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旧校舎の美術室。俺と先輩。甘く蕩ける快楽に、溺れ絡まれ堕ちていく。

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一目惚れ。というものを、ご存知だろうか。

可愛いもの。美しいもの。綺麗なもの。
カッコイイもの。尊いもの。儚いもの。

一目惚れにも種類があり、人によって様々な惚れ方をする。

だが一目惚れは、一時の感情。一時の気分の高揚によって起きるものであり、熱しやすく冷めやすいものだ。

しかし時に一目惚れというものは、寝ても醒めても忘れられず、いつまでも自由を縛り付ける呪いとなって、今でも俺の心を掴んで離してはくれなかった──

「起立。気をつけ。ありがとうございました」

「「ありがとうございましたー」」

適当なホームルームの挨拶が終わり、放課後を迎える。

周りの者は皆これからどこに遊びに行くかとか、これからどこでご飯を食べるかとか、明日どこで集合するかとか、各々友達と自由に話し合っている。

今日は、金曜日という特別な日だ。

五日という長い時間のうち、毎日毎日半日以上も学校という牢獄に閉じ込められているのだ。盛り上がり、騒ぎ出すのも無理はない。

一週間のうち二日間という短い自由を与えられた者たちは皆、休日という甘いご褒美に釣られて今日まで生きてきた。

だからこそ、こうしてなんてことのない日々を謳歌することができるのである。

「麻人。オレらも帰らねーか?」

「⋯⋯あぁ。優馬か」

麻人
あさと
。俺をそう呼ぶのは、俺の前の席に座り、小学校の頃から高校二年生の今に至るまで毎年同じクラスで過ごしてきた、木村
きむら
優馬
ゆうま
である。

友人。親友。そして、腐れ縁。俺と優馬の関係は、どれをとっても説明がつく。そんな関係であった。

「悪い。俺、部活あるからさ」

「はぁ〜⋯⋯またかよ。てか、今更だけどなんでお前あんな部活に入ったんだよ」

「あんな。とは?」

「美術部だよ美術部。お前小学生の頃は野球やってて、中学生の頃はソフトテニスやってただろ? それなのに、どうして高校に入ってから急に美術部に入ったんだよ。てっきり、同じスポーツ部に入るとばかり思ってたぜ?」

そう素朴な疑問を投げかけてくる優馬は、小学一年生の頃からずっとバスケを一貫して続けている。

それこそ、小学生の頃は地区大会で優勝し、中学生の頃に至っては県大会優勝後全国大会ベスト4にまで上り詰め、MVP選手の一人に選ばれるほどの実力者だ。

そのため中学卒業後様々な高校からスカウトされたり、学校側からも推薦の話が来たそうなのだが、なぜか優馬はその全てを蹴って俺と同じ近所の高校に通っている。

理由は「将来バスケ選手になるわけでもないし、それなら席を譲った方がいいだろ」という、勿体なくはあるが理屈は分かる言い分であった。

そのくせして、部活が決して盛んではない高校でバスケを続けているのだから、本当によく分からない奴である。

「別に俺が美術部に入ったって、問題はないだろ?」

「問題はないけどさ⋯⋯お前、中学生の頃の美術の評価何点だっけ?」

「最大評価が5で、そのうちの2だったな」

「夏休みの宿題に絵の宿題が出てただろ? それでなにか賞とか取ったか?」

「いいや? むしろ、提出なんてしなかったくらいだ」

「絵とか、描くの好きだったっけ?」

「⋯⋯んー、嫌いではない。だが、これといって好きというわけでもないな」

絵なんて描くより見る方が好きだし、かの有名な芸術家だってゴッホとかピカソくらいしか知らない。それどころか、最近まで音楽家のベートーヴェンが画家だと思ってたくらいだ。

中学生の頃にやってた美術の授業だって提出は割りとギリギリだったし、特にこれといって頑張っていたわけでもない。嫌いではないが、好きでもない的なアレである。

それなのに、何故。と、優馬が聞いてくる。

当然の質問だが、俺には既に答えがあった。

「一目惚れ、したんだよ」

そう、一目惚れ。初めてこの高校に足を踏み入れた時、俺は一目惚れしたのである。

「あー⋯⋯八宵先輩のことか」

八宵先輩。とは、俺の一つ上の先輩であり、美術部の部長でもある八宵
やよい
夕緋
ゆうひ
先輩であった。

「八宵先輩、綺麗だよなぁ。身長も高いし、ルックスもいい。それにスタイルもめちゃくちゃいいから、男子もそうだが女子からも大人気。まさか、お前も狙ってるとは思わなかったぜ」

それなら納得だ。と言わんばかりに、優馬は腕を組んでうんうんと頷いている。

「でもその分、すごい変人って噂だけどな。授業中はずっと寝てるくせにテストではほぼほぼ満点だとか、体育中は半分寝ながら動いてるとか、授業中でも急にフラッといなくなったりするとか、よく分からない人らしいぞ?」

「まぁ、そういう一面があるのは否定しないよ」

「ふ〜ん⋯⋯そっか。じゃ、俺は帰るわ。彼女が早く帰ろってうるさくてさ」

そういって優馬が廊下に向けて指をさすと、そこには壁に背中を預けながらこちらを見つめてくる一人の少女がいた。

その少女は一学年下の生徒であり、女子バスケ部に所属していると以前聞いたことがある。同じバスケ部同士、意気投合でもしたのだろう。

優馬はその後輩女子に腕を振りながら、教室をあとにする。気づけば教室の中に残っている生徒は俺含めて数人程度になっており、あれだけ騒がしかった喧騒は既に過ぎ去っていた。

「じゃあ⋯⋯俺も、行くか」

カバンを手に取り、廊下を出る。

そして俺は、今いる新校舎の二階から連絡通路を通ることで行ける、古びた旧校舎を目指すのであった。

創立三十周年を迎えたこの私立桜ヶ丘高校は、つい二年ほど前──ちょうど俺が入学する頃に、新校舎が建てられた。

大きな窓ガラスの並ぶ廊下。バリアフリーを意識した構造。螺旋階段に、よく分からないモニュメントの数々。

新校舎はまさに現代アートとまではいかないが、画期的な構造としてネット記事にも載るような先進的な造りになっている。

比べて旧校舎はまさに頭の中で思い浮かべる学校そのものであり、一部壁や床が木製だったり、トイレの大半が和式便所だったりと、まさに普通に普通を足したような造りである。

そんな旧校舎は、今では授業どころか部活動ですらも使われておらず。

早くても二年後には、取り壊されることが決定しているらしい。

「⋯⋯まぁ、確かに古いもんなぁ」

古く、若干カビ臭く、床から木を踏みしめる音が聞こえる。

だが、そこがまたいい。と、思ってしまうのはきっと俺だけじゃないだろう。

「さて⋯⋯着いたぞ」

とある部屋の前にたどり着く。その木の扉の上には『美術室』と文字の書かれたプレートがあるが、その文字も掠れてほとんど見えなくなっている。

「失礼します」

その扉をガララッと音を立てて開くと、ぶわっ。と、春特有の温かくもどこか肌寒い風が俺の肌を撫でてくる。

そしてその部屋の中央には⋯⋯そう。例えるなら、異



と呼べる存在がいた。

「⋯⋯おや、またキミか。相変わらず、暇人だねぇ」

「その言葉、そっくりそのまま返しますよ。八宵先輩」

のんびりとした口調で、それでいてハスキーボイスのような低めな声で、椅子の上で屈む一人の少女──八宵 夕緋先輩が話しかけてくる。

身長は170後半であり、俺とほぼほぼ同じだ。それでいて肩の辺りまで乱雑に揃えられたショートヘアは、くせっ毛なのか外ハネが多く目立っている。

黒縁のメガネの下には薄く切れ長でつり目気味な目があり、そこからは夜の帳が降りた空のように黒い瞳がこちらを覗いていた。

そして鼻筋は細く、唇は健康的な色をしている。右目の下と唇の左下にホクロがあり、綺麗というよりも奇麗という字が似合うような、ミステリアスな人だった。

「いやはや⋯⋯橘
たちばな
クン。キミは本当に不思議だねぇ」

「⋯⋯なにがですか?」

「美術部に入っている人は少なからずいるが、皆が皆幽霊部員みたいなものだ。活動している者も皆、新校舎の方で絵を描いている。まぁ、実際向こうの方が設備も道具も整っているしね。それなのに、キミはいつもここに足を運ぶ。それが不思議で不思議で仕方がないんだよ」

椅子から降りてからゆらりと立ち上がり、ふらふらと体を揺らしながら八宵先輩がこちらに歩み寄ってくる。

基本的に八宵先輩は猫背気味だが、それなのにそのスタイルには目を張るものがある。

シャツの上から羽織られたカーディガンの上からでも分かるほど豊かに実った胸は、歩くだけで揺れるほど肉がミッチリと詰まっている。

実際、胸に押し上げられたネクタイがそのまま垂れ下がり、ネクタイとお腹の間に隙間が生まれるほどであった。

そしてスカートが少し小さく見えてしまうほど大きなお尻もそうだが、それ以上にあまりにも長すぎる足が目に入る。

八宵先輩の腰は俺の腰よりも上の方にあり、タイツもストッキングも履いていないため色白で張りのある太ももが、ダイレクトに目に飛び込んでくるのだ。

それなのに本人はそれを自覚していないと言わんばかりに、こちらに歩み寄って来て俺の頬に右手を添えてきた。

「う〜ん⋯⋯いつ見ても変わらない顔だねぇ。これといって特徴があるわけでもなく、かといって無個性というわけではない。興味はそそられないけれど、無視はできない。そんな顔だ」

俺の顔を舐め回すかのように、八宵先輩が鼻と鼻が当たる距離まで顔を近づけてくる。

八宵先輩はあまり寝ていないのか目の下に若干クマがあり、薄化粧すらしていないのか完全にスッピンの顔だ。

それなのに、あまりにも顔が整いすぎている。素肌は色白でキメ細やかく、染みなんてものは一つもない。目の下にあるクマも、それが魅力的と言わんばかりに八宵先輩のミステリアスな部分を引き出していた。

悪いところを探しても、逆に良いところしか出てこない。そんな感想しか残らなかった。

「⋯⋯っ、先輩。顔、近いです」

「おっと、こりゃ失礼。つい夢中になってしまったよ。それより、橘クン。今日も絵を描くのかい?」

「はい。いつものように、隣いいですか?」

「うん、うん。構わないよ。それじゃあ今日も、リンゴとバナナの絵でも描いてみようか」

「はい、分かりました」

荷物であるカバンを置き、俺は美術室の中央に置かれているイーゼルスタンドの前にある椅子に座り、鉛筆を手に取る。

その頃には八宵先輩が俺の目の前にある机にリンゴとバナナを一つずつ置き、また先ほど座っていた椅子の上に立ち、屈んで真っ白なキャンバスをジーッと見つめていた。

そんな先輩に目を奪われながらも、俺は真っ白のキャンバスに鉛筆を走らせた──

「⋯⋯ふぅ。先輩、できました」

一本の鉛筆を置き、俺は未だ白いキャンバスを見つめ続けている八宵先輩に声をかける。

今回のは、会心の出来だ。毎日毎日リンゴとバナナの絵を描いて、八宵先輩に微妙な評価を下され、それでも諦めずに色々と努力してきた。

動画サイトで今も現役で活躍している画家の方々が上げている動画を見続け、家でもコツやポイントを抑えて練習を重ねてきた。

その成果が、今目の前にある。

今日こそ、八宵先輩からお褒めの言葉が──

「うーん。こりゃ、今までの中で一番ダメダメだねぇ」

「⋯⋯⋯⋯え?」

その一言だけで、一蹴されてしまった。

「や、八宵先輩⋯⋯? その、なにがダメとか、聞いてもいいですか⋯⋯?」

「なにがダメって、まぁ全部だね。なんていうか、素人がプロの技を見よう見まねで使ったせいで、残念なことになっている。そりゃ、素人の目には上手く映ってるだろうね。それこそ、クラスの友達に見せれば褒められるくらいには」

「それなら⋯⋯」

「でもね、ワタシから言わせてもらうと──キミの絵はただの落書きに成り下がってしまった。残念だよ」

今までにないくらい、冷めた目で見つめられている。

背筋が凍る。鳥肌が立つ。生まれて味わったことのない焦燥に、口が渇く。

一体、なにがダメなんだ。なにが八宵先輩の癪に触ってしまったんだ⋯⋯?

