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同じクラスのミステリアスでクール系無口な現役グラドルの爆乳女子にパイズリ小説を書いてるのがバレた

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「なぁ、葉山」
「なに?」

授業の合間合間に挟まる休み時間。教室の喧騒に囲まれながら級友の綾部
あやべ
と駄弁っている最中、突然小声で尋ねてくるので怪訝に思っていると、彼は教室の最後列の席で粛然と足を組んでスマホを弄っている“一人の女子生徒”に視線を向けながら言った。

「やっぱさ。氷川ってエロいよな」

――『氷川麗奈
ひかわれいな
』。同じ2-Bのクラスメイトである。
クールな印象を与える切れ長の目元。サイドに編み込みの入った黒髪のショートカットヘア。彫刻芸術のごとく整った造形の顔立ち。まるで芸能人と見紛うその美貌は、傍を横切れば誰もが振り返り、見るものを恍惚とさせる“魔性”を孕んでいた。

「いいよな~。お前、アイツの隣の席だもんな」
「だからなんだよ」
「やっぱ盗み見とかしてんの?」
「盗み見? なにを?」
「胸だよ胸。おっぱい以外なにを見るってんだ」

彼女の最も危険な魅力。それは“たわわに育った巨乳”だ。街中でスカウトされ、現役グラビアアイドルとして活躍しているほどの豊満なバストの持ち主である彼女。クールでミステリアスな雰囲気とは裏腹に、歩くだけでふよふよと小さく揺れる爆乳とのギャップの破壊力は、男子はおろか女子たちにすら羨望の的となっている。

「で? どうなんだよ?」
「……そりゃ、当然見るに決まってんだろ」
「だよな~」
「でも相手は“あの”氷川だぜ? そうそう覗き見なんかできねぇよ」
「あぁ、たしかになぁ。アイツ、ちょっと怖いしなぁ」

そう言うと綾部は納得したように相槌を打った。氷川麗奈は容姿端麗ではあるものの、無口で無愛想で、常に仏頂面である。休み時間も一人、昼休みも一人、終業のチャイムが鳴ればそそくさと帰っていく。新学期は誰もが彼女のオーラにあてられて仲良くなろうと試みたが、いずれも冷たくあしらわれ、すっかり2-Bの中で浮いてしまっていた。以来、彼女が校内で誰かと会話している姿は一度も見ていない。

「でも俺さ。氷川のことはそんな嫌いじゃないよ。できればこの二年の間に、ちょっと仲良くなってみたい気はするぐらいには」
「マジか」
「マジ」

――嘘である。
この『葉山堅治
はやまけんじ
』は、氷川麗奈が“嫌いじゃない”どころじゃない。異性として好きである。
ミステリアスな雰囲気とか、ドストライクな容姿とか、近くに居ると良い匂いが漂ってくるところとか。彼女を好きになった理由は枚挙に暇がない。それに上手く説明はできないが、“生理的に惹かれている”レベルで氷川麗奈という個人に惚れていた。恋は理屈ではないとよく聞くが、本当に理屈で説明できるものじゃなかった。あえて例えるのなら、彼女の内側からにじみ出てくる一種の“フェロモン”のようなものにあてられているのかもしれない。

「――あの子だけはやめといた方がいいかもよ?」
「うお、急になんだよ?」

すると、どこからともなく綾部と同じ級友である相澤
あいざわ
が俺たちの会話に割り込んでくる。彼女は心なしか、氷川のことを侮蔑の眼差しで見ていた。それは同性に抱く嫉妬の感情とはまた別のものに思える。

「……先輩たちから聞いたんだけどさ」
「なになに?」
「氷川さん。ああ見えて相当アレっていうか……、色んな男を取っ替え引っ替えしてるらしいよ?」
「え? ガチで?」
「うん。他校の生徒とか、大学生とか、社会人とか、パパ活のおじさんとか。とにかく色んな男との関係を持ってるんだって」
「オエぇ……嘘だろオイ……。人は見かけに寄らないんだなぁ」

我が級友たちは揃いも揃って澄ました表情を浮かべる彼女を、苦虫を噛み潰すような顔で見るのだった。

「へぇ、そうなんだ」

だが、俺はそれを聞いて不思議となんとも思わなかった。そもそも、そんな不埒な噂話は随分前から知っていた。にも関わらず、俺の彼女への恋慕が腐り落ちることはなかった。こんなにも熱していて冷めてもいるのは、これが“報われない恋”だと理解しているからなのかもしれない。
氷川麗奈ほどの美少女ならば、引く手数多で選り取り見取りのはず。そんな彼女が、こんな凡庸な俺をわざわざ選ぶ理由がない。初めから自身に気持ちが向けられる期待を抱くことはなかった。達観しているからこそ、彼女が誰かのものになったところで何も感じないのかもしれない。今はただ、隣の席にいるというささやかな幸せがあれば、それで満足なのだ。

「なんかリアクション薄くね? 葉山」
「まぁ、そういう噂があるのは前々から知ってたからな」
「そうなの? なのに仲良くなりたいってなるんだ……。アンタどうかしてるんじゃない? 私だったら冷めちゃうけど」
「そうか? どんな裏があろうと氷川は氷川だろ」
「そういうもんかぁ?」
そんな風に彼らと他愛もない会話を繰り広げていると、噂をすればなんとやらとばかりに氷川が立ち上がり、何かを手に持って近づいてきた。

「げっ」
「な、なに?」

普段自分からクラスメイトに絡もうとしない氷川が迫ってくる異常事態に、一同恐れ慄く。異常を察知した周囲の生徒たちも、にわかにこちらの様子を伺っている。

「――これ」
「え? 俺の……スマホ?」

氷川はそれだけ言うとスマホを手渡してくる。間違いなく自分のだ。たしか机の上に置きっぱなしだったはずである。

「落ちてた」
「……落ちてた?」
「床に」
「あ、ああ! 床に落ちてたんだ。ありがとう?」
「どういたしまして」

そうして彼女は再び貝のように口を閉ざすと、踵を返して席に戻り、再び自分のスマホを触りはじめる。
冬の朝の空気の如く澄んだ声色が響き渡ったあとの静寂の余韻は、休み時間の終了を報せるチャイムが鳴るまで延々と流れるのだった。

現代国語の先生の話に耳を傾けるも、休み時間の出来事のせいで授業内容がまるで入ってこなかった。氷川がわざわざ床に落ちたスマホを拾って持ってきた。たったそれだけのことなのだが、俺にはある一抹の不安があった。
氷川に渡されたあの瞬間。最後に画面に表示されていたのは、自作の“エロ小説”の文面だったのだ。前の授業中の終わり際、なんとなく暇になったので、クラウドアプリに保管した自分の作品の出来を確認がてら読み返していたからだ。
俺はいちいちパスコードを打つのが面倒だという理由で画面ロックをしておらず、もしもスリープを解除して覗いたのなら、俺の“秘密の趣味”は十中八九彼女に知られたことになる。
俺はエロい小説を書くことを密かな楽しみにしている男だった。もともと本を読むのが好きで、転じて自分からなにかを書くようになっていった。で、盛んな年頃であるがゆえ、“そういう”ものも積極的に書いて“持て余した性欲の捌け口”にするのを楽しむようになったわけだが。最近は専ら、氷川麗奈を好きになった影響で、彼女をモデルにしたキャラをヒロインに据えた作品を執筆しているのである。
さらに言えば、最後に読んでいた=彼女に見られたと思しきシーンは例のごとく、件のヒロインに『パイズリ』をしてもらっている最中のものだった。

(え? あれ? わりとピンチじゃね? やべ……)

誰にも知られたくない“黒歴史”が他人にバレた時点でショックは相当に大きいが、なにより“氷川麗奈にだけは嫌われたくない”のが心情。『好きの反対は嫌いでなく無関心』などとよく言うが、俺は彼女に嫌悪感を抱かれるぐらいなら名前を覚えられていない方が幾分かマシだと考える。
俺はひたすら後悔した。横着してスマホにロックを掛けなかった迂闊な自分を呪った。

「……」

そんな風に煩悶としていると、机の右側がトントンと指で小突かれる。反射的に隣を見ると、渦中の人物が無言でこちらを見ていた。

「な、なんですか?」

間近で見る氷川のあまりにも美しい顔面。普段ならば顔が熱くなるところだが、今は背中から冷や汗が吹き出すばかりだ。
じっと意味深に見つめてくる彼女。そのとき俺は確信した。彼女は間違いなく見た……いや“読んだ”のだ。

(万事休す――)

俺は死刑宣告を受ける囚人のごとき心持ちで、彼女が次に紡ぐ言葉を待った。

「教科書」
「……え?」

しかし、彼女の口から出てきたのは想定外の単語。たしかに彼女の机の上には、授業でやっている現国の教科書が無かった。氷川は俺に「教科書忘れたから見せてくれ」と頼みこんでいるのだろう。

「……あ、ああ」

内心ほっと胸を撫で下ろす。机を寄せ合い、先生が進めている当該箇所までページをめくった。よくよく考えれば当然の帰結である。特別仲良くもない隣の席のクラスメイトが授業中に尋ねてくることなど、たかが知れていたのだ。どうやら俺の不安は杞憂のまま終わりそうだ。

「――パイズリ。好きなの?」
「ッ!?」

あまりの不意打ちに危うく声を出しそうになった。
再び背筋が凍りつく。心臓が跳ね上がり、全身から血の気が引いていく。氷川は間違いなく「パイズリ」と言った。この至近距離で聞き違えようもない。
俺は震える手で板書ノートのページを一枚破ってメモを書き記し、さり気なく彼女の机に手渡した。メモの内容はこうだ。

『読みました?』

氷川はメモに文字を書き足すと、こちらに返す。

『読んだよ』

――勘違いの余地はない。
彼女に、氷川麗奈に、俺の黒歴史を知られてしまった……。
背中に氷の塊を入れられたかのようにゾッとなり、額から嫌な汗が伝う。

(お、終わったぁ……!)

