中学生の時イキってイジメから助けた女の子が巨乳清楚ヤンデレ美人になって俺の前に現れた。(中出しを懇願されたケドJD妊娠は人生オワタになるので代わりにご尊顔に大量ぶっかけするってマ???)
大学の昼休み。
人気の少ないキャンパス内のベンチにて。
俺、秋島あきしま好こうは一人で黙々と昼食を食べていた。
俺には友達と呼べる人間はいない。
高校生の頃からボッチ生活を送っている。
当然、彼女なんていたこともない。俺は20代前半にしてもう既に社会的弱者の人生を送っているのだ。
コンビニで買った菓子パンを一口。
当たり前だが美味しくない。一人ぼっちの食事に美味さを感じるほど鈍感な性格をしていないもので。
「ねぇねぇ、学食いこーよぉ」
「いいよ。じゃあ二人で座って食べよっか」
「わーい! 嬉しいなぁ〜」
道行く学生達の何気ない会話が耳障りだ。
しかし、俺には怒る資格なんて無いんだ。
誰かと仲良くなることから避けて、一人で生きる選択をしたのは他でもない自分なのだから。
……ああ、こんな俺でも中学生の頃はもっと夢や希望に溢れていたのにな。自分のことをこの世で唯一のヒーローだと固く信じて疑わなかったし、学校で困っている生徒がいれば率先して助けていた。
まあ、そういう行動が『生意気』と思われてイジメのターゲットになったのだけど。
あれから俺はすっかり弱くなってしまった。
自分という人間を客観的に見てしまい。成長するにつれてヒーローなんかになれる器じゃないと知ったのだ。悲しいけど、この認識はきっと間違っていないだろう。
物思いにふけって。すっかりパサパサになったパンをかじりながら。俺は深いため息をつくのだった。
※※※
午後の講義が終わって。
今日はアルバイトも無いから図書館で自習することに決めた俺だ。今は夏休み前で、館内は冷房が効いているから快適である。そんな中で好きな勉強をしたり本を読んだりできるのだから、最高としか形容の仕様がない。
図書館に向かうために歩いていると。
ふと、廊下の隅に何かが落ちているのを見かけた。
目を凝らしてよく見ていると。それは財布だった。
見た目からして男性物の財布である。学生の誰かが落としたのだろうか。
とりあえず手に取って。中身を確認してみる。
……驚いた。中には1万円札が10枚も入っていたのだ。
学内に設置してあるATMにお金を下ろしたばかりなのだろうか。それにしても不用心だ。
周りには人の姿はない。
学生達は既に帰宅しているか、サークル活動で部室棟にいるのだろう。教職員も会議中でこの辺りには来ないハズだ。
流石に人のお金を盗むほど心根は腐っていない。
キチンと事務室の落し物係に持っていこう。
こんなことしたって俺の善行を見ている人なんていないからなんのプラスにもならないのだろうが。別にそれでも構わないと思う。逆に持て囃されて表舞台に立たされるほうが恥ずかしい。昔の俺なら嬉しかっただろうが。
事務室に向かう。
カウンターの奥には事務員が忙しなく働いていて。
大変そうだなと個人的に思った。
「っ、あの」
俺は事務員に声をかける。
聞こえなかったようだ。そりゃそうだ。俺の声は蚊が飛ぶように小さく。周りの騒音に掻き消されたのだから。
「あ、あの〜っ」
今度はもう少し大きな声で事務員を呼ぶ。
しかし気付かれることはない。
……仕方がない。精一杯大声で呼んでやるか。
「あのっ!!」
ピシャリと事務室が静寂に包まれて。
一斉に視線が俺に向けられる。
迷惑そうに睨み付けてくる人もいる。
その中で目が死んでいる中年の事務員が気だるそうにこっちにやってくる。
「はい? 何かな」
「あ、えっと……落し物、を」
廊下に落ちていた財布を差し出すと。
事務員は目を細め。メンド臭そうにため息をつくと。
「これ、どこにあったの?」
「えっと、一階の廊下のところに……真っ直ぐ行って右に曲がると図書館のある……」
「ああ、あそこね」
事務員は納得したようでふむふむと頷き。
そして、おもむろに財布の中身を開けだした。
中に入った札束を見て。イヤラしい顔でニヤッと笑い。
「ねぇ、キミ」
「は、はい」
「この中から何枚抜いたの?」
「え、は? 抜いたって……」
「いや、ざっと数えただけで10万近く入ってるよね。一枚くらい札抜いたんじゃないの?」
「そ、そんなことしませんよっ!」
驚いて声を荒らげると。
事務員は怪訝そうな顔をして。
「なにそれ。キミ、善人にでもなったつもりなの?」
「え……?」
「もうちっと賢く生きないと後々の人生詰むよ? いや、マジにさ」
「……」
「あ、この話内緒ね。ほかの教員に怒られちゃうから」
「……」
「返事は?」
「…………はい」
「よろしい。ウヒョ☆なんか今の先生っぽくてアガったな。いやぁ、俺実は教員になりたかったんだよね。でも家が貧乏でさぁ──」
怒りが込み上げてきた。
大人とは、社会とはこんなに汚らしいものなのかと。
しかし、握りしめた拳を振り下ろすことはなかった。
そんな勇気、中学生の頃に捨てたのだから。
事務室を出たあと。俺はトイレでひとり泣いた。
※※※
次の日。昼休み後の三限前にて。
俺は授業が始まる15分も前に講義室の席に座っていた。
暇だ。やることがない。スマホを弄って時間を潰すが、すぐに飽きてしまう。
……とりあえず御手洗にでも行くか。
俺は席を立ってトイレに向かう。小便をしながら退屈な毎日に思いを馳せる。なんでこんなことになってしまったのか。誰が悪いのだろうか。いや、きっと俺の努力不足のせいだな。
そんなことを考えながら。
小便を済ませて講義室の席に戻る。
すると、そこにはさっきまでなかった一枚の紙が置いてあった。風でゴミでも飛んできたのだろうか。詳細を確認するために俺はその紙を取って。
……書かれている内容に固まってしまった。
『秋島好様。お話したいことがあります。四限が終わったあと、四階の使われていないD教室でお待ちしております』
綺麗な字で書かれた手紙だった。
筆跡からは汚い男の影を感じることはできない。
だからイジメっ子のイタズラとかでは無さそうだ。
たっぷり時間をかけて丁寧に一文字一文字書かれた文章の並びに。俺は思わずドキリとした。
(何なんだよ……どうなってるんだ……?)
人に好かれるようなことなんてした覚えがない。
好印象を持たれる容姿というワケでもない。
根暗で、気弱で。そして才能と呼べるものが何も無い落ちこぼれだと自分では思っている。
そんな俺に……ラブレターを送った相手がいる?