分からない⋯⋯分からない。そう悩んでいると、八宵先輩は俺の使っていた鉛筆を手に取っていた。

「これは素人がやりがちな間違いなんけど、線を増やしたり無駄に影を増やすだけじゃ上手くはなれないよ。線が増えて上手く見えるのは、脳内で理想的な線が別の線と繋がって美しく見えるから。影を増やすと味が出るのは当然だけど、まばらじゃダメだよ。どこに太陽があるか、どこに照明があるか、それを理解していないとどうしても不自然になる」

八宵先輩が、自分の目の前にある白いキャンバスにリンゴとバナナの絵を描き始める。

サッ、サッ、サッ、と、まるで鉛筆をキャンバスの上で滑らせているかのような動き。それでいて、迷いや逡巡などが一切ない大胆な筆運び。

わずか一分。いや、それ以下の時間で八宵先輩はリンゴとバナナの絵を描き上げた。

「こ、これは⋯⋯」

息を呑む。絵に魅入る。周りの音が、聞こえなくなる。

そのキャンバスに描かれたのは、ただのリンゴとバナナの絵だ。そう、ただのリンゴとバナナ。それ以上でも、それ以下でもない。

だが、それ以外の感想が浮かび上がらないほど、その絵は完成されており。

「き、綺麗だ⋯⋯」

そんな言葉を、俺は口から漏らしていた。

「いいかい? 橘クン。リンゴとは、どんな味がする? どんな感触がする?」

「え、えーと⋯⋯甘酸っぱくて、シャキッとしてて⋯⋯でも、切る前のリンゴは意外と硬くて⋯⋯」

「そう。リンゴは甘酸っぱくて、シャキッとしてて⋯⋯時にはホロッとしてるものもあって、硬くて⋯⋯でも、柔らかくもあって⋯⋯一言でリンゴと言っても、色々と種類はあるだろう?」

「そう⋯⋯ですね。確かにそうです」

「だろう? それに比べ、キミのリンゴはどうだ。色が濃くて線が多いから、これじゃ石だ。石リンゴだ。このリンゴは多分、甘くないんだろうなぁ。瑞々しさもなくてボソボソで、舌に残ってザラザラするんだろうね。でも、ワタシのリンゴはどうかな?」

八宵先輩に言われ、もう一度八宵先輩の描いたリンゴを見る。

柔らかそうで、それなのにリンゴ特有の硬さがあって。色は白と黒しかないのにどこか甘そうな香りがしそうで、口に入れた瞬間瑞々しい果汁が飛び出そうで。

「えーと⋯⋯なんというか、その、美味そう⋯⋯です」

それが、俺にできる精一杯の感想であった。

「そうだろう? 次にバナナだが⋯⋯バナナを描くにしては、線が角張っているね。それに、影も柔らかくない。これじゃキュウリバナナだね。ねっとりした感触もしたさそうだ。パリパリ⋯⋯いや、カリカリしてそうだねぇ」

「⋯⋯でも、先輩のはやっぱり美味しそうだ。バナナの皮の柔らかさというか、あのちょっとしたスベスベ感が伝わってくるし、多分皮を剥いたら美味しくて柔らかい実が詰まってるような⋯⋯そんな気がします」

「ふふ。つまりそういうことさ。でもね、ワタシが言いたいのはそこじゃあないんだよ」

チッチッチッ。と言わんばかりに、八宵先輩は鉛筆を左右に動かす。

「キミは、絵があまり上手ではない」

「ぅぐっ⋯⋯! そ、そうですね⋯⋯」

分かってはいる。分かってはいるが⋯⋯実際面と向かって言われると、さすがに少しは心にくる。

そうして項垂れそうになるが、そんな俺の頬を八宵先輩は両手で掴み、無理やり顔を上げさせた。

「だが、その中には輝くものがあった! 下手には下手なりに⋯⋯いや、下手だからこそ見いだせる美しさがあったんだよ! アンバランスで、無駄にシンメトリーで⋯⋯でもね、そこから伝わる絵の力があるんだ。ワタシはキミの絵に、心を動かされたんだ」

「八宵先輩が、俺の絵で⋯⋯?」

「そうさ! でも、この絵からはその力が伝わってこない。余計な知識を得たことで、橘クン。キミの良さが消えてしまった。ただの劣化コピー機に成り下がってしまった。例えるなら⋯⋯そうだね。あまり美味しくなかったけど拘りがあったラーメン屋の店主が店じまいをして、中途半端に美味しいケーキ屋さんを始めたぐらいのガッカリ感があるんだよ」

「ラ、ラーメン⋯⋯? ケーキ⋯⋯?」

よく分からない例えだが、なんとなくだが言わんとすることは理解出来る。

だが、そうか。俺の下手な絵が、八宵先輩のような人の心を動かしたのか。

それを知れただけで、少しだけ、肩の荷が降りたような気がした。

「いいかい? 絵というものは、目で見たものを描くだけじゃないんだ。目で見て、音を聞いて、触って感触を確かめ、場合によっては食べて味を確かめて、その上で描く対象を理解するんだよ」

「な、なるほど⋯⋯」

分かったような、分からないような。

だがそれでも、八宵先輩なりに俺にアドバイスをくれているということだけは理解出来た。

「⋯⋯ふむ、そうだね。橘クン。明日は用事あるかい?」

「あ、明日ですか? い、いえ。特にこれといった用事はありませんが⋯⋯」

「それなら、明日の朝からここに来るといい。このワタシが特別に、直々に、個別指導でキミの絵を前の下手な絵に戻してあげるよ。下手な知識を入れてしまった以上、取り除くことは不可能だからね。だから、矯正してあげるのさ」

それは願ってもないことだ。それに、土曜日も八宵先輩と一緒にいれる。しかも二人きりで。それが何よりも嬉しかった。

しかし⋯⋯。

「そのー。下手な絵に戻すんじゃなくて、上手くしてほしいんですけど⋯⋯」

「いや、それは無理だね。だってキミ、才能がないもの」

「そ、そこまで言います!?」

「ふふふっ。すまない冗談だよ。ただ、一つ言えることがあってね」

落ち込む俺の肩に手を置いて、八宵先輩が顔を近づけてくる。

髪が揺れ、どこか甘い香りが鼻腔をくすぐる。それと同時に、絵の具のようなインクのような匂いも鼻に届き、少しだけツンとした。

気づけば、八宵先輩は俺の耳の近くに口を運び。

「ワタシはね、キミの絵が好きなんだ。だからキミを、ワタシ好みの色に変えたい。それだけなんだよ。キミにこの気持ちが、分かるかい⋯⋯?」

妙に艶かしい吐息が、耳にかかる。

慌てて後退りをすると、八宵先輩は目を細めながら唇を舐め、ニンマリと笑った。

「⋯⋯ふふっ。それじゃあ、明日を楽しみにしているといいよ。きっと、キミにとっていい経験になるはずだからさ」

気づけば18時を告げるチャイムの音が鳴り響き、窓から見える外の景色は朱色に染まっていた。

風によって窓ガラスが微かに震える音。一足先に土からでてきた蝉の輪唱。カエルの合唱。木霊するカラスの鳴き声。

自然の大合唱が始まる中、物寂しい美術室の真ん中で夕焼けに照らされている八宵先輩は、つい見蕩れてしまうほど綺麗で。

「お、お先に、失礼します⋯⋯!」

俺はカバンを手に取り、逃げ出すように美術室をあとにした。

その際、背中側から八宵先輩の笑うような声が聞こえたが、今はそれよりも、あまりにもうるさい心臓の鼓動の音から逃げるのに必死だった。

「じゃじゃーん、見てくれ。これが小松原さんのヌードデッサンさ」

「ぶっ!?!?」

土曜日の朝。珍しく早起きをした俺は、学校が開放される八時半過ぎくらいに学校に到着し、その足で旧校舎の美術室に向かったのだが⋯⋯。

「あと、これが新井さんのヌードデッサンね。あとこれが吉野さんのヌードデッサン。それとこれが──」

「ちょっ、ちょーっと待ってください!」

美術室に俺が到着するなり、八宵先輩は次から次へと女性の裸が描かれたキャンバスを並べ始めた。

別に、それくらいならいい。なぜならヌードデッサンだって立派な芸術であるし、有名な作品にも女性の裸体というのは多く使われているからだ。

しかし問題はそこではない。

もっと、内面的な部分である。

「こ、これっ、同じ美術部の人たちですよね!?」

そう。問題なのは、このキャンバスに描かれている裸体の持ち主のことを、俺が知っているということであった。

小松原さんは一つ上の先輩だし、新井さんは別クラスの同級生だし、吉野さんに至っては俺のクラスの二個くらい離れた席に座る人だ。

そんな人たちの裸体を──しかも、有名な画家の先生ですら顔負けするレベルの絵を描く八宵先輩が描くと、色々と細かいところが見えてしまい。

例えば胸の大きさは勿論だが、乳首の色の濃さ。乳輪の大きさや、下の毛の有無等々。その絵を見るだけで、その人の体の情報が全て分かってしまうのである。

「こ、こういうのを男に見せるのはまずいと思うのですが!?」

「あー、大丈夫大丈夫。彼女たちも、ワタシになら見せてもいいって──アレ? それじゃあ、橘クンに見せちゃダメなのか」

「そ、そうですよ! そりゃ同性ならまだしも、異性に自分の裸の絵を見せれる女子なんてそうそういないですって!」

「それもそうか⋯⋯まぁ、でも見せちゃったものは仕方ない。キミが見てないといえば、見てないことになるんだ。それでいいだろう?」

いや、よくねーよ! と叫びたかったが、さすがに先輩にそんなことは言えなかった。

「⋯⋯はぁ。それで、先輩は俺になにを教えてくれるんですか?」

「あぁ、そうだね。まだ伝えてなかったよ。まぁ、もう察してるとは思うけど⋯⋯今日、橘クンにはヌードデッサンをしてもらうよ」

「あー、なるほど。ヌードデッサンですね。だからヌードデッサンの絵を──は⋯⋯? 八宵先輩⋯⋯? 今、なんと⋯⋯?」

「⋯⋯? だから、ヌードデッサンをしてもらうんだと言ったんだ。キミ、耳が遠いのではないか?」

いや、いやいや。いやいやいやいや。

八宵先輩は不思議な人だ。謎も多く、プライベートの情報が一切ないことで有名だ。だからこそ、突然変な行動をとることが多い。

だが、例えそうだとしても。八宵先輩が変人だとしても⋯⋯。

「さ、さすがにヌードデッサンなんて⋯⋯俺には、ちょっと⋯⋯」

ろくに女性の裸すら見たことのない俺に、ヌードデッサンなんてできる気がしない。

一応それ自体に興味はあり、ネットで調べたら「やましい気持ちにはならない」とか「エロい気分にはまずならない」など書いてあったが、それは絵を仕事にしてる人だからこその発言だ。

俺は、素人だ。絵を仕事にするつもりもなければ、それで小遣いを稼ごうとか考えたことすらない。ただ、美術部に入っているだけの一般人に過ぎない。

そんな俺がヌードデッサンをするなんて⋯⋯正直言って、描いてるこっちが恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。

だがそんな俺の気持ちを察したように、八宵先輩はどこか愉快げに笑い飛ばしていた。

「はっはっはっ、大袈裟だねぇ。さすがにこの場に小松原さんや新井さん。それに吉野さんたちを呼ぶわけないだろう? 彼女たちだって、恥ずかしいに決まってるからね」

「で、ですよね! ですよね!!」

力強く頷く。

だがしかし、それなら誰がヌードデッサンのモデルになるのだろうか。

まさか、八宵先輩にそんな知り合いがいるのだろうか。それとも、協力的な人がこの学校にはいるのか⋯⋯?