最も恐れていた事態に直面し、絶望の淵に立たされる。もし今すぐタイムリープできるのなら十数分前に遡り、離席する前にスマホを手元に回収したかった。これから待ち受けであろう仄暗い未来に打ちひしがれていると、彼女の方から新しいメモが渡される。

『あのパイズリしてる子、私に雰囲気似てる気がするんだけど。もしかして私がモデル?』
「――ヴッ!?」

絶大な威力を誇る言葉の弾丸に射抜かれ、今度こそ声が出てしまった。
幸いなことにそれほど大きな声量ではなく、周囲の誰にも気付かれていない。強いて言うなら、こちらをずっと注視している氷川には聴こえたぐらいだろうか。
俺は這々の体でペンを取り、ひたすら謝罪を綴った。

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

情けないほどヨレた字は、あたかも俺の自責の念が乗り移っているかのようだ。これで許してもらえるとは思ってはいないが、今はただ全力で平身低頭する他ない。
ところが、俺の決死の謝罪に対して返ってきたのは、思いもよらないものだった。

『今日の放課後駅前に来て。reirei55。これラインのIDね』

それから彼女とは一言も言葉を交わすことなく放課後まで過ごした。

(――結局、言われるがまま駅前に来てしまったわけだが)

駅の改札を出てすぐの大きな円形のロータリー。夕方に差し掛かった時間帯だけあって、帰宅する学生やサラリーマンで賑わっていた。トークアプリで彼女に「駅に着いた」とメッセージを送ると、「像の前にいる」とすぐさま返事が返ってくる。そうして駅前のモニュメント付近に目星をつけると、遠目に見ても分かるぐらい抜群なスタイルの美少女の姿を見つけた。彼女もこちらに気づいたのか、スマホに下ろしていた視線をこちらに向ける。

「来てくれたんだね」
「ま、まぁな」
「じゃ、行こっか」

すると、氷川は足早に歩き始めた。

「ちょ、ちょっと待てよ。せめて行き先ぐらい教えろっての」

俺は慌てて彼女の後を追いかける。

「なぁ、これからどこ行くんだよ」
「私の家」
「え!?」

彼女の家に行くということは、つまりは“そういうこと”を意味するはず。だが、あまりにも脈絡が無いため断定もできず、ただただ混乱するばかりだ。

「そもそもさ、一体何の用があって呼び出したんだよ。……まさか、俺を揺するつもりか!?」
「揺する? 何のこと?」
「え? 違うの?」
「なんで葉山くんを揺すらなきゃいけないの」
“葉山くん”と、初めて名前を呼ばれ、ドキリと胸が弾む。
「で、でもさ、ちゃんと訳を話してくれてもいいだろ?」
「ここじゃだめ。家の中じゃないと話せない内容だから」
「そうなのか?」
「うん」
「……わかった。後でちゃんと事情を説明してくれるなら、とりあえず素直に従っとくわ」
「ありがと」

彼女の感謝の言葉を最後に会話が途切れる。もともと沈黙は苦にならないタイプだから気にはしないし、ある程度想定はしていた。それに今まで一度も話したことがなかったのに比べれば、ほんの些細なことだろう。

「……」
「……」

街中をあの氷川麗奈と並んで歩いている。なんとも不思議な気分だ。
彼女のビジュアルはとにかく人目を引くため、こうしてただ歩くだけでも道行く人々からの視線を集める。それらは好奇や羨望が殆どだったが、中には美少女と並んでいる俺への嫉妬からくるものも僅かにあった。
当の氷川は、グラドル経験もあってか普段から人に見られるのに慣れているようで、それらをまるで意に介さずポーカーフェイスを貫いている。

「……なぁ、氷川」

沈黙に耐えきれなくなった……というより、これを期に彼女について知りたいことがある好奇心を抑えられなくなった俺は、堪らず口を開いていた。

「あんま気を悪くしないで欲しいんだけどさ」
「……」

返事が無く、本当に聞いているのかどうかも分からないが、構わず続ける。

「色んな男と関係を持ってるって噂……本当なのか?」
「うん。本当」

氷川麗奈は言い難いことを、事もなげに言ってのけた。
「マジかよ。じゃあ、他校の生徒とか、大学生とか、社会人とか、パパ活のおじさん……とか?」
「他の高校の棚橋くん。大学生の田宮さん。某商社に勤める峰さん。ジムトレーナーの小山さん。……あと、不動パパ」
「……」
「みんなマッチングアプリで出会った人たち。……パパは別口だけど」

驚愕のあまり一瞬言葉を失う。聞いているより一人多いではないか。どうやら実態は噂以上だったようだ。
「そうかぁ。氷川って意外と奔放な性格してるんだな」
「驚かないんだね」
「いやいや、十分驚いてるんだが……」
「もっとドン引きされると思ってた」
「そりゃまぁ……、あまり良い趣味だとは思ってないぞ? けどな、氷川が好きでやってることなら、俺が横からどうこう言う筋合いも無いだろ」
「……」

すると、彼女はむっつりと黙り込んでしまう。一見して普段と変わらない仏頂面だが、心なしかいつもより感情の色が宿っているような気がした。

「氷川?」
「……別に」
「?」
「別に……そこまで楽しいわけじゃない」
「え? それってどういう――」

そこまで言いかけたとき、彼女がふいに足を止める。

「着いたよ」

彼女は上を見上げながら、住宅街に立ち並ぶマンションのひとつを指差した。

「上がって」
「お、おじゃましまーす」

招き入れられるがまま氷川家にお邪魔する。彼女の部屋は1LDKのアパートの一室だ。整理整頓がよく行き届いており、新築さながらの清潔感である。しかしながら、部屋に置かれている物が極端に少なく、実際の面積よりも広々とした印象を与える。一人暮らしのミニマリストとも取れるし、あらゆるものに執着のない彼女の冷淡さがそのまま部屋に反映されているようにも思えた。

「一人暮らしなんだ」
「うん」
「大変じゃない?」
「そうでもない」
「そうか。えと、どこに座れば」

腰掛けようにも座布団どころか、サイドテーブルのひとつも見当たらない。あるのはフローリングの床とベッドだけ。普段、食事はどうしているのだろうか? という疑問が湧く。
「ベッドでいいよ」
「ベッドに!? いやいや、さすがにそれは気が引けるわ!」
「いいから」

彼女は妙に威圧的に真顔を向けてくる。俺はそれに気圧され、渋々ベッドの縁に腰を落ち着かせる。
スプリングが僅かに鳴る音とともに、尻がシーツに沈む。すると、普段から氷川の傍を通るたびに鼻孔をくすぐってきた匂いが俄
にわか
に香ってきた。行き過ぎた清潔感が支配する部屋で、ここだけが唯一彼女の生々しい痕跡を感じるものがあり、気分がソワソワする。

「お茶出そうか?」
「お構いなく」
「そう。……まぁ、そんなの無いんだけど。人呼んだことないし」
「ん? さっき言ってた五人の誰かしらは呼んだりしてないのか?」
「全員ただのセフレみたいなもんだから。住所知られたくない」
「そ、そうか……。つか、俺はいいのか? 別にそういう関係じゃねぇけどさ」
「いいよ。葉山くんだし」

彼女の言葉はどうとでも解釈できるが、真意はさておき。彼女とセックスをした他の男たちすら上がったことのない彼女の“巣”に、俺だけが足を踏み入れたという優越感がぞくりと背中をなぞった。

「……で、改めて聞くけどさ。俺に一体なんの用?」
「そうだね」

彼女は一言だけ言うと、不意に俺の正面に立った。

「?」

彼女が一体何をしようとしているのかさっぱり分からず困惑していると、突然制服を脱ぎはじめる。

「……え? ……は? ……はあ!?」

ただでさえこの状況を把握しきれていないというのに、氷川はさらに俺を混沌に陥れるようなことをしてくる。

「おま、なにしてんだよ!? バカ! やめろ!」

思わず罵倒が口から飛び出すが、彼女は素知らぬ顔でワイシャツのボタンを外すのを止めない。あまりに咄嗟のことでパニックになり、彼女の手を止めるとか今すぐ立ち上がって逃げるだとか、そんな当たり前の発想が産まれなかった。ベッドに腰掛けて身動きが取れぬまま、せめて彼女の恥ずかしい姿を見ないよう腕で視界を覆うしかなかった。

「ちゃんと見て」
「いや、その、いやいやいや! 無理だって!」
「いいから。……見て」
「……ッ! わ、わかったからっ!」

俺はおそるおそる腕を退け、閉じていた瞼を開き、目を皿にする。

「!」

視界に広がっていたのは、俺の思考を奪うほどに妖艶な光景だった。
氷川はブレザーとワイシャツを脱ぎ終え、上半身はブラジャー一枚のみとなっている。華奢ながらも引き締まった身体つき。これまで幾人もの男たちに穢されてきたとは到底思えないほど、どこまでも清らかに白くて、美しく透き通る肌。そして、胸元に豊かに実っている二つの肉メロンは、フリルをアクセントにしたネイビーカラーの大人っぽいブラジャーに支えられ、視線を吸い寄せる魅惑の谷間をつくっていた。

「……綺麗」

無意識にそう、言葉が漏れていた

「ありがと」
「おしゃれな……ブラジャーだね」
「私も気に入ってる」
心ここにあらずのまま会話が進む。彼女の女神のごとき麗しき女体から放たれる淫靡な色香が、脳の情報処理能力を著しく低下させる。

「葉山くん」
「はい」
「パイズリしてあげる」
「ぱいずり?」
「その代わり私のお願い聞いて」
「はい?」
「私とセックスしてくれたらパイズリしてあげる」
「へ?」

氷川が表情を変えず淡々と“とんでもないこと”を口走っている事実を、氷が溶けていくように遅々と理解が進む。
「ごめん」
「え」
「さっきから氷川が言ってること、なにひとつ理解できないんだけど」
「だから。パイズリさせてあげるから葉山くんとエッチしてみたいの」
「……マジか」

どうやら彼女は、俺にパイズリさせるのを条件に俺とセックスしたいらしい。交換条件がまるで成立していないというか、普通に考えたら俺がただ得をするだけだ。わざわざ自宅へと連れ込み、服まで脱いでいるところから冗談の類では無いし、そもそも氷川は冗談を言うようなタイプには見えない。発言のひとつひとつに表裏がないと考えるべきだ。
おそらく、俺が書いたエロ小説のパイズリシーンを読んだことに起因してそうだというのは辛うじて推察が及ぶものの、謎は深まるばかり。