何かの間違いとしか思えない。信ぴょう性なんて皆無に等しい。
なのに……俺はまんまとドキドキして。
講義が始まっても気が気じゃないのだった。
これで誰かが俺の様子を見て笑っているのならとんでもなくピエロなんだろうな。
※※※
結局。
俺は指定された四階のD教室前に来てしまった。
本来、この大学の四階は物置程度にしか使われておらず。その中でもD教室は最も使用されていない、言わば空き部屋である。そんなところに呼び出すということは、相当な物好きか二人っきりになりたいということくらいしか考えられない。
ああ、緊張する。
99パーセントの確率でイタズラなのだろうが。
どうせからかわれるなら一瞬で終わって欲しい。
辛いのはもう嫌だ。早く楽になりたい。
その思いで俺は引き戸に手をかけて。
……ガラリ、と。ドアを開けたのだった。
「……ぁ」
教室の中には。何者かが立っていた。
中が暗くてイマイチ姿が見えない。「……ぁ」という声だけ聞けば女性のように思えるけど。
「あの……」
俺が恐る恐る声をかけると。
俺を呼んだ相手はぺこりと丁寧にお辞儀をして。
「こんにちは。来て、くれたんですね」
「う、うん……」
嘘みたいに可愛い声だった。
ガラス細工のように透き通った声は庇護欲をくすぐり。
それでいて一本芯の通った自立を感じられる声質をしている。儚さと、たくましさ。その二つを兼ね備えているのだ。声の主は──確かに女の子だった。
「あの、一応確認なんだけど……君が俺をここに呼び出してくれた人、だよね……?」
「うん。そうだよ」
「そ、そうなんだ……」
近付いて。顔を見た途端。俺は圧倒された。
目の前の女の子は滅茶苦茶に俺の好みなのだ。
清楚で理知的な印象を受ける白のブラウスに。女性的なロングスカートを穿いているその子は。脚が長くて身長もスラリと高いのでこんな風に清楚な服装が似合っていることこの上ないのだ。
顔付きは可愛いといよりは『美人』といった感じで。
目鼻立ちがハッキリしており。少しタレ目なところも俺の性癖を的確にアタックしてくる。……そんな理想の詰まった女性が実在するなんて。まるで狙ってこの姿になっているかのように思える。
呆然とする俺に。
女の子はハッとして。慌てて自己紹介を始める。
「あ、ごめんね。まずは名乗らなきゃね……私、社会福祉学部三年の水谷みずたに鈴乃すずのです」
「み、水谷みずたにさん……ね。えっと、俺は同じ社会福祉学部で同じ三年の……」
クスッと笑い。水谷さんは言う。
「秋島あきしま好こう君、だよね。知ってます」
「な、なんで俺のこと知ってるの……?」
「なんでって……そんなの、当たり前だよ」
「当たり前っ?」
水谷さんは端正な顔を俺に近付けて。
ジーーっと俺を見つめると。にへらと幸せそうに笑いながら言う。
「私ね、キミのこと。ずっと見てたの」
「……何かの冗談?」
「冗談なんかじゃないよ。キミのことなら何でも知ってる。キミの好きな物や嫌いな物……なんでもだよ?」
「例えば」と。水谷さんは俺に問いかける。
「秋島君は女の子に優しくイジメられたい子、だよね?」
「……え?」
「ちょっと押しが強くて、サドっけがあって。でも自分のことは全肯定して甘やかしてくれる同級生の女の子……好きだよね? そういう漫画買ってるもんね?」
「ちょっと何を言っているかっ。……ひっ」
水谷さんは人差し指を俺のお腹にプスリと突き立て。
少しずつ胸のほうにツツーーッ♡っと移動させてくる。 ゾクゾクとした背徳的な感覚が襲ってくる。呆気なく俺は情けないマゾ声を上げてしまう。
「ぁあ……!」
「思った通り反応可愛いね」
「ごめ、ごめんっ。その、俺……っ」
「大丈夫だよ。君が何したって引いたりしないから。本当に大丈夫だよ? だから、もう少しイジメるね」
ツツツーーッ♡っと胸の周りを人差し指でなぞられる。乳首の周りを円を書くようにクルクルと撫で回された時にはもう我慢ができなくなって勃起してしまった。バレたくなくて俺は無意識に前屈みになって股間を隠す。すると水谷さんは一切バカにする様子もなくクスクスと楽しそうに笑って。
「おっきくなっちゃったね」
「あ、あのっ。えっっ、と……」
「ほんっと可愛いよね、キミって。あ、大丈夫。皮肉とかじゃないから。本気で可愛いって思ってるよ?」
「み、水谷さん……っはぁ」
「なぁに? 秋島君」
頭の中がフワフワする。
女の子にイジメられているのに。
全然嫌じゃない。むしろ興奮する。
……ああ、俺って変態だったんだな。
初めて会った女の子にマゾバレして。
初めて会ったのに、イジメられている。
そんな事実が俺のマゾ心を掻き回してくる。
「っ、はぁ……」
俺はその場にへたりこんでしまう。
すると水谷さんは瞳の奥をジュボジュボに濡らして。
愉悦まじりの声で言うのだ。
「いっぱい気持ちよくなってくれてありがとね」
「……君の目的はなんなんだよ」
「あ、ごめんね。少しイジめすぎちゃったかな。なんかね、いざ目の前に来てくれたら気持ちが抑えられなくなっちゃって……でも、それじゃダメだから本題を言うね」
へたり込む俺の前にしゃがみ込んで。
俺のアゴに手を添えて。奴隷に慈しみを覚える女王様のように優しく微笑みながら。水谷さんは恥ずかしげもなくこう告げた。
「私ね、キミのことがずっと好きだったの」
「え……?」
「ずっとずっと、子供の頃から……ずっと見ていました。だから、キミのことを誰よりも理解しているつもりだよ。お父さんよりも、お母さんよりも……誰よりも、ね」
「水谷、さん」
「ねぇ、覚えているかな。中学生の頃……私をイジメから助けてくれたよね? 私は覚えている。今でも忘れられない、宝石みたいにキラキラしている大切な記憶……その時キミは言ったよね。「俺がいるからもう大丈夫」って……私、その時に誓ったの」
水谷さんは狂気的とも取れる。
あまりにも悦に入った笑顔を俺に向けてこう続けた。
「この人を一生愛そう……って。だから、高校も大学もキミと同じところを選んだんだよ? でも、話しかける勇気が出なくて。いつも寂しい思いをしていたのは知っているのに……ごめんね」
悲しそうな顔をする水谷さん。
中学生の頃に一度助けただけなのに。こんなにも俺のことを好きでいてくれるなんて。良い意味でピュアというか、悪い意味で盲目というか。
さきほどから一転して。
水谷さんは怒りのこもった口調で言う。
「でもね、昨日……キミが財布の落し物を届けた時の事務員の反応を見てたら……私、もう耐えられなくなって。辛いんだろうな、苦しいんだろうなって……そう思ったから。もう見守るだけじゃダメなんだって気付いたから。私が一緒にいてあげなきゃ、このままじゃ秋島君がもっと悲しい思いをしちゃうって思ったから……」
「……だから、手紙を書いて俺を呼び出したの?」
「うん。そうだよ。イキナリでビックリしたよね? ごめんね……」
こんなにも俺のことを好きでいてくれる女の子がいるなんて。知らなかった。今でも夢なんじゃないかって思う。ちょっとヤンデレサイコパスっぽいけど。
……けど、俺は彼女の気持ちを断らなければならない。
中学生の時とは違うからだ。俺はもうすっかり人を助ける勇気なんて無くなったし、水谷さんが憧れるようなヒーローとは程遠いのだ。今の自分と一緒になっても足を引っ張ってしまうだけだ。
(ごめん水谷さん……今の俺は、キミに好かれるような立派な男じゃないんだ)
そう思い、口を開こうとすると。
「秋島君……」
「な、何かな」
「もう、これ以上キミに悲しい思いはさせたくないの。キミは私を救ってくれたヒーローだから……」
「水谷さん……」
「厚かましいお願いかもしれないけど、守りたいの。昔、私を救ってくれたキミを、今度は私が……」
「俺は、その……」
「いいの。何も言わなくて。負い目を感じているんだよね? 自分なんかが、誰かと一緒になっていいのかって」
「分かるの?」
水谷さんはコクリと頷き。
ギュッと俺を抱き寄せて。優しくこう呟いた。
「いいんだよ。もう、幸せになって。もう大丈夫だからね」
「……っ。水谷、さっ」
「いいよ、何も言わなくて。もっとも、キミが何を言っても私は全部受け止めるつもりだけど。私にできることはなんでもするからね」
「……」
「キミに酷いことを言う人、イジめる人、馬鹿にする人……キミの身に降りかかる脅威全てから守ってあげたいの」
「……っ」
「思い出させてあげる。キミがどれだけすごい人間か。だからお願い。私を受け入れてもらえるかな」
弱っている時に。苦しい時に。
そんなこと言われたら、断ることなんてできない。
かなり巧妙な手口だと思う。絶対に俺が断らないだろうタイミングを狙って告白をしてくるのだから。ずる賢いとも言えるだろう。
「水谷さん……」
「なぁに。秋島君」
「俺、上手くキミと付き合えるのか分からないよ」
「大丈夫。キミが何をしたって、嫌いにならないよ」
「……そっか」
「これからよろしくね、秋島君」
ある夏の日。それは唐突すぎる話だった。
イキナリ彼女──水谷みずたに鈴乃すずのさんは疾風迅雷しっぷうじんらいの如く勢いで僕の目の前に現れて。なんの予告もナシに青春の風を巻き起こしたのだった。
押し流されるように俺は告白を了承して。
めでたく恋人同士になったのだった。
イキナリすぎて脳が混乱しているけど。