女性なら女性で気まずいし、男性なら男性でなんか嫌だ。

そんな心の葛藤が俺を悩ませていると、八宵先輩はおもむろに自分のネクタイを引っ張って取り、そしてカーディガンを脱いでいた。

それにより、大きな胸がたゆんっと揺れる。

「だから、今日は特別にこのワタシがモデルになってあげようじゃないか。なぁに、心配しなくていいよ。これでも、スタイルには自信があるんだ」

「えっ、いや、はっ? いや、え、ええぇっ!?」

俺が驚きの声を上げている横で、今もなお八宵先輩が目の前で服を脱ぎ捨てている。

ネクタイとカーディガンをとったら今度は靴を脱ぎ、靴下を脱ぐ。

そして今度はスカートを脱ぐと、スカートによって隠されていた黒色の下着──それも、なぜか際どい紐パンが顕になった。

「⋯⋯っ、⋯⋯!」

無言で魅入る。あの、八宵先輩が。あの、変人ではあるがルックスもスタイルも抜群で、同級生の男子たちがよく妄想している八宵先輩の素肌が、今この目に。

「ふふっ、橘クン。目が怖いことになってるよ?」

「はっ!? す、すみません⋯⋯!」

「ふふふっ。いや、いいんだ。橘クンは、それでいい」

一歩だけ俺の元へ歩み寄ってきた八宵先輩が、今度はシャツのボタンに手をつける。

一番下のボタンからゆっくりと、ゆっくりと焦らすように外していき、そのまま上へ上へと上がっていく。

そして、シャツのボタンの中で一番負担のかかっている第二ボタンを外すと、支えられていた胸が重力に逆らうことなくたぷんっ、と跳ねた。

八宵先輩の胸を支えるブラジャーもパンツと同じように黒色で、そして胸を支えるところ以外は紐になっている。それらはまるで、ビキニのような下着であった。

「⋯⋯⋯⋯っ」

ゴクリ。と、生唾を呑む。

今目の前には、上も下も下着姿になった八宵先輩がいる。

このまま進めば、八宵先輩は生まれたままの一糸まとわない姿になるだろう。

それを想像しただけで、ちんこが勃起し始める。八宵先輩に気づかれないように少しだけ腰を引くが、それだけではいつか耐えられなくなるだろう。

すると、そんな俺の反応を見て面白がるように、八宵先輩はブラジャーの肩紐の下に指を通しながら、ニンマリと笑っていた。

「ふふっ、どうしたんだい? これはあくまでヌードデッサンのための準備だよ? それなのにどうして、そんなに目が血走っているのかなぁ?」

「い、いや⋯⋯これは、その⋯⋯」

バレてる。バレている。俺が、八宵先輩の体を舐め回すように見ていることがバレている。

「まさか、興奮してるわけじゃないだろうね? まさかキミともあろう者が、絵という芸術に下心を丸出しにしているわけじゃないだろうねぇ?」

図星を突かれ、変な声が出そうになる。だが俺は耐えて、イタズラめいた表情を向けてくる八宵先輩の目を真っ直ぐに捉えた。

「し、下心なんて⋯⋯も、持ってません⋯⋯!」

「ふぅん。それなら⋯⋯よい──しょっ、と⋯⋯♡」

「⋯⋯ッ!」

八宵先輩が肩紐を横にズラし、そして完全に肩から外す。そうすることで、八宵先輩の胸の全貌が顕になった。

完全にブラジャーを外した時に再度胸が揺れるが、今度はたぷんっなど、可愛いものではない。

重々しくだぷんっ♡ と揺れるメロンのように大きな胸は、あまりの美しさに神秘を感じるほどのもの。

八宵先輩の顔と同じくらいの大きさはあるその胸は、重たいはずなのに垂れていない。

そして、その先端にある乳首は小指の先くらいの大きさで、色素の薄い乳輪は乳首に比べて少しだけ大きく、八宵先輩は俺の視線を感じて指で乳首を隠していた。

「ふふっ。絵というものは、全体を捉えるものさ。それなのに⋯⋯橘クン。キミはさっきから、ワタシの胸ばかり見ていないかい⋯⋯?」

「い、いえっ。そんなことは、決して⋯⋯!」

「そうかい? それなら、いいんだけどね⋯⋯じゃあ次は──パンツ、だね⋯⋯♡」

下着を脱ぐために、八宵先輩が体を前に倒す。

すると八宵先輩の大きくて魅力的な胸は重力に逆らうことができず、八宵先輩が少しでも動く度たゆんっ♡ ふゆんっ♡ と劣情を煽るように揺れていた。

そんな八宵先輩の胸に目を奪われていると──

「はいっ。これで、ヌードデッサンの準備はばっちりだね⋯⋯?♡」

黒い紐パンを手に、完全に一糸まとわぬ姿となった八宵先輩がそこに立っていた。

まず、クビレのできたお腹が目に入る。そしてそのまま可愛らしいおへそが目に入り、そのまま下に目線を下げていくと、そこには薄い毛で覆われた秘部があった。

だが元々八宵先輩は体毛が薄い体質なのか、そこは毛で覆われてはいるものの、そこには確かにぴっちりと閉じた縦線が走っていた。

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯!」

あまりの刺激に、呼吸が荒くなる。

ちんこが痛いほど勃起し、ズボンが破れそうだ。八宵先輩のあまりにもエロく、セックスをするのに最適な体を前にして、金玉の奥の方でなにかがジンジンと響いている。

「おやおや⋯⋯どうしたんだい? 早く、鉛筆を持って描きなよ。ワタシもう、準備万端だからさ⋯⋯♡」

いつの間にか用意された教壇に立った八宵先輩は、軽く腰を引きながら胸を張り、片手で髪をかき上げながらもう片方の手を腰に当てていた。

まさにモデルポーズ。俺はそんな八宵先輩を前にしながら椅子に座り、真っ白なキャンバスと八宵先輩の裸体を交互に見合った。

鉛筆を縦に持ち、八宵先輩の頭の大きさを測る。これにより、八宵先輩が何頭身であるかが鉛筆で分かるようになる。

次に頭の大きさを測った鉛筆をキャンバスに当て、頭一個分のところで横線を引き、またさらに一個分のところで横線を引くというのを繰り返す。

すると、八宵先輩は7.5等身であることが分かり、そのあまりのスタイルの良さに俺は感動を覚えた。

「集中しろ⋯⋯集中、集中⋯⋯!」

邪な気持ちは捨て、俺はヌードデッサンを開始する。

いくら俺の絵が下手でも、下手なりにできることだってある。それを証明するべく、俺は全力でヌードデッサンに立ち向かった。

「うーむ、これはこれは⋯⋯」

あれから三十分が経過し、俺はなんとか八宵先輩の裸体を描き終えることができた。

今はそれを、椅子に座る俺の後ろから八宵先輩が眺めている。もちろん、下着もつけていない裸の状態で。

心臓の鼓動が早くなる。八宵先輩が俺の肩に手を置くなんていつものことなのに、いつも以上にその手の熱が体に伝わってくる。

なんてことを思っていると、突然後ろからため息が聞こえてきた。

「⋯⋯はぁ。なんというか⋯⋯普通、だね」

「ふ、普通⋯⋯ですか?」

今の俺には、もうなにが普通でなにが普通でないかすら分からない。だから、オウム返しすることしかできなかった。

「そう、普通。余計な線と影が消えたのはいいところだ。だが、キミはワタシが昨日言ったことを忘れてるね」

昨日八宵先輩が言ったこと⋯⋯?

昨日八宵先輩は、俺になにを教えてくれたっけ⋯⋯?

確か色々とアドバイスをしてくれていたはずだが、八宵先輩の裸を前にして全てが吹き飛んでしまった。

そのためなにも分からず俺が黙っていると、またもや後ろからため息が聞こえてきた。

「⋯⋯はぁ。あのねぇ? キミの描く胸はね、柔らかくないんだよ」

「⋯⋯は、はぁ⋯⋯?」

「胸とは女性の象徴だ。それでいて、ただの皮下脂肪でもある。故に、胸とは柔らかいものだ。だがこの絵を見ても、この胸を揉みたいと思う人がいると思うかい? ワタシはいないと思うけどねぇ。どうせだったら硬いおっぱいよりも、柔らかいおっぱいの方がキミもいいだろう?」

「そ、それは⋯⋯そう、ですね⋯⋯」

八宵先輩が口にする単語と、度々耳にかかる吐息が合わさって、酷く股間に悪い。というより、もう若干パンツが濡れてしまっている。

情けない。情けないのだが、八宵先輩の極上かつスケベ過ぎる体を前にして、よく我慢した方だと自分を褒めてやりたいものだ。

「昨日ワタシは言ったはずさ。絵というものは、目で見るだけじゃダメだって。そうだろう?」

「そ、それは、そうですが⋯⋯その、俺女性の胸とか触ったことなくて⋯⋯や、柔らかさとか、全然分からなくて⋯⋯」

ほんの少し。ほんの少しだけ、言い訳をする。

すると空気が沈黙し、急に静まりかえる。

どうして八宵先輩は喋らなくなったのだろう。そう思うが、そこで俺は自分が今した発言を思い返した。

「あっ、いやっ、ちが、くて⋯⋯! その、今のは──」

「ふぅむ、確かにそうか。リンゴやバナナと違って、胸はそう易々と触れれるものではない。橘クンの言い分はもっともだ」

「──えっ、それは、その⋯⋯?」

「だから、いい絵を描くには資料が必要だ。だがキミはその資料を持ち合わせていない。それなら、責任をもってこのワタシがその資料を提供しようって話さ」

そう言うと、俺の後ろにいた八宵先輩は俺の前に回り込み、イーゼルスタンドとキャンバスを少し奥に押した後、俺の膝の上に乗ってくる。

制服越しに八宵先輩のおしりの柔らかさが伝ってくる。ズボンを押し上げてテントを張るほど勃起したちんこの上に、八宵先輩の秘部がふにっと当たる。

そしてなにより、俺の視界のおよそ八割以上が、八宵先輩の圧倒的な質量を誇る胸で埋め尽くされた。

「この教室は、キミが来たと同時に鍵を閉めた。それに、今日は美術部の顧問はいないからまずこの美術室に誰かが足を運ぶことはない。それでいて、わざわざ土曜日に学校で絵を描くほど熱心な生徒もいない。だから、ここからは橘クンの自由にしていい」

「じ、じじ自由、ですか⋯⋯?」

「あぁ、そうだとも。ワタシのこの胸を、この肉がミッチミチに詰まったIカップおっぱいを、キミの自由にしていいんだ。揉んでもよし、舐めてもよし、吸ってもよしだ。キミが満足するまで、もしくは生徒玄関が閉じるまで、いくらでも好きにするといい⋯⋯♡」

あまりにも魅惑的な言葉に、息が詰まる。

ふいに壁にかかる時計に目をやると、今はまだ朝の10時になったばかりだ。

生徒玄関は基本的に夕方の18時には閉じる。ということは、単純計算であとおよそ8時間は八宵先輩のおっぱいを、俺が、俺だけが自由にすることができる。

壊れる。頭が、脳が、壊れてしまいそうだ。まともに思考することができない。もしかしたら、既に思考回路は焼き切れているかもしれない。

八宵先輩が呼吸をするだけで、八宵先輩のIカップおっぱいが上下に震える。色素は薄いものの確かに主張している乳首が、俺の視線を感じてピクリと震えている。

顔を上げると、八宵先輩の頬に一筋の汗が流れていた。

それは焦りによるものか、それとも期待によるものか。はたまた暑さによって流れたものかは、俺には分からない。

それでも、普段からあまり顔色を変えることのない八宵先輩の頬が、少しだけ紅潮している。耳もほんのりと赤くなり、さすがに少しは恥じらいを感じているようであった。

「じゃ、じゃあ⋯⋯触らせて、もらいますね⋯⋯」

「うん。好きにするといいさ⋯⋯♡」

恐る恐る、八宵先輩のおっぱいに手を伸ばす。

夢に見た、八宵先輩のおっぱい。よく絵を描いている最中に横目でチラ見していた、あのはち切れんばかりのおっぱいを、この手で揉むことができる。

手が、一瞬だけ動きを止める。ほんの少し、ほんの僅かな逡巡。だがその程度で、俺の手が戻るはずもなく。

──むにゅぅん♡

「⋯⋯っ!」

下から支え、持ち上げるように八宵先輩のおっぱいに触れた。

まず伝わってくるのは、その重さだ。手から腕全体にかけて、おっぱいのズッシリとした幸せな重さが伝わってくる。

そして次に、指に伝わる感触だ。柔らかく、まるで子供の頃想像していた雲を掴んでいるような触り心地に、揉む手が止まらない。

揉めば沈み、力を抜けば押し戻される。そんな、柔らかさと張りが共存している八宵先輩のおっぱいに、俺は既に夢中になっていた。

「ふ、ふふ⋯⋯♡ な、なんだか⋯⋯かなりやらしい触り方じゃないか⋯⋯♡」

抑揚の変化があまりない八宵先輩の声が、少しだけ上擦ったものに変わる。

自分のおっぱいを好き放題に揉まれながら、八宵先輩はニンマリと笑みを浮かべたまま俺を見つめている。

まるで、俺がどうするかを観察しているかのように、八宵先輩は唇をペロリと舐めていた。

「す、すごい⋯⋯柔らかくて、モチモチで⋯⋯」

気づけば、俺は両手で八宵先輩のおっぱいを揉んでいた。

揉んだり、掴んだり、引っ張ったり。どう動かしても八宵先輩のおっぱいは自由自在に動き、そして力を抜くとだゆんっ♡ と重々しく揺れながら元の形に戻る。

そうしておっぱいで遊んでいると、その先端にある小指の先ほどある大きめな乳首が、どこか切なそうにピクピクと動いていた。

それを前にした時、まるでそれが本能と言わんばかりに頭が動き──俺は、その上向きに尖った可愛らしい乳首にしゃぶりついていた。

「んぅ──っ♡ い、いきなりしゃぶりついてくるなんて⋯⋯!♡ 橘クン⋯⋯♡ キミは遠慮という言葉を、知らないのかい⋯⋯?♡」

「す、すみません⋯⋯で、ですが⋯⋯」

「ふぅー⋯⋯♡ あ、あまり咥えたまま喋らないでほしいな⋯⋯♡ い、息が当たって、まどろっこしい気分になるんだよねぇ♡」

明らかに八宵先輩の呼吸の回数が増え、声のトーンがいつもよりも高くなっている。

その間にも、俺は右腕を八宵先輩の細い腰に回しながら、八宵先輩の乳首を乳輪ごと口に含み、口の中で転がしたり、舌で押したり、甘噛みをしたりと繰り返す。

最初はクニクニ♡ とした感触の乳首がグニッ♡ とした硬い食感に変わり、八宵先輩は時折体を震わせるようになった。

幸せだ。あまりにも、幸せすぎる。

八宵先輩の体臭は甘くて、なんだかミルクのよう。顔が八宵先輩のおっぱいと密着していることで、呼吸をすると八宵先輩の甘ったるい体臭が大量に肺に入ってくる。

それにより、脳が痺れる。脳内麻薬がドバドバ出て、ただただ夢中で、俺は八宵先輩の乳首をこれでもかと味わっていた。

「くぅ⋯⋯♡ はぁ、はぁ⋯⋯♡ キ、キミは赤ちゃんかなにかなのかい⋯⋯!?♡ そんなに必死に吸ったって、母乳なんて出やしないんだよ⋯⋯!?♡♡」

「や、八宵先輩の、母乳⋯⋯!」

想像するだけで、射精しそうになる。俺は射精しないよう八宵先輩に抱きつき、そしてただがむしゃらに八宵先輩のおっぱいを堪能する。

気づけば無意識のうちに腰が動き、八宵先輩の秘部──おまんこを、ズボンの下から俺の激しく怒張したちんこでつついていた。

「ふふっ、ふふふっ⋯⋯♡ はぁ⋯⋯♡ ほんと、キミはどうしてそんなに可愛いんだい⋯⋯?♡ これが、母性本能というのかな⋯⋯♡ キミにおっぱいを吸われると、もっともっと甘やかしてあげたいっていう気持ちになって、仕方がなくなってくる⋯⋯♡♡」