「……で? してくれるの? してくれないの?」
「いや、あの、その」

混乱を極める頭でぐるぐると思考を巡らせていると、しびれを切らした氷川が選択を突きつけてくる。

「このまま私の誘い断るの? それともパイズリされてみたい?」

好きな異性からの夢のような申し出。自分にとってあまりに都合が良すぎる。なにか危険な罠なんじゃないだろうか? そう警戒心を抱くのは必定のはずだ。

「ねぇ」
「……わかっ……た」

だとしてもだ。例え罠だったとしても、この千載一遇のチャンスを棒に振ることはできなかった。
好きな女からの甘美な誘惑を断れるほどの理性を、好奇心に抗えるほどの意思の強さを持ち合わせてなどいなかった。
「お願い……します」

「……なぁ、全裸になる必要あったのか?」

氷川の誘惑に屈した俺は、言われるがまま身に着けていた衣類を脱いでベッドに座っていた。全裸になる過程を彼女に凝視され続けた羞恥と緊張で、陰茎はすっかり萎縮している。俺はせめてもの抵抗として、情けなく縮こまったブツを両手で覆い隠した。

「制服汚したくないでしょ? 下手したら精液飛び散ってくるから」
「生々しい言い方やめろ。つかクソみたいに恥ずかしいんだが……。こんな……氷川に……ガン見されて……さ……」
「これからもっと恥ずかしいことするんだよ?」
「……ッ! わ、わかってらぁ!」
「手をどかしてよ」
「え? あ、ああ」
「あと股も大きく開いて」
「なんでだよ」
「足が邪魔」
「……あ、そっか」

手を離すのを一瞬ためらったが、この状況はそもそも自分から望んだのものだ。ここまで来て今さら日和るのは筋が通らない。俺は覚悟を決めて股を大きく開き、下腹部を外気に晒した。
彼女は足が退いて空いたスペースに陣取るよう座り込むと、目の前にある萎びたブツを黙々と見つめる。

「……」
「な、なんだよ」
「おっきくして」
「いや、急に言われてもな……」
「じゃあ私がおっきくしてみる」

そういうが早し。氷川は陰茎を掴んで躊躇なく口に含んだ。

「……れるっ」
「ちょ!? なにを!?」
「ちゅぷ……ちゅ……れろろ」
「ぐっ……ああっ!」

氷川の口腔は唾液でべっとりと湿っていて、彼女の冷ややかな表情とは裏腹に火傷しそうなほど熱い。粘り気のある舌が亀頭に絡みつき、チロチロと舐め回してくる。

「ちゅぽ……れる……じゅるっ」
「あっ! ああっ!」

今まで味わったこともない鮮烈な快感。女の子に、ましてやあの氷川にモノを咥えられている。その事実が興奮を煽り立てた。

「れる……れろぉ……ちゅ……。ちゃんと勃ったね」
「はぁ……あ……」
短い口淫で俺のペニスは呆気なく勃起した。さっきより何倍もの大きさに膨らんでガチガチに張りつめ、彼女にその存在を誇示するよう反り返っている。

「……おっきいね」

彼女は俺の肉棒を注視しながら、素っ気なく感想を述べる。

「え? そうなのか?」
「うん。葉山くんのデカいよ」

今まで他人と比較したことがなかったから、“サイズが大きい”と評されるのは想像だにしなかった。

「俺のって……デカい……のか」

他でもない氷川麗奈に自分のモノを褒められた嬉しさがこみ上げる。心臓が早鐘を打ちはじめ、血液がよりペニスに集まっていく。

「長さは小山さんのぐらいあるかも」
「たしか……ジムトレーナーの」
「でも小山さんはキノコだけど葉山くんはツチノコだね」
「なんだそれ? 形の話?」
「うん。葉山くんの方が太くて逞しくて……かっこいいよ」
「……!」

彼女のその言葉で下半身にさらに血液が送り込まれていく。もうすっかり臨戦態勢を整えた肉棒は、期待のあまりピクピクと小刻みに痙攣していた。尿道を圧迫するような膨張感が苦しくも心地よい。

「な、なぁ氷川。そろそろ」
「うん。パイズリはじめるね」

さっきまで臆していた自分はどこへやら。逸る気持ちのまま彼女に奉仕を催促していた。俺のふてぶてしい要求に氷川は素直に応じ、横から掬いあげるように胸を持ち上げ、二つのメロンを両サイドから押さえつけるよう密着させる。その圧力でメロンがむにゅり♡と歪み、I字の深い谷間が形成された。

――今からあそこに俺のチ◯コが挟まれるんだ……。

性欲の捌け口にするほど妄想し、恋い焦がれた夢が、今まさに実現されようとしている。その興奮は瞬く間に俺の脳髄を支配し、気分を高揚させた。

「ローション無くてごめんね。アレがあった方が気持ちいいんだけど」
「そんぐらい良いって。それよか、さっき俺の洗ってないチ◯ポ舐めさせたのが気になるよ」
「慣れてるから。それに葉山くんの臭くないよ。好きな匂い」
「え?」
「興奮する」

本当なら喜ぶべきなのだろうが、複雑な心境だ。彼女がどんな変態発言をしたとしても、あまりにも堂々と表情を崩すことが無いので、むしろ聞かされる側の方が恥ずかしくなってしまう。
「……れー」

彼女はもごもごと口を動かすと、おそらくはローションの代用品にするつもりだろうか、谷間めがけて唾液を垂らした。乳に付着した光り輝く透明な粘液を、くちゅくちゅ♡と音を立てて両乳ですり合わせ、満遍なく谷間に塗り広げていった。

「挟むね」

氷川は感慨もなくそう言うと、反り勃つ肉棒に乳肉を被せ、そのまま谷間へと引きずり込んだ。

「……っ!」
「うわ、硬っ」

唾液で滑りのよくなった乳房の隙間をスムーズに突き進む。密着する乳肌がカリ首を引っかける甘い刺激に呻いている間にも、根本まで挿入されてしまった。

「あ。亀さん出てる。さすが」

彼女は深い谷間から僅かに顔を出す亀頭を見て、感心した風に言う。

「どう? 本物のパイズリ」
「……どうにかなりそう」
「痛くない?」
「だいじょうぶ」

彼女の問いかけに対し、語彙力に乏しい返答しか出てこない。“本物のパイズリ”は、かつて俺が創作で思い描いていたものより遥かに官能的だった。
ただ挟まれているだけでも発生する柔らかな圧迫感と、ぬくもりに満ちた乳肌が竿を覆いつくす。手で直接擦るときのような分かりやすい刺激は無いものの、まるで真綿で首を絞めるよう遠回しに確実に射精欲を掻き立ててくる。
何よりも、あの“氷川の爆乳”に“俺のペニス”が挟まれている絵面が、ただただ純粋にエロティックだった。水着姿の写真がグラビア雑誌に掲載され、全国の男子たちにこれでもかと注目された豊満な乳房が。これまで読者やクラスの男子たちのオカズにされてきたであろう“たわわに実った果実”が。今だけは俺を満足させるために使われ、俺だけがこの最高の景色を独占している。そんな優越感を存分に刺激される事実を噛みしめるだけで、ゾクゾクと背筋が震えるようだった。

「動かすよ」

彼女は俺の返事を待たずして、両手で乳房を抱えたまま上下にゆっくり動かしはじめた。

「く……あッ」
「……ん」

柔らかいおっぱいが肉棒に吸い付き、根本から亀頭、裏スジに至るまで愛撫していく。切ない快感が全身を駆け巡り、鈴口からカウパー液がドバドバと大量に染み出す。それらは体温と摩擦で乾いていく唾液に成り代わり、谷間にヌルヌルを塗布していった。

「我慢汁すご。そんなに気持ちいいんだ」
「ぐっ! やばい……っ。パイズリが……こんなに、気持ちいいなんてっ。知らなかった……っ」

ネイビーのブラに包まれ、一つでも俺の片手に収まりきらないほどのサイズの爆乳が、彼女の手の動きによってむにゅり♡と形を歪めながら、容赦なくペニスを扱き抜いてくる。なにより、ふかふかで柔らかい、夢心地な感触のおっぱいに奉仕されているこのシチュエーションそのものが官能を高めさせる。

「あ、ごめん、でそうっ」

腰の奥から沸きあがる甘い疼きが、下腹部をずくずくと熱くする。驚くほど呆気なく訪れた射精の予兆に困惑を覚えてしまう。

「もう射精

ちゃうんだ。いいよ。一回出しとこ」
「……ッ!」

ぶっきらぼうながら包容力のある氷川の言葉に導かれ、陰嚢から抽出された精液が一気に尿道を駆け登る。
「もっとパイズリを味わっていたかった」という名残り惜しさと、「はやく氷川のおっぱいで気持ちよく射精したい」という幸せな二律背反に苦しみながら、局部に集中する甘い痺れに身を任せた。

――びゅるうううっ♡ びゅるるううっ♡ びゅるーーーー♡

ペニスがどくどく♡と脈動し、ドロドロのザーメンが放出されていく。
射精の瞬間、噴出孔がうまく谷間に埋められたため、乳外
そと
に飛び散ることなく乳内射精
なかだし
される。

「……気持ちよさそ」

彼女は射精している最中も、谷間の中心部で亀頭を磨り潰すよう小さく上下に動かし続ける。まるで容赦のない搾精に、俺はただ情けなく腰を震わせながら、最後の一滴まで絞り出すしかなかった。

「あ。終わった?」
「はぁ、はぁ」
「……いっぱい射精

たね」

暴発といっても差し支えないほど速やかなオーガズムが終わり、いつもの倦怠感が訪れる。真っ白に染まった頭の中が徐々にクリアな思考を取り戻し、目の前の光景を改めて認識する。
豊満な谷間からは俺の白い欲望が溢れており、彼女の胸の曲線を伝ってI字の谷底に溜まりをつくっていった。自らの肉欲で氷川の爆乳を汚してしまった背徳感と達成感が、俺の睾丸に新鮮な精を補充し、蓄えさせていった。

「葉山くんって、イクとき“ああいう顔”になるんだね」
「……はぁ、そんな……おかしかったか?」
「ううん。かわいかった」
「……っ!」

ドクン、と心臓が力強く鳴るのがわかった。
好きな女子に“かわいい”などと言われては男の名折れ。本当なら悔しがるべきなのだが、どういうわけか胸の高まりが止まらない。