俺のことを好きになってくれてる子の登場に年甲斐もなく無邪気に舞い上がってしまうのも事実で。
この子となら上手くやっていけるんじゃないか。
そう思って。これから起こる未来に希望を抱いたのもつかの間。
……俺はこの交際を酷く後悔することになる。
※※※
(待ち合わせ時間、10分も過ぎてしまった……)
デートに遅刻した俺だ。
これでもう五回目だ。我ながら自分が嫌になる。
汗だくになって走りながら待ち合わせ場所に指定した駅前の街に設置された銅像前に向かう。急がなければならない。
「はぁ、はぁ……はぁ、ぁ……ごめっ。ごめん水谷さんっ」
「……あ、秋島君」
待ち合わせ場所に着くと。
水谷さんはスマホも弄らずに俺のことを待っていてくれた。服装はやっぱり俺の好みをくすぐる清楚な白のワンピース姿だ。黒髪ロングの髪も日本の夏にマッチしていて可愛らしい。……こんなにいい子を酷暑の中待たせていたなんて申し訳なさすぎる。
「あの、ごめんね……暑かった、よね」
「ううん。大丈夫だよ。それより、秋島君は暑くない? すごく汗だくだけど……」
心配そうに汗でビチョビチョの俺を気遣ってくれる水谷さん。この子はやっぱり優しい。……って、男側が気遣われてどうするんだよっ。
俺はカバンから清涼飲料水を取り出して。
水谷さんに渡す。
「あの、これ……暑かったでしょ。飲んでよ」
「え、いいの? ありがとう……じゃあ、後でお金渡すね」
「お金って……これは俺の奢りだからっ。お金なんて別にいいよ?」
「え、秋島君の奢り? 本当にいいの?」
「え? そりゃあ、勿論……」
何を当たり前のことを言うのだろうか。
不思議に思っていると。あろうことか水谷さんは瞳を濡らして。ウルウルと泣き出すのだった。
「嬉しい……一生大事にするね」
「え、え? 泣いてるの? 水谷さん……」
「だって……ずっと憧れていた秋島君が私に飲み物を買ってくれるなんて……嬉しくて、嬉しすぎて……もう死んでもいい……」
「え、え?」
大袈裟すぎる。そんな風に涙を流されるようなすごいことは一切していないのに。むしろ、俺はデートに遅刻して。それはもう何回も繰り返していて。こんなに醜態を晒しているのに愛想を尽かさずに付いてきてくれる水谷さんのほうが涙が出るくらい素晴らしい人間だと思う。
とりあえず泣き止んでもらおうと。
俺は水谷さんに優しく声をかける。
「水谷さんっ。あの……とりあえずハンカチで涙拭いて……」
「ありがとう。ごめんね……ごめんね、秋島君」
涙を流して歓喜している水谷さんを見ていると。
無性に腹が立つ。もちろん、水谷さんが泣いているからじゃない。こんな風に泣いてくれる水谷さんの想像している格好いいヒーローに今の俺は程遠いと思うからだ。
正直、俺は水谷さんのことが好きだ。
出会ってからそんなに日が経っていないけど。
どうしようもなく好きになってしまった。
だから嫌なんだ。水谷さんの綺麗な涙を無下にしているようで。そして同時に怖いんだ。水谷さんに失望されて離れ離れになることが。
「水谷さん」
俺は水谷さんにそっと声をかけて。
心から謝罪をした。
「ごめんね」
「……なんで、謝るの?」
「なんでもないよ。けど、本当にありがとう」
「お礼をいうのはこちらこそだよ……秋島君、私とお付き合いしてくれてありがとうね」
「……うん」
ひまわりの花が開くように。
ぽかぽかとした温かな笑顔を俺だけに見せてくれる水谷さん。この笑顔が曇る瞬間に立ち会いたくはない。そう強く思った。
そんなこんなでデート開始。
まずはお互いにお腹が空いたので昼食を食べることになった。早速駅近くのレストランに向かう。
「色々なメニューがあるね。秋島君」
「うん。そうだね」
店員に席まで誘導され。向かい合って座る俺達。
水谷さんは今この時間が心底楽しいといった感じでニコニコと微笑みながらメニュー表を眺めている。
早速料理を注文をする。
俺はハンバーグ定食。水谷さんはたらこスパゲティだ。
料理が運ばれて来るのを待つ間、俺は水谷さんと他愛ない話をする。
「水谷さんはさ、どういうタイプの男性が好きなの?」
「キミが好きだよ」
「え、いや……そうじゃなくて、その。例えば塩顔の男性が好きとか、マッチョが好きとか、そういう話だよ」
「そうなんだ。でも私、キミ以外の男の人はなんだかよく分からなくて……」
「分からない?」
「うん、ちょっと怖いかな」
「そうなの?」
「うん。なんか目がギラギラしてて、隙あらば乱暴してこようとする感じが……ちょっと苦手なんだよね」
「……そうだったんだ」
話を聞く感じだと他の男の人と交際した経験は無さそうだ。こんなに美人で気立てもいいのだから、きっと過去に色々な人達が彼女を狙っていたのだろうに。その全てを断って、今俺の目の前にいるのだ。何かの素人恋愛小説にでも出てきそうな都合のいい展開だ。今でも俺は信じられない。
なぜこんな可愛い子に好かれているのか分からなくて。
俺はついこんな質問をしてしまう。
「ねぇ、水谷さんは……なんで、俺のことをこんなに好きになってくれたのかな」
「え……?」
「え、いやさ。自分で言うのもなんだけど、俺ってどちらかといったら格好悪いほうの男に分類されるだろうし、女の子の扱いかたとか全然上手くないしさ……なのにどうしてかなって思って」
我ながら情けない質問だと思う。
でも、問わずにはいられなかった。この気持ちを胸に秘めておくには限界があったのだ。
水谷さんは少し考えたような顔をして。
若干頬を染め。俺に言い聞かせるようにしみじみと言う。
「秋島君は……格好いいよ」
「そ、そうかな」
「うん。優しいのは勿論なんだけど、その優しさは見返りがないっていうか。ああ、この人は心根から善人なんだろうなっていうのが伝わってくるから」
「……水谷さん」
自分のことを客観的に見たことがなかったけど。
水谷さんの目からは。俺がそんな風に映っているのか。
……でも、なんとなく解せない気分がするのも現実で。
やっぱり、俺は水谷さんが想像するようなすごい人間じゃないって思うんだ。これはおかしなことなのだろうか。
「水谷さん、あの……俺は──」
自分でも何を言おうとしたのか分からないけど。
口を開いた途端、店員が料理を運んでくる。
「お待たせ致しました。ハンバーグ定食と、たらこスパゲティになります」
「っ。あ、ありがとうございます……」
料理がテーブルに並べられる。
一度話が中断されたので、なんだかまた会話を切り出すのが恥ずかしくって。しばらく俺は無言で食事をする。水谷さんも何も言ってこない。……少し気まずい。何か話題無いかな。
考えた末に。俺はこんな質問をする。
「あ、あのさっ。水谷さん」
「ん? どうしたの」
「水谷さんの、その……好きな物ってなに?」
我ながらなんの質問だよコレ。
苦し紛れにもほどがある。話題に困っていることがバレバレだ。恥ずかしいったりゃありゃしない。
なのに水谷さんは。
恥ずかしげもなく平然とこう返すのだ。
「キミ」
「え?」
「キミが好きだよ」
「……えっと、それ以外は?」
「キミのことを考えながらお風呂に入ることとか、キミのことを考えながら寝ることかな」
「……そ、そうなんだ」
愛が……愛が重すぎる。
美女にこんなクソ重感情をぶつけられた経験なんて無いから気圧されてしまう。ここまで来るとネタで言っているのでは? なんて思ってしまうけど、表情や仕草からは嘘の感情を感じ取ることはできない。
「ね、秋島君」
「な、なにかな」
タジタジになってうつむく俺に。
水谷さんは優しい口調で呼びかけながら言う。
「顔を上げて、こっちを見てもらえるかな」
「水谷さんを……見る……?」
「うん。秋島君の顔、可愛くて好きだから」
「……っ」
「ダメかな?」
「……分かったよ。顔、見ればいいんだよね」
「うん。ありがとね。秋島君」
母親が子に諭すように優しく言われれば。
断れるワケなんてなくて。俺はゆっくりと顔を上げて水谷さんを見る。どこか北欧の血筋を匂わせる、目鼻立ちがハッキリした顔立ち。時代と国が異なれば女騎士として名を馳せていそうなほど凛と引き締まった眉と唇。それと同時に、辛い時や苦しい時に男の尊厳を脱ぎ捨ててみっともなく泣きつきたくなるような母性も感じられる。
……そんな顔で見つめられながら。
水谷さんは慈愛たっぷりにニコリと微笑みかけてくるのだ。なんだか堪らなくワッと豪快に泣き出したくなる。身体の緊張が解けて、母親の膝の上で寝ているかのように心が安心してしまうのだ。
「……秋島君」
「水谷、さん」
「大好きだよ。心から、キミのことが」
「……えっと、その……」
「うん」
「……あ、ありがとう」
「ふふ、どういたしましてだよ」
その言葉を素直に喜べないのが今の自分だ。
俺は……今からでも彼女の理想に近付けるだろうか。
中学生の時みたいな根拠の無い自信を取り戻せるだろうか。それが不安でならない。
痛くて苦しいほど。強く強く。
彼女に見捨てられたくないという感情がイバラのように心の奥底の柔らかい部分に絡み付いてくるのだった。
しばらく食事を楽しんでから。
お会計の時間になる。えっと、こういう時って彼氏側が奢るべきなんだよな。確かテレビやネットで聞いたことがある。
格好いい所を見せようと。
俺は財布を取り出して。絶望した。
(た、足りない……自分の分のお金しか持ってきてないよ……!)