されるがままだった八宵先輩が、俺を抱きしめて頭を優しく撫でてくれる。

するとそのせいで俺の顔全体におっぱいがむぎゅ〜♡ っと押し当てられ、逃げれなくなってしまった。

「さぁ⋯⋯限界なんだろう⋯⋯?♡ とりあえず、まずは一回出しとこうか⋯⋯?♡♡」

「く、ぅうぅ⋯⋯!」

先輩が耳元で甘く囁いた、その瞬間。

──ドビュ♡ ビュルルルッ♡♡

まだ触られてもいないのに、とてつもない射精が暴発してしまった。

あまりの快楽に、脳が溶けてしまいそうになる。

八宵先輩は頭を優しく撫でてくれているが、それとは裏腹に絶対に逃がさないと言わんばかりに抱きしめてくるので、おっぱいから逃げられず酸素が薄くなる。

「ぁ、ああ⋯⋯! はぁ、はぁ⋯⋯!」

酸素を取り込もうと空気をいくら吸っても、八宵先輩の甘ったるい体臭が俺の体内に侵入してくる。

もう俺の血液の中にまで八宵先輩の体臭が回ったのではないかと錯覚してしまうほど、八宵先輩の体臭は中毒性のあるもので、大量に射精したのにすぐまた勃起してしまった。

「ふふっ⋯⋯♡ こらこら、また大きくなってるじゃないか⋯⋯♡ まったく。節操のないおちんちんだねぇ⋯⋯?♡♡」

八宵先輩が俺を離し、膝の上から下りる。

離れないでほしいと言わんばかりに腕を伸ばすが、八宵先輩はクスクスと笑いながら床に膝立ちし、俺のズボンを下ろした。

ボロンッ。と、精液でぐちゃぐちゃになった俺のちんこが露になる。

そんな俺のちんこを前にした八宵先輩は一度息を呑んだ後──腕で持ち上げ広げたおっぱいを俺の足の上に乗せ、そしてそのままむぎゅ〜♡ と、ちんこを包み込んだ。

「ぁああ⋯⋯! や、八宵先輩⋯⋯! そ、それは⋯⋯!」

「ふふっ♡ どうだい、ワタシのIカップパイズリは⋯⋯♡♡ 気持ちいいかい?♡ 気持ちいいだろう⋯⋯?♡♡」

──ニッチャ♡ ニッチャ♡ ニッチャ♡♡

ちんこをベトベトに汚した精液が潤滑剤となって、おっぱいの滑りを良くする。それにより、下品で卑猥な水音が静かな美術室に響き渡る。

「男どもがよく見てくるこのおっぱい♡ キミはそのおっぱいを、独り占めしているんだ⋯⋯♡ すれ違う男がみんな視姦してくるこのおっぱいを、キミが、キミの精液がドロドロに汚しているんだよ⋯⋯?♡♡」

──ヌッチャ♡ ヌッチャ♡ ヌッチャ♡♡

おっぱいに埋もれてしまった俺のちんこが、八宵先輩の柔らかくてモチモチでトロトロな乳肉によって、四方八方から蹂躙されている。

逃げ出そうにも、逃げ出せない。腰が引けても八宵先輩は逃がさないと言わんばかりにおっぱいを押し付けてくるし、腰をずらしてもそれに倣っておっぱいの動かし方を変えてくる。

止めどない快楽に、体の力が入らない。もう、八宵先輩のことしか考えられなくなって仕方がなくなってしまう。

「ふふっ♡ ガッチガチになったキミのおちんちんが、さっきからワタシのおっぱいの中で暴れているよ⋯⋯♡♡ 出したいー♡ 出させてくれー♡ って、おちんちんが泣いてるねぇ⋯⋯♡♡」

「せ、先輩⋯⋯! こ、これ以上は、頭が⋯⋯!」

「ダメだよ♡ 絶対に逃がさない♡ キミがおかしくなるまで、キミがなにもしなくても精液を漏らしちゃうまで、ワタシはキミを離してあげないからね⋯⋯♡♡」

──タパンッ♡ タパンッ♡ タパンッ♡♡

八宵先輩の動きに遠慮がなくなり、本気で精液を搾り取る動きへと変わる。

「そう、責任があるんだよ♡ ワタシにはキミのおちんちんを苦しませてしまった責任があるんだ♡♡ だから⋯⋯ただキミは、気持ちよくなるだけでいい⋯⋯♡♡」

──グッチュ♡ グッチュ♡ グッチュ♡♡

ただの抽挿から、こねくり回すような動きへと変わる。

八宵先輩がなにを考えているのか分からない。なにを目的に、こんなことをしてくれるのかが分からない。

それでも、もうそれ以上考えられない。考えようとしても、それを八宵先輩が邪魔をしてくる。

「さぁ、イクんだ♡ 気持ちよく⋯⋯♡ 惨めに⋯⋯♡ 喘いで⋯⋯♡ 蕩けて⋯⋯♡ なにも考えず⋯⋯♡ 快楽だけを求めて⋯⋯♡ ワタシに溺れるように──イけっ♡♡」

「──ッ!?」

──ドビュルルッ♡ ビュルルルッ♡ ビュルル♡♡

頭がチカチカし、視界がボヤける。

泣いてる。俺は今、泣いている。あまりの気持ちよさに、あまりの快楽に、脳が防衛本能を起こしている。幸せが、キャパシティオーバーしてしまったのだ。

──ドクンッ♡ ドクンドクンッ♡ ドクンッ♡♡

吐精が止まらない。終わらない。

八宵先輩がおっぱいをぎゅ〜っ♡ っと抱きしめることで、とんでもない乳圧が満遍なくちんこを襲い、長く、一発一発が重い射精を促してくる。

──ドクン⋯⋯♡ トクットクッ♡ トクッ⋯⋯♡♡

最後の一滴まで、八宵先輩のおっぱいの中に射精する。もし今のが腟内だとしたら、一発で孕むほどの精液を、俺はおっぱいの中に吐き捨てた。

「⋯⋯っ♡ ほぉら、見てよこれ♡♡ こーんなに射精して、こーんなに女の子のおっぱいを汚すなんて⋯⋯♡ 橘クン。キミは悪い子だね⋯⋯?♡♡」

俺のちんこを解放してくれた八宵先輩が、おっぱいを持ち上げて左右に開いてみせる。

すると谷間にはとんでもない量の精液が付着しており、べっとり、ねっとりとくっつき、肌を伝って垂れながらも、へばりついて落ちる気配がなかった。

「ふふふっ♡ そうだね⋯⋯じゃあ、頑張ったキミにはご褒美をあげよう⋯⋯♡ ちゅっ♡」

「んむっ!? せ、せんぱい⋯⋯!?」

突然のキスに、体が硬直する。

だが素直に受け止めると、八宵先輩は俺の唇をこじ開けて舌を俺の口内に侵入させ、口の中を隅々まで舐めとってくる。

「んむっ⋯⋯♡ ちゅっ♡♡ むぅ⋯⋯♡ はぁ、はぁ⋯⋯♡♡ はぁむ⋯⋯♡ ちゅぅ⋯⋯♡♡」

八宵先輩のキスが、止まらない。

俺の顔をがっちりと掴み、そして俺の顔を上に向かせ、その上から八宵先輩がキスを浴びせてくる。

呼吸をしたくて口を離しても、すぐにまた唇を奪われて口の中を蹂躙される。逃げても、逃げても、八宵先輩の唇が追ってきて俺の口を襲う。

「さぁ⋯⋯ワタシの唾液を飲むといい⋯⋯♡ キミが満足するまで、その口に注ぎ込んであげよう⋯⋯♡」

俺から口を離し、八宵先輩がベロの先からとろりと唾液を垂らしてくる。その唾液はそのまま俺の口の中に入り、舌を伝い、そのまま喉へと伝って嚥下する。

まるで、鳥の餌やりだ。しかし実際の鳥の餌やりというものは、このように決してハレンチなものではない。

他人の唾液なんて、汚いだけ。それが一般常識だが、俺は逃げることも拒むこともなく、ただ八宵先輩が口から垂らし続ける唾液の糸を、口で受け止めそのまま飲み込んだ。

そんな俺を見て八宵先輩の呼吸が荒くなり、俺の顔全体をガシッと掴んできたと思えば、大きく目を見開きそのあまりにも美しく整った顔をこれでもかと近づけてきた。

「〜〜っ♡ あぁ⋯⋯キミは、本当に可愛いなぁ⋯⋯♡ 普通なら嫌がるものだろう?♡ 人の唾液なんて汚いもの。栄養価など一切ない、ただの消化酵素が含まれた粘液に過ぎない。それをキミは、まるで極上のスープを飲み干すかのように喉を鳴らして飲んでいる⋯⋯♡ あまりの快楽に涙を流しているくせに、その目はこの先を期待しているかのように輝いている⋯⋯♡ 本当に、本当にやめてほしいなぁ⋯⋯♡ これ以上、ワタシの加虐心をそそらせるのはやめてほしいんだけどねぇ⋯⋯?♡♡」

饒舌で、早口で、なにを言っているのか1ミリも理解できない。

だが分かることとして、どうやら俺が八宵先輩の加虐心を煽っているらしい。そのつもりはないのに、どこかで八宵先輩の触れてはいけない部分に触れてしまったのかもしれない。

「や、八宵、先輩⋯⋯その、ご、ごめんなさい⋯⋯」

「っ!♡ あぁ⋯⋯!♡ あぁあぁあぁあぁ♡♡ キミは本当にバカだねぇ⋯⋯♡♡ 今そこで謝ることが、余計にワタシの加虐心を煽っていることに気づけないのかなぁ⋯⋯?♡♡」

腰をモジモジと動かしながら、恍惚とした表情で八宵先輩が歓喜の声を上げる。

「それにね⋯⋯橘クン。キミは一切悪くないんだ⋯⋯♡ 悪いのは、ぜ〜んぶこのワタシさ。でもね、ここまで来たらさすがにワタシも我慢の限界なんだよねぇ⋯⋯♡」

低く落ち着いた声で、八宵先輩がニヤリと笑う。

そして俺の頭から手を離して後ろを振り向いたと思えば、そのまま真っ直ぐ歩いていって壁に手をつき、その安産型と形容できるほど大きなおしりを、こちらに向けてきた。

「さぁ⋯⋯♡ キミの好きにするがいい♡♡ パンパンパンッ♡ って優しく腰を打ち付けてもいいし、それはもう乱暴にワタシのおしりが赤くなるまで、まるで猿のように腰を振ってもいい⋯⋯♡」

「⋯⋯っ! で、ですが、その⋯⋯コ、コンドームが⋯⋯」

「なぁに、そんなもの不要さ⋯⋯♡ 今日は万が一にも中出しされたって妊娠はしないし、ちゃんとアフターピルだって用意している⋯⋯♡ キミだって、あんな薄っぺらいゴムなんかに阻まれたくはないだろう⋯⋯?♡♡」

