり、距離を取られない範囲で、こっそり意図的にエッチなスキンシップを取るなど、乳牛怪人としての本性も僅かに見せていたが、本心から彼の力になれないかとも思っていた。
そんなある日、九郎こそがブラックアビスだと知った彼女は元より抱いていた「癒やしてあげたい」という感情に加え、「人のために頑張れる優しい子」という一面も見たことで、本格的に九郎を『お気に入り』になり、劇中の作戦を決行。本来であれば「学校の行くのも嫌そうな九郎」を登校中に抱きしめたまま、保育園のベビーベッドの中で堕としてしまおうと考えていたが、ハプニングが続き、その作戦は下校中に決行された。

怪人としての姿は牛柄のロング手袋に太ももから下を覆うロングソックス…そして牛柄のビキニ…と俗に言う牛コスと呼ばれる姿。しかしそのビキニは大きすぎるチャミルの胸を隠すには心許なく、乳輪付近しか隠せておらず、下半身もむちむちとした太ももを覆うには心許ない紐ビキニであり、一見すると男を欲情させることしか目的のないような痴女にしか見えない出で立ちをしている。だが、美しく白い肌、クリーム色のセミロングヘア…そしてそれらを覆う殺傷能力など無さそうな角と耳、白と黒のマーブル模様の牛柄コス姿は、チャミルの『優しいお姉さん』という印象をより強くし、ひいては『ミルク』や『おっぱい』などの印象を持たせ、相手に欲情と同時に『包容力や安心感』も与える効果がある。

ビキニは科学班が作成した『フェロモンガス』発射装置であり、汗やフェロモンを吸着する1の層、目的の匂いのみを抽出する2の層、フェロモンガスを噴射する3の層とで別れており、これだけで気付かれぬままに数百人規模の男を堕落させられる超装置である。それを『牛ビキニ』というごく小さな形に、そして彼女を表すシンボルともいえる牛柄を伴い作成、唯一無二の武器として与えられたのは彼女の地位が為せる技である。

そしてそれ以上に強力な誘惑能力が、その大きな胸から分泌される『ミルク』である。このミルクは濃度や匂いの質、味まで自由自在に変換することが出来、その気になれば一口飲んだだけでも今までの記憶をすべて忘れ、彼女に忠実に動くだけの心の壊れた人形にすることすらも可能だが、彼女自身、ミルクやフェロモンはあくまでも「自分に素直になって、甘えてくれるきっかけ」として扱っているため、そういった恐ろしい用途で扱うことはまず無いだろう。

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