昨日はデートが楽しみすぎて銀行に行くという発想が無かった。我ながらアホすぎるだろ……こんなの格好悪過ぎる。
「秋島君? どうしたの?」
財布を取り出したまま会計のカウンター前で固まっている俺を。不安そうにそう聞いてくる水谷さん。どうしよう……二人分は払えなくても、せめて少し多めにお金を出すくらいはするべきか。いや、そんなの中途半端過ぎて逆にダサいのか?
選択を迷ってオドオドしていると。
カウンター前にいる店員が舌打ちをしてくる。
まるで「いいから早くしろよ」と急かすように。
「す、すみません……」
謝ることしかできない俺だ。
急いで1000札を一枚取り出して。残りは水谷さんに払ってもらう。これで財布の中には小銭が数枚あるのみだ。これじゃあジュースの一本くらいしか買えやしない。本当に俺という人間はどこまでも際限なくダメ人間なようだ。
店員は会計の手続きをしながら。
水谷さんと俺を交互にチラチラと見ては怪訝そうな顔をする。きっと不釣り合いな関係だと思ってあざけ笑っているんだろう。実際そうだから否定できない自分が恥ずかしい。
悔しくて悔しくてうつむいていると。
ふと、水谷さんが俺の手をギュッと握ってきた。
顔を上げて水谷さんを見ると。彼女は俺をあざけ笑った店員をギロリと睨みつけ。それから俺のほうを見ると。
「ご飯美味しかったね。秋島君」
「え……あ、うん」
「お金も多めに払ってくれてありがとう。じゃあ、行こっか」
「……うん」
水谷さんは店員を一瞥いちべつすると。
すぐに俺のほうを向き。幸せそうに微笑み。
俺の手を繋いだまま店の外に出るのだった。
……格好悪いな、俺。女の子に守ってもらって。
店を出てから。
水谷さんは怒りを込めた表情で。
「酷いね、あの店員さん」
「……」
「あんな顔しなくたって」
「……うん」
水谷さんが何か言う度に。
自分の弱さを分からせられるようで辛くなる。
本当に、本当に情けがなくなる。
街を二人で歩きながら。
トボトボと俺は歩く。水谷さんが何か話しかけてくるが、全然耳に入らない。
(やっぱり俺は、水谷さんが尊敬するような男じゃ……)
改めて考えても違うと思う。
水谷さんが尊敬する男は過去の人で。
もう既に俺の中のどこにもいないんだ。
やっぱり、今日のデートが終わったら別れ話を切り出そう。うん、そうだ。それがいいんだ。
そんなことを考えながら。
ふと、横断歩道に差し掛かると。
辺りをキョロキョロとする不審な中年男性を目撃した。
道行く人は気味悪がって近付こうとしない。
でも俺には分かった。あの人は視覚障害者なんだ。
(信号が渡れなくて困ってるんだ。助けなきゃ)
隣に水谷さんがいることも忘れて。
俺は視覚障害者のオジサンに話しかける。
「あの、良かった横断歩道渡るのお手伝いしましょうか?」
「……え? あ、いいのかい?」
「はい。腕、掴んで下さい」
オジサンが俺の腕を掴む。
いつもよりゆっくり歩きながら横断歩道を渡る。
目の見えない人を介助する際、健常者が思ってるより歩くスピードを遅くしたほうがいいと学んだことがある。一応高校生の頃は福祉コースに通っていたからある程度の知識は持っているつもりだ。
オジサンを横断歩道の向かい側に渡らせると。
ありがとうありがとうと感謝の言葉を述べられる。
「ありがとう……助かったよ」
「いえ、俺は何も……」
「ホントいい子だね……日本の未来は明るいよ」
「は、はぁ」
本当に俺は大したことをしていないんだけどな。
オジサンはニコニコと笑いながらその場を去っていく。
白杖を持っているのでとりあえずはもう大丈夫なハズだ。一安心して俺はホッと胸を撫で下ろす。
そしてハッと気付く。
今は水谷さんとデートの最中で。完全に彼女のことを忘れていた。慌てて水谷さんに平謝りする。
「あのっ。ごめん……! 俺、俺……」
「すごいね。秋島君は」
「え……?」
一瞬皮肉を言われたのかと思ってヒヤリとしたが。
水谷さんの表情を見て。その考えは消え失せたのだった。微笑んでいたんだ。水谷さんは。
「私、気付いてたんだ。あの人が困ってるって」
「水谷さん?」
「でも、何もしてあげられなかった。けど、秋島君はすぐに駆け付けて。すごいな、本当にすごいや。秋島君は……」
「……俺は、別に何も」
「ねぇ、秋島君ってさ、いつもそうやって謙遜するよね」
「いや、だって……」
困ったように眉をひそめてから。
水谷さんはこう告げる。
「格好良かったよ。さっきのキミ」
「……!」
「ふふ、じゃあ……次はどこ行こっかね」
「……うん」
『格好良かった』という、水谷さんの言葉が。
不思議と溶けずに胸の奥にとどまって。
妙に記憶に残る俺だった。
※※※
「はぁ、今日は楽しかったね。秋島君」
「うん。そうだね……」
日も暮れて。すっかり辺りが暗くなった頃。
俺と水谷さんは夜の街を歩いていた。
今日は色々なところに行った。その中で失敗も沢山して落ち込んだけど。水谷さんは馬鹿にすることなく付いてきてくれた。
好きである、という気持ちが満杯になる。
もう彼女以外のものに目移りができなくなっている。
溢れかえりそうな気持ちを、俺は今日どう持ちかえるべきが悩んでいるところだ。
「秋島君」
駅前にて。
お互いに別の電車に乗るので。ここで解散となる。
そんな中で、水谷さんは寂しそうにこう言った。
「秋島君はさ、今日楽しかった……?」
「え……?」
「えっと、なんだか今日は元気が無かったから。私と一緒にいるの楽しくなかったのかなって」
「いや、その……」
「いいの。何も言わなくて。私は秋島君がしたいようにするから。もしね、もし……キミが嫌いになったのなら、私はキミから離れるし……もし、キミが辛くて死んじゃいたいなら、一緒に死んであげたいの」
「そんな、死ぬなんてっ」
真っ直ぐ透き通った瞳で俺を見つめ。
水谷さんは一切のためらいなくこう続ける。
「本気……」
「……」
「本気だよ。私、そのくらいキミのことが好きなの」
「……俺は」
「ごめんね。怖い話して……じゃあ、私帰るね」
「ぁ……」
水谷さんがそう言い残して去っていく。
なんだこれ。なんなんだよこれは……。
女の子に、好きな子にこんな悲しい顔をさせて。
これからも俺はそんなことを何度も繰り返すのか?