八宵先輩の誘い文句に、心臓がドクッと跳ねる。そして、精液によってドロドロになった俺のちんこが、今までに見たことがないくらいの勃起を見せる。

あまりにもそそり立っているせいで、亀頭の先が俺の腹に当たりそうになるほど。そんな俺のちんこを見て、八宵先輩はうっとりとした様子で頬を綻ばせていた。

「あぁ⋯⋯♡ いいねぇ⋯⋯♡ 硬くて、長くて、大きい立派なおちんちんだ⋯⋯♡♡ それに突かれてしまえば、さすがのワタシも喘ぎ狂ってしまうかもね⋯⋯♡♡ それを許してしまえば、もうワタシはキミのおちんちんのことしか考えられなくなってしまうかもね⋯⋯?♡♡」

腰を横に振りながら煽ってくる八宵先輩の腰を掴み、俺は激しく勃起したちんこの先端を、八宵先輩の秘部──おまんこの筋にあてがう。

すると思っていた以上に八宵先輩はおまんこを濡らしており、よく見るとおまんこから分泌された愛液が漏れ、太ももからふくらはぎを伝い、床に小さな水溜まりを作っていた。

期待だ。八宵先輩は、期待している。その事実に、俺のちんこが俺の意思と反して先ほどからビクビクと動いている。

犯す、犯す、犯す。八宵先輩を⋯⋯同級生や後輩、先輩が。男子が、女子が、先生が、誰しもが一度はすれ違えば振り返ってしまうあの八宵先輩を。

何百年に一人の美貌などと言われている女優なんかが、霞んで見えるほど顔が美しすぎる八宵先輩を。グラビアとかAVとか、そんなもの比にならないほど極上の肉体を持つ八宵先輩を。

俺が、俺なんかが、犯す。生徒玄関が閉じるまで残り7時間以上の間、この誰も入ってこない旧校舎の美術室で、俺が、俺だけが自由に堪能することができるのだ。

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯それじゃあ、いきますね⋯⋯!」

ゴクリ。と、一度生唾を呑んでから俺は腰をそーっと突き出していく。

先端がニュプリ♡ と迎えられ、そのままズププッ♡ と亀頭全体が熱く蕩ける膣肉に覆われる。

そして一瞬、なにか突っかかるような感触があるが、それを無視して奥へ奥へと腰を突き出していき。

完全に俺の腰と八宵先輩のおまんこが密着すると、ちんことおまんこの結合部から赤い液体が溢れ出ていた。

「⋯⋯っ♡ ふーっ♡ ふーっ♡♡ これは、予想外だねぇ⋯⋯♡♡」

その赤い液体は、俺のものではない、八宵先輩の体から⋯⋯もっと言えば、おまんこの中から出てきたもの。

ということは、つまり。

「ふふっ♡ おめでとう、橘クン⋯⋯♡♡ キミが、キミこそが、このワタシの貴重で、失ってしまったら絶対に戻ってはこない処女を、キミが、キミの手で奪い、そして散らしたんだよ⋯⋯?♡♡♡」

「⋯⋯っ!」

俺が、八宵先輩の処女を、奪った⋯⋯?

アレだけ手馴れていて、アレだけ性の知識が豊富な八宵先輩は処女で、その処女をこの俺が散らした⋯⋯?

そう考えるだけで、ちんこが八宵先輩のおまんこの中で膨らみ始める。だがそうはさせまいと、八宵先輩のおまんこはぎゅ〜っ♡ と強く締め付け、それでいてふわっと優しく包み込んでくる。

「これはもう、取り返しのつかないねぇ⋯⋯?♡ いつかワタシが結婚した時、初夜を迎える。ワタシは旦那様とエッチをするわけだが⋯⋯その脳裏には、必ず処女を奪ったキミの顔が過ぎるだろうね⋯⋯?♡♡」

「⋯⋯っ! ⋯⋯!」

「キミがワタシの処女を奪ったことで、ワタシの記憶に、ワタシの心にキミという存在が強く刻まれてしまった⋯⋯♡ ワタシはもう、死ぬまで永遠にキミを忘れることはなくなってしまったんだ⋯⋯♡♡ その意味、分かっているのかい⋯⋯?♡♡♡」

「⋯⋯っ、ぐぅ、ぁあ⋯⋯!」

──ドビュッ♡ ビュルルルルルッ♡♡♡

ただの言葉責めで、俺のちんこは情けなく射精してしまう。

すぐに外に出そうと腰を引こうとするが、八宵先輩の子宮口が逃がさないと俺の亀頭にしゃぶりついているせいで、まるでたこの吸盤に吸いつかれたように腰が引けなくなる。

──ドクッ♡ ドクンッ♡ ドックン⋯⋯♡♡

止まらない。射精が止まらない。

俺の金玉をすっからかんにするように、八宵先輩のおまんこがぎゅっ♡ ぎゅぅ♡ と動き、そして子宮で俺の精液をごくごくと飲み干している。

そして射精が終わる頃には、再び八宵先輩のおまんこがぎゅ〜♡ と締め付けてくる。そのせいで、ものの数秒で俺のちんこはその硬さを取り戻していた。

「あぁ〜〜〜⋯⋯♡♡ あーぁ、本当にいけない子だ⋯⋯♡♡ 処女を奪っておいて、自分だけ気持ちよく精液を吐き出すだなんて⋯⋯♡ このワタシのおまんこを、便器かなにかと勘違いしてるようだね⋯⋯?♡♡」

「ち、違うんです⋯⋯! その、先輩の中があまりにも気持ちよくて⋯⋯!」

「例えそうだとしても、そうやって無責任に中出しするのはどうかと思うけどね⋯⋯?♡ んぁっ♡ こ、こら⋯⋯♡ ワタシのお説教中に腰を動かすだなんて、躾がなってないお猿さん、だね⋯⋯っ♡♡♡」

腰が無意識に動く。まだ、まだまだ足りないと八宵先輩を求めてしまう。

──パンッ♡ パンッ♡ パンッ♡ パンッ♡

俺の腰と八宵先輩の大きくてムッチムチなおしりがぶつかり合い、小さな破裂音のような音が鳴り響く。

「ふ、ふふっ⋯⋯♡ もう夢中になったようだね⋯⋯♡♡ まぁ、かくいうワタシも⋯⋯っ♡♡ そこまで、余裕はないんだけど、さ⋯⋯♡♡♡」

腰を打ち付けながら、俺は八宵先輩の細い腰に腕を回して手を上へとやっていき、そして音が鳴る事にぷるんっ♡ と揺れる八宵先輩のおっぱいを両手で鷲掴みにする。

「⋯⋯♡ おや、おやおやおや⋯⋯♡♡ ワタシのおまんこを味わっておきながら、同時におっぱいまで弄ぶ気かい⋯⋯?♡♡ ふむ⋯⋯どうやらキミは、ワタシが思っていた以上に傲慢で、欲張りで──ワタシのことが、好きで好きで堪らないみたいだねぇ⋯⋯?♡♡♡」

好きだ。好きだ。先輩の言ったことは、合ってある。だが、間違っているところもある。

俺が八宵先輩のことを好きになったのは、顔がいいとか、スタイルがいいとか、そういうものではない。

俺には、俺なりに好きになったところがあるんだ。

「じゃあ、頑張っているキミに少しだけご褒美をあげようか⋯⋯♡」

俺におまんこを突かれながら、好き放題におっぱいを揉みくちゃにされながら、八宵先輩はクスリと笑って首だけを振り向かせてこちらを向いてくる。

目が合う。微かだが、八宵先輩の目の奥がハートマークになっているような、そんな気がした。

「こう見えてワタシもね⋯⋯♡ キミの優しくて、素直で、感情豊かで、それでいて不器用で、負けず嫌いで、少しワガママなところが⋯⋯」

ニンマリとした笑顔が、ニコリと笑い。

「好き。だったり、するんだよ⋯⋯?♡♡♡」

告白。か、どうかは分からない。断言はしていない。それに、からかっているようにも感じ取れる。

だが八宵先輩のおまんこは思っていたよりも素直であり、好きという単語を口にした瞬間、ギュ〜ッ♡ と、今日一番強い力で締め付けてきた。

「俺も、俺も⋯⋯! や、八宵先輩のことが⋯⋯!」

──ズチュン♡ ズチュン♡ ズチュン♡♡

高まる射精感により、腰の動きが止まらなくなる。

「誰よりも、誰よりも好きですっ!」

「〜〜〜っ!♡♡♡」

言った。言ってしまった。俺の気持ちを言ってしまった。引き出された。八宵先輩の巧妙な技によって、言わざるを得なくなってしまっていた。

反応が怖い。なんて言われるか、どう返されるか。不安のあまり、腰を子宮口にグリグリと押し付けてしまう。柔らかくて蕩けるおっぱいを揉みながら、その先端にある乳首を指でおっぱいの中へと押し込んでしまう。

「くぅ⋯⋯♡♡ ちょ、ちょっと、待つんだ⋯⋯!♡♡ それはさすがにっ♡ 反、則じゃないかい⋯⋯?♡♡ あまり乳首をいじめないで、ほしいのだけれどねぇ⋯⋯♡♡♡」

「⋯⋯そう、ですか⋯⋯!」

俺は乳首を押すことをやめ、今度は指の腹でつまんで外側に引っ張りながらおっぱいを揉む。その動きは、さながら牛の乳絞りだ。

すると八宵先輩の背中がビクッと跳ね、膝がガクッと、力なく震えていた。

「あぁ、くっ!?♡ こ、こらっ♡ ダメだと、言っているだろう⋯⋯!?♡♡」

「で、でも先輩⋯⋯! さっきから、乳首をいじると中が締まってますよ⋯⋯!」

「そ、そりゃあワタシの弱点だからねっ♡ 人は弱点を責められれば、誰だってこうなってしまうのさ♡ あぅっ♡ それっ、それとっ♡♡ そのっ♡ 腰をグリグリするのも♡ できればやめてほしいのだけれど⋯⋯?♡♡」

「分かり、ました⋯⋯! グリグリ、すればいいんですね⋯⋯!」

「いやっ、ちが──うッ!?♡♡♡」

ビクビクッ♡ と、八宵先輩のおまんこが痙攣する。その後大量の愛液が結合部から漏れだし、俺の精液やらと混ざった真っ白に泡立った。

絶頂だ。今のは、明らかにイッた証拠だ。事実、八宵先輩は肩を下げながら項垂れ、息を乱しながらも呼吸を整えていた。

「よ、よくもやったねぇ⋯⋯♡ ダメと、そう。このワタシがダメと言ったのに、キミはそれを破ってしまったね⋯⋯?♡♡」

どこか恨めしそうに顔を上げる八宵先輩だが、その顔は耳まで真っ赤に染まっており、くせのある髪が汗によって頬などにくっついていた。

そのあまりにも危険な色気に、俺の脳は完全に思考を捨ててしまった。

「八宵先輩⋯⋯俺、もう無理です⋯⋯!」

「な、なんだって⋯⋯?♡ って、いやっ、この体勢は、ちょっと⋯⋯!?♡♡」

八宵先輩の二の腕を両方とも掴み、体を無理やり起こす。それにより八宵先輩の胸が放り出され、そして体が反れることでゴリッ♡ と子宮口を抉るようにちんこが奥に沈む。

「ふー⋯⋯♡ ふー⋯⋯♡ そうかい、このワタシを壊す気だね⋯⋯?♡♡ 逃げられず、もがけず、足掻くことも封じて、一心不乱にワタシのおまんこをその凶悪なおちんちんで突き上げる気だね⋯⋯?♡♡」

「⋯⋯はい。もう、先輩は逃がしません。さっきまでいじめられた分、全部お返しします」

「はぁー⋯⋯♡ はぁー⋯⋯♡ それは、なんとも怖い話だね⋯⋯♡♡ そんなことされたら、もうワタシはキミ以外では感じなくなってしまうよ⋯⋯?♡♡ 常日頃から、キミのことしか考えられなくなって、常日頃からキミとエッチすることしか考えられないただの雌に成り下がってしまうよ⋯⋯?♡♡ それでも、いいのかい⋯⋯?♡♡♡」

「⋯⋯わざわざそんなこと言うってことは、そうなりたいってことですよね。八宵先輩」

俺の指摘に、八宵先輩は自身の下唇を噛んだ。

そして一度視線を泳がせてから、ゆっくりと息を吸った後。

「キミ専用の雌に、ワタシはなりたい⋯⋯♡♡♡」

プツン。と、なにかが切れる音がする。

気づけば俺は腰を一気に引き抜き、ちんこがおまんこから出てしまう位まで戻した後、力のまま腰を強く打ち付けていま。

「ん、ぁあぁぁッ!?♡♡♡」

すぐに、八宵先輩が嬌声を上げた。

「ま、またイッて、しまったよ⋯⋯♡ 時間はあと、6時間か⋯⋯♡♡ このままでは、もう後戻りできなくなってしまうなぁ⋯⋯?♡♡♡」

「それを期待、してるんですよね⋯⋯?」

「⋯⋯♡ ようやく、ワタシの意図を汲み取れるようになったじゃないか⋯⋯♡♡」

体をピクッ、ピクッ、と震わせながら、八宵先輩が嬉しそうに微笑む。

「ワタシを、キミに溺れさせてくれ⋯⋯♡ 橘──いや、麻人クン⋯⋯?♡」

「⋯⋯ッ!」

俺は再度思いっきりちんこを引き抜き、そしてまたズパンッ!♡ と、ちんこを子宮口に叩きつける。

八宵先輩の体が震え、跳ねる。口から喘ぎ声が漏れ、首を横に振っていた。

我慢している。イッてなどいない。たった一突きでイクほど、ワタシはちょろくない。そう自分に言い聞かせているかのように、八宵先輩は口を閉ざしている。

だが快楽に我慢しているのか足はつま先立ちになり、先ほどからおまんこの痙攣が止まらなかった。

喘がせたい。鳴かせたい。泣かせたい。啼かせてみたい。

八宵先輩が喘ぎ狂う姿を、見てみたい⋯⋯!