「かわいいって……、男に向かって……そんな」
「だって、葉山くんみたいな“かっこいい男子”がする情けないイキ顔。かわいいんだもん」
「っっ!?」

顔面が茹でダコみたいに赤くなっていくのが自分でも分かる。“かっこいい”と認められたのは素直に嬉しいが、同時に情けない顔をかわいいと馬鹿にされたようなものだから、羞恥心もひとしおだ。

「あのさ」
「……?」
「なんでまだ硬いままなの」
「なんでって……あれ?」

彼女の言うとおり、どういうわけか俺のペニスは射精を終えてもなお、萎える気配をみせていない。普段自慰するときには、抜けばすぐにでも萎んでいくものなのだが……

「……へぇ」
「な、なんだよ」

氷川は意味深に呟くと、背中に手を掛ける。すると、パチンと音が鳴り、緊張していたブラジャーの紐が緩まった。

「葉山くんには特別。生乳
ナマ
でしてあげる」
「……なっ!?」

氷川はそう言うと、呆気なくブラジャーを取り払い、包み隠されていない“ありのままの爆乳”が、だぷん♡と露になった。
普段の学校生活では絶対に拝めないどころか、雑誌のピンナップでも露出は水着ブラ止まりのはずの氷川の秘密が、今まさに眼前に曝け出されている。

「やば……」

初めて見る生乳に目が釘付けになる。
極上の柔らかさを十二分に伝える曲線美のシルエットの先には、その瑞々しさを象徴する桜色の乳首がぷっくりと鎮座しており、その根本から周囲に同じ淡い色の乳輪が半径数センチに渡って広がっている。
また、重力に従って潰れているものの完全には負けておらず、綺麗な型を保っており、彼女が呼吸するたび上下に動いていた。

「あ、谷間から逃げられた」

ブラジャーの締めつけが無くなって拘束が緩んだペニスが、ちゅぽん♡と弾き出されるように谷間から飛び出し、元の勃起角度を維持する。氷川は逃げだしたソレを掴み、再び爆乳の狭間に捕らえた。

「本当は一回で済ますつもりだったけど、もう一回してあげるね」
「ちょ、まって……まだ……落ち着いて――」
「待たない」

彼女は俺の制止を振り切り、再び乳房を上下に擦りはじめた。

「がっ! あッ!」

彼女の両手でぎゅむっ♡と圧縮されたおっぱいが、さっきよりも早いペースでペニスを揉みくちゃにしてくる。ただでさえ射精直後で敏感になった亀頭を、精液とカウパー液の混合粘液がねっとりと絡ませながら、モチモチの乳肌が摩擦していく。もはや苦しみにも似た強烈な快楽が下腹部を襲い、視界がチカチカと瞬いた。
「ん……、さっきより硬くない?」
「それはっ! 氷川のおっぱいが……エロすぎるからっ!」
「あー」

パイズリの気持ちよさも当然あるが、好きな女の子の生乳を見て興奮したのが大きかった。そのことを正直に白状すると、彼女は無表情のままどことなく嬉しげにする。

「葉山くんチョロいんだね」
「……えっ?」
「生おっぱい見せるだけでこんなガチ勃起。チョロい。素直でかわいい」
「くっ! そん……なっ!」

また彼女に“かわいい”と言われてしまった悔しさに反し、ペニスはさらに硬く太く屹立してしまう。氷川の爆乳がもたらす快楽をさらに深く味わおうと、本能的に下半身に力が籠もる。

「私ってさ」
「……急に……な、なに?」
「無理して返事しなくていいよ。独り言だから。黙ってパイズリで気持ちよくなってて」
「……っ」
俺は彼女がこれから語りはじめるであろう話に大人しく耳を傾けながら、乳奉仕の悦楽を享受する立場に甘んじることにした。

「――私ってさ。不感症なんだよね。夢中になれるものが見つからない」
「っ……んっ!」
「人付き合いに興味ない。化粧もお洒落も最低限。街でスカウトされてなんとなく始めたグラビアも、ギャラ目当ての惰性でやってるだけ」
「あっ、ぐぅっ」
「恋愛してみたら少しは変わるかなって思って、一年の頃イケメンの先輩と付き合ってみたけど。全然ときめかないし初めてのセックスも気持ちよくなかった」

普段を鑑みると異常に思えるほど饒舌になっていた氷川は、口に負けないぐらい両手も盛んに動かし続ける。一度目よりも強めの乳圧で竿を包み、丹念に捏ね回していく。

「ヤリ目でもいいから色んな人と関係を結んでみれば何か変わるかも。そう思ってマッチングアプリを始めてみた」
「くっ! ……あっ、んぅ!」
「マッチングした中からイイなって思った四人と、パパ活コミュニティで会った金持ちおじさん。みんな素敵な男性ばかりだと思う。だけど」
「ああ! あッ! がっ!」
「いくら関係を続けても。何回えっちしても。変わらない。誰も私を変えてくれない。ただの時間の無駄だった」
「っ……ぁっ!」
「私の心は相変わらず冷えたまま」

ヌルネバの混合液をぬちゃぬちゃ♡と擦る卑猥な水音を立てながら頻りに谷間を往復し、亀頭やカリ首といったペニスの弱いところを的確に圧をかけ、ピンポイントに刺激していく妙技を披露していく。
氷川の活発なパイズリによって、たわわの二つの肉メロンが縦長に伸びたり潰れたり、縮んだり膨らんだりする。自由に形状を変える爆乳からグロテスクな男性器が見え隠れする扇情的な光景を眺め、硬度がさらに増していく。

「でも」
「あ”っ! ぐぅッ!」
「葉山くんのエロ小説を読んだとき。止まっていた心がたしかに動いたの」

彼女はクールな表情のまま、内に秘めた熱い感情を発露させていく。畳み掛けるような『パイズリピストン』を繰り出していく。

「隣の席のなんとなくかっこいい葉山くん。私に歪んだ劣情を抱いている葉山くん」
「ぐうッ! それ、やば……ッ!」
「もしかしたら葉山くんなら」

氷川の涼やか声調の語りに紛れ、たぽったぽっ♡と柔らかい乳肉を俺の下腹部に叩きつける下品な音が部屋に響き渡る。

「私は正しかった。パイズリなんて膣を使わず楽に男を悦ばせる手段。めんどくさいときの性欲処理手段だった。……でも」
「うッ、うああッ!」
「私、今“愉しい”って感じてる。葉山くんが私のパイズリで感じてる顔見るだけで……すごく愉しいの」

その言葉とともに氷川は上半身を前のめりに倒し、顔と顔の距離を一気に縮めた。

「……」
「ちょあ、やめっ、そんな、無言でじっと……みないでぇっ!」

口では拒絶するも、人形のような美貌に視線を奪われる。長い睫毛に覆われた切れ長の瞳が、上目遣いで熱心に見つめてきて、俺の顔だけを映している。

「……」
「ぁああッ! んぅッ! あッッ!」

俺がどれだけ苦しげに喘いでも、彼女は一切手を緩めることはない。むしろ、たわわを抱えた両手の動きはさらに忙しなくなり、パイズリピストンはより一層速まっていく。
また両側から力を込め、万力のごとく乳房を縦に潰すことで、瑞々しい乳肌が締めつけるような乳圧がペニスを襲った。これまで以上に苛烈な快楽により、彼女の乳房のなかでペニスがビクビク♡と痙攣する。急造された二発目のザーメンが睾丸からギュルギュル♡とせり上がり、絶頂へのカウントダウンが迫った。
「むり! むりっ!! でるっ!!」
「うん。射精

して。葉山くんが気持ちよくイクとこ……見ててあげるから」

彼女はそう言うとトドメとばかりに、両手で抱えた“たわわ”を俺の下腹部へ叩きつけまくった。
商売道具といっても差し支えない魅惑の爆乳が乱暴に揺さぶられるのも気にせず、リズミカルなパイズリピストン音を淫靡に鳴らし続ける。柔らかくて重い衝撃の波を断続的に尻で受け止めながら、絶え間なくペニスを愛撫する乳肌が、ぞりぃ♡とカリ首の段差を摺りあげた瞬間、甘い痺れが瞬く間に伝搬する。
彼女にずっと見つめられたまま視界が白く染まり、先端から迸る幸せな解放感に全てを委ねるのだった。

――びゅるうううううう♡ びゅびゅうううううう♡ びゅるぶうううううう♡

「お、射精

た」

腰がガクンと落ちる感覚とともに、二発目の欲望を吐き出した。
だが、彼女は射精中だからといって手加減せず、ラストスパートを維持したままパイズリピストンし続ける。オナニーでは決して味わえない、オーガズムの真っ最中でも相手から押し付けられる快楽責め。全身がガクガクと震え、涙を流し、白目を剥き、意識が飛びかける。

「葉山くん。さっきよりもずっと気持ちよさそうな顔してる。エロすぎ」

平坦なトーンの声に愉悦の感情を含有させていた氷川は、だらしないイキ顔を晒す俺を終始見つめる。
一回目と違って塞がれていない鈴口からは、止め処なく白濁液が乳外
そと
に噴射されまくり、俺のお腹や胸元に生暖かい感触となって飛沫していくのだった。

「――はぁ……はぁはぁ……はぁ」
「葉山くんすごいベトベト。こっちにもちょっと飛び散ったし。制服脱いで正解だったね」

ペニスの脈動が段々と鎮まって白濁の放出が収まり、それに合わせて彼女のパイズリの動きも止まる。すると、性的興奮で誤魔化されていた連続射精の疲れがどっと押し寄せた。酸欠寸前になるほど呼吸を乱し、落ち着くまでにたっぷり時間を使った。

「お疲れ様」
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫?」
「だい……じょうぶ……うん……」
「そう。よかった」

ようやく息が整ったところで、俺の痴態を眺めていた彼女がティッシュ箱を持ち出して中身を取り出し、俺の身体に付着した精液を拭ってくれた。

「わりぃ、サンキュー」
「ちゃんとおっぱいの中に出させるつもりだったんだけどね。興が乗っちゃった。ごめん」
「いいよ。つかムチャクチャ気持ちよかったし……」
「そっか。水飲む?」
「ありがとう。助かる」