……全部分かっていたんだ。俺は、単純に怖かったんだ。
水谷さんに見捨てられるのが怖かった。変に大人ぶって諦めたフリをしているのも、彼女が発する褒め言葉を素直に受け止めなかったのも。全部全部……。俺がガッカリしたくなかったからだ。
こんな弱い自分を変えたかった。
いつまでもウジウジしている自分が嫌だった。
でも、もう変わるタイミングなんて訪れないと思っていた。……水谷さんが現れるまでは。
もう彼女の前で恥ずかしい思いをしたくない。
なんでこんな自分を好きでいてくれるか。今でも分からないけど。でも、少しでも分かりたいから。俺も変わりたいと思う。
だから俺は水谷さんをこう呼び止める。
「楽しかった!」
「……え?」
「今日……本当に楽しかった、よ」
「……秋島君」
「それに、嬉しかった……格好良かったって言われて……」
想いが溢れかえって吐きそうになる。
けど、ここで言わないと一生後悔するから。
「水谷さんには、本当に感謝しているんだ。俺を、こんな俺を好きでいてくれて」
「感謝だなんて……私は」
「ううん、嬉しいよ。ありがとうね。水谷さん」
「っ……」
恥ずかしそうに頬を染め。唇を噛み締める水谷さん。
ああ、本当に愛おしい。抱きしめてあげたいくらいだ。
……そういえば、俺は付き合ってから今まで。
一切自分から彼女に触れていないことに気付いた。
恐る恐る俺は水谷さんに訊いてみる。
「あの、さ……水谷さん」
「なに、かな」
「その、俺達って……今まで恋人らしいことしてなかったよね」
「恋人らしいこと?」
「そ、それは……その」
意を決して。俺はこう口を開いた。
「ハグ……とか?」
「……ぁ」
「い、いやっ。嫌ならいいんだけどっ」
俺はトンデモないことを言ってしまったのかもしれない。ワタワタと焦っていると。水谷さんは震える声で。
「いい、の……?」
「え……?」
「ハグ……してくれるの……?」
「そ、そんなの……当たり前だよ。むしろ、いいの?」
立場的には俺のほうが許可を取るべきだろう。
美人で優しくて、気立てが良くて。
そんな彼女に陰キャの俺がハグをするなんて、一歩間違えたら大事件なのだから。
なのに、水谷さんはクスリと笑い。
「いいに決まってるよ。私……ずっとずっと、夢見てたんだ。秋島君に、ぎゅーってされるの」
「っ。そうなんだ」
「だから、もしキミが嫌じゃなかったら……して欲しいな」
「うん……分かった。するね」
ゆっくりと水谷さんに近付く。
こんなに接近したことは初めてだ。
今まで少し距離を空けて歩いていたものだから。
俺は水谷さんの背中に腕を回す。
一瞬だけビクリと身体を跳ねさせる彼女だったが。
俺の体温が嫌なものではないと分かるとむしろ目を細めて気持ち良さそうに胸に顔を埋めてくる。
「……秋島君」
「なに、かな」
「私、今すごくドキドキしてる」
「そんなの……俺だって」
「秋島君の体温があったかくて、安心するいい匂いもする……ああ、好きだなぁって思うよ」
「い、一応香水付けてる、から……」
「香水とはちょっと違うかな。キミの、キミ自身の匂い……ずっと隠れて嗅いでたキミの匂いがするよ」
「……詳しくは聞かないでおくね」
ヤンデレ感溢れる発言に。
肝が冷える俺である。
……っと、しばらくハグを続けていると。
「ねぇ、秋島君……あのさ」
「ん? どうしたの」
「えっと……その」
俺の胸に顔を埋めながら。
申し訳なさそうに言い淀む水谷さん。
俺だって……彼女のことが好きだ。
だから、水谷さんがしたいことはできるだけ叶えたいと思う。だから俺はこう言うのだ。
「何かして欲しいことがあったら言ってね。俺も、水谷さんに色々してあげたいから」
「……そっか。ありがとね」
「うん……気軽に言ってよ」
「じゃあ、ひとつお願いがあるんだけど……」
「お願い? うん、言って言って」
水谷さんは俺の胸から顔を離して。
至近距離で俺を見つめながら。耳元で甘くこう囁く。
「エッチ」
「っ……」
「エッチ、したいな。今夜……キミと、いっぱい」
夜のお誘いである。
正直なんとなく予想はしていたけど。
実際に言われると滅茶苦茶興奮する。
それに、水谷さんの誘いかたがあまりにも可愛すぎて。
輪をかけてドキドキが加速するのだ。
「えっと、水谷さん」
「秋島君を射精させたいな」
「ちょ、女の子がそんなこと言ったらいけませんっ」
「ごめん……でも、ずっとキミとエッチがしたくて。私、キミの為だったら本当になんでもするよ? 本当に本当だよ?」
「わ、分かったから……」
言葉ではそんなことを言う俺だが。
意志とは関係なくムクムク♡とペニスが勃起する。
身体が水谷さんを妊娠させたくて臨戦態勢になったのだ。思わず俺は前屈みになってしまう。すると、水谷さんはクスリと笑い。
「ねぇ、キミってさ……おっきくなっちゃうのすぐ隠すよね」
「べ、別におっきくなんて……その……ぁ」
水谷さんは獲物を目の前にした獣のように。
息荒らげに俺の細い腕を掴みながら言う。
「扱しごきたい」
「ひっ」
「おっきくなったキミのチンチン……可愛いから、シコシコ扱しごいて精液吐き出させたいな」
「ちょ、水谷さんっ。人が見てるからっ」
「別にいいよ。私、キミにだけ好かれていれば。他の誰になんと思われようと」
恋は盲目とはいうが。
水谷さんの場合、盲目を超えて『狂信』と呼べるだろう。俺のことを狂ったように尊敬し、崇拝し。そして依存している。きっと彼女は俺が死ねと言えばすぐにでも死ぬのだろう。……絶対に何があってもそんなことしないけど。
というか、エッチとかよりも前段階があるだろう。
そう思い、俺は精一杯余裕ぶって水谷さんに言う。
「水谷さん」
「はい……」
「手、握っても……いいかな?」
「ぁ、ぅ……」
「まずは……その、こういうのから始めようよ」
ポッと。トマトみたいに顔を赤くして
水谷さんは恥ずかしそうにぽしょりと言う。
「いい、の……? キミと、手を繋いでも」
「いいよ。むしろ、水谷さんこそいいの……?」
「うん……! 秋島君と手を繋ぐの、夢だったんだ」
「そうなんだ。じゃあ、触るね……?」
水谷さんの細くて白い指。
手を繋ぐと。自分のほうから絡ませてくる。
冷たくて気持ちがいいな。それに、折れそうなくらい華奢だ。女の子の手ってこんなに繊細な作りをしているのか。なんだか感心する俺である。
水谷さんの瞳が街のネオンサインと共にキラキラと光る。
視線の先には俺しか映っていなくて。羨望の眼差しで俺を見ていて。そんな顔されたら……丁寧すぎるぐらい丁寧に扱わなければという気持ちになる。
俺達は手を繋いだまま。
二人で夜の街に消えていくのだった。
※※※
「……鍵、ここに置いておくね」
「うん。ありがとね。秋島君」
ラブホテルに着いて。
俺は部屋の鍵を閉める。これで今日の朝までは水谷さんと二人っきりだ。
でも、この後ってどうすればいいんだろう。
まずはベッドに行って、キスから始めて。
……いや、まず先にシャワーを浴びたほうがいいよな。
そう思い。俺は水谷さんに訊く。
「えっと、まずは……その、お風呂入ったほうがいいよね。あ、水谷さん汗かいて疲れてるよね。良かったら先入っていいよ……?」