「ラストスパート、いきますね⋯⋯!」

「え、えっ⋯⋯?♡ そ、それ──はぁぁんっ!?♡♡♡」

──タンッ♡ タンタンタンタンタンッ♡♡

腰をわずかに、それでいて高速に動かして八宵先輩の子宮口を徹底的に叩く、叩く、叩く。

「そ、それダメっ、ダメだよっ♡♡ そんなことしたら、すぐに、イッ、クぅ〜⋯⋯!♡♡♡」

八宵先輩の膣が締まる。だが、お構い無しに今度はストロークを長くしてピストン運動を続行する。

──パンッ♡ パンッパンッパンッパンッ♡♡

腰に八宵先輩の柔らかいおしりが当たるが、そのおしりはおまんこから飛び出た愛液によって汚れ、ベットベトに汚れてしまっている。

腰を当てる度に吸い付き、そして離れる。そんなモチモチな尻肉を掴みながら、猿が交尾をするかのようにただ夢中で腰を振る。

「イクっ♡ イッてるっ♡♡ あ、麻人クン!?♡♡ さっきからイッてるん、だけど⋯⋯!?♡♡ あゔっ♡♡ イグ、またイグっ♡ イグっ!♡♡」

可愛い喘ぎ声が下品な声に変わり、何度も何度も八宵先輩は絶頂を繰り返す。

キュン♡ キュン♡♡ と締め付けてくるおまんこに射精しそうになるが、まだ、まだ我慢する。今ここで射精すれば、今日はもう無理な気がする。

そんな勿体ないことなど、したくはなかった。

「鬼っ♡ 鬼畜っ♡ 悪魔っ♡♡ 女の子がイッてるのにぃ♡♡ 女の子がイキ狂ってるのにぃっ♡♡ やめてくれない、だなんて──ッ!?♡♡♡ ぁあぅ!♡ キミはっ♡ 本当にっ♡♡ サイテー♡ サイテーだよっ♡♡♡」

口では嫌と言ってるが、俺がちんこを子宮口にグリグリっとすると八宵先輩もおしりをこちらに押し付けてグリグリっとし、その快楽を余すことなく味わおうとしている。

それに、俺だってイき過ぎて力が入らないため、手には少しの力しか込めていない。それなのに、八宵先輩は逃げられないから仕方ないですと言わんばかりに、俺に拘束されているのを受け入れているではないか。

言動と行動があまりにも一致していない。ということはつまり、まだまだ俺を求めているということだ。

──グチュッ♡ グチュ♡ グチュグチュッ♡♡

俺のカウパー液と精液が八宵先輩の愛液と混ざり合い、そのせいで俺の腰を、八宵先輩のおしりを汚し、腰を強く当てても破裂音のような音が聞こえなくなる。

その代わりに聞こえるのは、グチュッ♡ という淫靡な音のみ。ドロドロの蜜壷に入りっぱなしの俺のちんこは、もう溶けて八宵先輩のおまんこと一体化したのではないかと錯覚するくらい、ぐっちゃぐちゃになっていた。

「ごめんっ♡ ごめんねっ♡♡ ごめんっ、なさいぃ⋯⋯!?♡♡♡ イクっ♡ またイク⋯⋯!♡♡ 許してっ♡ もう、もう勘弁してくれないか⋯⋯!♡♡ 本当にっ♡ 本当にバカになるっ♡♡ キミのことが、本当に好きで好きで堪らなくなってしまう⋯⋯!♡♡♡」

「好きに、なってください⋯⋯! 俺も先輩のこと⋯⋯好きなんですっ!」

「んむぅっ!?♡♡ ちゅっ⋯⋯♡ い、いきなりキスだなんて、反則だっ♡♡ そんなキスで、このワタシが許すと、でも──っ!?♡♡♡ ぁあ、あぁあ〜っ♡♡ 許すっ♡ 許してあげるっ♡♡ もう降参だっ♡♡ ワタシはもう、キミのっ♡ キミだけのっ♡♡ キミの所有物だっ♡♡ キミはワタシの心を勝ち取ったんだっ♡♡ 心だけじゃないっ♡ この体も、ワタシの今後の人生もっ♡ その未来もっ♡♡ たった今、全部ぜ〜んぶキミのものになったっ♡♡♡ だからっ、だから最後にっ♡ 思いっきり、ワタシの中を満たしておくれ⋯⋯♡♡♡」

「八宵、先輩⋯⋯!!」

もうなにも考えず、ただただ腰を振るう。

その間にも八宵先輩のおまんこは何度も何度も痙攣し、八宵先輩は涙を流しながら恍惚とした表情で俺と唇を合わせ、ねっとりとしたキスを続ける。

さっきから我慢して、ずっとずっと金玉の中でグツグツと生成していた精液が込み上げてくる。

そして、その今日で一番濃くて大量な精液を吐き出すべく、俺は八宵先輩の子宮口を抉るようにちんこを突き上げ、そして──

──ドビュルルルッ♡ ビュルッ♡ ビュルルルッ♡♡

「────っ!?!?♡♡♡♡♡」

八宵先輩が絶頂するタイミングで、俺は八宵先輩の子宮内を精液で埋め尽くすほど勢いで、射精をする。

──ビュルルルッ♡ ビュルビュルッ♡ ビュルッ♡♡

射精によって湧き上がる快感が、止めどなく俺のちんこから脳へと伝わり、そのまま全感覚を鈍くする。呼吸すらまともにできなくなって、今なにをしているのかすら分からなくなる。

気持ちいい。ただ、気持ちいいという感情だけを残して、だが本能では八宵先輩を逃がさないように背中に抱きつき、一番奥の奥まで精液を注ぎ込む。

──ドビュッ♡ ドビュ⋯⋯♡ ドクンドクンッ♡♡

精液がもう子宮内を満たして膣までをも満たしたのか、射精すればするほどおまんこから精液が愛液と混ざって溢れ、八宵先輩の太ももを伝うように垂れていく。

視界がぼやけ、暗くなる。快楽に包まれ、溺れるように意識が遠のく。

──トクッ♡ トクッ♡ トクッ♡ トクッ♡♡

最後の一滴まで、八宵先輩のおまんこの中に射精した後。

「八宵先輩⋯⋯俺、大好きです⋯⋯先輩の──」

俺は、そこで意識を失ってしまった──

「⋯⋯⋯⋯っ、ここ、は⋯⋯?」

深い微睡みの中、目を覚ます。

視界には木造の天井と、蛍光灯が映っていた。

「おや、やっと起きたいのかい? まったく、困ったものだねぇ。アレだけめちゃくちゃにしておいて、自分は一人だけ眠っちゃうんだからさ」

ハスキーボイスながら優しい声と共に、頭を撫でられる感覚がある。

顔を上げると、そこには俺を見つめて嬉しそうに微笑む八宵先輩の姿があった。

だがその顔は逆さまであり、それでいて頭の後ろの方に柔らかい感触がある。つまり、そこから導き出せる答えとして⋯⋯。

「膝枕、してくれてるんですか⋯⋯?」

「正解。それと、体も拭いてあげた。上着も汗でびっしょりだったから、今は窓際で乾かしているよ」

ふと自分の体を見ると、シャツとボクサーパンツという下着だけの姿になっていた。

そして八宵先輩の言う通り、窓際にはハンガーにかけられた制服がかけられていて、今は風に吹かれてゆらゆらと揺れていた。

「⋯⋯八宵先輩は、着替えたんですか?」

「うん。まぁ、着替えたというより服を着直しただけだけどね。幸い、裸だったから汗とかその他もろもろを拭き取るだけでよかったからさ」

そうか。八宵先輩はヌードデッサンをするために裸だったから、俺とは違って服を乾かさなくてもいいのか。

って、思い出した。俺、あの八宵先輩とエッチしたのか。それも、あれだけお互い汗だくになって、乱れるほど濃厚なエッチを。

それだけで、またちんこが反応してしまう。だが今日はあまりにも大量に射精しすぎてしまったのか、勃起するとちんこが若干ヒリヒリした。

というより、あの夢のような時間の最中に俺は眠ってしまったのか。八宵先輩を一人残して寝てしまうだなんて、男として最低だ。

「先輩、俺⋯⋯」

「ふふっ、ははは。なにそんな不安そうな顔をしてるんだい? キミの可愛い顔が、もったいないよ。それに⋯⋯安心するといい」

八宵先輩に体を起こされ、隣に座らされる。

すると八宵先輩は俺に抱きつき、そして顔を俺の胸元に寄せてスリスリと擦り付けてきた。

その行動は、まるでネコのマーキングだ。優しく、それでいて力強く抱きしめられながらの上目遣いは、普通ならあざといだけだが八宵先輩がするとその破壊力は凄まじいものであった。

「言っただろう? ワタシはもう、キミのもの。キミだけの所有物さ。愛とかそういうものを知らないワタシに、キミはその感情を芽生えさせたんだ。その責任が、キミにはある」

「八宵先輩が、俺の、俺だけのもの⋯⋯」

「あぁ、そうさ。離さないでおくれよ? 見捨てないでおくれよ? ワタシの頭の中にある常識に、麻人クン。キミの名前が刻まれてしまったんだ。何事も優先すべきはキミになったし、どの行動をするにあたってもまずキミが思い浮かぶだろうね?」

クスクス。と笑いながら、怪しく八宵先輩の目が光る。

「依存⋯⋯そう、これは立派な依存さ。人の温もりを知らないワタシに温もりを与え、泣き叫んでしまうくらいに愛を与え、気が狂うほどに心をぐちゃぐちゃにした代償さ。キミはワタシの初恋であり、そして大事な大事な処女を奪った。自分で言うのもあれだが、ワタシは重いぞ⋯⋯? 束縛はしないが、キミのためならなんでもしてあげれそうな気分だよ⋯⋯♡」

「お、俺も、です! もう、先輩以外はなにもいらない。なにも求めない。先輩と結ばれて、その、めちゃくちゃ嬉しい、です⋯⋯!」

「〜〜〜っ! ふふっ、嬉しい。あぁ、本当に嬉しいよ。愛を告げられるのを煩わしく思っていたはずなのに、キミから向けられる愛はとても甘美だ。つい、蕩けてしまいそうになる⋯⋯♡」

俺に愛を告げられ、八宵先輩が恍惚とした表情でこちらを見上げてくる。

そんな八宵先輩の頬に手を添えると、八宵先輩は俺の手に顔を擦り付け、ウットリとした顔になった。

髪を耳にかけてあげるとそれだけで恥ずかしそうに下唇を噛み、桃色でぷにゅっとしている唇に触れると、触れた指を小さな舌でペロリと舐めてくれる。

まるで、従順なペットだ。それがあまりにも愛おしくて、愛おしくて仕方がない。

「⋯⋯っ、八宵先輩、可愛い⋯⋯」

「っ、そ、そうかい⋯⋯? このワタシが、可愛い⋯⋯か。そんなこと、初めて言われたな」

分かりやすく動揺する八宵先輩が、視線を泳がせながらあたふたとしていた。

「⋯⋯綺麗。とか、そういうことはよく言われることはあった。それでも、可愛いなんて言われたことはなくてね⋯⋯そもそも、そんな言葉ワタシには無縁とばかり思っていたよ⋯⋯」

「確かに、先輩は綺麗です。顔も非の打ち所がないくらい綺麗ですし、身長が高ければスタイルもいい。肌も綺麗だし、そのちょっと低い声も聞くだけで心が落ち着きます」

「⋯⋯っ、そ、そうかい⋯⋯?」

「はい。ですが、それ以上に八宵先輩はとても可愛らしいです。そうやって素直に甘えてくれた方が⋯⋯俺もその、嬉しいですし」

前までの八宵先輩は、遠く離れた存在であった。

圧倒的な芸術センス。それは全てのコンクールで賞を取り、既に海外の金持ちの間で行われているオークションに先輩の作品が何作品か並ぶほど、八宵先輩の絵は素晴らしいものであった。