氷川はすっと立ち上がって台所へ向かい、コップを探しはじめる。
俺は鉛のように重くなった身体をベッドに横たえ、賢者タイムの訪れで冷静になった思考を巡らせた。
(結局のところ、「何にでも無関心な自分が夢中になれるものを追い求めている」というのが氷川の動機ってこと……だよな)

普段のあの冷ややかな態度は、退屈な人生観からくる無気力の現れだったのかもしれない。そんななか彼女は、俺のエロ小説を興味本位で読んでしまい、偶然にも琴線に触れた。結果、俺自身に興味が湧いたので誘惑してみた。というのが事の全容なのだろう。
彼女の奇妙なアプローチにあやかるのは気が引けなくもない。だが、たとえ歪な形だったとしても。こうして氷川麗奈と親密になり、一時的にでも俺が独占できるのであれば、それも吝かではなかった。

「おまたせ。はい」
「ああ、ありがとう」

俺は上体を起こして渡されたコップを受け取り、すぐさま中身を口に流し込む。塩素の味のする水道水が乾いた喉を潤し、活力が漲っていく気がした。

「――“約束”は覚えてるよね?」
「お、おう……」

約束。そう、俺はパイズリをしてもらう代わりにセックスをするという“不平等条約”を結んだのだ。その遂行の意思を如実に示すがごとく、さっきまでは無かった“水色の小さな正四角形”が手に握られていた。それが『コンドーム』入りの袋なのは童貞の俺にでも分かる。彼女はそれを無造作にベッドに投げ、おもむろにスカートを脱ぎはじめた。

「……」
「……」

沈黙のさなか、スカートとパンツを脱ぐ布切れ音だけが木霊する。俺は裸になっていく彼女をただ眺めていた。

「ふぅ。……ゴムの着け方わかる?」

そうして、最後の砦となったショーツを脱ぎ捨てたことで、氷川は産まれたままの姿となる。俺は部屋に差し込んだ夕日の橙色に照らされる陶磁器の肌に目を奪われた。
華奢な肩と細い腕、引き締まった腰回り、曲線的なラインを描いて膨らんだ肉付きのいい尻と太腿、身長の半分を占めるしなやかな足。そして、今しがた俺のブツを扱き抜いたばかりの豊満な乳房。グラビアアイドルとして活躍するに相応しい抜群のプロポーションである。
あまつさえ綺麗な淡色の乳首も乳輪も惜しげもなく晒し、局部の整えられた黒い茂みにある“女の子の一番大事なところ”すら見せているというのに。彼女は少しも恥ずかしがるどころか、それがさも当然とばかりに威風堂々と立っていたのが、その神秘的な美しさをより引き立てていた。
「どうしたの?」
「いや……氷川の裸に見惚れてて」
「……」
俺の奇を衒わない言葉に、氷川は黙り込んだまま自分の体をまじまじと見る。次に、彼女の裸を見た興奮によってバキバキに復活した俺の勃起へと視線を移した。

「あと、さすがにコンドームは初めて触ります……」
「……初めてなんだ」
「ウス」

彼女は「わかった」と短く言うと、手慣れた様子で袋を開封し、折り畳まったピンク色のゴムの輪っかをを取り出す。

「こうやるんだよ」

そう言って先端に輪っかを被せると、そのままグイーっと根本まで引っ張っていく。すると、竿全体が半透明のピンクの膜に覆いつくされてしまった。

「ね」
「……勉強になります」
「これで準備できた」

そうすると、彼女は俺の上に……ではなく。シーツの上に仰向けに寝そべった。

「ん」
「……あれ?」
「どうしたの?」
「いや、その」

てっきり押し倒されるかと思った。こちらは童貞で相手は経験豊富。俺の性知識はネットの情報とエロ漫画に依存しているため、そういう時はリードされるのが定石だと思っていたのだ。

「私、騎乗位好きじゃないから」
「そうなのか?」
「よく頼まれたけど、自分から動くの疲れるし面倒くさい」
「さ、さいですか……」

内心、氷川に押し倒されて童貞を奪われるのを期待していただけに、彼女の夢の無い発言にちょっぴりショックを受ける俺だった。

「それに葉山くんの凶悪だから。奥までガンガンに犯されてみたい」
「……っ!」
「ワンチャン中イキできるかもしれないし」

刹那。ミステリアスでクールなメッキが剥がれ、俺のチ◯ポでよがる氷川のあられもない姿が脳裏をよぎる。たしかに押し倒されて童貞喪失も十分魅力的だが、自尊心を満たしながら彼女を喰らい尽くすのもまた“最高の初体験”になるだろう。

「……よし」

待ち続けている彼女の元に這い寄ると、氷川は俺を迎え入れるよう大きく開脚させた。
俺はその開いた空間に腰を下ろし、天を衝くようギンギンに反り勃つペニスを掴み、その矛先の狙いを割れ目に定めた。

「えと……」
「ここだよ」

すると、彼女は二本指で秘裂をくぱぁ♡と開いた。
「ぅわ、エロ」

欲望に忠実な感想が無意識に口から漏れた。生い茂る陰毛に咲くグロテスクで艶やかなな一輪の肉の花。巻き貝の裏側のような形状の中に、充血した複雑な構造体が幾つも凝縮されている。その中には透明な液体が樹液のようにしどどに溢れ、ひくひく♡と動く妖しい孔があった。彼女はその孔を指の位置で示しており、また口数の少ない氷川の「早くここに挿れて」というメッセージだった。

「ここ……だな」

俺はその入口に先端をあてがうと、ぬる♡と生暖かいヌメリがゴム越しに亀頭を触り、ゾクリと背筋を震わせた。

「つか、すぐ挿れてよかったのか? もう少し慣らしてからとか……」
「見れば分かるでしょ。もう十分濡れてるから」
「……そうか」
「いいから」
「は、はい」

苛立ちを感じ取れる口調に促され、挿入角度の調整に入る。たしかに彼女の言うとおり、秘所は最初から潤っていた。そんなことにも気付けない己の圧倒的な経験値不足に不甲斐なさを覚える。

「これでどうだ?」
「オッケー」
「よ、よし!」

慎重に角度を見極め、氷川からのゴーサインを受け取った俺は、いよいよ入り口付近まで先端をのめり込ませ、準備を終えた。
「……挿れるぞ」
「きて」

――ここからあと一歩踏み出せば、童貞を捨てられる。
緊張と期待で心臓が早鐘を打った。
永遠にも思える一瞬の逡巡ののち、俺は意を決して腰を前に押した。

「……くっ!」
「んぅ……葉山くんの……入って……」

本当に通過できるのか心配になるほど狭い肉穴が、驚くほど拡張し滑らかに突き進んでいく。氷川は俺の侵入に、苦悶とも悦びとも取れる声を漏らした。

「……大丈夫か?」
「大丈夫。そのまま奥まで」
「わかった」

一旦止めて念入りに確認しつつ、挿入を再開させる。

「っ! ……ぜんぶ……入ったあ」

俺と彼女の腰と腰が密着して結合し、ブツが彼女の秘裂にすべて呑み込まれた。ゴム一枚を隔ててるとはいえ、根本から先まで熱くてヌルヌルとした膣内の複雑な襞々の感触に包まれ、とてつもない愉悦感を憶える。初めて体験する“女の味”に早くも酔いしれてしまう。

「あっ……すごっ……一番奥まで届いちゃった……」

何もかもが未知の感覚でイマイチ分かりにくいものの、どうやら俺のペニスの先端が彼女の子宮口まで到達しているらしい。嬉々とした達成感がゾクゾクと背筋を奔る。
「……なんか、さらに硬くなってるんだけど」
「そ、そりゃ……、好きな子と、一つになれたんだから……、興奮するなんてもんじゃないっていうかさ……」
「え?」
「――あ」

俺の間抜けな声を最後に静寂が訪れる。
――しまった。
童貞を捨てた興奮から頭がふわふわして、つい余計な本音を零してしまった。よりによって挿入直後という、ムードもへったくれもない最悪のタイミングでの告白。今から訂正しようにも後の祭りだ。
「そっか。私のこと好きなんだ」
「あ、ああ、そのだなっ。言葉のアヤっていうかその」
「いいよ。別に」
「へ?」
「葉山くん嫌いじゃないし。このまま付き合っちゃおっか」
「……マジ?」
「マジ」

放課後のファミレスで駄弁るレベルの軽いやり取りで告白が成功しまい、思考が一瞬ストップする。まさか彼女がこんな簡単に俺を選んでくれるだなんて、夢にも思わなかった。

「不束者ですが……よろしく……」
「何それ」

我ながら頓珍漢なことを言ったと思うが、真顔で返されるのは流石に凹む。

「ていうか早く続き」
「あ、ああ……」

あまりにも……あまりにも呆気なさ過ぎる。こんな何の感慨も湧かない告白イベントがあっていいのだろうか? もっとこう、エモい感じになるものではないだろうか?
(……けど、セックスの本懐とは即ち……“愛の営み”!)