今日は色んなところ行って汗をかいただろうし。
こういう時は先を譲るのが定石だよな。
そう思って提案したのだけど。
俺のことが大好きで、押しが強い女の子にリードされるのが性癖だと理解している水谷さんはなんのためらいもなく言う。
「一緒に……」
「え……?」
「一緒に入ろ?」
「っ。え、あの……」
「キミのチンチン見たいんだけど」
まるで、これが当たり前ですと言うように。
平然と混浴を提案してくる水谷さん。
ちょっと……イキナリハードルが高すぎないか。
それに、裸の水谷さんにチンコなんて見られたら。
暴発ぼうはつしてしまうかもしれない。
そんなのは情けなさ過ぎる。
「いや、俺は……その」
やはりシャワーは別々に入ったほうがいいよな。
断ろうと俺は口を開くが。その開いた口からマシンガンのようにテンパった声が出るのはすぐ後のことだった。
「わっわっちょっ。水谷さんん???!!!」
「どうしたの、秋島君」
おもむろに服を脱ぎ始める水谷さん。
イキナリの行動になんとか冷静を保っていた俺も流石に困惑してしまう。
「ちょ、水谷さんタンマっ」
「やだ。待てない。それに、秋島君こういう展開好きでしょ。目の前で女の子に服を脱いでもらうのさ」
「……それは、その……まぁ」
「まあ?」
ジーーーっと。瑠璃のように綺麗な瞳で見つめられれば。取り繕うことなんてできなくなって。俺はうつむきながら本音を言ってしまう。
「……はい。好きです」
「女の子が更衣室で着替えしてるAVでオナニーしてるもんね」
「な、なんでそんなこと知って……って、ああもう俺は余計なことをっ」
「それに、私キミの下着の好みも知ってるんだよ?」
「え、ぁ……ちょ、っと」
あれよあれよという間に水谷さんは下着姿になる。
大人っぽい黒色の、ちょっと際どいスケスケブラジャーを身に着けて。凛とすました顔して立っているのだ。というか、今まで服に隠れてよく分からなかったけど意外と胸のサイズも大きいんだな。柔らかそうな肉感溢れるたぽたぽ巨乳が谷間を描きながら俺の性癖をダイレクトに刺激してくる。堂々とした立ち振る舞いが彼女の愛の重さを体現しているようでますます興奮する。
「これ。このブラジャー。キミのお気に入りのAV女優さんが着てるのと同じブランドだよ」
「……ごくっ」
「こういうの、好きだよね?」
「……えっと」
「好きって言ってくれたらおっぱい吸わせてあげる」
「好きです好きです大好きです」
「ふふ……そっかそっか。頑張った甲斐があったよ」
まんまと水谷さんの甘い誘惑に負けてしまう俺だ。
いや、だって……あまりにもエッチすぎるから。
普通は「おっぱい揉ませてあげる」と言うところを「吸わせてあげる」と言うところも。俺が揉むより吸いたい派だということを熟知している証拠だ。っていうかどこからそんな情報を仕入れてくるんだよっ。
「じゃあ、吸わせてあげる。おいで?」
「ぁ……」
「ミルクの時間だよ……」
「……ちょっ。それって」
「うん。キミが買ってまで観てる作品……えっと……『全肯定巨乳お姉さんに甘々授乳されて大量射精五連発!』に出てくる、キミがSNSまでフォローしているAV女優さんが作中で言ってたセリフだよね」
なんでそんなことまで知ってるんだ本当に……。
俺の気持ちの悪い性欲にあまりにも理解があり過ぎる。
こんなのって……ヤバい。興奮し過ぎて頭がクラクラしてくる。
蜜に吸い寄せられる蝶のように。
俺は浴室に向かう水谷さんに付いていくのだった。
お互い裸ん坊になって。
狭い浴室に二人で立つ。密室の中で俺のことが大好きな女の子が一糸まとわぬ姿でニコニコと幸せそうに微笑んでいるのだ。プラスして滅茶苦茶エッチな身体付きなのだから。もう堪らないったりゃありゃしない。
そんな中で水谷さんは言う。
「秋島君のチンチンってさ……」
「え、な、何かな」
「ううん。なんか可愛い形だなって思って」
「か、可愛い……? そ、そんなワケ」
少なくとも。チンコは可愛い部類には入らないと思う。
グロテスクという言葉のほうが適切だ。見慣れている男の俺でさえ思うのだから。水谷さんなんて、なおさらだろう。
なのに──水谷さんは静かに首を横に振って。
「ううん、キミのチンチンは可愛いよ。本当に」
「……っ」
「どこが好きかも言えるよ。えっとね、大きさは一般よりちょっと小さいんだけど、亀頭の部分がクルって内側にカール気味なのがオモチャみたいで可愛くてね、尿道口が一般より一ミリ小さいのもおちょぼ口みたいで魅力的だよ」
「ちょ、そゆことゆーとっ」
びくんっ♡っと。俺のチンコが跳ねる。
目の前の魅力溢れる裸体の女の子に淡々と『キミのチンチンのここが好き解説』をされたのだから。マゾの俺としてはご褒美といっても差し支えない。
ビンッビンッ♡っと脈打つチンコを一瞥いちべつすると。水谷さんはおもむろに重量たっぷりのおっぱいを持ち上げて。母親のように優しい声で俺に授乳を勧める。
「吸って?」
「ぁ……」
「ずっと夢だったもんね。女の子のおっぱい吸うの」
妖艶にニコリと微笑み。水谷さんはこう続ける。
「私の身体でその夢、今日で叶えちゃおっか。ほら、こっちにおいで?」
「……ゴクリ」
もう取り繕うことなんてできない。
水谷さんに優しくニコニコと微笑まれながら。
エッチに誘惑されたなら。もう、男の理性なんて簡単にひん剥かれてしまう。俺は水谷さんの豊満なパッツパッツ♡なデカ乳に唇を寄せて。乳首をチュチュ〜♡っと吸うのだった。
「んっ……ふふ、一生懸命吸ってるね。可愛い……」
「っ、はぁ……みずたに、さん」
「本当に可愛いから、吸いながらチンチン扱しごいてあげるね」
「ん……っ」
本能の赴くままにおっぱいを吸う俺を横目に。
水谷さんはシコシコ♡とペニスを扱しごいてくる。
痛すぎず、丁寧に。愛情マシマシな手つきで。
優し〜く。優し〜く。授乳手コキをしてくるのだ。
プラスして砂糖菓子よりも甘ったるい言葉責めも忘れてはいない。本当にどうやってこんな凄テクをマスターしたのだろうと思う。
「シコシコ、シコシコ……チンチン気持ちーね。ビクビク止まらないね……ああ気持ちいい、気持ちいい……気持ちいいね」
「っ、はぁ……ウッッ」
「うんうん、チンチンいっぱい跳ねるね。カリ裏親指のお腹でグリグリしてあげる。ちょっと痛気持ちいいの、秋島君好きだもんね」
「は、はぁ。水谷さっ。ちゅ、ちゅぅ……」
水谷さんのやわっこいプニプニ乳首が美味しすぎる。
水谷さんのダメ人間を量産する甘々バブみ激エロ囁きが脳に濁流の如く快楽成分をドバドバと流し込む。
俺は無我夢中でおっぱいに食らいついた。そこに自我は無かった。男の尊厳も無かった。だって水谷さんがエロ過ぎるから。俺がこうなるのも承知で技を身につけたのなら、あまりにもタチが悪すぎる。
もう射精してしまう。
好きな女の子の前で。好きな女の子の凄テクによって。みっともなく。白いネバネバの遺伝子を出してしまうのだ。なのに、それを恥ずかしいと思う余裕さえなくて。
「水谷さっ。イッ、イッッ」
「イクね、イっちゃうね。ビクビクいっぱいしちゃってるもんね……」
「はぁ、ぁはぁ……」