よく、芸術家には変人が多い。という話を聞く。

だが言ってしまえば、八宵先輩も変人であった。

描く絵も毎回毎回タッチや色使いが違うし、教室の中から外を眺めて景色を描いているのかと思えば、まったく別の、形容しがたいなにかを描いていることもある。

それに授業中はずっと寝てるくせにテストは満点で、絵のアイディアが浮かぶと授業中でも全校集会中でもフラッといなくなるので、先生ですらも変人だが優秀すぎる八宵先輩に手をつけられずにいた。

変人。ただそれだけならいいのだが、八宵先輩はあまりにも美しすぎた。それでいて、あまりにも体がエロすぎた。

男の人気もあり、女からの人気もあり⋯⋯だがそれでも、八宵先輩は見向きも振り返ることすらもしなかった。

その先輩が、俺の腕の中にいる。誰にも見せたことのないような表情を、俺にだけ見せている。そのことが、俺の心を満たしてくれていた。

「⋯⋯その、八宵先輩。一つだけ聞いてもいいですか?」

「⋯⋯ん? どうしたんだい? ワタシに答えられる範囲なら、いくらでも答えてあげよう」

「ありがとうございます。では、その⋯⋯どうして、俺だったんですか?」

「⋯⋯? 俺だった。とは?」

「他にも、色んな人が先輩に接近したと思うんですよ。告白したりとか、色々と。その中には俺よりもカッコイイ人もいれば、スタイルがいい人、なにかしらセンスのある人だっていたはず。それなのに、どうして俺なんかを選んでくれたんですか⋯⋯?」

そう。俺は、そこが気になっているのだ。

八宵先輩はその美貌から、よく色んな人から告白をされるという。

話を聞いた限りではナンパをされることも多々あるようだし、なんなら有名な画家さんから猛アピールをくらったこともあるそうだ。

それに比べれば、俺なんて大したことのない男だ。これといって特徴もなければ、絵だって上手くない。

それなのに、なぜ。

そう心の中で呟いていると、八宵先輩は困ったように微笑んでいた。

「うーんとね、去年の今頃だったかな。キミがこの教室に来た時に言ったこと、覚えてるかい?」

「去年の今頃、ですか⋯⋯? え、えーと⋯⋯」

「一目惚れをしました──だよ。キミは出会い頭から、ワタシにそう言ったんだ。ワタシにとって、それは初めての体験でね」

俺の目をじっと見つめながら、八宵先輩がはにかむ。

「よく好きだとかは言われたけど、それはワタシの容姿とか体を見ての発言だった。でもキミの目はね、ワタシを見ているようでまた別のところを見ていた。それなのに、その目からは本当に好きという気持ちが伝わった。だから、興味を持ったんだよ」

「え、えっ、いや、その、あれは⋯⋯」

「最初はね、別に興味はそこまでなかったんだ。でもワタシが素っ気ない態度を取ったりしても、キミは欠かさずこの教室に来た。キミがそこまで絵を描くことが好きじゃないっていうことは、すぐに分かった。それでも、苦手だとしてもワタシに会うために必死で努力をしていた。そこにどこか惹かれてしまったんだろうね⋯⋯」

嬉しそうに、そしてどこか恥ずかしそうに語る八宵先輩を横目に、俺は小さな引っかかりを覚えていた。

それは小さな。ほんの小さな、勘違いである。

「あの⋯⋯八宵先輩? その、言いづらいんですけど⋯⋯」

「ん、どうしたんだい?」

「確かに俺、一目惚れをしましたって言いました。でも、それは八宵先輩のことじゃなかったんですよ⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯えっ?」

空気が止まる。沈黙が、俺と八宵先輩を包み込む。

だがそれを先に引き裂いたのは、俺ではなく八宵先輩であった。

「いや、は? えと、その、はぁ!? で、でも確かにワタシの目を見て一目惚れをしたって⋯⋯!」

「そ、それはその、八宵先輩の絵のことだったんです⋯⋯! 中学生の頃、この高校に見学しに来た時に見た絵が、今でも印象に残っていて⋯⋯!」

忘れない。忘れるはずがない。

あれは今から丁度二年ほど前。俺がまだ、中学生だった頃の話だ。

俺の進路が完全にこの高校に決まり、俺は優馬と一緒にこの高校の見学に来た。その時はまだ新校舎は建造中で、旧校舎の生徒玄関から中に入ったはずだ。

そして俺は、生徒玄関から入ってすぐ正面の壁に飾られた大きな絵に、心を奪われた。

『す、すげぇ⋯⋯』

それは、ただの廊下の絵だった。旧校舎の、どこかから書いたような、夕焼けに照らされた廊下の絵。

だが不思議と吸い込まれた。夢中になった。目が離せなくなった。そんな不思議な魔力が込められている絵に、俺はまさしく一目惚れをしてしまったのだ。

それを優馬に言っても、あまり分かってはもらえなかった。綺麗だとは言ったが、ただそれだけだった。

それに、俺も絵に関しては素人だし、なにも分からないにわかだった。だがそれでも、そんな俺でもその絵に惹き込まれてしまったのだ。

「それから入学して、俺は先生に聞き込みをしたんです。あの、旧校舎にあった絵は誰が書いたんですかって。そしたら、あの絵は八宵 夕緋っていう二年生の人が一年生の頃に書いた作品だって教えてくれたんです。俺は、その絵を書いた人に会いたかった。だからこそ、この美術部に入ったんです」

俺は一目惚れをした。八宵先輩の描く絵に、一目惚れをしたのだ。

「⋯⋯恥ずかしい話ですけどね。でも、今だからこそ言えるような気がして⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」

あまりにも恥ずかしくて、つい笑って誤魔化してしまう。

チラリと八宵先輩の反応を確かめるべく目を向けると、そこには顔を俯かせ、体を微かに震わせている八宵先輩の姿があった。

「ふっ、ふふっ、ふふふっ⋯⋯! そうかい、そうかい⋯⋯!」

不気味に、八宵先輩が笑い声を上げる。そして顔を上げて俺の目を見つめてくるのだが──その目は、なぜか真っ黒に濁っていた。

「キミは、ワタシの純情を弄んだんだね⋯⋯? ワタシのことが好きだと。一目惚れしたと告げることで勘違いさせたんだ。その言葉足らずが、ワタシの人生を大きく変えたんだ⋯⋯!」

「あ、あの⋯⋯八宵、先輩⋯⋯?」

「いや、ねぇ? ワタシはキミのことが好きさ。許そう。誰だって言葉足らずの時はあるし、ミスだってする。でも、この行き場のない感情はどうすれば処理することができると思う⋯⋯?」

八宵先輩が膝立ちし、俺の足を跨いでくる。

そして怖い顔をしながら──だが、可愛らしく頬をぷくっと膨らませながら、八宵先輩は俺の頭を自身の豊かな胸にこれでもかと抱き寄せた。

「犯す。ぶち犯してやる。泣いても許さないから。まだまだ生徒玄関が閉じるまで2時間以上はあるんだ⋯⋯! もっと、もっともっと愛を深め合おうではないか⋯⋯♡」

「えと、先輩⋯⋯!? ちょっ、く、苦しいのですが!?」

「大丈夫、すぐに楽になるさ。もちろん、ワタシとしては絵を褒められるのは嬉しいよ。でもね、それとこれとは違うんだ。麻人クン。キミには、いつかワタシの最高傑作を見せてあげようじゃないか。その上で、絵よりもワタシの方がずっと好きだって言わせてみせるよ⋯⋯!♡♡♡」

ズボンのチャックを無理やり下ろされ、ちんこが外気に晒される。

未だヒリヒリとしているが、八宵先輩に触れられることでまたすぐに硬さを取り戻し、八宵先輩の湿った下着の上からおまんこをつついていた。

「せ、先輩っ! 俺はもう、先輩の絵よりも先輩の方が──」

「うるさいっ♡ バカは黙ってるといい!♡♡ さっきはキミにたくさんイかされたが、まだ満足していないんだ⋯⋯♡」

「あ、あんなにやったのに!?」

「ふふっ♡ 今まで性欲とか無関係だったからね⋯⋯♡ この十八年で溜まりに溜まった性欲は、今日だけで全部開放することは不可能さ⋯⋯♡♡ もう、キミには動かせてあげないよ⋯⋯♡♡ 手は恋人らしく指を絡ませあって♡ キスで自分の体液と相手の体液の割合が半分半分になるまで貪りあって♡ この無駄に大きくてトロトロモチモチのおっぱいをキミの頭がおかしくなるくらい吸わせてあげて♡ このキミにマーキングされて未だにぐちゃぐちゃドッロドロのおまんこで、ただ挿れているだけで精液をワタシの赤ちゃんの部屋に無駄打ちさせるまでイかせてあげるよ♡ 甘く蕩ける快楽の天国に、決して抜け出せない絶頂地獄に、キミを導いてあげるから⋯⋯♡♡♡」

怒っている。顔では笑っているが、明らかに八宵先輩は怒っている。

だが、絵に一目惚れしたのは事実だが先輩のことが好きという気持ちだって本当だ。実際に初めて会った時から、先輩のことを好きになってしまったのだから。

⋯⋯なんて、今更言っても聞いてはくれないんだろうなぁ。

「その、先輩⋯⋯お手柔らかに、お願いします」

「却下♡ キミがワタシと同じように、ワタシ無しではいられなくなるほど依存するまで絶対に逃がしてあげない♡ ちなみに、旧校舎の美術室には準備室があってね⋯⋯?♡ そこは、夜の警備員も回ってこないような場所なんだ♡♡」

「えっ、そ、それって⋯⋯」

「そう♡ キミが心の底から屈服し、ワタシに依存するまで家には返さないから⋯⋯♡ 生徒玄関が閉まったとしても、準備室を使えば先生や警備員にバレることもない⋯⋯♡♡ そして、明日は日曜日だから誰もいない。誰もこの学校には訪れない⋯⋯♡♡ お互いに溶けて、蕩けて、体液という体液が混ざりあってお互いの区別がつかなくなるくらい、愛し、愛され、交合い続けようじゃないか⋯⋯♡♡♡」

「いや、それ死ぬっ、死にますって! 先輩、聞いてます!? 先輩!? 先輩──」

暴走した八宵先輩を止めることなど、もう不可能な領域まで来ていたらしく。

結局生徒玄関が閉じても俺たちはお互いの体を貪り合い、その後八宵先輩に連れられて準備室に放り込まれ、鍵を閉められ、裸と裸で抱き合ってなにも考えられなくなるまで繋がり続けた。