そう。せめて彼女との交わりを通じて“氷川麗奈と恋仲になった充足感”を噛み締められればそれでいいのだ。
俺は意気揚々と彼女の両膝を手で掴んで固定し、腰を前後に動かしはじめた。

「……っ! ぐう!」
「あ……んっ……」

ゆっくりと慎重に、竿の半分が露出するまで引いてから再び奥まで挿入すると、ゴム越しに膣壁が舐めしゃぶるよう絡みついてなぞり、ゾクッと腰が震える。
奥を優しく突くたび、氷川は小さく声を漏らす。今まで感情の興りが乏しかっただけに、その反応のよさに興奮する。

「氷川も……感じてる……のか?」
「気持ちいいよ。葉山くんの、んぅ……硬くて太くて、あっ、挿入感エグい、から。ナマじゃないのに、あ、形が分かっ……ちゃうぐらい」
「そう、なのか……っ」

あの氷川が。何があっても心を動かさない氷の女王が。俺の一突きで喘ぎ、感じて、感情を揺さぶってくれる。嬉しさと優越感で胸が一杯になる。
俺はもう堪らなくなって、腰の動きを早めた。

「うっ! ぐうっ!」
「あっ……あ……んっ」

より早いテンポに、より深いストロークに。ゆっくりとした抽挿から、リズミカルなピストンへ緩やかに移行していく。
肌と肌が打ち合う乾いた音と、粘液を肉棒で撹拌するネバついた水音が部屋に反響し、彼女の呼吸も大きくなっていく。
AVで聴くような甘い声……には程遠い、フラットで無機質な喘ぎ。それでも、氷川が俺で気持ちよくなってくれているという事実に変わりなく、こちらの情欲を煽った。

「ふっ……ふぅっ……うあっ」
「あっ、あっ……ん……ふあ……」

ペニスを内包した蜜壺の締めつけが段々と強まり、射精欲がみるみる増していくなか、ふと眼下に広がる絶景を見下ろす。
氷川の“女神の身体”が、俺の手でベッドに組み伏せられている。だらんと垂らした両腕、その先の五本指はシワができるぐらいシーツを強く掴んでいる。顔つきは相変わらずクールな無表情のままだが、その肌の白さが仇となって頬の僅かな紅潮を隠せない。また、たわわな肉メロンは自重によって両側に広がるよう潰れていた。それらは俺がピストン運動で彼女下半身の奥を貫くたび、ぷるんっ♡と大きく揺れ、先端の丸い薄紅色を上下左右にダイナミックに動かす。その扇情的すぎる光景を目の当たりにし、凄まじい愉悦感をおぼえた。

「ぐうっ! あぁっ! はぁっ!」
「っ……んっ、……んうっ、……あんっ」

気づけば俺は、遮二無二に腰を振っていた。ペニスを女芯に叩きつけ、思うまま快楽を貪るようなピストンの応酬。
テクニックも何もない、自分だけが快感を求めるセックスだった。未知の気持ちよさに夢中になり、何もかもいっぱいいっぱいだった。彼女のことも気持ちよくしてあげようとかいう余裕は生まれなかった。

「あっっ……あんっ……んっ……あああっ」

それでも。そんな若さにかまけた荒々しい抽挿でも。彼女は声を荒らげて気持ちよくなってくれている。その証拠に、膣襞の絡みつきは挿入直後よりもずっと強く、貪欲にペニスを絞り、吐精を誘っていた。それがたまらなく嬉しくて、気持ちよくて、俺はさらに腰使いを激しくさせていった。

「ぐっ! ぐうっ! ……氷川……氷川っ」

好きな女の子とひとつになって。一緒に気持ちよくなって。感情の昂りが収まらず、ふいに彼女の名を呼んでいた。
「……氷川っ! 好きだ……好きだっ! 氷川っ!」
「んんっ、あっ……あ、あ……、んぅぅ」

思いの丈を吐き出し、その熱い気持ちを腰に乗せて彼女にぶつける。下半身と下半身が深く接合して打ち上げると、彼女の体がベッドごと大きく震え、ベッドのスプリングが軋む音を頻りに鳴らした。
「名前……っ、名前で……! んぅっ」
「……っ! れい……な……っ! ……麗奈っ! 麗奈っ!」
「――♡♡ あっ♡ あーー♡ あんっ♡ あああ♡」

俺は彼女にせがまれ、名前呼びに変えた。すると、これまで変化のなかった氷川の声色が甘く跳ねはじめる。同時に膣内の締まりが一層キツくなり、竿全体が複雑に蠢く襞の凹凸によって愛撫される感触に襲われた。

「はぁ……はぁっ! 麗奈っ……麗奈っ!」
「んーー♡ んっ、あっ、あっ……ああん♡」

どんどん強く押し寄せてくる官能を前に、俺はいよいよ限界が近いことを悟る。コンドーム装着済みの安心感に従い、上半身を押し倒して彼女に覆い被さると、獣欲の赴くまま腰を振りたくった。

「麗奈……麗奈……麗奈っ!」
「あっ♡ あっ♡ んんっ♡ あんっ♡ あーーっ♡」

より間近に響く、涼やかな声を甘く染めた吐息。彼女の身体と密着したことで、上気した汗と雌の匂いが一気に鼻孔に充満する。
結合部からは大量に溢れた愛液をじゅぽじゅぽ♡と掻き混ぜる水音が忙しなく聞こえ、ぱんぱん♡と原始的な性交音も鳴らしていく。
それらセックスの重奏が鼓膜から脳髄に浸潤し、俺の熱情を最高潮まで高めた。

「麗奈……っ! もう……射精

る……っ!」
「っ♡ いやっ♡ まだ我慢……して! んっ♡ もう……ちょっと……なのにっ!」

氷川はそう言って切なげに訴える。だが、睾丸から補填された精液が既に尿道を昇り始めているというこの瀬戸際。今日まで童貞だった俺にはどうしようもない。

「はぁっ! はぁ……うううっ!」
「おね……がいっ♡」

どうにか力を込めて踏ん張るが、一度はじまった衝動はもう堰き止められない。
すると、氷川は半ば自棄を起こし、だらしなく開けていた両足を背中に絡ませ、両腕と併せてガッチリ俺の身体をホールドさせた。

「……ッ!? あッ!!」

ゴムの防壁があるとはいえ、それは“膣内射精
なかだし
を媚びる行為”に他ならない。それを理解した瞬間、吐精の引き金が引かれた。
腰の奥からこみ上げる熱い奔流が竿の先端から迸る。俺は本能的に最大限の膂力を発揮し、膣の一番奥にペニスを叩きつけ、精を解き放った。
――[びゅるうううううううううう♡ びゅるるるううううううう♡ びゅびゅううううううう♡]

腰をガクガクと痙攣させながら、彼女の下半身の深いところで射精していく。
避妊状態で叶わぬと分かっていても、牡の本能がそうさせていた。

「……あぁっ」

俺が全身を硬直させた瞬間に全てを悟ったらしい氷川は、残念そうな声を漏らす。初体験のオーガズムに夢中になっていたその時の俺はそれに気付かなかった。

「……はぁっ、はぁっ……はぁ」

本日三度目の射精が終わる。ずっと続いていた昂りが途絶えた途端、これまでのツケの精算とばかりに重い風邪の症状のような気怠さに見舞われる。四肢もろくに動かせず、力なく氷川の柔らかい身体に寄っかかり、肩で息をしていた。

「限界?」
「はぁ、はぁ。……かも」
「そう……」

半ば放心状態で、意識も視界もぼやける。俺は重い唇をなんとか動かした。
「……すまん。もう少し……だったんだよ……な」
「いいよ。初めてにしては上出来。三発連続はすごいって」
「そう……か……」
「葉山くんのおかげで、今まで感じたことない充足感を得られた。ありがとう」
「どういたしまし……て」

なにはともあれ。恋人を満足させる結果になったのなら、それで上々だ。俺は回復しつつある四肢を動かし、すっかり柔らかくなったブツを彼女の秘裂からずる、と抜き取る。
陰茎を包むピンクのゴムの先端に白い提灯がぶら下がっていた。もし……この中身の全てが彼女の膣内に注がれていれば……。そう惜しむ気持ちが無かったといえば嘘になる。

「すごい量」
「ああ……」

俺はそのまま仰向けになって倒れた。氷川の部屋の天井が視界いっぱい広がる。
(――あの氷川と……エッチしたんだな……。ついでに恋人にもなって……。幸せ……だな……)

そんな感慨に耽りながら、疲労困憊の身体をシーツに預けていると、起き上がった彼女が話しかけてくる。

「ゴムつけっぱなし」
「ああ……」
「グロッキーって感じだね。しょうがないな」

氷川はやれやれとばかりに俺の股間の前にしゃがみ込んだ。装着されていたゴムを外し、中身がこぼれないようキツく縛り上げ、ゴミ箱に投げ入れる。

「ついでに“ココ”も綺麗にしとく」
「え……?」

すると、氷川は萎びたツチノコに口を近づけ、白濁でデロデロに汚れたソレを躊躇なく口の中に含んだ。

「……れろ……ちゅぱ……ちゅぷ」
「――っ! あっ!」

ぼんやりとした微睡みから覚醒するほどの刺激が下半身に流れた。
熱いヌメリを帯びた舌肉が、竿、皮、亀頭を満遍なく舐め回し、精液の吸い取っていく。

「……ちゅるる……ちゅっ……れろ~~」
「あっ! ああ!」

――お掃除フェラ。女の子の口で事後処理をさせるあの背徳的なプレイを、まさか自分が体験するとは露ほども思わず、沈んでいた興奮が蘇った。
「ちゅるぱ……ちゅぱ……れる……。――えっ」
「……ど、どうかしたか?」
「なんか……、またおっきくなってるんだけど」

彼女に言われて初めて、俺のブツが再び勃起していることに気付かされる。この短期間で三回の射精を経た後とは到底思えないぐらいギンギンに反っているのだ。

「……マジかよ。わりぃ。お掃除フェラで興奮しちまったみたいだわ……これ」
「……」

どうも“コイツ”は、氷川麗奈が絡むと節操が無くなってしまうらしい。行為も節目よく終わったというのに、最後まで駄々をこねる子供のような我儘ぶりには、もはや呆れるしかない。

「……」

ところが、氷川は俺と違い“ある考え”に至っていた。
彼女は熱に浮かされたように勃起ペニスを眺めていると、突然鷲掴みにする。

「氷川……?」

彼女は無言で俺の上に跨り、秘裂に先端をあてがうと、迷うことなく腰を降ろした。

「お前!? なにを――ぐうっ!?」

有無を言わさず肉棒が挿入され、容赦なく呑み込まれていく。
ゴムを介さない、熱くてヌルヌルとした“生の膣”の感触が襲う。痺れるような甘美な悦楽が襲い、身体的にも精神的にも抗えない。

「あ♡ すごい……葉山くんの生チ◯ポ……」

完全復活した俺のペニスが、彼女の蜜壺の中に根本まで埋まる。氷川はコンドームに包まれていない“生の男性器”が腟内を満たす感触に歓喜する。

「氷川……っ! 二回戦目すんのはいいけど! コンドームは……どうしたんだよっ!」
「もう持ち合わせが無いんだよ」
「だったら……手に入れてからでもいいだろっ! それこそ明日とかっ! とにかく避妊しねぇのはヤベェって!?」

ゴムとは段違いの生挿入の気持ちよさに感動しているのは事実。しかし、それとは別に焦燥感もある。万が一にでも“間違い”があれば、取り返しのつかない事態を招く。ましてや俺たちはまだ高校二年生。責任を取れるような年齢と立場ではない。一時の感情に流されて、一生の瑕を負うのだけはどうしても避けなければならない。