「じゃあ私の太ももに精液かけちゃおっか。私は別に構わないよ? 太ももに遺伝子ピュッピュして、太もも妊娠させちゃおっか。ほら、イケイケイケ」
「あ、でる、でる、らぁぁぁぁ!!!」
こんなの、もう射精するしかない。
俺はあっという間に水谷さんのテクニックにより射精まで導かれるのだった。
ドピッドプッ♡♡ビュッッッ♡
「うんうん、射精きもちいーね。いっぱい出ちゃうね。あ、まだ出るの? 別にいいよ。いっぱい出して気持ちいいね」
「あ、はぁ……あっあっ」
脳内に快楽成分が大量分泌されて。
もう堪らなく気持ちがよくなる。
射精も10秒くらいずっとしてるし。水谷さんの白い太ももに黄ばんだ精液がドピドピ♡かけられてるし。こんなのって……最高すぎる。
しばらくして。射精が終わり。
あまりの気持ち良さに腰が砕けてその場にへたり込む。
水谷さんは馬鹿にすることなくクスクスと笑い。
「秋島君って気持ちよくなると腰が砕けちゃうんだね」
「は、ぁ……水谷、さん」
「可愛いから好きだよ。身体、洗ってあげるね」
水谷さんに身体を洗ってもらっている間。
行ったこともないのに「まるでソープランドのようだ」と馬鹿なことを考える俺だった。
※※※
「秋島君。ほら、隣おいで」
浴室での甘い時間があった後。
先にベッドに腰掛けている下着姿の水谷さんが猫撫で声でそう言う。目の前には部屋の薄暗い明かりに照らされた艶かしい姿の恋人がいて。近くにはコンドームが用意されている。えろ可愛い過ぎて辛抱堪らなくなる。
恐る恐る隣に座ると。
安心させる為かニコニコと微笑みかけてくれる水谷さんだ。どこか慣れている様子の彼女に少し複雑な気持ちになる。なんだか自分が情けないというか。
しかし、すぐそばで水谷さんを見て。
俺はハッとした。震えているのだ。彼女は。
俺の好きな人が目の前で緊張しているのだ。きっと精一杯余裕ぶっていたのだろう。いくら俺のためにエッチな技を勉強したといっても、怖いものは怖いのだ。
こんな時に。どうすればいいのか分からないけど。
けど、ひとつだけ分かることがある。それは……。
「水谷さん」
「ん?」
俺は水谷さんにこう許可を取る。
「触れても、いいかな」
「……っ」
「ダメ?」
「いいよ。いいに決まってる……触って欲しくて、ドキドキして欲しくて今日の為に頑張ったんだから」
「ありがとう。じゃあ、触るね」
まずは手に触れてみる。
やっぱり震えている。緊張しているのだ。
それなのに俺は自分の快楽を追求して……。
いや、今は反省している場合じゃない。
俺はゴクリと生唾を飲んで。恐る恐るこう口に出した。
「手……握ったまま、その……」
「いいよ。言って……?」
「うん。手、握ったまま……キス、していいかな」
「ぁ……」
「そしたら、お互いに怖いのも薄れるかなって」
「秋島君……」
「変な提案だったかな」
俺が不安そうに尋ねると。
すぐに首を横に振って。切なそうに水谷さんは言う。
「ううん、変なんかじゃないよ」
「そう、かな」
「したいな……秋島君と、手を繋ぎながら……キス」
「うん。いいよ。じゃあ……目、つぶって?」
水谷さんが静かに目を閉じる。
長いまつ毛が重ねられ。しっとりとした唇がわずかに突き出される。いつでもキスの準備ができているようだ。
だから俺は水谷さんの手を改めてギュッと握り。
指と指を絡ませながら……彼女にキスをした。
「ん……ちゅ、ぅ……」
卵の黄身に唇を寄せているかのように柔らかい唇の感触。プルプルしていて。じんわりと湿っぽくて。それでいて確かにそこに実在していると確信できる感覚もして。
顔を離すと。
水谷さんはふわふわと夢心地に包まれた表情をしていた。俺なんかでこんなに気持ちよくなってくれるなんて。嬉しい気持ちが湧いてくる。
「水谷さん」
「秋島、君……」
「もう一度、いいかな」
「いいよ。沢山……して?」
潤んだ瞳で、熱っぽい視線で。
そんな風に言われると。なんだか堪らない気持ちになる。もっとこの人を楽しませたい。もっとこの人に自分のことを知ってもらいたくなる。深く、激しく心を繋げて愛情を交換し合いたくなる。
「ちゅ、ぅ……んんっ。あきしま、くん」
先程よりも激しいキス。
お互いの指が縄のように絡む。
もっとお互いのことが知りたくて。
より近くで相手の体温を感じたくて。
唇同士の交尾も激しくなり、いつの間にか恋人繋ぎもするようになる。
「ちゅ、ん。ぁ……ふぁ、ちゅ……んんっ。あきしまくん」
「水谷さん……可愛いよ。本当に」
「ふぁ……」
「可愛い可愛い……本当に、可愛いよ」
本音からそう言うと。
水谷さんはイキナリ自身の股を隠し始めて悶えるのだ。
心配になって俺は彼女に言う。
「だ、大丈夫?! お腹痛い?」
「〜〜〜っ♡ はぁ、はぁ……」
「本当に大丈夫……? その、えっと」
「……ちゃった」
「え……?」
自分でもビックリしたように。
水谷さんは息荒らげにこう言った。
「イっちゃった……私」
「えっ、え?」
「私、秋島君に可愛いって言われただけで……イッちゃった……」
「……っ」
今まで散々キミが好きだの愛してるだのと言われたが。
正直、全て信用しているワケじゃなかった。
どこかで愛想を尽かしているんじゃないか。本当は少しだけ俺のダメなところに嫌気が差しているんじゃないかって。そう思っていた。
けど、本当に。本気でこの人は……俺のことを。
「可愛い」と一言言っただけで嘘偽りなくオーガズムに達してしまうくらい大好きでいてくれるんだと実感できた。
……ゴクリと、生唾を飲み込む。
どうやら彼女の愛は俺が思っているより何百倍も重たいようだ。
「水谷さん……あの」
「今……して?」
「えっ?」
水谷さんは鬼気迫る真剣な表情で。
俺に懇願をしてくる。
「今……エッチして。子宮がキミの赤ちゃん欲しがってる一番気持ちいい今……して欲しい」
「っ。水谷さん」
「ごめん、クールぶってたけど……ちょっともう限界。早く秋島君に愛して欲しくて頭がおかしくなりそうなんだ」
見ると。水谷さんは眉をひそめ。
息を荒らげて苦しそうにしていた。
そりゃあ、当たり前といえば当たり前なのか。
彼女は「可愛い」と言っただけで達してしまうくらい俺のことを好きでいてくれて。ちょっとヤンデレっぽくなるくらい重々しい愛情を背負っていて。本来この子はもっと普通の子だっただろうに。俺のことを好きになったばかりに。こんな風に暴走しているのだ。
……俺、何やってるんろう。
水谷さんは本気で俺のことを愛してくれているんだ。
だったら、俺も本気で誠心誠意向き合わなければならない。恥ずかしがっている場合なんかじゃないんだ。
「水谷さん」
「なに──ぁ。ちゅ、ぅ」
俺は水谷さんとキスをする。
さきほどとは違う。幼稚園児のオママゴトみたいなウブな口付けだけど。それでも水谷さんは驚いたようで目を丸くする。そんな彼女に俺はこう言うのだ。
「もう、我慢しなくていいからね」
「あきしま、くん」
「いいよ。いっぱい、俺のことを求めて? 全部、受け止めるから……」
「あきしまくん」
「だから今日……沢山、その」
「っ!!!」
水谷さんは俺のことを押し倒すと。