気絶しても起こされ、絶頂したと思えばまたイかせれて。射精は当然全部中出しで。ありえないほどキスマークをつけられて、つけ合って。

開放される頃には、日曜日の昼を迎えていた。

八宵先輩は、俺の隣で幸せそうに眠っていた──

月曜日の朝。俺はふらふらとした足取りで、自分のクラスの席に座っていた。

あれから家に帰ったら親になにをしていたのかと聞かれたが、俺はなにも教えずただ「眠い」とだけ告げて、制服のままベッドに飛び込んで気絶するかのように眠ってしまった。

着替えをしていなかったせいで、朝になれば俺のベッドには服についた先輩の匂いが完全に染み付き、少しでも嗅ぐだけで勃起する体になってしまった。

朝にシャワーを浴びてからリビングに出て朝食を食べていると、親から「麻人。なんか香水でもつけてるか?」と聞かれた。

どうやら、シャワーでいくら体を洗っても落ちなくなってしまうほど、俺の体は内側からも外側からも八宵先輩の体液が染み込んでしまったらしい。

そのせいで、まだ朝だというのに一回だけオナニーをして学校に来たため、一週間の始まりの月曜日なのに俺は既に疲れ切っていた。

「麻人、おはよー──って、うわっ。お前、大丈夫か?」

「あー⋯⋯優馬か。おはよう。大丈夫って、なにが?」

「なんか、めちゃくちゃゲッソリしてるぞ。それなのになんかすげぇ幸せそうな顔をしてるし⋯⋯なんか、気味が悪いな」

「ははっ、そうかな⋯⋯?」

確かに疲れたしゲッソリはしているが、それ以上に俺は満たされていた。

あの八宵先輩と付き合えたこと。あの八宵先輩と思い出しただけでも射精してしまうようなエッチができたこと。それを考えれば、そりゃあ幸せに決まっている。

昨日のアレは、すごかった。

あの、耳元で先輩が「好き♡ 大好き♡」って囁きながらの、舐るような動きの騎乗位。アレはもう、この世のものじゃないって思うほどに気持ちがよかった。

やっぱり辛かったとはいえ、俺は八宵先輩のことが大好きなのである。

「ほらー、お前ら席につけー。ホームルームを始めるぞー」

なんてことを考えていると、女担任の齋藤先生が教室に入ってくる。

そしていつものように出席確認を取り始めるのだが、その瞬間。突如勢いよく扉がガラッ! と開かれる。

するとそこには、なぜかクラスどころか学年すら違う八宵先輩の姿があって。突然の登場に、齋藤先生だけでなくクラスの男子女子たちが声を揃えて驚いていた。

「八宵!? お前っ、もうホームルームが始まっている時間だぞ!? それに、そもそもここはお前の教室じゃ──」

「分かっている。でも、少しだけ用があってね。齋藤女史、少しだけ時間をくれないかな?」

「だから、女史ではなく先生だと⋯⋯まぁ、いい。さっさと済ませて出ていくんだぞ」

「うん。ありがとう」

男子や女子関係なく生徒に厳しい齋藤先生ですらも、マイペースだがどこか威圧感のある八宵先輩には勝つことができない。

八宵先輩が、教室を一望する。そして俺と目が合うとニンマリと笑いながら駆け寄り、俺の顎に指を置いたと思えば。

「お、おはようございます。八宵先輩⋯⋯?」

「うん、おはよう。ワタシの、ワタシだけの麻人クン。ちゅっ⋯⋯♡」

突然のキスに、静まり返った教室が途端に騒がしくなる。

ある者は歓喜の声を。ある者は悲鳴を。ある者は祝福を。ある者は嫉妬の声を、俺に浴びせてくる。

「⋯⋯これは、ワタシからのお返しさっ♡」

そう耳元で囁いて、八宵先輩は齋藤先生に一言謝ってから教室をあとにする。

どうやら、まだ俺は一目惚れの件を許されてはいないらしい。だが今はそれよりも、周りから集まる視線があまりにも痛かった。

そこからホームルームが終わり、俺が質問の雨に襲われるまで一秒も時間はいらなかった。

俺の学校生活は完全に八宵先輩の手によってめちゃくちゃにされたが、だがそれでも、俺の心には確かな温もりが残っていた──

春。

それは、別れの季節であり、始まりの季節でもある。

「起立。気をつけ。ありがとうございました」

「「ありがとうございましたー」」

適当な帰りのホームルームが終わり、放課後を迎える。

皆が皆これからなにをしようか話している中、俺は一人大きなあくびをしていた。

「眠そうだな。麻人」

俺の隣に座る親友の優馬が、声をかけてくる。

「いや、別に眠くはないよ」

「そうか。それじゃ、一緒に帰らね?」

最近、優馬はよく下校の時間になったら俺を誘ってくる。

どうやらついこの間付き合っていた後輩の子と別れてしまったらしく、今は早くも部活を引退したため絶賛暇だとのこと。

だが俺は、そんな優馬の誘いに対し首を横に振った。

「いや、部活があるから今日も無理だわ」

そう。俺には部活がある。

あれから時は過ぎ、俺は高校三年生となった。それにより、俺は美術部の部長となっている。ほとんどが幽霊部員だが、一応新入生も入ったことで少しは賑やかになっていた。

しかし、基本的に俺は新入生たちと交流はしない。というより、交流する機会がない。

なぜなら、俺は三年生になった今でも、新校舎ではなく旧校舎の美術室で絵を描き続けているからだ。

「そっか。お前、なんだかんだいって美術部の部長だもんなー」

「なんだかんだってなんだよ。なんだかんだって」

「いや、そのままの意味だって。ていうか、どうしてまだ美術部にいるんだよ。お前の大好きな八宵先輩は、もう卒業しちゃっただろ?」

そう。八宵先輩は三年生だったから、ついこの間この学校を卒業してしまった。

丁度去年。八宵先輩が俺の教室に飛び込んできたと思えば、キスだけを残して教室を立ち去ったあの日から、俺の学校生活は大きく変わった。

どうやら八宵先輩は俺の知らないところでも付き合っていることを言い触らしていたらしく、生徒どころか先生までもが知っているカップルとして、ちょっとした有名人になっていた。

さすがに近所の商店街に足を運んだ時に「おぉ! 兄ちゃんがあの八宵ちゃんの彼氏かい!?」と言われた時はゾッとしたが、今ではもういい思い出である。

「夕──八宵先輩は卒業したけど、俺も気づいたら絵が好きになってさ。だから、部活は休みたくないんだ」

「あー、そういえばこの前賞を取ってたもんな〜。ていうか、今下の名前で呼ぼうとしたよな? さりげなく夕緋って言おうとしたよな? なぁ?」

「うるせぇ。お前も早く彼女作れ」

「振られたばかりのオレに言う言葉か、それ!?」

騒がしくオーバーリアクションをする優馬だが、お互いに今のやり取りが冗談であることを知っているため、最終的には顔を見合わせて二人で噴き出していた。

すると、俺と優馬の元に同じクラスの女子が歩いてきた。

「あ、あの〜⋯⋯? ちょっといいかな?」

その女子生徒は、前髪をピンで止め、長い髪の一部に編み込みがある。

確か、この人の名前は──

「新井じゃん。どうした?」

優馬が、その女子の名前をスっと口にする。

あぁ、思い出した。新井さんだ。あの、過去に八宵先輩が描いたヌードデッサンのモデルになった人だ。

てことは、確か──いや、ここで新井さんの裸を思い出すのはやめよう。それは新井さんに失礼なことだし、新井さんだって嬉しくはないだろう。

「えと、その⋯⋯ゆ、優馬くんって、これから暇⋯⋯?」

「え、えっ、オ、オレ!? そりゃあ、暇だけど⋯⋯?」

「っ! よかったぁ⋯⋯! それじゃあ、これから一緒に帰らない⋯⋯? その、寄りたいところとかもあるからさっ。着いてきてほしいなぁ〜⋯⋯って」

おっと? これは、なにかラブな波動を感じるな。

それならば、俺はおじゃま虫だ。カバンを手に取り、俺は自分の席をあとにする。

「あ、麻人っ! また明日なー!」

「おう。また明日」

明らかに優馬のテンションが上がってる。ていうか新井さん? あなた当然のように部活サボってるけど、一応俺同じ美術部の部長だぞ?

まぁ、この学校の部活は一部の部活以外同好会みたいなものだし、出席してもしなくてもいいんだけどさ。

なんてことを考えながらも、俺は旧校舎の美術室へと向かう。

そして、美術室にたどり着く直前に職員室に鍵を取りに行くことを忘れてしまったことに気づくが、そこで俺は異変に気づく。

そう。美術室の扉が空いているのだ。

一体誰が。そう思い、美術室の扉を開くと──

「──おや。おやおやおや。まったく。キミは本当に暇人なんだねぇ」

そこには、本来この場にいないはずの八宵先輩──もとい、俺の愛する夕緋の姿があった。

「ゆ、夕緋!? ど、どうしてこんなところに⋯⋯?」

「いやぁ、あれからキミの知っているように、ワタシは日本最難関の美術大学に入学しただろう?」

「はい。それも、首席だったようですね」

「まぁね。というより、あの程度で首席になれるとは思ってもなかったよ」

サラッと言ってるが、その大学は確か倍率が2倍から2.5倍くらいの超難関学校だったはず。

その学校に首席で入れるのだから、やはり夕緋は天才の中の天才だ。そう、改めて実感する。

「それでね、あの学校はちょっとした特別なシステムがあってね」

「特別なシステム?」

「あぁ。あそこで単位を取るには、二つ方法がある。一つは普通に座学に出ること。もう一つは、月に一回作品を提出して合格を受けることだ」

「つまり、作品が合格する自信がなければ座学に出席して、自信があれば座学には出席せず作品の提出だけで単位がもらえると?」

「そういうこと。まぁ、作品の提出の方は座学に出なくて良い分、結構ハードルが高いらしいけどね」

そりゃそうだ。夕緋の通っている大学は日本最難関の美術大学であり、試験で受かることすら厳しいと言われている場所だ。

そんなところで作品を描いて認めてもらうだなんて、素人の腕にはまず無理だ。

それこそ、夕緋のような実力者でないとまず不可能だろう。

「でも、座学はめんどうだろう? 座学に毎日出席していれば安心して卒業試験までたどり着けるが、ワタシは麻人に会えない。それはとても苦痛で、嫌なんだよ」

「ふむ⋯⋯というと?」

「まぁ、簡単に言えば一気に一年分──12ヶ月分の作品を提出してきたんだよね。もちろん、全部ほぼ満点合格さ。だから、今年はもう半年に一回ある出席日以外大学に通わなくてもいいってことなんだ」

つまり、何百日も暇になったということだ。

そしてその暇は、こうして俺に会いに来るために作ってくれている。本当に、俺の彼女は最高だな。

「ついでに、もうすぐ来年の分も完成する。先生には『来年の分の提出は前例がないからダメ⋯⋯と言いたいが、キミならその前例を作り出すことができるかもしれない』と言われてね。特別に許可をしてもらったんだ」

「ははっ、裏でそんなことしてたんですか? やっぱり、夕緋はすごいんだなぁ」

なんて言うものの、それが『すごい』なんて言葉で収まりきれないほどの偉業であることは、俺ですらも理解している。

だがなんかもう、夕緋ならそれくらい普通にやってみせるだろうという信頼があるため、そこまで驚かなくなってしまったのだ。

「ところで、麻人はどうしてこんなところにいるんだい? まさか、まだこんなところで絵を描いてるのかな?」

素朴な疑問を、夕緋に投げかけられる。

それに対し、俺は肯定を示すべく小さく頷いた。

「はい。確かにここは古びた場所ですが、俺の思い出の場所です。先輩がいなくなった後でも、俺は一人でここに通い続けました」

「へぇ、相変わらずバカ真面目だ。ほんと、キミは律儀だねぇ」

「はははっ。ですが、おかげで初めて賞を取れたんです。その作品が──」

「『果実』だろ? 知ってるよ。キミの作品だもの。すぐに目に入ってきたさ」

夕緋にそう言われ、胸がドキッと跳ねる。

「ワタシはキミにまず最初にリンゴとバナナの描き方を教えた。まさか、そこからこう発展してくるとは思わなかったよ」

果実。それは、色鮮やかで豊かな木に色とりどりの木の実が実っている、という作品だ。

さすがに最優秀賞は取れなかったが、それでも優秀賞を取ることはできた。それだけでも、俺の絵の成長っぷりが分かるだろう。

「線も綺麗だったし、色使いも鮮やかだった。実際、キミは色彩感覚だけは優れていたからね」

「それ、審査員の方にも言われました。君の絵は、色が格別にいいって」

「うん、うん。そうだろうね。だって、このワタシがみっちりと仕込んだのだから。でも⋯⋯まだまだ下手っぴだったよ」

「はははっ。先輩に比べたら、そりゃあ下手っぴですよ」

勝てない。どう逆立ちしても、俺の絵で先輩を超えることはできない。

だが、だからこそ燃えるのだ。

いつか先輩を超える──まではいかなくても、肩を並べるほどの作品を書いてみせると、俺は誓ったのだ。

「下手っぴだ。確かに下手っぴだったが⋯⋯ワタシの大好きな絵だ。ワタシの心を動かした、素晴らしい絵だったよ」

「先輩⋯⋯」

心からの賞賛に、目頭が熱くなる。

過去に何度も夕緋には褒められたことはあったが、それでもこうして言われると、報われたような気がして。

「だからそんなキミには⋯⋯ご褒美をあげなくちゃ、ね?♡」

夕緋の笑い声が、艶やかなものに変わる。

「久しぶりにキミに先輩って呼ばれたおかげで、ワタシのココがキュンキュン♡ って疼いちゃったよ♡」

夕緋がホットパンツを脱ぐことで、薄いデニールのパンツストッキングに覆われた、純白のレース生地の下着が顕になる。

そして、羽織っていたコートを脱ぎ捨て、黒い縦セーターのニットを捲ると──そこには、かつて見た時よりもワンサイズは大きくなっているだろう色白のおっぱいが、純白のブラジャーによって支えられていた。

だがあまりにもおっぱいが大きいせいで、ブラジャーが支えきれないと言わんばかりに悲鳴を上げている。

それを前にした時、既に俺のちんこは完全に勃起しきっていた。

「さぁ⋯⋯♡ また、あの時みたいに深く、深く、深く溺れようじゃないか⋯⋯♡♡ 快楽の海に、絶頂のその先へ⋯⋯♡♡♡」

一歩。また一歩と、夕緋──いや、八宵先輩が歩み寄ってくる。

「いつまでも⋯⋯そう。いつまでも、永遠に愛を確かめ合おうじゃないか⋯⋯♡♡♡」

八宵先輩に手を引かれ、美術室の奥にある準備室へ。

そこから始まる、無限の快楽。イき、イかされ、愛し、愛され、汚し、汚され、犯し、犯されていく。

いつまでも、いつまでも。そう、いつまでも。

旧校舎の美術室で。俺と先輩は。

甘く、そして蕩ける快楽という抜け出せない沼に溺れ、絡まれ、そして──

永遠の愛を誓いながら、ズブズブと堕ちていくのであった。

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