「なぁ氷川! 考え直せって! 妊娠したら困るだろ!」
「……」

いくら下半身が元気でも、この三連戦で俺の体力は限界だった。今の俺は氷川に簡単に組み敷かれるほど弱っている。それに、ナマの誘惑に耐えられる心の余力も無い。どうにかして、凶行に及んでいる彼女を説得するしか道は無かった。
しかし、氷川は内から溢れんばかりの熱い欲望とは裏腹に、冷酷無比な表情をつくる。

「――あのさ。私が気持ちよくなるまで、我慢すればいいだけの話でしょ」
「っ!?」

射抜くような冷たい視線。恐怖に凍りつき、何も言えなくなる。

「こんなに気持ちいいなら、はじめからゴム無しですればよかった。もっと早く葉山くんに逢いたかった。こんなにも私を熱く焦がすものが、ずっと私の近くに居たのに。なんで気づかなかった。どうして私にアプローチしてくれなかった。私のことずっと好きだったくせに」
「氷川……?」
「この意気地なし。甲斐性なし。臆病者。卑怯者。クズ。……ムカつくムカつくムカつくムカつく」

語気は平坦で冷たいまま、混濁した感情を怒涛に浴びせてくる。その豹変ぶりに圧倒されるしかない。

「ねぇ……葉山くん」

そうして、あらかた吐き出して落ち着いたらしい氷川は、息を荒げ、瞳を熱く潤ませた。

「――責任とってよ」

彼女のその一言をトリガーに、激しいピストン運動がはじまった。

「……ぐっ!? あっ! ああ!」
「あっ♡ あっ♡ んっ♡ 葉山くんの……っ♡ ゴム無しチ◯ポ……♡ 形がくっきり……わかるっ♡ 奥……っ♡ ゴリゴリっ♡ 硬いの、きもちっ♡ ああっ♡」

氷川は俺に跨ったまま胸板に手をつき、黒髪のショートヘアを振り乱しながら情熱的に腰を振るう。俺のペニスが膣奥を突くたびに彼女は甘やかに喘ぎ、さらなる貪欲な抽挿へ繋がる。
彼女の膣から伝わる襞々の熱いヌメリの感触は、コンドーム装着時とは比較にならないほど鮮明だった。摩擦も締めつけも段違いな“本物の性交”の快楽に、意識を持っていかれそうになる。

「氷川っ! おまえっ! さっき騎乗位……好きじゃないって……っ!?」
「んっ♡ あ♡ 今……好きになったからっ♡ ふぁ♡」
「疲れるし面倒くさい、ってっ!」
「うるさい……っ♡」

氷川はそう言うとピストンを止め、緩やかに前後左右にグラインドさせる動きに切り替える。そして、俺の右手を無理やり掴み、そのまま豊かな乳房にあてがわせた。

「あっ!?」
「好き……でしょ? 私のおっぱい。黙って、好きなだけ……揉んでなよ」

これだけの性交渉を経て、ようやく彼女の爆乳に触れることが叶う。
表面に汗が伝う滑らかでモチモチとした温かい肌触り。指をちょっとでも押し込むと、容易に内側へ埋没していく究極の柔らかさ。俺はその極上の感触に感動し、無意識に鷲掴みしていた。

「んぅっ♡」

五本の指をすべて深く沈めた瞬間、氷川は切なげな声を漏らす。健康的で艷やかな乳肌が、俺の手の力に対抗するよう瑞々しい弾力で押し返し、掌全体に吸い付いてくる。抱えきれないほどの柔肉の塊は、俺の手の動きのまま自在に歪む。誰もが憧れるばかりで、誰の手にも届かない氷川麗奈の爆乳。それを今、この手で“掴んでいた”。
「ひ、氷川……、いいから俺の話を……だな?」
「……まだ言うんだ」
「だってよ……、大事なこと……だろ……?」

されど俺は、まだ諦めていなかった。
首の皮一枚繋がった理性で踏ん張り、言葉を投げかけた。
……だが悲しいかな。
彼女はこれまで温存していた“必殺の切り札”をここで切ってきたのだ。

「108」
「は?」
「私のバストサイズだよ。『108センチのLカップ』」
「――ッ!?」

彼女のその言葉によって、鷲掴みにしている爆乳がさっきよりもずっと大きなものに見えるようになった気がした。
心臓が破裂しそうなほど弾み、手のひらから汗が滲み、呼吸が乱れていくのがわかった。

「わかりやす。ちょろ」
「こんなの、どうにかなるに決まってんだろ……! ずりぃよ……ッ!」

もし今の自分に十分な余力が残っていたのなら。今すぐにでも彼女を力づくで押し倒し、獣欲のまま犯していたことだろう。それほどまでに氷川の“サイズ申告”は凄まじい官能を与え、昂らせた。
俺はもう堪えきれず、自ずからもう片方のたわわな果実に左手を伸ばし、両手で二つのメロンを同時に揉んでいた。

「……んっ♡ 葉山くんのアソコ、すっごい硬くなった♡ 男って不思議だよね。バストサイズ教えるだけこうなるんだもん。まるで魔法の呪文みたい」
「氷川……俺……俺っ!」

潤いに満ちた熱い膣内へ直にペニスを挿入しながら、彼女のLカップ爆乳を好き放題できる最高の悦楽を前に、頭の中の忌避感はいとも容易く蒸発する。もはや彼女の言いなりの性処理道具に堕ちた俺では、氷川麗奈の肉欲の暴走を止めることは不可能だった。

「ねぇ、また麗奈って呼んで。その方が興奮する」
「……麗奈っ」
「♡ それじゃあ、またピストン、するからっ♡」

彼女はそう言うと、両乳を触れている俺の両腕を掴んで上体を垂直に反らし、再び腰を振りはじめた。

「……あっ♡ あっ♡ あああ♡ んぅ♡ んーーー♡」

彼女がリズミカルに尻をシェイクするたび、ずしっ♡ずしっ♡と派手に暴れる乳房の重みの反動が掌に襲いかかる。現に、俺の指からはみ出た乳肉の表面が、ぷるっぷるっ♡と揺れていて、時おり指に柔らかくぶつかってきていた。それがあまりにも官能的で、スベスベの乳肌を愛撫し続けるのを止められない。

「……これっ♡ いい、かも……っ♡ んっ♡ おっぱい支えられて……あっ♡……動きやすいっ♡」
「くうっ! はあっ、はぁっ!」
「てか……触るの、地味にテクい……んだけどっ♡ もっと、激しくメチャクチャにすればいいのにさぁっ♡ 興奮……してるのに……紳士的に……触ってきてっ♡ あっ♡ ……どうして……そんな……っ♡ ムカ……つくっ♡」

氷川は俺の丁寧な乳捏ねに悦びつつも、同時に理不尽な苛立ちを覚えているようだった。そのぐちゃぐちゃな感情を吐き捨てるよう、腰使いをさらに早めていく。

「あっ♡ あんっ♡ あっ♡ ああ♡ あああ♡」
「ああっ! ぐううッ――!」

ペニスを覆うヌルヌルの粘液をまとった無数の襞々たち。その絡みつきが、きゅっ♡と締まりつつ、激しい抽挿による往来で敏感なカリ首の段差を甘撫でし、扱きまくっていく。
じゅぷじゅぽ♡と氾濫した愛液が結合部から排出される淫猥な水音が響き、パンッパンッ♡と弾力のある尻肉を叩きつける乾いた衝突音が鳴り、ギシギシ♡とベッドスプリングの騒がしい軋み音。性交の激しさを物語るそれらが、彼女のあられもない喘ぎ声とともに部屋を支配していた。
視覚、触覚、聴覚。あらゆる感覚がこちらの興奮を存分に煽ったことで、既に出涸らしのはずの精が再び大量に分泌しはじめ、睾丸の内部がとろっとろの新鮮なザーメンで満ちていく。

「ああ♡ あああっ♡ んっうう♡ は、やま……くんっ♡」
「あッ! 麗奈……麗奈ぁっ!」

極限まで昂った衝動で乳房を潰したくなるのをどうにか抑え、優しく揉み続ける。だがその一方で、氷川は押し寄せる快感に耐えるよう俺の腕を掴む指の力を加減せず、長い爪先が食い込んで鈍い痛みを覚える。

「あっ♡ あああっ♡ んぁーっ♡ あっ♡ あっ♡ あんっ♡ ああああっ♡」

ミステリアスだった氷川麗奈の面影はもうどこにも無い。
冷ややかな眼差しは熱く蕩け、二枚貝のごとく閉じていた唇はだらしなく開いて涎を漏らし、青白い顔は紅に染まり、清涼感のある声を甘く跳ねさせて肉欲のまま喚き喘いでいた。
正直なところ驚きもあった。けれどそれ以上に。氷川を貪り、氷川に貪られる悦びで、脳みそがどろどろに溶けてしまいそうだった。

「あっ♡ あっ♡ あーーっ♡ ああんっ♡ ああああ♡ あああああ♡♡ あっあっ♡♡ いく……っ♡♡ いきそう……っっ♡♡」

彼女が恋焦がれたセックスの絶頂が、ついに訪れようとする。氷川はシーツに両手を置いて前傾姿勢の四つん這いになり、今までで一番激しい杭打ちピストンを嬉々として繰り出した。

「ああっ♡♡ ああぁああ♡♡ あっ♡♡ あっ♡♡ あーーー♡♡ あああっあっ♡♡」
「ぐぅッ! 麗奈っ! ああっ! 麗奈っ! 麗奈っ!」

足腰を盛んに動かしての絶え間ない淫らな尻振り。結合部がぶつかるたび、ぱちゅぱちゅ♡と膣の最奥から溢れた愛液が飛び散る。そして、絶頂へ昇りつめていく彼女の愉悦を如実に示すよう、ペニスを咥えた膣襞の絡みつきはより複雑にうねっていった。