馬乗りになって。性欲に塗れた余裕なさげな顔になる。
そして、さきほどまでの猫撫で声から一転して。怒ったように声のトーンを落として。
「……犯す」
「ぁ……」
「犯すね。ごめんもう我慢できないから」
「……あ、あのっ。水谷さ──」
インフルエンザの時に具合が悪い中で服を脱ぐように。
水谷さんは乱暴に下着を脱ぎ捨てて。俺のボクサーパンツも破るように脱がせると。避妊具も着けずに挿入しようとする。俺は慌てて水谷さんから逃げようとする。
「ちょ、水谷さんっ。ゴム着けないとっ」
「大丈夫。安全日だから」
「いや、安全日だからってナマでしていいワケじゃ」
「するね」
「え、ちょ、っ….…ぐ、ぁぁ!」
ぐじゅぐじゅぐじゅ〜〜〜っ♡っと。
俺のチンコが腟道に割り入れられていく。
ハグした時よりも熱いマンコの体温。
これが本当の水谷さんの温もりなんだ。
そのままグジュッグジュッ♡っとスパイダー騎乗位をしながら激重セリフで愛を語る水谷さんだ。
「好き♡好き♡好きだから……♡はぁ、はぁ……あ”あ”〜♡ホンッット好き♡好きすぎる♡」
「ちょ、水谷さんっ。あっ。腰無くなるっ。砕けるっ♡」
「あ”あ”あ”〜〜〜♡マンコぎもじぃ♡秋島君のチンコすごいぎもじぃ〜〜〜♡♡あ”あ”あ”〜〜〜ッッ♡マンコ気持ちいい♡マンコ気持ちいい♡マンコ気持ちいいからぁ♡」
ダンッダンッダンッ♡っと。
モチモチ♡のデカ尻が勢いよく何度も振り下ろされる。
まるで原住民の求愛ダンスのように獣じみた動きで。唸るような荒々しい声で。俺の遺伝子を求めてくる水谷さんだ。
プラスしてデッカイおっぱいもだゆんだゆん♡と弾む。
あまりにも腰の動きが早すぎるので。乳首が残像になって焦げ茶色の線を残している。それでもお構い無しに水谷さんはスパイダー騎乗位でキンタマの中身全てを搾り取ってくるのである。
「あ”あ”〜〜〜ッッッ♡♡♡もうッ。好きィ♡好きすぎるぅぅ〜〜〜♡秋島君好きっ♡秋島君好きっ♡大好き♡♡あ”あ”あ”〜〜〜もぉぉぉぉぉ〜〜〜〜ホンッッット好きなんだけどッッッ♡♡♡」
「ヤバい出るっ。腟内なかに出しちゃうからっ。ちょ、一回ストップ水谷さんっ」
「いいよ腟内なかに出して?♡大丈夫だから♡全部子宮唇にドプドプ出して?♡出して出して出して♡♡♡好きだから♡ホンット好きだから♡♡♡キミの赤ちゃん欲しいからぁ♡お願い全部出して♡♡だして♡だして♡だして♡」
そんな風に男の性欲を煽るようなことを言われれば。
もう射精するしか選択肢が無くて。
腟内なかに出したらヤバいと思うのに。
全部全部投げ出してこの分厚くてグッショグショ♡に濡れているキツキツエロマンコに中出ししたら最高に気持ちいいんだろうなという本能に抗えなくて。
(ヤバいっ。もう出るっ。ヤバいヤバいっ)
あと一本線が切れたら射精してしまうだろう。
必死に我慢する。水谷さんの将来的にも中出しだけは絶対にダメだ。
そう思うのに……。
「……嬉しかったの」
「え……?」
「嬉しかったのッ! 私……ずっとイジメられてて……辛くて、苦しくて……もう全部諦めてて……そんな時、キミが助けてくれて……」
「っ……」
「もう好きになるしかなくて……好きになって欲しくて……だから地味で根暗だった自分を必死に変えて……だから、だからね……?」
水谷さんは飛びっきりの笑顔で。
俺にこう告げた。
「私を……助けてくれて、見つけてくれて……どうもありがとう……!」
「ッッッ!!!」
「ずっとずっと、好きでした……本当に、愛してます」
「……水谷、さん」
「イク♡イクイク♡♡♡マンコイクッッ!♡」
もう、理性なんて無くなっていた。
本能で、この子を守らなきゃと思って。
俺は「うああああ!!!!!!!」と猛獣のように咆哮しながらマンコからチンコを引っこ抜いて。
「ごめん水谷さん顔に全部ブッかけるねッッッ!!!」
「ふぇ……?」
中出しだけは避けないと。そう思って。
でも、この快楽をどうぶつけていいのか分からなくて。
馬鹿になった脳で考えた答えは、顔面ぶっかけだった。
だって俺、水谷さんの顔メッチャ好みだし。願わくば俺の精液でベトベトに汚したいと思っていたし。
俺は恥も外聞もなく。
水谷さんの端正な顔に大量射精したのだった。
ブピッ♡♡ ブニュルルルルゥゥ〜〜〜ッッッ♡♡♡
びゅぶぶぶッッッ♡♡ドピッ♡ドピッドピッ♡
びゅーーびゅーーーーびゅーーーーーーっっっ♡♡♡
「ん〜〜〜〜♡♡♡♡ あイク♡あイク♡あイクぅ♡♡」
「顔に全部かけるよ!!!!!!!!!」
水谷さんは座り込んで舌を出して連続イキして。
俺は俺でガニ股になって彼女の顔面に大量ぶっかけをしている。意味不明な状況の中。俺達は愛を喚き合う。
「好きぃ♡好き好きぃ♡あ”あ”あ”〜〜〜ッッ♡好きだよ秋島君ッッッ!!!♡♡♡あ”〜〜〜〜〜イグイグ♡まだイッッッグ♡♡」
「俺もすきだ水谷さんッッッ♡♡♡世界で一番可愛いよ!!!!!」
「あ”〜〜〜♡♡♡好きダメぇ♡好きダメなのぉ♡好き好きされるとイグイグだからダメなのぉ♡」
「好き好き」
「あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!♡♡♡♡♡♡イグッ♡イグッ♡イッッッッッッッッッッッッッッグゥゥゥゥゥゥゥ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
イクイク絶頂フェスティバル大感謝祭は朝まで続くのだった。
※※※
「ねぇ、秋島君」
「ん……? 何かな、水谷さん」
行為の後。窓辺から日が差し込み始める朝五時過ぎ。
軋むベッドの上にて。二人で恋人繋ぎをしたまま寝っ転がっていた時。ふと、水谷さんが言う。
「私……キミのこと、名前で呼びたいな」
「名前、か」
「うん……好こう君って……呼んでもいいかな?」
そんなの、決まっている。
俺は快く了承すると共に。
彼女にもまた名前で呼んであげるのだ。
「いいよ。鈴乃すずのちゃん」
「っ。またイキそう」
「イっていいよ。ほら、ギュってしてあげるから、胸に顔埋めながらイクイクしてるとこ見せて?」
「うん……」
鈴乃すずのちゃんはトテトテと俺に擦り寄り。
俺の胸にぎゅーーっと顔を埋めてくる。
背中をトントンと優しく撫でながら、彼女にしか効かない魔法の言葉を囁く俺だ。
「可愛い可愛い……世界一可愛いよ。鈴乃すずのちゃん」
「イク♡イク♡好こう君イク♡」
「はいはい、可愛いね」
俺の胸で安心しちゃって。
可愛いって言われただけでイクイクしてる俺の恋人。
……ああ、最高に可愛いな。
そう思う俺だった。
私を見つけてくれたありがとう、か。
なら、俺だってキミにこう返すよ。
(鈴乃すずのちゃん、俺を……見つけてくれてありがとうね……)
テーブルに置かれた、俺が鈴乃ちゃんにあげた清涼飲料水が。振動で小刻みにカタカタと揺れている。
ああ、今度はもっといいものを買ってあげよう。
何をあげたら喜んでくれるだろうか。
彼女の笑顔を想像しただけでニヤけが止まらない俺だった。
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