「あああっ♡♡ いくっ♡♡ いくうう♡♡ いくっ♡♡ ああッ♡♡ イクっ♡♡」
「ううッ! ああッ! はあっ! はあっ!」

しかしながら、彼女の快感に比例して俺に与えられる快楽も強くなり、射精欲の込み上げを許してしまう。“四連戦目だから耐えられそう”という前提が覆りはじめる焦りと、“種付けを果たせる”という根源的な欲求の二律背反に苦しむ。いずれにせよ、今の俺にできるのは“彼女が満足するまで”耐え忍ぶこと。この一点である。
「あッッ♡♡ あ~~~~っ♡♡♡ イクっ♡♡♡ イグゥッ♡♡♡ いぐううッ♡♡♡」

もはや、あと一、二往復のピストンで限界を迎えてしまうときだった。氷川は一際大きく強く深く尻を叩きつけると、亀頭の先が子宮内まで食い込んでディープキスする。腰を密着させたままグリグリ♡と小さく動き、擦りつけるよう甘撫でしていく。
その瞬間。張りつめていた糸が切れるように。ぴくん、と彼女の全身が静かに硬直した。

「ッッーーーーーー♡♡♡♡♡♡」

言葉にならない、切なげな慟哭。四肢は痙攣し、瞳は焦点があっておらず、唇の端を伝う涎がだらーーっと下に伸びて、割れ目からは透明な汁がぴゅっぴゅっ♡と吹き出していった。

(イッた……のか? よかった……間に合ったぁ……)

彼女の快感の終局を見届けたことで俺は安堵した。
気を抜いた。
……それがいけなかった。

「っ!? な!?」

突如、氷川の絶頂に応じて腟内が激しく収縮しはじめたのだ。
ペニスにまとわりつく無数の襞々たちが、ぎゅううううう♡と、今までにないくらい強烈に締めつけてくる。

「これっ……むりっ……あ」

気をつけていれば我慢できたかもしれない。だが、もう遅かった。
膣全体が意志を持ったかのように激しく蠕動し、根本から貪欲に吸い上げる。陰嚢の底にある精まで根こそぎ搾り取るような甘い吸引力がペニスを愛撫したことで絶頂に導かれ、彼女の子宮に精を解き放ってしまった。

――びゅるううううううううう♡ びゅびゅるううううううううう♡ びゅるくううううううううう♡

四発目とは思えない、音が聴こえてきそうなぐらい勢いのある射精だった。
ドクンドクン♡と心臓の鼓動のように力強くペニスが脈動し、陰嚢から止め処なく供給される白い欲望が尿道を通り抜けて鈴口から吐き出され、子宮内にトプトプ充填していく。
腹筋に力が入って腰がガクガクと唸り、下腹部が甘美な痺れに支配され、視界に星が瞬く。たかだかコンドームで遮られていないだけなのに。氷川のナカに俺の精液が直接注がれているという事実だけで、狂おしいほどの達成感に酔いしれた。

「ああ♡ あ♡ ……ん? あれ? ……あぁ……そっか……♡♡♡」
「……はぁ……はぁ……はぁ」

今までで一番長かった射精が収まり、極楽の余韻に浸る。
四連発の疲労感は尋常ではなく、息も絶え絶えだ。しばらくは一歩も動けないだろう。

「ねぇ。もしかしてさ」
「ごめん……本当に……ごめん……我慢……できなかった……」

さすがに氷川も違和感に気づいたのだろう。俺はただ謝るしかなかった。実際、最後まで気を張っていれば防げたかもしれないのだ。絶頂の興奮が薄れたことで、誤魔化していた罪悪感と後悔が募りはじめる。

「中に射精

しちゃったんだ」
「本当に……ごめんなさい……」

彼女の淡々とした口調が突き刺さる。俺は無責任な中出しの詰りを受ける覚悟を決めた。
……ところが、彼女は潤んだ唇を耳元に近づけ、囁いた。

「――あーあ、いけないんだぁ♡♡♡」
「ッッ!!」

ぞくぞくぞく、と凄まじい震えが背中を奔り、全身に鳥肌が立った。
「――♡」

顔を上げた氷川は、双眸を細め口角を釣り上げた“嗜虐的な笑み”を浮かべ、俺を見下ろしていた。
表情の変化が乏しかった彼女が初めて見せた笑顔は、恐ろしいほど妖艶で、息を呑むほどに美しかった。

全てが終わった後、すっかり日は暮れていた。灯りのない室内、俺の上に気怠げに覆い被さった氷川の青白い肌が、薄闇の中にぼんやりと浮かび上がっていた。その神秘的な姿は実に様になっていて、思わず見惚れてしまう。

「なぁ氷川」
「ん?」
「実際のところ……相当ヤバいことしたよな……俺……」
「多分大丈夫でしょ。危険日じゃなかったし」
「そうは言うけど、ゼロになるわけじゃないんだろ? それに、俺だって学校からの処罰とか体裁的にとか色々あると思うが、お前の方が圧倒的にリスクが高いんじゃないのか?」

ネットで調べた程度の付け焼き刃の知識だが、妊娠すること自体も女性の身体の負担になるし、中絶するにしても不妊体質になる可能性が常につきまとうと聞く。本来なら軽はずみに生で挿入するべきじゃなかったのだ。

「葉山くんが我慢できなかったんだから。しょうがないじゃん」
「う……それは……」
「そんときはそんとき。もしものことがあれば、葉山くんならちゃんと責任とってくれるでしょ」
「お前なぁ……。そりゃ、何が何でも責任は取らせてもらうが」
「まぁ、たしかに。学生のうちに妊娠すんの怖いし、次の時に備えてアフターピル用意しとかないと」
「次……か」
彼女の口からさり気なく出た言葉だったが、それがとても胸の内に響いた。

「どうしたの?」
「いや……なんかさ。ちゃんと『次』があるんだって思うと、なんか嬉しくなるっていうか。氷川と恋人になれたんだって自覚するっつうか……」
「……」

俺がそう言うと、氷川が無言で胸板に顔を埋めてきて、妙なこそばゆさを覚える。
「……ねぇ。葉山くん」
「な、なに?」
「今さらだけどさ」
「うん」
「どうして私のことなんか好きになったの?」
「……本当に今さらだな。理由は色々あるけど」
「たとえば?」
「ミステリアスでクールでイイ。すんげぇ美人。とにかく胸が大きい」
「結局おっぱいしか見てないじゃん」
「そ、そんなことねぇよ。それに……」
「それに?」

そこで言葉を一旦区切り、天井を見つめながら答える

「なんか好き」
「は?」
「俺自身よく分かってないんだけどさ。なんか氷川って見た目とか性格とか抜きにしても、なんか好きなんだよな。なんつうか、理屈を超越してるっていうか。内から滲み出てくるのに惹かれるっていうか」
「……」
「あと、今日深く知り合って分かったことだけどさ。案外ユーモラスっていうか、面白い?」
「……そっか。私から染み出てくるものが好きなんだ。葉山くんってきっと“ハエ”だよ」
「は、ハエ??」
「だって。こんな小汚いビッチから出てくるものなんて、どうせ臭くて汚いものに決まってるから」
「氷川……お前……」

そう語る彼女の表情は、どこか悲しげに見えた。

「小汚いビッチて。言い方」
「事実じゃん。葉山くんは痴女が好みなんだ。さっきだって、私が色んな人と関係持ってるって言ったときも全然引いてなかったし」

『別に……そこまで楽しいわけじゃない』

ここへ向かう道中でのやり取りをふと思い出す。
おそらくだが、彼女は自分が今までやってきたことに否定的なのだろう。夢中になれる何かを探すも思い通りにならず、自棄を起こした結果の“過ち”だと自覚しているのかもしれない。

「あのときは悪かった。『好きでやってる』なんて、無神経だったよな」
「いいよ。多分半分は本当だったと思う。葉山くんとのセックスで、自分が“そういうの”が好きなんだって、なんとなく自覚したし」
「……耳障りのいい慰めかもしれないけどさ。氷川のやってることって、案外普通なんじゃないか?」
「?」

俺がそう言うと、氷川は鳩が豆鉄砲を食ったようにキョトンとする。

「俺らより上の世代はどうだかしんねぇけど、今の十代は皆わりかし自由かもよ? 俺の友達の友達は高二で経験人数30超えてるって聞いたことあるし、その友達も小学五年のときにクラスの男子と初体験したとか」
「それはすごいね」
「俺もすごいと思ったわ。それに比べればってわけじゃないけど、今の世の中って案外そんなもんなんじゃないかなって。……つっても、さすがにこれから浮気するのは、彼氏として絶対やめて欲しいとは思ってるけどさ」
「……」

氷川は再び口を閉ざす。しかしながら、その面持ちはどことなく穏やかだった。
「あと氷川は臭くねぇから。むしろ良い匂い」
「ほんと?」
「ぶっちゃけ言っていい?」
「なに?」
「前から氷川の近くを通ってお前の匂いが嗅ぐたびに興奮してた。勃起したこともあった」
「それはさすがに引くわ」
「ひど……急に梯子外すじゃん……」
「キモいもんはキモいから」

そうやって悪態をつかれつつも自然と笑みがこぼれてしまう。
俺は改めて、真剣な眼差しで彼女の顔を捉えた。

「それに……氷川は綺麗だよ」
「っ!」
我ながらクサい台詞を吐いてしまったかもしれないが、どうしても彼女に伝えておきたかったことだった。彼女の来歴がどうであれ、今の氷川麗奈を綺麗だと思えるのは心の底からの本音だったから。

「……氷川?」
「……」

氷川は無言で俺の背中に腕を回して強く抱きつくと、そのまま顔を伏せてしまう。むにゅ♡と押しつけられる柔らかい胸の感触を内心愉しんでいるなか、ふと気づいてしまった。
彼女のショートヘアに紛れて見える耳たぶが、薄闇のなかで赤く染まっていることに……

「……もしかして照れてる?」
「そんなわけないじゃん」

そう言いつつも彼女は明らかに動揺を隠せていない。そんな氷川の珍しい様相に思わずときめいてしまう。

「お前さ……。結構、かわいいとこ……あるんだな」
「ッッ!!!」

背中を爪で引っ掻かれ、激痛が襲う。俺はうっかり口を滑らしてしまったことを後悔した。

「いだだだだぁ!? ごめん!! ごめんて!!」

それから、氷川の“照れ隠し”の痕はしばらく残り続け、体育の着替えのときに周りにバレないよう気を遣うハメになったのは、また別の話……

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